SNS施策は設計が鍵。ファンと一緒に盛り上げる、「界隈理解」に根ざしたSNSプロモーションとは?
キャンペーン規模の大小を問わず、SNSはいまやマーケティング施策に欠かせない要素です。しかし、「期待した反応が得られなかった」「ファン獲得を目指したにもかかわらず、想定外のコメントが寄せられた」 など、運用の難しさに課題を感じる企業が多いのも事実です。
コンテンツへのファン化につなげるためにはどのようなプランニングが必要なのか、SNS 施策のプロフェッショナルであるHakuhodo DY ONEの米田雄史、吉原千智に聞きました。
キャンペーン全体を俯瞰した事前設計が必須。「とりあえず並走させる」では手遅れに
-今日はSNS 施策のプロの視点からお話を伺います。はじめにHakuhodo DY ONEとお二人の担当業務について。
- 米田
- Hakuhodo DY ONEは、博報堂DYグループの「デジタルコア」と位置づけられるデジタルマーケティング会社です。私たちはそのクリエイティブ領域で、Web CMの企画制作からSNS施策、さらにはオフラインのイベントなどをつないだ総合的なプロモーションに携わっています。私は局長兼クリエイティブディレクターを務め、吉原はSNS施策の最前線でプランナーとして活躍しています。
- 吉原
- ここ数年、SNS 施策の重要度は増す一方です。Web CMなど主軸となる施策と、それを支えるSNS施策をいかに有機的に連携させるか、多くの企業が課題として認識されています。また、SNS施策を中心としたキャンペーンのご相談も多くいただいています。
Hakuhodo DY ONE単独でお受けするのケースのほかに、博報堂DYグループ内で連携した大規模なプロジェクトのなかでSNS施策を担当するケースも増えています。
昨年メルカリの12周年を記念して行われた「にゃんバサダーPROJECT」もその一例です。周年施策として大規模なキャンペーンのなかで、いかにSNSのプロモーション効果を上げるかという課題にも取り組んでいます。

メルカリの公式アンバサダーとして全国から猫ちゃんを募集。4,000を超える応募から10匹のファイナリストを選抜し、最終的に3匹の「にゃんバサダー」を決める一般投票を実施した。
-そのような大型キャンペーンの際、SNS運用でつまずきやすいポイントにはどのようなものがありますか。
- 吉原
- SNSは投稿数が多いこともあり、日付で区切って施策のスタートから順に計画を立てるケースが多いと思います。ローンチのタイミングでどれだけ山を作るかに意識が集中して、その後の投稿が平坦になってしまうという事例を多く目にします。
もちろん、最も注目を集めやすいのは情報解禁のタイミングですが、Web CMの公開日、屋外広告の公開日など、施策全体のなかで山場となる「点」を捉えて、その周辺から企画を組み立てることが大切です。投稿単体ではなく、キャンペーン全体の流れを意識した視点が求められます。
- 米田
- いまの時代、SNSが重要だということは認識されているので、施策として必ず組み込まれてはいるのですが、短期の大型キャンペーンでは特に、CMなど主要な施策に意識が集中し、「SNSをとりあえず並走しよう」といった感覚で運用されているケースも見受けられます。しかし、全体の流れを把握したうえで事前に投稿設計を組み立てておかないと、後手後手の対応になり本当に必要なタイミングで盛り上がりを作ることができない。大きな山場を創出するだけでなく、その間をつなぐ小さな接点を継続的に生み出すことで、フォロワーの関心を途切れさせない工夫も重要です。
メイン施策のサブとして捉えられがちなSNSですが、最終的にキャンペーンの盛り上がりを測るときにはリポストやいいねの数が指標にされますよね。吉原のように、SNS のプロフェッショナルでありながら、CMやイベントなどアクティベーション全体を見渡せるメンバーが並走することで、ブランドの好意度を上げるという意味でも結果を残せると思います。
全体設計と同じくらい重要な柔軟性。臨機応変に対応できる素材量こそ鍵
-キャンペーン全体における山場と継続的な接点というのは、具体的にどのように設計するのでしょうか。
- 吉原
- CM公開や屋外広告など反響が見込めそうな大きな施策の公開日には、しっかりインプレッションを獲得できる投稿を、その合間はファンダムが盛り上がるような投稿をする、というのが基本的な考え方です。ファンダムが盛り上がるというのは、タレントを起用したキャンペーンであれば、撮影のオフショットのような投稿ですね。
