「地方」「SNS」「AI」の掛け合わせから生まれる新しい価値 ──ソウルドアウトグループにJAPAN SELECTがジョインしたことの意味
博報堂DYグループのメンバーであり、全国の地方、中堅・中小企業の支援をしているソウルドアウトグループに、SNSを駆使して地域の情報を発信しているJAPAN SELECTが加わりました。このジョインの意味と期待されるシナジーについて、ソウルドアウトグループでメディアビジネスを担うメディアエンジン社代表の杉岡秀一と、JAPAN SELECT社代表の梅野涼太に語ってもらいました。
杉岡 秀一
メディアエンジン株式会社 代表取締役社長
ソウルドアウト株式会社 メディアカンパニー プレジデント
梅野 涼太
JAPAN SELECT株式会社 代表取締役
ソウルドアウト株式会社 メディアカンパニー 執行役員
「地方×動画×SNS」という独自のモデル
──はじめに、JAPAN SELECTという会社について説明していただけますか。
- 梅野
- 当社は、主にSNS動画の配信によって、地域の観光プロモーションやマーケティングを支援している会社です。そのエリアの観光スポット、飲食店、宿泊施設などの魅力を、InstagramやTikTokを通じて、国内外へダイレクトに発信しています。
──起業のきっかけについてもお聞かせください。
- 梅野
- 日本各地には、その土地の個性を映し出す豊かな営みや文化、資源、そして強い想いで産業や地域を守る人々が数多く存在します。しかし、その価値や担い手にスポットライトが当たる機会は決して多くありません。「地方の魅力をより多くの人に届けたい」という考えから、2022年1月、当時25歳でJAPAN SELECTを設立しました。現在はインターンを含めた約30名のメンバーとともに事業を展開しています。
──SNSで配信している動画コンテンツは内製しているのですか。

- 梅野
- 私たちは、全国各地で暮らし、地域への強い想いを持って情報発信されている方々と連携し、JAPAN SELECTのアンバサダーとして活動いただいています。
各地域のアンバサダーの皆さんには、コンテンツ制作にも携わっていただいています。その地域のことを最もよく知っているのは、そこで暮らしている人たちです。その人たちの視点で、各地の魅力を表現してもらうのが私たちのコンテンツ制作のコンセプトです。47都道府県のおよそ60人のアンバサダーと連携しています。
- 杉岡
- 地域の魅力を個人のSNSで発信している人はたくさんいます。しかし、その情報発信を会社としてマネジメントしている例はほとんどないと思います。全国のアンバサダーに自由な発想で動画を撮影してもらいながら、制作のレギュレーションを明確にしてクオリティをコントロールしていく。そんな独自のモデルをつくっているのが、JAPAN SELECTの大きな特徴です。
AI活用における一次情報の重要性
──JAPAN SELECTがソウルドアウトグループにジョインしたのは2026年1月でした。その経緯についてもお聞かせください。
- 杉岡
- 企業を支援し、そのポテンシャルを開花させていくことが、ソウルドアウトグループが掲げるミッションです。それを実現する戦略のひとつとして、これまでもM&Aを進めてきました。その中で出会ったのがJAPAN SELECTでした。
「SNSを駆使して地域の情報を発信する」というJAPAN SELECTのモデルは、これまでのソウルドアウトグループにはないものでした。メディアやコンテンツを独自に展開しているJAPAN SELECTの力と、ソウルドアウトグループがこれまで培ってきた全国規模のネットワーク力や事業ノウハウを組み合わせれば、今まで以上に企業の皆さんを力強くご支援できるはずだ。そう考えて、JAPAN SELECTにグループ参画を提案しました。
──ソウルドアウトグループは、「ローカル×AIファースト」という構想を掲げています。その構想にも見合ったM&Aだったのでしょうか。

- 杉岡
- おっしゃるとおりです。AI技術の進化は非常に速いスピードで進んでいますが、急速に進化する技術は、急速に均一化していきます。A社がつくったAIの仕組みは、翌週にはB社もつくれてしまう。また、C社が率先して導入したAIは、次の日にはD社も活用することができる。それが最新技術の世界です。AIの活用は必須だけれど、AIそのものでは優位性を生み出せない。では、何が差になるのか。それは「一次情報」の質と量だと僕たちは考えています。
