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ヒット習慣予報 vol.420『マイクロトリップ』
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ヒット習慣予報 vol.420『マイクロトリップ』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの平山です。

本格的な夏を迎え、日差しの強い日が続いていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は先日、とあるイベントで深夜散歩の会に参加してきました。このイベントでは、一人ひとりが「街で見かけたいもの」をビンゴカードに書き込み、東京の街を巡ります。私は「ビーチサンダルの人」「光る首輪をつけている犬」「公衆電話」「カラスと鳩以外の鳥」などを探しながら歩きました。いつもとは違う東京の側面を知ることができた体験となりました。
日頃の移動では、最短ルートを地図アプリや乗り換えアプリで調べてから足早に歩き、電車内では動画やニュースを流し見るなど、効率的に時間を使おうとしています。その結果、普段の移動中の記憶は、スマホの中の世界ばかり。みなさんも移動中の目の前の景色を全く覚えていなかった、という経験はないでしょうか。
そんな効率化に囲まれた世の中ですが、最近は、私が経験したように「楽しいルールのもと街を歩く」人たちが現れています。見慣れた景色の中に制約やゲーム性を持ち込むことで、日常を非日常へと変換しているのです。
今回は、このような過ごし方を「マイクロトリップ」と名付け、具体的な事例をいくつかご紹介したいと思います。

1つ目は「カラーハンティング」です。
これはテーマカラーを一つ決め、その色の対象物を街中で探し出し、写真に収める街歩きの楽しみ方です。例えばテーマカラーが黄色であれば、看板、道路標識、道端に咲く花、自動販売機などから黄色を探して撮影し、それらの写真を一枚にコラージュして、SNSに投稿します。
実際に楽しんでいる人からは、「いつも通る道なのに、こんなものがあったなんて知らなかった」「普段は目的地を往復するだけだけど、カラーハンティングは道中そのものも楽しめる」といった声が見受けられました。
特定のテーマカラーに意識を向けるだけで、普段は素通りしていた景色が違って見えてきます。カラーハンティングは、小さな発見や出会いを楽しめる、旅のような新しい街歩きの形として広がっているようです。

参照:Google Trends「Color Hunt」

2つ目は「山手線一周ウォーキング」です。
最近、山手線の沿線を徒歩で一周するチャレンジが人気を集めています。トレンドは、一駅歩くごとに短い動画を撮影し、それらを1本の動画に繋ぎ合わせてSNSに投稿するスタイルです。実際にチャレンジした私の友人は、「正直もう二度とやりたくないくらいきつかったけれど、駅ごとに雰囲気が異なる街を歩くのは楽しかったし、すごく達成感があって思い出になった」と語っていました。
普段何気なく利用している路線も、自らの足で辿ることで、まるで冒険のような体験を得ることができます。

3つ目は「道順が分からないナビアプリ」です。
通常、地図アプリは「現在地から目的地までの最短ルート」を正確に案内してくれますが、あえて行き先の地点や詳細なルートを隠し、コンパスのように「目的地の方向と距離」だけを示すアプリが人気を集めています。
私も実際に使ってみたのですが、家の近所でありながら、おそらく一度も通ったことのない道を歩いたり、行き止まりで引き返したり、あえて遠回りをしたりと、とても新鮮な徒歩体験でした。偶然がもたらす未知の世界との出会いが面白く、今後もふとしたタイミングで使っていきたいと感じています。

なぜ今、こうした「マイクロトリップ」に取り組む人が増えているのでしょうか。理由は大きく2つあると考えられます。

1つ目は「プロセスの価値化」です。
今の世の中は、映画の倍速視聴や結論をまとめたショート動画など、いかに手っ取り早く結果を得るかが重視されるようになっています。しかし最近は、その反動からか「プロセスそのものを愛でる」傾向が高まっているように感じます。 デビュー前の成長過程から寄り添うオーディション番組のブームや、自分で組み立てたりアレンジを楽しんだりするDIYの流行は、まさにその象徴といえます。 移動においても同様に、あえて「色を探す」「迷いながら歩く」という非効率な制約を課すことで、移動のプロセスに光を当て、その時間を存分に楽しみたいという欲求が高まっているのではないでしょうか。

2つ目は「お手軽なリフレッシュ効果への希求」です。
「自然界隈」という言葉が近年トレンドにもなっていたように、今を生きる人たちが持つ「日常から離れて心身をリセットしたい」という想いは、かつてないほど高まっています。旅の醍醐味は、知らない土地に行き非日常を味わえる点にあります。とはいえ、遠出には時間やお金がかかり、計画の面倒さも伴います。 
一方「マイクロトリップ」であれば、見慣れた日常の見方を少し変えるだけで、手軽に非日常体験を得ることができます。お金や長い時間をかけずとも、ルールを1つ設けるだけで、近所がまるで異国の地のように新鮮に映ること。このコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスの良さが、今の生活者にマッチしているのではないでしょうか。

最後に、「マイクロトリップ」がもたらすビジネスチャンスについて、いくつかアイデアを考えてみました。

「「マイクロトリップ」のビジネスチャンスの例
■ 指定された街歩きのヒントをもとに街を探索し、お店にたどり着いた人だけが利用できる、住所非公開の飲食店
■ 「緑が多い道」「猫に合えそうな裏路地」など、テーマ別の寄り道ルートを案内する地図サービス
■ 「次の信号を左」「赤い看板の写真を撮影」など、音声でランダムな指令を出して街歩きをガイドするオーディオアプリ

遠くに行かなくても、視点を変えれば世界は広がる。
私も自分なりのルールを作って、近所の新しい扉を開けてみようと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは? 
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。 

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  • 博報堂 ストラテジックプラニング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2025年 博報堂入社。
    写真を撮ることと、人の人生の話を聴くことが好き。
    最近は宇宙に関心があり、良い望遠鏡を買うか迷っています。