おすすめ検索キーワード
マーケティングシステムの今~マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.27】「戦略と実行のギャップ」を乗り越える。FDMが牽引する博報堂のマーケティングプロセスオーケストレーション
PLANNING

マーケティングシステムの今~マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.27】「戦略と実行のギャップ」を乗り越える。FDMが牽引する博報堂のマーケティングプロセスオーケストレーション

マーケティング活動において、データとテクノロジーが果たす役割は年々高まっています。データ基盤整備やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)活用、マーケティングオートメーション、AI活用といった言葉は、もはや特別なものではなくなりました。一方で、それらを「実際の事業成長」に結びつけられている企業は、想像以上に少ないのが実情です。本連載では、博報堂マーケティングシステムコンサルティング局(以下、マーシス局)のメンバーが、事業グロースに向けた「生活者発想×データ×テクノロジー」の挑戦について、日々現場で向き合っている知見や視点から発信していきます。

第27回は、近年多くの企業が直面している「戦略と実行のギャップ」という実行の壁を紐解き、戦略から実行までを一気通貫でつなぐ「マーケティングプロセスオーケストレーション」と、それを現場で体現する次世代の新職種「FDM(Forward Deployed Marketer)」の重要性についてお話しします。

連載一覧はこちら

柴田 優輔
株式会社博報堂
マーケティングシステムコンサルティング局
マーケティングプロセスコンサルティング部 部長 ビジネスデベロップメントディレクター 

1. 多くの企業が直面する「戦略と実行のギャップ」の壁

近年、多くのクライアント企業の宣伝・マーケティング・情報システム部門・事業部・経営企画担当者様とお話しする中で、「戦略と実行のギャップ」に関する切実な課題を頻繁に耳にするようになりました。
外部の専門家を交えて大規模なプロジェクトを立ち上げ、綿密な戦略やロードマップを策定し、最新のSaaSツールやデータ基盤を導入する。しかし、実際の運用段階に入ると、現場の既存業務フローとのすり合わせが難航し、マーケティング施策へとスムーズに連携できないケースが少なくありません。結果として、顧客体験の向上や、売上増加、顧客獲得コスト(CAC)の削減といった、本来目指していた具体的なビジネス成果に結びつけることに難しさを感じているのが現状です。
この問題の根本的な原因は、戦略と実行の間に横たわる「実行格差(Execution Gap)」にあります。戦略や業務を描くコンサルタント、システムを構築するITベンダー、そして実際に日々の施策を運用する現場のマーケターや営業が、それぞれ分断された状態で動いているためです。システムとしての正しさや業務の効率化ばかりが先行し、「生活者の心を動かし、ビジネスを成長させる」という本来の目的が置き去りになってしまっているのです。我々は、この状況を根本から打破しなければ、真の事業グロースは成し得ないと考えています。

2. 博報堂が提唱する「マーケティングプロセスオーケストレーション」

このような課題に対し、我々博報堂のマーシス局は、ブランドの持続的成長を実現するための独自のアプローチとして「マーケティングプロセスオーケストレーション」を提唱し、実践しています。
これは、従来分断されがちであった「マーケティングコミュニケーション領域」と「戦略・業務・ITコンサルティング領域」を完全に横断・統合するアプローチです。具体的には、以下の4つの領域を掛け合わせ、ビジネスデベロップメントディレクター(事業プロデューサー)が中心となって統合的なチームをプロデュースします。
① CX/EX改善(UXプランナー+PMによる顧客・従業員体験の向上) 
② システム改修(ITコンサルやSIer機能+PMによる基盤構築) 
③ 戦略/業務改善(ビジネス戦略・業務コンサル+PMによるプロセス最適化) 
④ CVR改善/マーコム(クリエイティブやメディアプランナー+PMを通じたコミュニケーション)

【図表①:マーケティングプロセスオーケストレーションの4象限図】  

コンサルティングファームやシステムインテグレーター(SIer)が参入しづらい「生活者の心を動かすクリエイティブ力・コミュニケーション設計力」と、我々が蓄積してきた「データ・テクノロジーの知見とシステム実装力」。これらを高い次元で融合させ、一気通貫で対応できることが博報堂の最大の強みです。我々は事業やデジタルマーケティングの戦略構築や業務制度設計から、実際のツール設定やCRM実運用や営業支援までを伴走支援する「実務家集団」として、クライアント企業の事業グロースに真摯に向き合っています。 

