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事業プラニングが目指す新たな広告会社の姿【vol.4】 広告会社とITサービスカンパニーがタッグを組む理由~博報堂×NTTデータ対談~
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事業プラニングが目指す新たな広告会社の姿【vol.4】 広告会社とITサービスカンパニーがタッグを組む理由~博報堂×NTTデータ対談~

現在、様々な領域でのデジタルシフトが進み、生活者インターフェース市場が次々と誕生しています。本連載では博報堂が目指す、新しい形でのクライアントの事業戦略・開発支援の姿に迫ります。
第四回は、2024年に協業開始を発表したNTTデータとの取り組みを紹介します。「サービス・アプリをより広く使ってもらうにはどうすべきか」「マーケティングにCRMのような要素を加えるにはどうしたら良いか」といったことを考えてきました。協業によるこれまでの成果や今後の展望について語り合いました。

山口 匠馬
NTTデータ 第一インダストリ事業本部 交通・観光・エンタメ事業部
第2ビジネス統括部 ビジネス担当 課長

内田 祐介
NTTデータ コンサルティング事業本部 コンサルティング事業部
ビジネス&サービスデザインユニット 課長

堀内 悠
博報堂 ストラテジックプラニング局 局長補佐

常廣 智加
博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラニングディレクター

井村 惇平
博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラニングディレクター

鈴木 研史郎
博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラナー

「顧客体験をいかに作り上げるか」が重要に

――今回はNTTデータと博報堂の対談ですが、このメンバーが協業するにいたった経緯について教えてください。

山口
2021年に、あるクライアントが運営する施設の来場者へのマーケティングで博報堂とともに共同提案したのが最初です。もともと、「デジタル技術を使って混雑を可視化する」というところからスタートしたのですが、徐々に「場内をより盛り上げるためにマーケティングの要素も取り入れよう」ということになりました。
クライアントは「デジタル技術を使って、ファンを盛り上げ、もっと事業を成長させたい」といった期待をお持ちでしたので、そうなるとNTTデータだけではクライアントの期待を大きく超えることが難しいと考えました。NTTデータも博報堂もそれぞれこのクライアントとビジネスをしていたので、両社の強みを掛け合わせて提供価値の拡大を図っていこうという流れになりました。

堀内
NTTデータが来場者のデータを取得するカメラなどのシステム・技術面を担当し、博報堂がマーケティングを担当しました。これ以後、博報堂のマーケティング知見に、NTTデータの高度なシステム実装力を掛け合わせることで、クライアントの期待を超える価値提供をより確かなものにするため、両社で積極的な協業を進めています。

――具体的にはどういうケースでしょうか。

井村
市場環境に伴い、私たち広告会社に求められる役割も、従来のような広告事業に留まらず、より広範なマーケティング領域へと広がっています。世の中の実態に合わせたマーケティングとは何かと考えると、1つの形としてサービス開発や、SNSやプラットフォーム上で発信するコンテンツ作りがあります。つまり「顧客体験をいかに作り上げるか」にこだわることだと思うんです。
顧客体験を考えるうえではコンテンツやサービスを見た人・使う人がどう感じるかが1番重要です。そのエクスペリエンスをいかに上げていくかというところに焦点を当てないと良い物は作れないと考えています。
常廣
それだけに、広告会社はCMに閉じないコンテンツ作りや、購買や決済に直結するようなサービス開発に関わり、体験価値をどう上げて行くかということにまでコミットしていくことが必要です。これ以外にもコーポレートコミュニケーションなども含め、多角的にクライアントに関わっていくことが大切だと考えています。
堀内
今は若い世代だけでなく私の世代も含め、SNSなどをはじめとしたのコンテンツで動く時代になっています。こうした変化に合わせたマーケティングとは何かを追求する必要があります。デジタル技術やサービス、システムの重要さが従来以上に高まっており、NTTデータの協力をいただいている状況です。

――NTTデータ側からは、どう見ていますか。

内田
我々は「BtoBtoC」と言われるビジネスを展開しているので、クライアントの先にいる生活者の方の行動をしっかりと踏まえてシステムやサービスを作り、常に変化させていくことがより重要になっています。だからこそ生活者の行動の変化を捉えることは重要です。