──なるほど。仕組みが一緒なら、優れた一次情報があるかないかが差別化ポイントになるということですね。
- 杉岡
- そのとおりです。JAPAN SELECTには、アンバサダーの皆さんの力によって、地域の一次情報を集めることができます。その一次情報とAIを掛け合わせることによって、効率よく、オリジナリティのあるアウトプットを生み出すことができるはずです。現在、その実証実験を進めています。
- 梅野
- 自分の地元を愛していて、地元の情報を伝えていきたいという強い想いをもったアンバサダーがたくさんいます。私たちにできるのは、その想いを質の高いコンテンツへと昇華させるための「仕組み」を提供することです。ソウルドアウトグループに入ったことで、AIという新しく強力な仕組みを活用することが可能になりました。「ローカル×AIファースト」は、「想い」と「テクノロジー」のシナジーを生み出す構想でもある。そう私たちは捉えています。
メディアを活用して独自の一次情報を集める
──AIの活用には具体的にどのようなモデルがありうるのでしょうか。
- 杉岡
- やはり、キーワードになるのは「メディア」と「一次情報」です。例えば、僕たちが独自のメディアを運営することによって、そのテーマに関連する情報、専門的知識、専門家とのネットワークといった資産を蓄積することができます。それらの資産はすべて貴重な一次情報となります。その一次情報とAIを組み合わせることで、新しい事業やサービスを生み出していく。そのようなモデルが1つの基本になると考えています。
──外部メディアなどと連携しながらAIを使うという方向性もありそうですか。
- 杉岡
- もちろんありうると思います。地方の新聞社やテレビ局との連携もその1つとして考えられます。新聞社やテレビ局には、素晴らしい取材力、情報収集力があります。その力を駆使して獲得した一次情報を、AIを活用することによって、記事、映像、音声、SNSのコンテンツとして、一気に生成することも可能だと考えています。
また、多くのIP(知的財産)を保有する出版社にとっても、AI活用は有用です。例えば、原作やマンガをアニメ化や映画化する場合、一般的に数億円の製作費と3年から5年間の製作期間が必要とされます。それだけのコストを投じる以上、失敗は許されません。ですからこれまでは、収益が見込める作品を中心に映像化されてきました。
しかしAIを活用することで、おおむね10分の1の予算と期間で、原作やマンガのアニメ化や映画化が可能になります。それによって、クリエイターの活躍の場が広がるようになると考えています。つまり、IP活用の幅が大きく広がるということです。
そういったAI活用の支援にも今後は注力していきたいと考えています。
日本で暮らす外国人アンバサダーを起用した情報発信
──ソウルドアウトグループとJAPAN SELECTのシナジーから生まれるメリットを得意先にどのように提供していきたいと考えていますか。

- 梅野
- JAPAN SELECTがこれまで提供してきたサービスは、SNSによる情報発信にほぼ限られていました。ソウルドアウトグループの一員となったことで、デジタルマーケティングやブランディングといった多様なサービスを提供していけるようになること。それが大きなメリットの1つであると考えています。
- 杉岡
- サービスを提供できる幅も大きく広がりますよね。ソウルドアウトグループは、本社を含め全国に28拠点(2026年4月時点)があります。また、地域博報堂の拠点もあります。そういった拠点の得意先へ、それぞれの地域にしっかりと根差したSNSによる情報発信サービスや、質の高い一次情報をいかした「ローカル×AI」のサービスを活用していただけるようになると思います。
- 梅野
- もう1つ、JAPAN SELECTの「SNS×インバウンド」のサービスも、ソウルドアウトグループや博報堂DYグループの得意先にぜひご活用いただきたいですね。日本に興味のある外国人向けに、地方の観光情報コンテンツをSNSで発信していくサービスです。