- 米田
- 継続的な投稿ができるように素材をどう確保するかも重要な視点です。
よくありがちなのが、「素材的にも体力的にも毎日投稿は難かしそうだから、3日に1回くらいにしておこうか」とスタートするパターン。この場合、実際運用を始めて「思ったより盛り上がらないな」と思っても、予算的にも素材的にも打つ手なし…というケースが多いです。継続的な接触を生むためにも、毎日投稿は基本です。コンテンツ素材は多ければ多いほど良いと考えるべきです。
アイドルグループを起用したキャンペーンでは、CM撮影のときにメンバー全員にデジカメを渡して、各々写真を撮影してもらう手法を取ったこともあります。フォロワーの反応を見ながら投稿内容を調整することもできるので、素材をしっかり準備することはとても重要だと思います。

- 吉原
- SNSではリアクションが即座に返ってくるので、ウケると思ったものがウケなかったり、逆に意外なものに大きな反響があったり、その反応を見て臨機応変に対応することも大事です。事前の全体設計と同じくらい、生活者の反応を見ながら調整する柔軟性も大切だと考えています。
誰でもできると思われがちなSNS施策。そこにこそファンダム理解の深さが必要
-反応を見ながら柔軟に対応するには、生活者理解の深さが必要ということですね。
- 吉原
- そうですね。SNSは個人で発信している方もたくさんいらっしゃいますし、SNS施策は専門的な知識がなくても誰でも手軽に実施できる、と誤解されがちです。そもそも私たちは、ファンダムを単なる「ファンの集まり」ではなく、人によって熱量の向け方やこだわりが違う、小さな個性の集まりだと捉えています。そのため実際は、キャンペーンごとに狙っていく層も異なりますし、そのファンダムで何が流行っているのか、界隈理解が非常に重要になってきます。そのアカウントが好かれるか、逆に嫌われてしまうかは、投稿のテンションや文体といったなかなか言語化できないような「ニュアンス」の部分が影響します。だからこそ、その理解を徹底して、十分にケアしたうえで設計することが大切ですし、それが私たちの強みになっていると考えます。
-ファンダム理解のためにどのような準備をするのでしょうか。
- 吉原
- アイドルのファンダムや猫好きのコミュニティなど、多様なターゲット層が存在します。まずはマイクロインフルエンサーをフォローし、彼らがどのような投稿をしているのか、それに対してどのような反応があるのかを調査します。調べていくうちに特有のワードや伏せ字(ファンのみに通じる隠語)、絵文字など、ファンコミュニティ独自の文化が見えてくるので、その伏せ字を使ってさらに検索するなど、リサーチを深めていきますね。
推しが起用されているキャンペーンアカウントに積極的に発言する層、リポストはするけれどコメントは付けない層、フォローはせず見るだけの層など、一言でファンダムと言ってもさまざまなレイヤーがありますので、それぞれどのような反応があるかを丁寧に調べていきます。
-かなり時間をかけてリサーチするのですね。
- 米田
- そうですね。企画段階から運用時まで徹底的にリサーチするので、高い頻度で界隈の情報を閲覧することでSNS上のアルゴリズムからもその分野に精通した「界隈の人」と認識され、関連情報がレコメンドされるようになります。そうすると、自分ではたどり着けないような情報に触れることもできますし、投稿内容に反映することもできる。
普通に考えると案件ごとにここまで深くリサーチすることは難しいと思いますが、私たちHakuhodo DY ONEのチームには、さまざまな界隈に精通したメンバーがいます。SNS施策についてはもちろん、アイドルやアニメについても「オタク」と呼べる人材が揃っていることは、当社ならではの強みだと思っています。
投稿文では「好かれる」よりも「嫌われない」。細心のケアでフォロワーの信頼を獲得する
-界隈理解を深めたうえで、ファンを味方につけるためのポイントがあれば教えてください。
- 吉原
- ファンマーケティングでは、ファンダムとの距離感を間違えない、ということが最重要だと思っています。特に熱量の高いファンダムの場合は、アカウントがファン代表のように振る舞わないよう、あくまで企業のPRとして中立な立場から発信することを心がけます。そのうえで、先ほどお話ししたような界隈に馴染みのある言葉や空気感を捉えながらUGCを生みやすい投稿を設計していきます。