例えば、少し前までは検索サイトで商品を検索し、いろいろなECサイトに行って、比較してから購入するのが当たり前でした。しかし今は、AIエージェントにお勧めを聞いて、良いと思ったら提示されたリンク先のサイトで比較せずに買うことも増えている、というように行動が変化しています。当社として、よりクライアントの事業成長に貢献するには、生活者の動向をこれまで以上に早く深く捉えることが重要です。だからこそ、豊富な生活者データや生活者理解の手法を持つ博報堂の知見をお借りすることが、クライアントや生活者へのよりよい価値提供につながると考えています。

山口
クライアントの考えも変化してきたと思っています。以前であれば、「良いシステムができました」「システムの品質、コスト、納期がこれだけ改善しました」といったことをお伝えすると、クライアントに喜んでいただくことができました。しかし、それだけでは徐々にクライアントのご期待に応えられなくなってきているというのをビジネスの現場で実感しています。

当社の経営層も認識は同じで、徐々に「クライアントの事業成長にコミットしよう」という方針を強く打ち出すようになりました。それは即ち、クライアントに対する提供価値を拡大し続け、売上向上・ユーザー増加といった成果を創出する、ということです。そのために、デジタルをどう使えば成果が出るのか、ということを常に考えるようになっています。

広告会社に求められる「実装力」

鈴木
私は2022年入社なのですが、入社前に想像していた広告会社の仕事は、言葉づくりやイメージづくりなど、いわゆる構想に留まる領域でした。しかし、実際には、売り上げにどれだけインパクトがあるか、作り上げた構想をいかにビジネス実装していくのかなど、より事業に近いアウトプットまでを求められていると感じます。ストラテジックプラナーの役割としても、従来であればコンセプト作りに閉じていたところが、今は事業戦略から、サービスインターフェース設計、UI/UXのプラニングまで事業全体への職域拡張が必要になったのだろうなと思います。

堀内
今鈴木さんが話したように、今の時代、優れた構想や戦略を打ち出すだけではクライアントの期待を真に超えることはできません。生活者の行動変容を促すためには、「構想×実装」の高度な融合が不可欠です。広告会社として自らアウトプットまで作る、事業を動かし、社会実装で完遂する。こうした実体験に基づいた確かな知見があってこそ、クライアントやその先のユーザーに対して優れた価値を提供できるのだと考えています。
井村
博報堂は生活者発想というフィロソフィーのもと生活者の研究を進めてきました。一人ひとりを単なる消費者やデータではなく、矛盾や葛藤を抱える「生活者」として全方位から理解し想像することで、世の中の動きを生活者視点で捉え直す、といったことに長年取り組んできたのです。こうした生活者研究の知見を、構想はもちろん、実装に活かしていけるかが課題の一つだと思います。
堀内
我々のクライアントは、ユーザーの方と直接繋がっている、言い換えるとファンがいる企業ばかりです。そのファンの方に対して提供する価値をどう広げていくのか、ということについて、改めて考える必要があると思っています。現在我々がこのプロジェクトで推進しているアプローチとしては大きく2つあります。1つはNTTデータが手掛けているシステム構築の領域に、博報堂のマーケティングの考え方や生活者発想を加えさせていただくというもの。もう1つは博報堂が手掛けるマーケティングや戦略策定といった業務において、取得したデータの生かし方をNTTデータと一緒に考える、というものです。

サービスやアプリが使われる付加価値的要素をまとめた「6S Planning」

——生活者価値のデザイン手法である「6S Planning」について教えてください。

常廣
サービスやアプリを100個ほど選び、何故使われているのか、体験価値がどこにあるのかを要素分解して体系化したものが6Sです。6つの「S」が重要ということで、この名前にしています。サービスの使いやすさである「ストレスレス(利便性)」、ログインボーナスなど利用に伴う様々な優遇措置がある「スーペリア(優越感)」、ユーザーが予想しないようなお得なセールに巡り合えるといった「セレンディピティ(思いがけない幸運)」、自分の発信によってコミュニティに影響が及ぼせる「セルフィー(発信力)」、自分がしたことが社会貢献につながる「ソーシャル(社会貢献)」、そして自分のよく使う機能に絞ってカスタマイズができる「スータブル(適合性)」です。

