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テレビの枠を超え、地域に愛される存在へ 山梨放送と高知放送が挑むTikTok活用の最前線
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テレビの枠を超え、地域に愛される存在へ 山梨放送と高知放送が挑むTikTok活用の最前線

生活者のメディア環境が変わる中、放送局にもテレビの枠を超え、生活者のコミュニケーション変化に寄り添う姿勢が求められています。県の魅力を発信することが求められる地域の放送局においても、プラットフォームを通じて新たな接点を生み出し、ビジネスの起点を作っていく必要性が高まる一方、制約の多い現場で新しい挑戦に踏み出すのは簡単ではありません。
今回は、博報堂と共にTikTokを活用したプロジェクトに挑んだ山梨放送(以下:YBS)と高知放送(以下:RKC)の担当者を迎え、挑戦の裏側とそこから見えた地域の放送局の可能性について語っていただきました。

山梨放送 メディアプロデュース局 ビジネス推進部 前田真宏
高知放送 東京支社東京営業部 田所明憲
博報堂 テレビラジオビジネス局 貝島弘之

地元クリエイターとの共創が、海外に目を向けるきっかけになった

——新しい収益機会の創出は地域の放送局にとって大きなテーマになっているのでしょうか。

貝島
はい、多くの地域の放送局にとって重要なテーマです。ただ、こうした新しい挑戦には多額の費用や工数がかかると思われがちで、さらに日々の業務があるなかで、なかなか向き合う余裕がないように見受けられます。しかし私は、潤沢な予算がなくても、放送局の皆さんの足元にある大切なアセットをフル活用することで、収益機会の創出へ向けた挑戦はできると考えています。本日は、実際にプロジェクトを共に推進してくださったお二方と、今回の取り組みについて振り返りたいと思います。

——YBSのプロジェクトは、地元のクリエイターを起用し、海外のファンコミュニティに向けてTikTokでアプローチするというものでした。どのような経緯で企画が始まったのでしょうか。

前田
もともと、今回起用したTikTokクリエイターのりゅうとさん(TikTokユーザーネーム:choco🍫)は、YBSの番組にタレントとして出演していました。彼がTikTokで人気があることは理解していましたが、その長所をYBSとしてこれまでうまく生かせておらず、その機会を今回の企画でいただいたというところです。
貝島
たまたま前田さんとお話しする機会があり、りゅうとさんを紹介していただいたんです。ローカル発のTikTokクリエイターで、当時すでにフォロワーが450万人以上もいるというのは突出した数字でしたから、直感的にうまくいきそうだと思いました。

——放送局が地元の企業と連携し、県外や海外に向けて発信することにはどのような意義があるのでしょうか。

前田
県内企業の方々と一緒に外に向けて何かを発信していくことは、メディアと制作力を持つ放送局だからこそできることですし、最終的に山梨全体の利益になる取り組みだと考えています。今回の座組で言えば、海外の方々に面白そうだと思って山梨に遊びに来ていただけるところまで着地するのが一番の理想だと考えていました。

——今回はTikTokでの挑戦でしたが、放送局として取り組む上で葛藤はありましたか。

前田
最初のうちは、TikTokの映像を作るときのポイントや加減が正直分かりませんでしたが、縦型で制作すると決まってからは、スタッフも一生懸命勉強してくれました。すでに経験のあるディレクターにも入ってもらい、相談しながら進めていきました。

貝島
私たち放送業界に関わる人間の「マインドセットのチェンジ」が不可欠だと考えています。TikTokではあまりにブランデッドなコンテンツは視聴者に敬遠されてしまいます。どこまでエンターテインメントとして見せるか、どこまでブランドの要素を組み込むか、そのバランスは非常に難しかったですね。

——プロジェクトのキーとなったTikTokクリエイターのりゅうとさんは、もともとどのような繋がりがあったのですか。

前田
TikTokで話題になっているすごいクリエイターがいる、という噂は聞いていました。彼がタレント活動を始めるタイミングで事務所に紹介されたのが最初です。彼は東京に出て活動するだけでなく、地元を大事にしたいからと山梨にも拠点を置いていました。それならば山梨の地元のタレントとして起用してみようと思い立ちました。
貝島
りゅうとさんはフォロワー数がピカイチでありながら、「地元を応援したい」という気持ちが非常に強い稀有な存在でした。予算が限られる中でもやってみたい、という思いにも応えてくれましたし、彼の熱意がなければ、このプロジェクトは最後までやり切れなかったかもしれませんね。

——実際に挑戦してみて、感じた手応えや課題について教えてください。

貝島
りゅうとさんのファン層を分析したところ、インドネシア在住のファンの割合が非常に高かったんです。そして、ご協力いただいた企業もインドネシア市場を最重要視していました。その点がうまく合致して、最終的にそこをターゲットにすることになりました。
前田
でも、もっとターゲットのこと、今回で言えばインドネシアのことを深く学ぶべきだったというのが反省点ですね。もっと早い段階からインドネシアに精通している方に入っていただき、現地の人がどう受け止めるかを考えていれば、また違った結果が生まれたかもしれません。勉強はしましたが、リアルな生活のところまでは分かっていなかった。これは他の国や地域を対象にする場合でも同じだと思います。

——チャレンジングな取り組みでしたが、社内からの反響はいかがでしたか。

前田
社内で説明を重ねるうちにチャレンジとして認めてもらい、やらせてもらえることになりました。この取り組みはテレビ番組でも少し紹介したので、県内の方々にも「YBSはこんな挑戦をしているんだな」と分かってもらえたかなと思います。また、今回の経験を通じて、社員たちも「こういうこともやれるんだ」と理解してくれたと思うので、前例のないような提案をした時でも社内で「また何か面白いことをやっている」と前向きに捉えてもらえるきっかけになれば嬉しいですね。