- 米田
- 短期のキャンペーンでは特に、アカウントの人格を好きになってもらう、ということは難しいので、投稿文では「好かれる」よりも「嫌われない」ことを意識することが大事ですね。ブランドを好きになってもらうことは大切ですが、そこは動画や画像などのコンテンツに任せる。役割の切り分けが重要だと思います。
投稿文ではまず、何をやるかよりも先に「何をやらないか」を決めておく。ファンダム名を呼ばない、ファンダムを評価するような表現をしない、特定の絵文字は使用しないなど、細かな配慮がファンの信頼につながると考えています。
- 吉原
- ファンダムとは別で「にゃんバサダーPROJECT」のように発信側に特定のキャラクターが存在している場合、しっかりその人格設定を規定しておくことも大事ですよね。どういう話し方なのか、テンションはどうなのか、投稿文だけでなく、アイコン、ヘッダー、プロフィールまで世界観を統一して、SNSだけが別のノリにならないよう、企画全体との整合性を取ることもフォロワーの信頼を獲得するために必要なことだと思います。

「にゃんバサダーPROJECT」では、オーディションを取り仕切るプロデューサー「にゃんプロ」がアカウント主という設定に。
クリエーターでありながらSNSのプロ。思いもよらない企画を提案できるはず
-やはり、キャンペーン全体のなかでいかにSNS施策を接続させていくかが肝になるのですね。
- 米田
- そうですね。ありがちなのは、キャンペーン全体をプランニングしているチームとは別に、SNSの運用だけ外部に委託しているパターンです。キャンペーン全体を捉えられないことで微妙なすれ違いが生じて、結果的に思うように機能しないという事例を多く見かけます。
SNSはキャンペーンを「脇から支える存在」ではありますが、いまは同時に、ソーシャルインサイトからクリエイティブをスタートさせる時代です。それならば、SNSでどう発話されるか、どのような消費行動が起こるかを起点に設計することは、企画の初動から重要になるはずですし、私たちの知見が活かせるところだと思います。
-最後に、企業のSNS担当者やマーケターに向けてメッセージお願いします。
- 吉原
- SNSはただ情報発信をするツールではなく、あくまで生活者とのコミュニケーションの場。インサイトをしっかり捉えて、リアクションやコメントをキャッチしながら臨機応変に反映させていくのがSNS施策の本質だと考えています。そういった丁寧な運用がブランドの好意度を上げることにつながると確信していますし、これからも本質的なSNS設計を大切に企業のサポートができればと思います。
- 米田
- 通常、SNS施策に注力したいという案件でご相談いただくことが多いですが、SNS施策の必要性をまだ認識されていないプロジェクトでも、ぜひ一度お話をお聞かせいただきたいと考えています。きっと思いもよらなかった方向からおもしろいご提案ができるはずです。
私たちは、SNS施策だけでなくCMやアクティベーションの企画にも携わっているので、クリエーターでありながらSNSのプロフェッショナルという、双方の専門性を兼ね備えた、 Hakuhodo DY ONEならではの強みを持っています。プロジェクトのスタートからご一緒して、クリエイティブに加えてさらにSNSのバリューを生み出していきたいと思います。
※肩書は取材当時のものです
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株式会社Hakuhodo DY ONE
クリエイティブ本部 第一クリエイティブ局 局長広告映像制作会社を経て、株式会社アイレップ(現 Hakuhodo DY ONE)に入社。 ファンマーケティング施策・ミドルファネル施策・運用型動画広告などの、戦略・企画から設計まで広くプランニングを手がける。
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株式会社Hakuhodo DY ONE
クリエイティブ本部 第三クリエイティブ局 第一CR部2024年 Hakuhodo DY ONE入社。プランナーとして、UGC創出を目的としたSNS施策やLP制作・イベントなどの施策に従事。拡散にとどまらない、ブランドと生活者の間に共感を生むコミュニケーションを追求。


