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プラットフォームと共創する「生活者インサイト」の捉え方 vol.2~ターゲットのタイムラインを想像する。Instagramで求められる、生活に溶け込む広告
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プラットフォームと共創する「生活者インサイト」の捉え方 vol.2~ターゲットのタイムラインを想像する。Instagramで求められる、生活に溶け込む広告

X、Instagram、TikTok、YouTube――いまやプラットフォームは単なるメディアを超え、生活者の感情や行動がリアルタイムに交錯する「生活インフラ」へと進化しました。
そこで求められるのは、クリエイティブにおける“二刀流”の視点です。ブランドの意志を届け、中長期的な資産を築く「ブランディング」。そして、緻密な設計によって、ダイレクトなビジネス成果を生み出す「ビジネスパフォーマンス」。本連載では、プラットフォームの特性を知り尽くしたエキスパートと博報堂クリエイターの対談を通して、刻一刻と変化する生活者のインサイトをいかに捉え、社会の中に熱狂的な「うねり」を作り出していくのかを解き明かします。第2回は、MetaでInstagramを手掛ける担当者と博報堂のクリエイターが、今どのようなクリエイティブがユーザーに受け入れられ、心に残るのかについて語り合いました。

永久 眞規 Meta 日本法人 Facebook Japan エージェンシーパートナー
杉山 芽衣 博報堂 クリエイティブディレクター

「インスタ映え」から、日常をシェアするプラットフォームへ

―まず、Metaの永久さんにうかがいます。最近のInstagramの動向や、ユーザーの特徴的な変化について教えてください。

永久
世界では現在、36億人のデイリーアクティブユーザーがいます。日本でも、FacebookとInstagramのユーザー数はマスに近い規模まで成長しており、特にInstagramはエンゲージメントの高さが特徴的です。
使われ方で言うと、動画コンテンツが滞在時間の60%以上を占め、中でもリールだけで約50%に達しています。といっても全員が縦型動画に移行しているわけではなく、静止画が好きな人は静止画を中心に見ていて、タイプが分かれてきた印象です。

―「インスタ映え」という言葉もすっかり定着しましたが、いまはまた違う段階に来ているということですか?

永久
そうですね。以前は「このスポットはインスタ映えする」といったモチベーションが高かったと思いますが、いまはむしろ、ストーリーズやリールで日常に近い形をシェアするのが主流になっています。作り込まれたビジュアルより、自然体の空気感に共感が集まっていますね。

―ユーザーにとって、等身大の自分が好きなものや欲しいものを見つけられる場所になってきているイメージでしょうか。

永久
まさにその通りだと思います。前提として、この数年で、検索よりもソーシャルで商品やサービスを探す人が増えています。データ上でも、人々が新しい商品やブランドを発見する場所としてソーシャルが1位になっていて、中でもInstagramの傾向は特に顕著です。
たとえば、誰かが投稿しているリップを見て「欲しいな」と思ったら、そのままInstagram内で商品を調べ、公式アカウントからECに飛んで購入まで完結する、といった形です。私たちはInstagramを「好きと欲しいをつなぐ」プラットフォームだと捉えています。

出典: 2018年調査はGlobalWebIndex、n=475,000(中国を除く全世界)/2024年調査はGlobalWebIndex、n=955,000(中国を除く全世界) 

杉山
いちユーザーとして、Instagramは本当に解像度が高いと実感しています。
私がハイブランドを数多くフォローしていることや、派手な柄やカラフルな服を多く見ていることをアルゴリズムが把握していて、好みに沿った提案をしてくれる。
広告でもオーガニック投稿でも、自分が出会いたかったものを的確に見せてくれる媒体になっています。
最大公約数的に「皆が好きそうだから当てる」という発想のSNSもありますが、Instagramは「この人に、この人が好きそうなものを当てる」という個人への精度が高いと感じます。これは広告を作る側としてもありがたいし、だからこそ嫌われずに完全視聴率も上がるのだと思います。

気分とライフスタイルから発想するプラニング

―そうした媒体特性を踏まえて、杉山さんはどのようにプラニングされているのですか?

杉山
「気分」を重視するようになっています。たとえば、欲しい炭酸飲料が決まっているときにInstagramで調べる人は、あまりいないですよね。でもその手前で、ユーザーが「何か飲みたい気分」のときに接触できると、とても効果的な媒体だと考えています。
そこが他の縦型メディアと違うところだと思います。
Instagramは「おもしろい動画を見る場」というより、「自分の生活に根付いている場」なので、ユーザーの「好き」という気持ちや「自分の生活」を軸にプラニングするようにしています。

―具体的には、どのように考えるんですか?

