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「バーチャル生活者」から紐解くこれからのマーケティング【後編】グループ各社の活用事例で見えてきた実践知
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「バーチャル生活者」から紐解くこれからのマーケティング【後編】グループ各社の活用事例で見えてきた実践知

統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の中核を担うプロダクトとして、生活者発想を支援する「バーチャル生活者」。博報堂DYグループでは、2025年11月より全社員を対象にバーチャル生活者の利用を開始しました。後編では、グループ各社の担当者を交え、現場の最前線で生まれている具体的な成果や実践知を紐解いていきます。

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【ソウルドアウト】「プロダクト起点」から「生活者理解」へ。バーチャル生活者を活用したミドルファネル攻略

木下
それでは、実際に各社の皆さんがどのような形で、バーチャル生活者を活用されているのかをお聞きしていきたいと思います。まずはソウルドアウトの亘理さんからお願いします。
亘理
私はクリエイティブ戦略の策定や、デジタル以外のクリエイティブ制作を担当しています。ソウルドアウトは中小・地方企業の支援を中心としており、少人数の専任体制が多く、場合によっては広告運用者がクリエイティブ制作まで兼任しながらPDCAを回すこともあります。その際、業務の効率化はもちろんのこと、クリエイティブ制作における「相談相手」として重宝しています。

また、新規営業でも活用しており、BLOOMのプラニング機能で作成したターゲットやブランド規定をバーチャル生活者に問いかけ、対話しながら深掘りすることで、ブランド理解や情報が不足している中でも、提案資料の高度化・作成の効率化ができていると感じています。

木下
デジタルマーケティングの領域では、プラットフォーマーのアルゴリズムへの対応が非常に重要な要素です。バーチャル生活者を活用してインサイトを深め、生活者理解を高めることは、クリエイティブにどのような変化をもたらしていますか?
亘理
これまではロワーファネルだけで完結するケースが多く、プロダクトを見ていれば十分でした。しかし、ミドルファネルの攻略を考えるようになると、結局は生活者をしっかり理解しなければ対応できない場面が増えてきます。動画の制作などでは「人の温度感」が不可欠になるからです。

例えば、AIを活用した教育系プロダクトの案件を担当した際、私自身にはまだ子供がいないため、親御さんの心情を理解するのが難しいという壁にぶつかりました。
そこで、バーチャル生活者に「中学生は今、何に困っているのか」を尋ねてみたのです。プロダクト起点では機能の議論で完結しがちですが、バーチャル生活者との対話からは、その前の段階にある率直な“気持ち”が浮かび上がってきました。

木下
自分が経験したことのないライフステージについても、バーチャル生活者との対話を通じて、これまで掴めなかった示唆を得ることができたわけですね。
今後はどのような使い方を想定していますか?
亘理
デジタル会社ならではの活用法として、配信データの属性や地域情報からユーザー像を逆算的に抽出し、バーチャル生活者を自社用に「育成」していくこともできるのではと思っています。「仮説起点」だけでなく「データ起点」でもペルソナを作れるという意味で、バーチャル生活者の拡張性の高さを強く感じています。

【Hakuhodo DY ONE】わずか数日で14セグメントに高速細分化。「AI×リアルインタビュー」のハイブリッド戦略

木下
それでは次に、Hakuhodo DY ONEの寺内さんから活用事例についてお話いただければと思います。
寺内
私は既存クライアント企業向けのマーケティング戦略の立案から実行までを、一貫して担う部署に所属しており、ストラテジックプランナーとしてデジタルマーケティングを担当する際にバーチャル生活者を活用しています。

デジタルマーケティングは詳細なターゲティングが可能なため、同じターゲットでもカスタマージャーニーごとにインサイトが異なり、細分化すればするほど業務量が膨大になります。時間的制約のある現場では調査の時間が取れず、プラナーの直感やデスクリサーチに頼らざるを得ないという実態がありましたが、バーチャル生活者を活用することで、初期仮説におけるターゲットとジャーニーの細分化を高速で行えるようになりました。

実際、ある得意先の案件では、提案期間がわずか数日というスケジュールの中で、「他にも狙うべきターゲット層があるのではないか」という課題があがりました。そこでバーチャル生活者を活用したわけですが、特に助かったのが、複数のペルソナを簡単に作成できる機能と、同じ質問を複数のペルソナに一括で質問できる機能でした。年代や職種(第二新卒、30代ハイキャリア、営業、エンジニアなど)を変えた6つのペルソナを作成し、同じ質問を一斉に投げかけたんです。