3. 実行格差を埋める次世代の鍵「FDM(Forward Deployed Marketer)」

この「マーケティングプロセスオーケストレーション」を現場で強力に推進し、我々が目指す次世代のコンサルティング領域を生み出すうえで、今、極めて重要な役割を果たしている存在があります。それが「Forward Deployed Marketer(FDM)」です。
昨今、テクノロジー業界やAIの社会実装の文脈において、顧客の現場に深く入り込み(Deployed)、システムの実装から運用、成果創出までを一気通貫で担う「FDE(Forward Deployed Engineer)」という職種が大きな注目を集めています。我々のコンサルティング案件において肝となっているのは、まさにそのマーケティング版である「FDM」の存在です。
FDMは、単なるマーケティング施策の運用代行者でも、ツール導入だけを行う技術者でもありません。クライアント企業の内部に深く入り込み、現場のリアルな摩擦や課題を肌で感じ取りながら、ビジネス/業務/IT戦略をAIも駆使しながら「動くシステム」や「実運用可能なワークフロー」へと変換するハイブリッドな専門家です。

【図表②:FDMの役割概念図】 

FDMは、データの断片化や組織間の壁を乗り越え、バラバラに存在していた情報を繋ぎ合わせます。そして、AIの活用やデータ基盤のチューニングを行いながらも、常に「この施策は生活者にとって価値があるか」「事業成果に直結しているか」という厳しい視点(Healthy Paranoia About Value)を持ち、アジャイルにプロトタイプを作り、改善の学習ループを回し続けるのです。 

4. 実務家集団による横断体制が生み出す「博報堂流コンサルティング」

FDMがハブとなり、3つの領域を横断した体制でご提供することで、近年我々は非常に多くのビジネスインパクトを創出しています。
例えば、あるクライアントの案件では、当初はマーケティングコミュニケーション(広告運用やプロモーション)の領域からご支援がスタートしました。しかし、顧客体験を本質的に改善し、CVR(コンバージョン率)を向上させるためには、裏側にある業務プロセスの見直しやITシステム・データ基盤の改修が不可避でした。
そこで我々は、FDM的なアプローチでクライアントの内部環境に深く入り込み、戦略・業務・ITコンサルの領域へと支援を拡張しました。分断されていたデータを統合し、営業現場のフィードバックを即座にマーケティングメッセージに反映させる仕組みを構築したことで、マーケティング全体のROIを飛躍的に向上させ、数億円規模の事業貢献を果たすことができました。結果として、単発の広告案件レイヤーでのパートナーから、中長期的な戦略や業務、ITパートナーとしての強固な関係性を築くに至っています。
これはまさに、戦略策定フェーズと実行フェーズの壁を越えた「博報堂流コンサルティング」の体現です。システムとしての正解を押し付けるのではなく、企業の文化や現場の運用リテラシーに寄り添い、実行可能な形にして泥臭く伴走する。この実務を通じたコミットメントこそが、

5. おわりに

これからのAI・データ時代において、マーケティングシステムはただ「導入すること」から「どう使いこなし、いかに速く組織として学習するか」が問われるフェーズに入っています。戦略と実行の分断を放置したままでは、いかに優れたツールも機能しません。
事業を真のグロースへと導くためには、全体を俯瞰してプロセスを最適化しビジネスを「オーケストレーション」する力と、それを現場の最前線で実行しきる「FDM」のような存在が必要不可欠です。
我々マーシス局は、これからも「生活者発想×データ×テクノロジー」を武器に、企業の事業グロースの壁を共に乗り越えるパートナーでありたいと考えています。本連載を通じて、我々が提供する「次世代のコンサルティング」の価値を少しでも感じていただき、新たな共創の機会が広がっていけば幸いです。

※肩書は取材当時のものです
 

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 株式会社博報堂
    マーケティングシステムコンサルティング局
    マーケティングプロセスコンサルティング部 部長 ビジネスデベロップメントディレクター 
    広告会社のマーケティングコミュニケーション全領域のPM、メディアプランナー/デジタルマーケティングプランナーを経て、博報堂の戦略・業務・ITコンサルティング領域に従事。ビジネス戦略策定からシステム基盤の構築、データ活用、デジタルマーケティングの実運用まで、領域を横断した統合的な事業成長支援を数多く手掛ける。テクノロジーの知見と生活者発想を掛け合わせた「統括PM/事業プロデューサー」として、クライアント企業の現場における実行課題の解決と成果創出に伴走している。

関連記事