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複雑化するBtoBマーケティングの処方箋──メディアとの「共犯関係」で課題解決を
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複雑化するBtoBマーケティングの処方箋──メディアとの「共犯関係」で課題解決を

クライアント企業が抱える課題はますます複雑化し、単発の広告出稿だけでは解決が難しくなっています。このような時代において、ビジネスメディアが持つ編集力やアセット、すなわち「メディアクリエイティビティ」をいかに活用するかが、BtoBマーケティング成功の鍵を握ります。本稿では、日経BPとニューズピックスのトップランナーである日経BP社 アカウントビジネスユニット長 林誠氏とユーザーベース 上席執行役員 NewsPicks Studios 代表 金泉俊輔氏を迎え、博報堂新聞雑誌局・局長の藤川修一郎がビジネスメディアとの新たな協業の可能性を探りました。

林 誠 氏
日経BP社 アカウントビジネスユニット長

金泉 俊輔 氏
NewsPicks Studios代表取締役CEO/ユーザベース上席執行役員

藤川 修一郎
博報堂
新聞雑誌局

専門性の「日経BP」とコミュニティの「ニューズピックス」

藤川
今回はメディアが持つクリエイティビティと、我々広告会社がいかに「共創」していくか、その最前線を紐解いていきたいと思います。まずはお二人のメディアが持つ武器や、向かう先についてお聞かせください。
日経BPは、長年『日経ビジネス』をはじめとする専門分野の媒体を多数展開してきました。ビジネス、テクノロジー、ライフスタイルなど、それぞれの領域に尖った読者がいるのが私たちの強みです。

これらの読者情報を「日経ID」という形で束ねることで、1100万人以上のビジネスパーソンを保有しています。業種や役職など精度の高いターゲティングで、届けたい人に的確に情報を届けることが可能です。
また、ほかの出版社にはあまりない特徴として、シンクタンク機能を持つ「日経BP総合研究所」があります。編集長経験者や各業界に知見を持った専門家が集まっており、彼らのコネクションや先見性を活かして、クライアントと共にイベントやコンテンツを作るお手伝いもしています。

金泉
ニューズピックスは「コンテンツとコミュニティの力でビジネスのハブになる」ことを目指す経済プラットフォームです。2013年に経済情報に特化したキュレーションメディアとして始まり、その後、オリジナルコンテンツを制作する編集部ができました。

特徴的なのは、ユーザーが実名でコメントをつけたり、そこで繋がったりするコミュニティ機能を最初から備えていた点です。現在、登録ユーザーは1000万人を超えています。
最近では、ニューズピックスという大きなコミュニティをさらに細分化したファンコミュニティの運営にも力を入れています。例えば、女性活躍やDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)をテーマにしたコミュニティは国内最大級に成長し、多くの企業に協賛いただいています。

企業の「言いたいこと」を読者が「求める情報」へ翻訳する編集力

藤川
クライアントの言いたいことと、読者が求めている情報。その間にあるギャップを埋める架け橋として、メディアのクリエイティビティが発揮されると思います。各社で工夫されている点はありますか?
私たちのようなメディアに今、強く求められているのは「翻訳する力」だと考えています。
企業が言いたいことをそのままストレートに書いても、「これを買ってください」というメッセージが強くなってしまいます。その事象や事柄をメディアの知見や文脈を織り交ぜて伝える翻訳力こそが、私たちが持つ強みであり、最も大事なことだと考えています。
金泉
ニューズピックスが特徴的なのは、インターネット上でPV(ページビュー)やインプレッションを追い求める戦いから距離を置いてきた点です。
例えば、私たちはニュース記事の分割を一切していません。なぜ多くのメディアが記事を分割するかというと、アドネットワーク広告を回してPVを稼ぐためです。しかし、ユーザーにとっては1本の記事のほうが読みやすい。私たちは常に、経済情報を求めるユーザーにとっての理想の見え方は何かを追求してきました。
だから、今でもプログラマティック広告はほとんど入れず、タイアップ記事や動画といったネイティブ広告が中心です。テーマによっては記事よりイベントのほうが伝わることもあります。そういった最適な手法を組み合わせ、クライアントに提案する考え方をしています。
例えばIT関連の読者層にAIを訴求する場合、誰もが読みたくなるような緩いタイトルをつけても結局は刺さりません。専門メディアとして特徴のある尖ったタイトル付けを行います。やり方は違えど、安易な手法に頼らないという点では似ているのかもしれません。