サービスやアプリを作る際、この6つを満遍なく並べるというよりも、要素を分解することで価値の作り方を考える際のヒントになるのではないかと考えています。6Sで扱っている要素はクライアントから求められる基本要件には入っていない、付加価値のような要素ではあるため、抜け落ちてしまいがちです。そのため、こういったことを体系化することに価値があると考えました。

山口
私がSEだったころ、BtoBのシステムを作ることが多くありました。その場合、社内システムは社員の方にとって「使わなくてはならないもの」なので、選ばれるかどうかという視点はそれほど強くはありませんでした。ただ、今関わっているBtoBtoCのサービスはユーザーが生活者なので、選ばれ続けるものである必要があります。利便性や機能とは別のところで、ユーザーに意味を感じてもらう必要があるのですが、その際の生活者の心理のようなものの理解が、NTTデータにはまだ不足していると感じます。
内田
最近、当社のクライアントからは「5~10年後の顧客体験とそれを支えるデジタルサービスを構想したい」といったテーマのご相談が増えています。当社のアセットだけで魅力的な提言ができるケースもあるが、エンタメ領域のように生活者の心理が予測しづらいケースもあります。その解決に、博報堂が開発したサービス・アプリ構築についてのフレームワーク「6S Planning」が役立ちました。データを起点に、ユーザーや生活者に価値を感じてもらうものは何かを言語化することで、方向性が見えたのです。
山口
6Sの考え方を取り入れてサービスを分析し、「幸運感」「おもてなし感」といったワードが出てきた時に、生活者の心理を捉えて選ばれ続けるヒントが掴めたように感じました。

売り上げやブランド価値向上施策の複合的な価値に注目した「Authenticマーケティング」

堀内
6Sとは別の取り組みで、井村さんが中心となって進めている「Authenticマーケティング」についてもご紹介させてください。世の中に情報が増え、フェイクニュースも増え、情報の信頼性が問われている中で、”企業が伝えたいこと”=広告的なコンテンツはより信頼されづらく、忌避されやすくなってきています。その中で、生活者が見たくなるものは信頼できるもの、つまり地に足が着いた情報・コンテンツです。このような潮流を踏まえて、企業はどのようにマーケティングを実施すべきかと言うと”生活者が信頼できるもの”をしっかり見せていく事が重要です。現状の結論としては、事業やプロダクトの裏側、バックストーリーやバックステージを可視化するマーケティングが有効であると考えています。
企業の価値を信頼できる形で可視化する=本質的な(Authentic)価値創造が時代にあったマーケティングであり、広告会社という立場においてはクライアントの事業理解が非常に重要と考えています。

井村
サービスやシステムを扱っているNTTデータと組むことで、博報堂がこれまで携わっていたマーケティング領域に限らず幅広い事業領域の分析や掘り下げをより深くすることができますし、博報堂がこれまで培ってきたマーケティング知見や生活者発想の視点を使ってクライアントの幅広い事業領域をAuthenticマーケティングに落とし込み、価値を創造する・実装するといった循環を作れたらと考えています。 そして価値を実装する際は、6Sなども参照していきたいと思っています。実装先も重要で、全く新しいサービスとして作るのか、既存のサービスに付与するのか、といったことも適切に選んでいく必要があるので、それについてもNTTデータと協力していけたらと思っています。

このAuthenticマーケティングの取り組みを通じて、売り上げとブランド価値の向上のための施策は、「ブランド領域」「メディア領域」「システム領域」「プロダクト領域」の4つにパターン化できるのではないかという仮説を持つに至りました。それぞれの領域だけで価値を生み出しているというより、複合的に重なった時に生まれる価値が重要と考えており、今後はその複合的な価値を生み出すにはどういった施策を実装すれば良いかにつなげたいですね。