杉山
仮に紅茶のブランドを考えると、「紅茶が飲みたい人に当てます」という広告を作っても、飲みたいと意思決定した人はすでに銘柄も決まっていたりするので、SNSでアプローチできる確率はかなり低いです。それよりも、「夏の雰囲気の中でさわやかな紅茶飲料を楽しんでいそうな人」を、具体的に想像してみます。たとえば、海沿いのリゾートカジュアルなライフスタイルを送っている人、鎌倉や葉山が好きそうな人のタイムラインを頭の中に描いていきます。

―「ユーザーを想定して、その人のタイムラインを描く」というのは、どういうビジュアルや雰囲気の投稿に触れているかを考えるようなことですか?

杉山
そうですね、「絵」から発想するんです。CMはコピーや言葉から考えますが、SNSのクリエイティブは絵の方が先です。無音で見られることも多いですし、フィルターや色の雰囲気で「好きかも」と感じてもらうのがInstagramらしい入り方だと思っています。
また、時間帯の設計も欠かせません。ちょっと高いスイーツのような、働く女性へのご褒美的な商品を、昼間に配信しても意味がありません。会社帰りの電車の中や、帰宅後に「こういうときに食べたい、飲みたい」と思ってもらえるタイミングでアプローチする。生活者のライフスタイルを先読みして設計することが大事だと思っています。

フィードはランディングページ――Instagramの中で完結させる設計

―運用面では、どういった工夫が有効ですか?

杉山
フィード(投稿一覧)は、ブランドのランディングページだと考えています。いまはSNSで情報発信をしているブランドも多いので、気になった商品があったら、まずInstagramの公式アカウントを開いて、タグ付けされた口コミを見て、そこで情報収集が完結する事も多いかと。なので、商品説明をわかりやすくまとめた静止画を、ピン(固定表示)機能を使って上位3枠に常に置いておきます。

―なるほど、それが公式サイト代わりのような。

杉山
そうですね。縦型動画は認知・興味喚起のための入口として使って、インフルエンサーさんのタグ付け投稿からアカウントに誘導する。「詳細はこちら」でサイトに飛ばすのではなく、アカウントに来たら欲しい情報がすでにそろっている状態を作るんです。
タグ付けの公開設定は、オープンにすることも重要です。コスメやトイレタリー系は特にそう思いますね。Instagramでは、ネガティブなコメントがあっても、商品のファンが自然とフォローしてくれることがあるので、過剰に心配すると機会損失になることもあります。

―たしかに、Instagramは炎上しにくいイメージもあります。

杉山
あるヘアケアブランドが全成分を積極的に開示したところ、元美容師や元薬剤師など専門的なアカウントが高機能の成分に注目し、自発的に推薦し始めたことがありました。結果、ブランドから仕掛けなくても自然に話題が広がっていきました。もちろん、品質が良いことが前提ですが、「言ってもらえる土壌を整える」ことが大事な時代になっていると思います。

―そういう流れをInstagramでは作りやすいのですね。でも、それはなぜなのでしょうか。

杉山
やはり、Instagramはネガティブな感情よりも、「好き」という動機で閲覧される媒体だからだと思います。アルゴリズムの仕組み上、たとえば美容アカウントには、コスメやヘアケアに興味のある人たちが集まります。なので、企業の立場で商品の情報発信をするにも、安心して場を作れます。
永久
データ上でも、Instagramで見る広告をノイズと感じていないユーザーが60%以上という数値があります。好きなものと繋がる場所だからこそ、広告自体も楽しんで見てもらえているんだと思います。

出典:Meta Q1’2024 earnings/Ipsos Global Media Study, Japan, 2020 

スキップ対策より、「溶け込む」クリエイティブが重要に

―クリエイティブを作る上で、杉山さんが意識されていることは何でしょうか?