「ストーリー」を共創するパートナーへ。変化するクライアントの依頼

藤川
いま得意先とお話をしていると、メディアに求められていることや期待することが大きく変化してきている実感があります。皆さんのところに届くクライアントからのオリエン(依頼内容)は、ここ数年でどのように変化していますか?
一番変わったのは「ストーリーを作ってくれ」という依頼が増えたことです。
何かをプロモーションしたいとき、それを顧客に届けるためのストーリーが求められます。例えるなら、大根を売りたいクライアントに「おでんが食べたい」というニーズを喚起するような、調理方法まで含めた提案が必要になった、ということでしょうか。
商品やサービスのすごさを伝えるだけでは響かない時代です。それが社会課題とどう結びついているのか、といった文脈が重要になっています。全く新しいブランディングをしたいという要望もあり、以前、ある酒造メーカーとは、日本酒の広告でありながら製品訴求ではなく、完全に哲学に振り切ったタイアップ広告に挑戦したこともあります。
金泉
NewsPicksではマスに対する認知施策ももちろんですが、1年、あるいは3年といった長期間をかけて、企業のインナーブランディングや採用ブランディングにつながる動画施策に取り組む事例が増えています。
テレビCMよりも安価で、かつ長い尺を使ってしっかりとメッセージを伝えられるのが強みです。社内で繰り返し視聴されたり、採用活動で活用されたりするだけでなく、動画メディアなどを通じて広く社会にも届けることができます。特にBtoB企業からのご要望が年々増えていますね。
藤川
中長期にわたって特定の企業と共創することで、課題解決につながった事例があれば教えてください。
日経BP総合研究所が関わる「協業メディア」という取り組みがあります。あるIT大手のメーカーさんとは、数年にわたって特設サイトを運営しています。
彼らが伝えたい記事は月に1本ですが、それ以外にテーマに沿ったオリジナル記事も我々が制作・掲載することで、サイトに濃いファンをつけていきます。そして、年間を通じて育てたコミュニティを、最終的にはリアルイベントに集約させる、といった形です。こうした取り組みは1ヶ月や3ヶ月では実現できず、クライアントと共に学びながらPDCAを回していくプロセスが非常に評価されています。
金泉
象徴的な事例としては、某農機メーカー様と農業のイノベーションをテーマに共創しています。タイアップ コンテンツだけでなく、「GROUNDBREAKERS AWARD」という農業スタートアップ向けのアワードを 企画しました。
その結果、ニッチな領域にもかかわらず400社もの応募が集まりました。
これが一つのコミュニティとなり、次のイノベーションにつながっていく。アウトプットは記事や動画ですが、 その裏にはニューズピックス内に存在する「農業クラスター」ともいえるコミュニティがあり、 彼らをハブにすることで人が集まってくるのです。
コミュニティはどんどん強くなりますよね。
金泉
はい。読者やユーザーが持つ熱量こそが、私たちがクライアントに返せる一番の価値であり、エンパワーメントにつながります。PVや部数といった指標だけでは測れない熱量を、クライアントとメディア、そしてユーザーが一体となる「共犯関係」の中でどう作っていくかが、これからのメディアの役割になってくるのだと思います。

広告会社の役割は「川上」での共犯関係を築くこと

藤川
最後に、私たち博報堂のような広告会社のフロントと、今後どのように連携していきたいか、メッセージをいただけますか。
金泉
従来型の広告商品を売るのとは違い、私たちと組む仕事は正直、手離れが悪いです。ネイティブ広告やコミュニケーションをゼロから作っていくのは、個人情報を扱うこともあり大変です。
ですが、その大変なプロセスを一緒に乗り越えることで、最終的にクライアントに返せる熱量は大きく変わってくるはずです。ぜひ、私たちと「共犯関係」になっていただきたい。面倒なことを一緒にやっていきましょう。
私たちメディアに対するイメージは、まだ「広告枠を売る会社」というものが根強いかもしれません。しかし、先ほどの事例のようにお互いが熱量を必要とする取り組みでは、企画の「川上」の段階で一声かけて、混ぜてほしいのです。
ある程度、企画内容が固まった後で「この商品を絡められませんか?」と相談されると、私たちがお手伝いできる領域は狭くなってしまいます。そうではなく、企画の初期段階からご相談いただき、共に提案をぶつけていく。それこそが、これからの広告会社とメディアが築くべき関係性だと考えています。
藤川
業務効率化が叫ばれる時代に逆行するようですが、AIなどを活用して効率化できる部分は進めつつ、人間が介在すべき「川上」の相談に時間をかける。それによってマーケティングの効果は高まり、たとえ失敗したとしても、その知見は次の糧になる。メディアとの「共犯関係」を築くことこそが、複雑な課題を解決する糸口になるのだと、今日のお話で改めて確信しました。

なお、博報堂 新聞雑誌局では、ビジネスメディアがもつジャーナリズムの力をブランディングに活用する「ジャーナリスティックブランディング」ソリューションや、メディア独自のコミュニティ・読者IDがあるからこそできる「顧客化ソリューション」を、博報堂独自開発のものも含め、提供しています。
さらに今後も、パブリッシャーと連携してBtoB領域における対応力を強化していきたいと思っています。
本日はありがとうございました。

※肩書は取材当時のものです

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  • 林 誠
    林 誠
    日経BP社 アカウントビジネスユニット長
    1998年に日経BPへ入社。販売部に配属され、マーケティング業務を経験。
    2009年に統合マーケティング部へ異動し、広告企画・営業部門にて、主にIT、通信、スタートアップ領域を担当。広告を中心に、顧客開発、誌面企画、イベント運営などに従事する。
    アカウントビジネス3部部長を経て、2026年4月より現職。現在はアカウントビジネスユニットを統括し、企画・営業を推進している。
  • 金泉 俊輔
    金泉 俊輔
    NewsPicks Studios代表取締役CEO/ユーザベース上席執行役員
    雜誌ライターとして活動後、女性情報誌・女性ファッション誌編集を経て、週刊誌編集へ。『週刊SPA!』編集長、ウェブ版『日刊SPA!』創刊プロデューサーなどを務める。株式会社ニューズピックスへ移籍し、NewsPicks編集長、同社執行役員を経て、2021年1月より現職。
  • 博報堂
    新聞雑誌局
    1998年博報堂入社。雑誌局に配属され、雑誌を起点とした立体的な企画の立案・セールスを経験。2002年より営業局で、自動車や通信会社のメディア担当営業として、テレビ番組・新聞・雑誌媒体を活用したコミュニケーションの企画から実施までを担当。デジタルについては2002年時より担当し続け、予約型全盛時のPDCA作りにクライアントと共に従事。2016年に雑誌局に戻り、2025年4月より現職。

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