愛されるおじさん社員のIP化は、失敗を恐れないカルチャーから生まれた

——RKCのTikTokプロジェクトが始まったきっかけを教えてください。

田所
「RKCには加茂さんっていう面白い社員がいるよね。その人を使ってTikTokで何かできない?」と提案をいただいたのが始まりです。その加茂という社員がもともと東京支社にいて、面白いキャラクターとして皆から愛されていたのもあり、まず東京支社でやろうという話になりました。その中で、ショート動画で生活者との新しい接点を作っていくために、一番若くて今の感性を持っているだろうということで入社4年目の私がアサインされました。
貝島
各局がすでに持っているアセットを最大限有効活用しよう、と考えたのが出発点です。各局のアセットと言えば、キャラクターや、そして「社員」です。ただ、クリエイターではないのでTikTokでバズらせるのは難しいだろうと思っていたんですが、そのときふと加茂さんのことを思い出したんです。

——今回のプロジェクトは、自社の社員である「加茂さん」をIP化するというユニークな挑戦です。加茂さんとは、一体どのような方なのでしょうか。

田所
一人でいれば本当に無口なおじさんなんですが、彼がいるところではなぜかミラクルが起こる。(笑)ゴルフに行けば、ドライバーで打ったボールが真上に飛んで後ろに落ちたりするといった逸話が多くて、みんなから愛されていました。その噂が社外にも広まって、「RKCには加茂さんという面白い人がいる」という話に繋がったんです。

——なぜプラットフォームとしてTikTokを選んだのでしょうか。

貝島
生活者のメディア接点が多様化する中で、スマートフォンで視聴するコンテンツプラットフォーム、特にTikTokとは向き合わなければいけないと考えていました。また、テレビとの親和性も悪くないと感じています。縦型と横型の違いはあれど、どちらも動画コンテンツですから、連携した企画ができれば、TikTokがテレビ視聴のきっかけになるかもしれない。そうした勉強も含めて、TikTokでの挑戦をRKCさんに提案しました。

——実際に運用を始めてみて、コンテンツへの向き合い方に変化はありましたか。

田所
加茂は一緒にいれば面白いことは分かるのですが、それをどうやってショート動画にすればいいのか、かなり悩みました。そこは博報堂の皆さんと打ち合わせを重ねながらアイデアを出し合い、今は試行錯誤しながら色々な動画を投稿して検証している段階です。どうすれば加茂の良さを他の人に知ってもらえるかを第一に考えて、「若手社員にいじられるおじさん」という構図がいいのか、あるいは歌が好きなので歌わせてみて「この人、何者?」と思わせるのがいいのか……色々考えながらやっています。

——社内の反応はいかがですか。

田所
東京支社ではすごく盛り上がっています。「加茂さん、次に何させたら面白いかな」といった雑談が日常的に交わされていて、「最近こういう動画がバズってるから、やらせてみよう」「でも、おじさんだから怪我するんじゃないか」とか(笑)。本社にいる加茂本人をよそに、アイデアを出し合っています。
貝島
TikTokの良さは「失敗を恐れずとりあえずやってみよう」と気軽に試せるところですよね。色々投稿してみて、何が受けるのかを学びながら、次の施策を考えていける。それを社員の方々が面白がってやってくれるのは、本当に素晴らしい状況だと思います。

——放送局が自社の社員をIP化して発信することの意義は、どこにあると感じますか。

田所
歴史の長い信頼感のあるRKCという放送局が、謎のおじさんを出している、という面白さがあると思います。生活者がTikTokをきっかけに「RKCを見てみようかな」と思ってくれるかもしれない。逆に、加茂が営業時代にお世話になった方が「これ、加茂さんじゃない?」とコメントをくれることもある。テレビとTikTok、どちらからでも生活者にアプローチできることに可能性があると感じています。

——今後の展望について教えてください。

田所
まずは再生数及びフォロワー数を増やし、加茂というIPをみんなに知ってもらうことが第一です。人気が出れば、加茂のファンも出てくるかもしれない。最終的には「加茂フェス」みたいなイベントができたらいいな、と思います。
貝島
放送局が「コンテンツを生み出す力のある会社」という見え方になると、新しい可能性が広がると思います。きっかけは遊び心から始まった企画ですが、地域の放送局の未来にとって非常に重要な取り組みだと思っています。

2つの挑戦から見えた、新しい放送局の可能性

——お互いの取り組みを聞いて、どのように感じましたか。

前田
高知県と山梨県は同じくらいの規模感ですし、共感できる部分が非常に多かったです。特に、歴史あるRKCさんだからこその遊び心は見習うべきだと感じました。何が話題になるか分からないのがTikTokの面白さであり、難しさでもあります。取り組むのは大変ですが、話題化した時のインパクトは大きいですよね。
田所
YBSさんのように企業と並走していく、という視点は、我々にはまだ見えていない部分でした。マネタイズを考えると、そうした方法が不可欠になってくると思います。まずは加茂さんというIPを育て、そこから企業とコラボしてどう盛り上げていくか。YBSさんの事例を参考にさせていただきながら、同じ系列局として情報交換し、一緒に盛り上げていけたら嬉しいです。
貝島
放送局には、まだまだ活用できるアセットが多く存在していると思っています。そのアセットを多角的な視点でどうビジネスに活かしていくか、考えてみることが、新しいビジネス創出の第1歩だと考えています。そうした挑戦のお手伝いを、私たちも今後できればと考えています。

※肩書は取材当時のものです

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    田所 明憲
    高知放送 東京支社東京営業部

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