木下
複数のペルソナによる回答が一度に並べて表示されることで、これまで気づかなかった発見や実務におけるメリットはありましたか?
寺内
一括で質問を投げると、画面上にそれぞれの詳細な回答が横並びで表示されます。
その返ってくる回答の差分をすべてAIに流し込み、「ターゲットごとの違い」や「新たなインサイトの軸」をクロス分析させました。これまでなら分析軸の設定と再分析に2営業日はかかっていたプロセスが、画面上での一元比較によって一気にショートカットでき、ターゲットを14のセグメントにまで高速に細分化することができました。

寺内
一方で、細分化を進めていくと回答結果が似通ってくるケースも出てきたので、その点については、AIを活用してインタビューガイドを作成し、実際の生活者へインタビューも実施しました。実際のインタビューでは、時代の流れを反映したリアルなインサイトが新たに浮かび上がってきました。バーチャル生活者でターゲットの切り口を網羅し、実インタビューと掛け合わせることで、説得力のあるターゲットプロファイルを作成できました。「狙うべきターゲットがどこなのか決めあぐねていた」というクライアントから、非常に高い評価をいただけました。
木下
バーチャル生活者でプロファイリング分析を進め、実際のインタビューで補強するというアプローチは非常に良いと感じます。従来はインタビューを実施した後に「もっとこれを聞いておけばよかった」と追加調査を行うこともありましたが、事前にAIにインタビューを挟むことで、論点が先出され、ヒアリングの抜け漏れを網羅できるようになりましたね。

寺内
まさにその通りで、事前にAIを挟むことで「もっと聞いておけばよかった」という後悔が大幅に減ったことは、非常に大きな改善点だと感じています。

【読売広告社】ユーザー自身も言語化できないロイヤリティを「ラダリング法」で導き出す

木下
生成AIに求める正解は一つの手がかりであり、そこから次に「何を問うべきか」という新たな視座を引き出すことに価値がありますよね。それでは、読売広告社の津野さん、お願いします。
津野
私は主にメーカー企業のマーケティングに携わりながら、広告外収益を作るプロジェクトにも参画しています。中堅メーカーにとってはいかに商品を差別化し、既存ファンの購買心理を深く理解してファンを増やしていくか、が最大の課題ですが、大手企業のように自社のファンコミュニティを持ち、ファンの購買心理をリサーチするような環境を持たない企業も少なくありません。そこで、バーチャル生活者を「生活者の深層価値を深堀できるパートナー」として活用しています。

とあるメーカーの事例では、市場価格よりも高いブランドの為、店頭に並ぶとどうしても価格面で負けてしまいますが、コアなファンは確実に存在していました。そこで、購入頻度やロイヤリティ、価値観などの軸からバーチャル生活者上で、「熱狂的なファン」から「リピート意向もない人」までをクラスタリングし、「ラダリング法(※「なぜ?」を繰り返して深層心理を遡る手法)」などを用いて深掘りしていくことで、「料理の味を変えたくない」という表層的な理由から、「料理の味がキマることが、家族の楽しい食卓につながり、それが自分の心の安定につながっている」という非常に興味深いインサイトに行き着いたのです。思うように味が決まらなければ、料理の楽しさが減り、心の安定が崩れる原因にもなります。それがもし、一度の調味料で味が決まれば、手間が省けて時短になるし、自己肯定感も向上する。つまり、「他の調味料に変えることで自分の心の安定が崩れるのが嫌だ」という深層心理こそが、ファンのロイヤリティの本質であることが明らかになったんですね。

津野
通常、このような言語化できないコンテキストをファンから引き出すには、膨大な時間がかかりますが、バーチャル生活者は一貫した人格を維持したまま、短時間で複数の視点から検証できます。
木下
ユーザーインタビューをしても、本人が言語化できない領域を、ラダリング法を用いることで、最初から深いインサイトワークを実践できるのはいままでなかったアプローチだと感じています。通常のインタビューでもなかなか言語化が苦手な方もいらっしゃるので生活者の深層心理の価値をロジカルに導いてくれるのはLLMならではの強みかもしれません。
津野
そこから掘り起こした深層価値を核として、同じニーズや悩みを持つ人々へ価値を伝えていくことで、熱狂的なファンをさらに増やせる可能性があります。そこが次にチャレンジしたいことですね。
井川
シンプルに「深堀りモード」とせず、あえて「ラダリング法」という手法名を明示しているのもこだわりです。これによって現場の若いプラナーが「知らなかった調査手法を学べる」という社内の知の伝承・教育的価値も生まれています。

【大広】戦略や提案の納得性・妥当性をバーチャル生活者で評価

木下
それでは大広の傳田さん、お願いします。
傳田
私は大広のデータソリューショングループで、「データを価値に変える」をテーマに検索データや売上データ、広告配信データなどを掛け合わせて数値分析を行い、その結果をもとに他部署への示唆出しやクライアントレビューを行う業務を担当しています。

