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「バーチャル生活者」から紐解くこれからのマーケティング【前編】AI×人間のベストプラクティス
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「バーチャル生活者」から紐解くこれからのマーケティング【前編】AI×人間のベストプラクティス

統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の中核を担うプロダクトとして、生活者発想を支援する「バーチャル生活者」。
生活者データに基づき複数の生活者を再現できる本ソリューションは、マーケティングリサーチやアイデア創出、ターゲットペルソナ作成など、さまざまな用途に活用され、進化を遂げてきました。

本稿では、前後編に分けてバーチャル生活者の開発背景や未来・展望、そして博報堂DYグループ各社の活用事例について掘り下げていきます。前編となる今回は、ツールの根底にある思想と、AI時代における「人間の介在価値」に迫ります。

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バーチャル生活者は“ペルソナ”が蓄積される場所。シンプルさを追求したUI/UXの裏側

木下
バーチャル生活者は、博報堂のコマースデザイン事業ユニットの栗田昌平さんの発案によって、2024年に対外的にリリースしました。当初はクライアントのカスタマイズに対応する形で提供してきましたが、そこで蓄積された知見やノウハウをもとに、現在は博報堂DYグループ全体で利用可能な業務支援プロダクトへと進化を遂げています。
私自身マーケティング出身ということもあり、立ち上げ当初は、主にターゲットのプロファイリングやインサイト分析といった用途での活用を想定していましたが、実際に事業会社の皆さんが利用していくなかで、本当に多様な使われ方が生まれており、マーケティング業務プロセスの変化の兆しを感じています。

井川
バーチャル生活者の開発の根幹にある思想は、「生活者発想そのものを置き換える」ではなく、「これまでの生活者発想をサポートし、よりマーケティング業務の高速化や仮説検証を促進する」です。
実際に生活者発想を支援していくうえで、工夫している点が大きく3つあります。

1つ目は、プロファイリングが得意でなくても、簡単なプロンプトを入力するだけでリアルなバーチャル生活者を作成できること。2つ目は、デプスインタビューを想定した仮想的なヒアリングを進めたり、複数の生活者を並べて意見の差を比較しながら、特定の生活者に絞り込んだりできること。そして3つ目は、画像や動画の読み込みなど、テキスト以外の入力にも対応していること。

井川
開発にあたって大切にしたのは、機能を増やしすぎないことでした。これまでデータベースにデータが蓄積されてきたように、バーチャル生活者も「ペルソナが蓄積されていく場所」になっていくと捉えています。
だからこそ、初見のユーザーが十分に満足できるレベルで使いこなすために、「ペルソナを簡単に作れる機能」に絞りこみました。複雑なプロンプトを書かなくても生成できるよう、「どの項目を、どの粒度でプロファイリングすべきか」という方法論を整理し、裏側に組み込んでいます。

20万人のパネルデータが担保する「戦略の実効性」

井川
他のAIツールとの大きな違いは、博報堂の生活者データと生活者発想の資産を活用できる点です。
博報堂DYグループが保有する20万人の調査パネルデータベース「Querida(クエリダ)」と連携しており、単にN1のペルソナを作るだけでなく、リアルな調査データと紐づけることで、商材に特化した深いインサイト発掘ができること、さらにはそのターゲット像が市場においてどれほどのポテンシャルを持つのかを客観的に評価することが可能になります。

木下
実際のビジネス現場では、客観的根拠に基づく確かな意思決定が強く求められていますよね。
井川
だからこそ新たに「市場効果予測」の機能を実装するなど、データの裏付けに徹底的にこだわっています。ターゲットの妥当性を事前に検証し、実効性の高い戦略判断を可能にすることこそが、我々が提供する最大の強みです。

AIが生み出した「余白」を、人間の「創造性」に充てる重要性

木下
今後もユーザーの意見やフィードバックを取り入れつつ、AIの進化も捉え、バーチャル生活者をさらに進化させていく予定です。一方で、これからは「AIに任せるべきこと」と「プラナーが担うべきこと」の役割分担も大きく変わってくると思っています。その点について、皆さんはどのように感じていますか?
亘理(ソウルドアウト)
最終的に人間の役割として残るのは、ビジネスの最上流と最下流になると感じています。たとえば最上流に当たる「自社の事業目的」について考えると、ソウルドアウトが地方や中小企業を支援する原動力は、合理性や効率性という話ではなく、「支援したい」という気持ちです。
こうした「何のために事業をやるのか」という明確な目的意識を持つことこそが経営の本質であり、それはAIには代替できない人間固有の領域として残り続けるのではないでしょうか。
木下
ソウルドアウトのビジョンである「地方の経営者を元気にする」という話がまさにそうですよね。
言語化されていない情報に対してAIは回答できないため、ビジネスの最上流であるまだ見ぬ価値や新しい動きを構想する「0→1の発想」は、まだまだ人間が得意とする領域です。
亘理
バナーを1つ作るにしても、「この違和感をどうしても解消したい」といった微調整のニーズは必ず生まれるわけで。そういう部分では、やはり人間が介在する価値が一定あると考えています。