杉山
上下にバナーが貼ってあって、CMが中央にあるようなクリエイティブは、タイムラインの中で浮きますよね。いかにタイムラインの中に溶け込ませるかが大事です。
最近は、飛ばされないための工夫より「最後まで見てもらって、見た後に残るものにする」という方向にシフトすべきだと感じています。

―たしかに、広告も楽しめるものなら、他の投稿と同じ感じで見ることは多いですね。

杉山
動画広告は、かつては「開始3秒で商品を見せる」対策が鉄則でした。ですが、AIのパーソナライズが進んだいまは、嫌いなものが流れてくる頻度自体が減っています。なので、後半に商品情報を持ってきても視聴してもらえるケースが増えています。「最初に商品を出したい」という企業のニーズは依然としてありますが、ユーザーにまず違和感なく見てもらい、「見てよかった」と思ってもらえる設計の方がいまは効きますね。

――最後まで見てもらう前提だと、おのずと構成のポイントも変わりますね。

杉山
はい。たとえば、ブランドのトーン&マナーを一貫させる重要度も増しています。
生活者はいま、「なんか海の感じのやつ」「あのポップな感じのシャンプー」といった感じで、商品名より雰囲気で覚えています。だからこそ、フィードに投稿が積み重なるInstagramで世界観を統一して育てていくことが、長期的なブランド資産になると思っています。

メンソレータムのキャラクター「なーちゃん」を中心にした公式アカウントは、その実践例です。商品説明を前面に出さず、「おせっかいな優しさ」というブランドテーマを、小さなナースのキャラクターで表現し続けました。

杉山
すると、商品ラインナップが広がっていることや、他の競合ブランドとは違う世界観が、自然に伝わっていきました。フィードは情報を収集するサイトだと割り切って、いいねの数より、保存数を指標にしようとチームに提案することもあります。

生活者のタイムラインをどれだけ想像できるか

―最後に、今後に向けてトライしたいことを教えてください。

杉山
AIの進化もあって、天気・時間帯・気分にピタリとはまるクリエイティブを量産して届けることが現実的になってきています。CMでは、15種類のバリエーションを天気ごとに出し分けることなど絶対にできませんが、デジタルでInstagramなら可能です。生活者に寄り添った内容やタイミングで接触できたときに初めて、広告が受け入れられるのではと思っています。
ただ、アルゴリズムのパーソナライズの精度が高くなり、自分には自分の好きなものしか当たらなくなっているので、その点にはプラナーとして危機感を持っています。自分のタイムラインだけを見ていると、対象顧客の生活が見えなくなってしまいます。なので、家族や友人のタイムラインを見せてもらったり、自分とは違う人格設定で複数のアカウントを持ったりして、視野を広く持つようにしています。
他者のタイムラインをどれだけ想像できるかが、Instagramマーケティングの肝だと感じています。
永久
杉山さんがおっしゃった「他者のタイムラインを想像する」部分は、私たちがぜひクリエイターの方々に取り組んでいただきたいことでもあります。
最近、当社では「クリエイティブがターゲティングである」という言い方をしています。投稿でも広告でも、ユーザーの興味関心に合わないクリエイティブは、エンゲージメントが得にくくなり、結果的にリーチが伸びにくくなります。

―クリエイティブ自体が、ターゲットとするユーザーのタイムラインに流れるかどうかを左右するわけですね。

永久
その通りです。なのでますます、私たちプラットフォーム側と、クリエイティブ側の皆さんとの共創が大事になっていると感じています。
実際、アプローチしたいユーザーのインサイトとコンテンツが本当に合っているか、プランナーさんと一緒に追求できるよう、ブリーフ段階でのインスタグラム上でのユーザーインサイトの提供や、アルゴリズムの理解を深める勉強会もクリエイティブの皆様向けに実施させていただき、好評の声をいただいております。
今後はさらに、様々な形で連携を強めていきたいです。そのプロセスこそが、生活者に届くInstagram活用につながると考えています。

※肩書は取材当時のものです

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  • 永久 眞規
    永久 眞規
    Meta 日本法人 Facebook Japan エージェンシーパートナー
    エージェンシーパートナーとして博報堂DYグループを担当。前職では総合広告代理店でクリエイティブ・マーケティング・PRに従事しており、現在もCR局連携をリード。
  • 博報堂 クリエイティブディレクター
    世の中をウォッチしながら”リアルさ”をつねに意識した広告づくりにこだわる。
    TVCMからSNSの発信まで統合的かつ細部までこだわりつづけるプラニングがモットー。
    クリエイターオブ・ザ・イヤー2025メダリスト、ACCブランデッド・コミュニケーション部門 ゴールド/ACCフィルム部門 シルバーなど受賞。

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