ヒット習慣予報 vol.424『推しの体験化』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの村山です。
あっという間に8月が終わってしまいましたが、まだまだ残暑厳しい日が続いていますね。今年も暑い日が続いていてなかなかおさまりそうになく、早くもう少し過ごしやすくなってくれないかと思う今日この頃です。個人的には、ファッションが好きなので、涼しくなったらどんな服を着ようかなとか妄想したり、シルバーウィークに家族でどこにいこうかとか、色々と思いを巡らせる時間が増えてきました。読書の秋、スポーツの秋などと言われますが、何か新しい体験を始めるのにぴったりの季節かと思います。さて、今回はそんな「体験」に関する新習慣として「推しの体験化」を紹介したいと思います。
「推し活」をしている、あるいは自分にも「推し」がいるという人は、現代社会においてかなりの割合にのぼっていることが調査でも明らかになりました。(※)「推し活」と聞くと、そもそもライブやイベントに足を運んだり、公式グッズを買ったり、あるいはカフェでキャラクターのグッズと一緒に写真を撮ったりと、すでに何かしらの体験をしているのでは?と思われるかもしれません。しかし、今回注目したいのは、そうした従来の推し活から一歩進んだ新しい形です。推しを、自分とは遠く離れた憧れの対象として客観的に消費するだけでなく、自分自身の日常のなかに取り込み、より主観的に「体験化」して楽しむという習慣が広がってきているのです。
※博報堂 偏愛会議、研究レポート第一弾 「これからの『好き』という気持ちの行方 スキステナブル」を公開
https://www.hakuhodo.co.jp/news/info/123228/
1つ目の事例は「推しのアクセサリー化」です。最近、カプセルトイの機械などで手に入る、傘の持ち手やペットボトルなどにつける目印用の小さなチャーム「めじるしアクセサリー」が大流行しています。
「めじるしアクセサリー」の検索数推移

出典:Googleトレンド
手頃な価格帯と、何が出るかわからないワクワク感が若者を中心にウケており、入荷してもすぐに行列ができて売り切れてしまうほどの人気だそうです。特に注目すべきは、このチャームを本来の目印としてだけでなく、推しのキャラクターを引き当てるまで何度も挑戦し、自分の身の回りのアイテムをデコレーションする人が増えている点です。近年、透明なビニール傘やシンプルなデザインの持ち物が増え、見分けがつきにくくなった背景もありますが、それ以上に、ペンやポーチのファスナー、化粧品や文房具といった日常使いのアイテムに推しを忍ばせることが流行しています。これまでもバッグに大きなキャラクターのぬいぐるみやチャームをつける文化はありましたが、より小さく、クリア素材などでさりげなく作られたアイテムを複数つけることで、自分らしく気軽に楽しめるように進化しているようです。SNSでも、「自分の持ち物が推し仕様になってテンションが上がる」「日常使いのアイテムにさりげなく推しを忍ばせるのが楽しい」といった声や、「周りがみんな持っているから自分も集めたい」という共感から輪が広がっている様子が見受けられます。また、「それ何のキャラ?」と職場や学校でのコミュニケーションのきっかけにもなっているようです。

2つ目の事例は「推しのゲーム化」です。プレイヤーが顔のパーツなどを自由に組み合わせてキャラクターを作り、仮想の島で生活させて交流できるシミュレーションゲームを筆頭に、キャラクリエイトができるゲームにおいて、この傾向が顕著に見られます。このゲームを使って、自分の推しの人物の顔やアバターを緻密に作成し、理想的なシチュエーションや名シーンの再現などを楽しむ遊び方が広がっているのです。ただゲームとして用意されたシナリオをプレイするだけでなく、推しに現実の動画配信で着ていたような服を作って着せたり、推し同士を同じ部屋に住まわせてその会話を眺めたりと、自分だけの解釈や妄想を仮想空間で具現化して体験しています。推しをただ見つめるだけではなく、自分が作り上げた箱庭のなかで推しが生活し、喜んだり交流したりする様子を観察することで、新しいオリジナルな体験を作り出しているのが特徴です。SNS上でも、推しにそっくりな顔を作るためのパーツの数値やレシピが活発に流通し拡散しています。「自分だけの解釈で作った推しが生活しているのを眺めているだけで、あっという間に時間が過ぎてしまう」「ゲームの中で推し同士が仲良く会話している空間を見られて最高に幸せ」といった発言が多く見られ、ゲームというツールを使って推しとの新しい関わり方を創造していることがわかります。
3つ目の事例は「推しのエクササイズ化」です。最近、ある大人気の韓国女性アイドルグループのメンバーが実践しているエクササイズが、かなりハードだと話題になっています。1日わずか数分で腹筋が割れると言われる過酷な筋トレメニューなのですが、ファンたちは単にそのアイドルの引き締まったスタイルに見惚れて動画を消費するだけではありません。実際に自分も同じメニューに挑戦してみるというアクションに繋がっているのが非常に面白いところです。SNSでも多くの人がその体験談を動画や文章でシェアしており、「推しと同じメニューをこなしたら、かつてないほどの筋肉痛になった」「めちゃくちゃキツくて心が折れそうになるけれど、推しもこれを毎日頑張っているのだと思うと最後まで乗り切れる」など、推しの過酷な努力を自分の身体の痛みを通して追体験するようなアクティビティとして楽しまれています。憧れの対象に少しでも近づきたいという気持ちと、エクササイズという体験を通して推しとの連帯感を感じるという、新しい応援の形ではないでしょうか。
なぜ、このような「推しの体験化」が流行っているのでしょうか。
ひとつには、体験化することで、推しが単なるスマートフォンのディスプレイ越しやステージ上の遠い存在から、確かな手触りや実感を伴ったリアルな存在になることが挙げられると思います。情報が溢れ、コンテンツを簡単に消費できてしまう時代だからこそ、自らの手を動かしてチャームをつけたり、ゲーム内でキャラを作成したり、体を動かして汗をかいたりするアナログな「実感」が求められているのではないでしょうか。
また、推しがただの憧れの対象にとどまらず、趣味のアカウントなどに見られるように、「自分らしさを表現するための存在」へと変化していることも大きいでしょう。推しの存在が日々の生きがいになるだけでなく、自分自身の生活をより豊かにし、自分らしさをもっと楽しむための「体験」へと変換されることで、推し活はこれまでにない広がりを見せているのだと考えられます。
それでは、「推しの体験化」のビジネスチャンスについて、考えてみたいと思います。
「推しの体験化」のビジネスチャンス例
■ 推しのイメージカラーや香りを自由に組み合わせて、自分だけの日用品やコスメを作れる体験型ワークショップの開催。
■ スポーツジムで、人気アーティストの過酷なトレーニングメニューを追体験できる特別プログラムの提供。
■ 自分の推しのアバターを登録すると、そのキャラクターが声でナビゲーションをしてくれる旅行・観光案内アプリの開発。
僕も音楽が好きなので、ただ曲を聴くだけでなく、これから新しく好きなアーティストが見つかったら、どうすればそれを「体験化」して、もっと自分らしく応援したり日々の生活のなかで楽しむことができるのか、色々と考えてみようと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 PR局
ヒット習慣メーカーズ メンバー車からお菓子に至るまで様々なクライアントの企画立案に携わる。痩せたいし健康になりたいので、生活を見直したいなと思っています。