特にクライアントワークでは、担当者の好みや感性が判断に影響してくる場面も少なくありません。やはり「どんなクリエイティブにしたいのか」という領域は、上流だけでなく下流においても、人の判断が必要な役割は残り続けると思います。

AI時代に求められる「多技能化」と、これからの“ネクスト・ストプラ像”

木下
AIの進化によって、今や誰でも簡単に様々な動画や画像を生み出し、世の中に発信できるようになりました。しかし、現状はまだ過渡期だと思っています。そこから人間がひと手間加え、新たな価値を吹き込んでいくことで、クリエイティブの質は大きく変わっていく可能性を感じております。

これまでは「CMを1本制作する」というアプローチが主流だったブランドも、AIを活用することで多様なクリエイティブを世の中に提示できる可能性が、さらに広がっていくのではと思います。

寺内(Hakuhodo DY ONE)
まだ存在しない新たな発想を広げ、数ある選択肢の中から意思決定し、人として信頼を勝ち取ること。それが人が担うべき役割の本質だと思います。実際にクライアントから、「寺内さんがいたからうまくいった」と評価をいただくケースもあり、最終的な成果は人に集約されます。

AIを意思決定の検証や裏付けに最大限活用しつつ、人は熱意をもってクライアントと向き合い、信頼で選ばれる存在となる。それをチームで実践することで、グループ全体のビジネスは拡大していくと考えています。

増本(博報堂)
私はストラテジックプラナーという職種なので、日々危機感を持ちながら仕事をしています。バーチャル生活者との対話でも、AIの進化が激しすぎて、例えば“バーチャルストプラ”のようなものが登場した時に、「自分は果たして本当に必要とされるのか」ということを真剣に考えなければならないと感じています。
だからこそ、クライアントの課題や事業にフィットしたマーケティング戦略 にいかに仕立て上げられるか。生活者の無意識のインサイトをどこまで深く捉えられるか、 AIを組み込んだ事業グロースのための仕組みをどう構築していけるか を意識しなくてはならないと思います。

木下
「生活者発想プラットフォーム」で重要視しているKPIに「多技能化」というキーワードがあります。AIの進化によって、ストラテジックプラナーがクリエイティブまで含めた幅広い領域をカバーできるようになりつつある、ということです。
戦略の上流から実行の下流まで、0から100までの全体像を見渡せるようになれば、部分最適ではなく、事業全体の視点で語ることが可能になります。経営層や事業責任者と対等に渡り合い、並走できる存在。これこそが、これからのストラテジックプラナーが目指すべき“ネクスト・ストプラ像”ではないかと思います。

働き方が変わる今だからこそ、「ソフトスキル」が大事になる

井川
生活者のインサイトをもとに発想したクリエイティブや、心を動かす“シズル感”こそ、まさに博報堂の強みであり、手放してはいけない領域だと感じています。
今後プロダクトとして突き詰めるべきは、「妥当性の担保」に加え、「発想の拡張をどこまで支援できるか」という点にあると考えています。

木下
かつてオフィススイートやデザインツールの登場によって仕事の進め方が様変わりしたように、生成AIもいずれは「使えて当たり前」になるはずです。現在でも、調査データからその場でクラスターを作成してプレゼンしたり、AIで議事録を自動生成したりと、働き方は劇的に変わっています。
そのときに問われるのは、いかに生活者を見つめ、クライアントとの対話をどう設計するか。エビデンスを示しながら、互いのクリエイティビティを刺激し合い、さらにチームやブランドそのものを一歩前進させるアプローチを、異なる専門性を持つチームメンバーとの意識合わせをしながらどのように実現するかといった点です。
そうした人間ならではの「ソフトスキル」こそが、これからより一層求められてくるはずです。

※肩書は取材当時のものです

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  • 博報堂テクノロジーズ 執行役員 兼
    マーケティング事業推進センター センター長

  • 博報堂 ストラテジックデザインセンター ストラテジックプラニング局

  • ソウルドアウト マーケティングカンパニー マーケティングプランニング本部アクティベーションディレクター

  • Hakuhodo DY ONE グロースコンサルティング本部 第一グロースコンサルティング局 第二グロースコンサルティング部 部長

  • 大広 デジタルソリューション本部 データドリブンプランニング局 データソリューショングループ

  • 読売広告社 マーケットデザインユニット インダストリーコンサルティングセンター

  • 博報堂テクノロジーズ マーケティング事業推進センター開発推進一部