そういったコンテンツをつくってくれるのは、日本在住の外国人アンバサダーです。外国人アンバサダーの皆さんは、日本という国や自分が暮らしている地域に対する愛着を持っています。また、自分の母国の人たちに対してどのような視点でアプローチするのが最も有効かもよく知っています。文化や宗教的背景をしっかり押さえながら、日本の地方の魅力を自分たちの同じ文化圏の人々に向けて、より効果的に発信することができるわけです。
また、地方の飲食店や宿泊施設などがすでに展開しているコンテンツを、海外の方たち向けにリメイクするといった取り組みにおいても、外国人アンバサダーの力が大いに発揮されます。
- 杉岡
- ソウルドアウトグループのビジネスには、インバウンドの視点はこれまであまり強くありませんでした。「SNS×インバウンド」のサービスが加わることによって、僕たちが得意先に提供できる価値はさらに大きくなると思います。
──SNSやAIを活用すれば、比較的低予算でのマーケティング支援も実現しそうですね。
- 杉岡
- 地方の小規模企業や個人店舗のマーケティングをご支援するケースは、今後間違いなく増えていくと思います。また、マーケティングだけではなく、人材獲得支援なども視野に入っています。さまざまな角度からビジネスをサポートしていくことによって得意先の事業が拡大していけば、さらに幅広いファネルでご支援できる機会が広がります。フルファネルでのサポートによって、得意先の成長を継続的に後押ししていくことが大きな目標です。
地方から日本を変えていきたい
──今後に向けた意気込みを最後にお聞かせください。
- 杉岡
- JAPAN SELECTという強力な仲間が加わったことで、「地方」「SNS」「AI」「インバウンド」といった要素を掛け合わせた、これまでになかったサービスを提供できるようになったことを全国の得意先に知っていただくこと。それがまずは重要だと考えています。ソウルドアウトグループ、博報堂DYグループの営業網によってその周知をはかり、新しいビジネスモデルを動かし始めるという目標を今年中に達成したいと思っています。
- 梅野
- 以前はリソースが足りず、やりたいことがなかなか実現できないというジレンマがありました。ソウルドアウトグループ、博報堂DYグループという大きな基盤を得たことで、今後やれることは格段に増えていくと思います。グループのメンバーと力を合わせながら、「地方から日本を変えていく」といった強い気持ちをもって、ビジネスを広げていきたいですね。
- 杉岡
- ソウルドアウトグループにおけるメディアエンジン(メディアカンパニー)の役割は、メディアを展開することや、コンテンツを生み出していくことです。優れたコンテンツをつくるには、クリエイター、インフルエンサー、アンバサダーといった方々の存在が欠かせません。JAPAN SELECTがジョインしてくれたことで、そういった人材が活躍できる場を広げていくこともできると考えています。

※肩書は取材当時のものです
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メディアエンジン株式会社 代表取締役社長
ソウルドアウト株式会社 メディアカンパニー プレジデント1984年生まれ。2007年に総合広告会社に入社。2010年に株式会社オプトに入社。2012年にソウルドアウト株式会社に出向、転籍し関西営業部部長として、大阪、京都、兵庫の3拠点を管轄。2017年に東京本社に転勤。EC支援一部部長、2018年7月に西日本統括本部長を経て、2020年メディアエンジン株式会社取締役に就任。2022年4月より現職。2022年8月よりCCO(=Chief Compliance Officer)を兼任。
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JAPAN SELECT株式会社 代表取締役
ソウルドアウト株式会社 メディアカンパニー 執行役員1997年生まれ。2022年1月にJAPAN SELECT株式会社を同志社大学在学時に創立し、同社代表取締役に就任。地域観光に特化したSNSマーケティング支援を中心に、SNSの運用代行やクリエイティブ制作に強みを持つ企業へと成長させる。2026年にソウルドアウトへ入社。同年より現職。