NTTデータも博報堂も、社会やユーザーへの価値を重んじる価値観は非常に近い

――博報堂は実装も含めたデジタル領域に、NTTデータはコンサル領域に、といった具合に業務領域を広げてきた企業だと感じます。そういった企業同士であっても、「ここはパートナーと組むべき」という考えに至った理由は何なのでしょうか。

山口
確かに事業領域を広げてきたことで、コンサル領域やシステム開発領域で競合に対して有利になってきたという大きな手応えはあります。成果にコミットすることに意識が向く社員も増えており、人材のレベルが高まっていると思います。一方で、さらに大きく提供価値を拡大するには、当社のリソースだけを前提にしてはいけないと考えます。特にエンタメ領域では生活者を理解するために社外の知見を掛け合わせる必要があると感じています。
内田
ここ数年ほどで、クライアントの経営層に対し「テクノロジー起点でビジネスをこう変えるべき」という提言・実装は出来るようになったと感じています。一方で課題感としてあるのは、より成果を創出していくうえで、クライアントと「将来にわたってファンにどのような体験価値を提供したいか」の共通認識を持てるかという点です。そこを博報堂と一緒に考えられることは、大きなメリットだと感じています。
堀内
博報堂の強みは、社会的な価値やユーザーの価値を起点に考えられることだと思います。だからこそ自分達でやってみることも大切だけれども、人と組んだ方がより良い物が生み出せる可能性があるならその方が絶対良いよね、と考えています。
内田
我々も「マルチベンダー」という特徴を持っています。クライアントに1番役立つのであれば当社だけで担う必要はない、という考えで、NTTデータと博報堂とが価値観が非常に近い部分はあると思いますね。

※肩書は取材当時のものです 

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  • 山口 匠馬
    山口 匠馬
    NTTデータ 第一インダストリ事業本部 交通・観光・エンタメ事業部
    第2ビジネス統括部 ビジネス担当 課長
    2008年NTTデータ入社。ERPパッケージ認定コンサルタントとしてSCMや大規模システム開発プロジェクトのマネジメント業務に従事。 2020年より現職にて、複数の大手エンタメ企業をクライアントとした新規事業創出、次世代CX構想、マーケティング、システム開発等の幅広いビジネスプロデュース業務に従事。
  • 内田 祐介
    内田 祐介
    NTTデータ コンサルティング事業本部 コンサルティング事業部
    ビジネス&サービスデザインユニット 課長
    2009年NTTデータ入社。決済・CRM・ECなどCX領域のシステム企画・開発運用に従事。近年は顧客体験×AIをテーマに、新規サービス・マーケティング業務・デジタルインフラ変革の提言~実装・成果創出までを伴走するコンサルタントとして、エンタメやメディア・通信・流通小売等の幅広い業種を支援。
  • 博報堂 ストラテジックプラニング局 局長補佐
    京都生まれ京都育ち。2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやDXソリューション開発など、広告会社の枠を拡張する業務がメインに。
  • 博報堂 ストラテジックプラニング局
    マーケティングプラニングディレクター
    福井県出身。2018年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、飲料・不動産のマーケティング業務を経験したのち、地域交通のサービス実装、自治体DXのプラニング、システム・サービス開発に取り組む。近年では、交通領域での自社ビジネスの開発を担う。
  • 博報堂 ストラテジックプラニング局
    マーケティングプラニングディレクター
    2018年博報堂入社。研究開発部門にて統計解析、機械学習を活用したマーケティング・ソリューションの研究開発に従事したのち、現部署に異動。マーケティングの既存フレームに囚われない生活者価値デザインを仕組み化するために、データ・メディアを活用したソリューション開発や外部企業とのアライアンス強化を推進。マーケティング業務の拡張に取り組む。
  • 博報堂 ストラテジックプラニング局
    マーケティングプラナー
    2022年博報堂入社。入社以来、マーケティングプラナーとして、コーポレートブランディングから商品PR、メディア戦略、CRM戦略まで広範に担当。多業界・外領域での経験を土台に、近年は、自社事業戦略や得意先サービス開発など実装領域に業務拡張する。

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