バーチャル生活者に関しては、主に「0次分析」「戦略の事前検証」「配信後の評価」の3つのフェーズに活用しています。
まず0次分析では検索データをバーチャル生活者に読み込ませてペルソナを作成しています。さらにその対話履歴をAIに投入し、「その発言をする人の特性」を客観的に整理・分類することで、属人性に頼らずターゲットクラスターを定義できるようになりました。また、戦略の事前検証の際もキャッチコピーなどをバーチャル生活者に提示し、想定通りの反応が得られるかを事前に確認して戦略の修正に役立てています。

木下
バーチャル生活者で作った会話履歴をさらにAIに投入するという作業は非常に面白いですね。その工程を挟むことで、どのような課題が解決できるのでしょうか?
傳田
バーチャル生活者から出てきたペルソナをそのまま解釈すると、どうしても受けての主観が入り込んでしまいます。そこで、決まったフォーマットに沿って同じ質問を投げかけた結果を一度データとして整理し、客観的にクラスターを定義するためにAIを掛け合わせています。将来的にこの一連の流れがバーチャル生活者の中で完結できるようになると、さらに使い勝手が上がると思います。
木下
なるほど。ベテランのプラナーほど自然とプロファイリングの“型”が出来上がっており、無意識に主観が入り込みやすくなりますから、データを一度客観的に補正する役割としても有用ですね。特に効果を実感しているフェーズはどこですか?
傳田
チラシをはじめとするオフラインメディアでのダイレクトマーケティングの「配信後の評価」です。詳細なデジタルデータが取得しにくいため、これまでは改善点の判断が担当者の肌感覚に頼りがちでした。そこで、「結果が良かったチラシ」と「結果の悪かったチラシ」の両方をバーチャル生活者に見せ、反応の違いをテキストとして抽出するアプローチを取り入れました。
一般的なLLMはユーザー忖度しがちですが、バーチャル生活者はそれが少なく、本当に思わぬ角度から「この見せ方だと響かない」という鋭い指摘をしてくれます。感覚的だったクリエイティブ評価に客観的な根拠が加わり、クライアントへの戦略提案の納得感が高まりました。

【博報堂】PDCAから「PVDCA」へ。AIによる事前検証で加速する意思決定のスピード

木下
最後に、博報堂の増本さん、お願いします。
増本
私はストラテジックプラナーとして、マーケティングやメディアプラニングの業務を担当しています。そのなかで、顧客を予測し先回りして複数プランを並走・改善するプロセスに、バーチャル生活者を活用しています。バーチャル生活者の登場前後で最も大きく変わったのは、従来のPDCAサイクルに「Verify(事前検証)」が加わったPVDCAへとワークフローが進化したことです。

マーケティングの4Pの中でも、プロモーションは最もスピード感を持って取り組むべき領域です。それにもかかわらず、従来はプランの段階で調査やインタビューに時間をかけすぎて動き出しが遅くなりがちでした。そこにバーチャル生活者による「事前検証」というプロセスを挟むことで、事前にリスクを低減し、論点が明確になった状態で、超高速に意思決定を下すことが可能になりました。プランをブラッシュアップしながらPDCAを回せるようになったのは、非常に大きな価値です。

木下
これまでのマーケティングコミュニケーションに加えて、CXOの視点で描く事業プランや未来シナリオまでをバーチャル生活者に提示し、ブラッシュアップしていったという話ですね。具体的にどのようなアプローチを行ったのですか?
増本
具体的には「今後何が起きそうか」を予測し、次にその予測した未来に対して「どのようなアクションが取れるか」のプランを考え、最後に「実行していく」という3つのステップすべてバーチャル生活者を組み込んでいます。
バーチャル生活者を活用して予測し、どのプランが適切かを検証したうえで実行した内容を、さらにブラッシュアップしていく。このような枠組みを提案できたことが大きな成果でした。
AIがさらに進化していくなかで、いかにクライアントのマーケティング業務プロセスにバーチャル生活者を自然に組み込んでいけるか。それこそが私たちの仕事の本質であり、今後も追求すべき重要なテーマだと思っています。

※肩書は取材当時のものです 

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  • 博報堂テクノロジーズ 執行役員 兼
    マーケティング事業推進センター センター長

  • 博報堂 ストラテジックデザインセンター ストラテジックプラニング局

  • ソウルドアウト マーケティングカンパニー マーケティングプランニング本部アクティベーションディレクター

  • Hakuhodo DY ONE グロースコンサルティング本部 第一グロースコンサルティング局 第二グロースコンサルティング部 部長

  • 大広 デジタルソリューション本部 データドリブンプランニング局 データソリューショングループ

  • 読売広告社 マーケットデザインユニット インダストリーコンサルティングセンター

  • 博報堂テクノロジーズ マーケティング事業推進センター開発推進一部

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