ヒット習慣予報 vol.422『半分生活』

ヒット習慣メーカーズの中川です。
酷暑が続いたと思ったら、三十度を切る日が続く。そうなるととても涼しく感じるから不思議です。涼しくなると外に出たくなるし、そうでない日は家に籠りたくなる。働き方もリモートワークがいいなと思う日もあれば、出社して仕事のリズムを整えたいと思う日もある。はたまた午前は会社で午後は自宅とかそういう折衷案もいいですよね。どちらかに極端に振れるのではなく、間を選んだり、半分だけ何かしてみたり。行ったり来たりするのが心地よい生き方なのかもしれません。そういう機運を感じつつ、今回のテーマは「半分生活」としました。世の中のべき論に縛られることなく、あえて「半分」を選択するという潮流です。
一つ目の事例は、「半ズボン通勤」です。
2018年ごろ、「スニーカー通勤」を広げる活動に関わっていて、そのときも賛否両論あったのですが、「半ズボン通勤」も大きな議論を生んでいるようです。SNSでは「社則で禁止されている」「すね毛はありかなしか」「気候が変わっているのだから服装も変わっていい」など様々な声が見られます。出社時だけ半ズボンで会社で着替える、タック入りやスラックス素材のキレイ目な半ズボンを選ぶ、これを機にすね毛ケアするなど、既に様々なスタイルが広がりつつあります。もちろんTPOはわきまえた方がいいとは思いつつ、こういう選択肢が広がること自体はいいのではないでしょうか。

二つ目の事例は、「半読書」です。
動画、ゲーム、音楽、SNSなど様々なコンテンツに囲まれる中、じっくり読書に時間を費やす余裕のない人も少なくないでしょう。実際に「読書」の検索数はここ5年で見ても低下傾向にあります(8月は読書感想文が宿題になる子どもたちが多く、急増するようです)。このような状況の中で、効率的に読書をする動きが増えています。具体的には、移動中に倍速で耳読書をしたり、要約サービスで概要をインプットしたり、気になる箇所だけつまみ食い的に読んだり。最初から最後までしっかり読まなくてはいけないという固定観念を壊して、自由に読書をする人が増えているようです。かく言う私も、図書館で気になった本をあれこれ借りて、パラパラめくって、気になる箇所だけ読んでメモするというつまみ食い的読書をよくやります。図書館だと買うわけではないので気が楽ですし、知識の幅が広がって楽しいのでオススメです。
▼「読書」検索量推移(過去五年間・2026年8月5日時点/日本)

出展:Googleトレンド
最後の事例は、「半ソロ旅」です。
旅行は誰かと行きたい。でも、ずっと一緒にいると、疲れてしまったり、時に喧嘩になったりすることも。そう思う人が増えたのか、一緒にいる時間と各自で過ごす時間を分けたハイブリッドな旅行をするスタイルが拡がりつつあるようです。例えば、昼間は別々に過ごしつつ、夜になったら現地の居酒屋に集合する、2泊3日の1泊目はそれぞれ異なる宿でゆっくり過ごし、2泊目に友人と合流して賑やかに過ごすなど。ソロキャンパーが集まるキャンプ場に一人で行く感覚も近いのかもしれません。私も仲の良い友人と旅行に行くとき、朝からランチまで一緒に過ごしつつ、その後は別行動して、晩御飯の時に合流するスタイルをやったりします。

では、なぜ「半分生活」は広がりつつあるのでしょうか。
一つ目の理由は、やはり「多様性の浸透」でしょう。今までは暮らし方、働き方、余暇の過ごし方含めて、画一的なべき論が強かったですが、社会全体において多様性が尊重されるようになり、今までの固定観念を超えた新たな選択肢が増えてきたことが考えられます。誰かの意見を気にすることなく、自分らしい選択を尊重する人が増えてきたのではないでしょうか。二つ目は「脱ストレス」です。日々の忙しさに加えて、コンテンツの種類も数も増えたことで、逆にそれに追われてしまい、結果的に疲れてしまう傾向が見られます。そんな中、完璧を求めて疲弊するのではなく力を抜いて無理なく続けることを望む人が増えているのではないでしょうか。
このように広がりつつある「半分生活」ですが、そこには新たなビジネスチャンスが広がっています。
「半分生活」のビジネスチャンスの例
■ 1泊目は完全ソロ部屋、2泊目は友人同士で繋がれるコネクティングルーム(または大部屋)を提供するホテルの「半ソロ旅宿泊プラン」の提供。
■ 週の前半と後半で異なる専門分野を学ぶことができる「ハーフ&ハーフアカデミー」の開校。
■ 週末は自家用車として使えて、平日は自動的にカーシェアで貸し出しがされる「ハーフカーシェアプログラム」の提供。
など
半分と言えば、少し前に「半農半X」という言葉が話題になりました。農業と好きなことを組み合わせる働き方で、とても素敵だなと思った記憶があります。これからは、働き方のみならず生き方として半X半Yのようなのが増えて行くかもしれませんね。一年の半分を山で暮らし残りを海で暮らす「半山半海暮らし」とか憧れるなあ。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
▼ New Urban Guerrilla 連載一覧
https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/series/new_urban_guerrilla/
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クリエイティブ局 チームリーダー
ヒット習慣メーカーズ リーダー
エグゼクティブクリエイティブディレクターメーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
ECDとして、広告のみならず商品、サービス、事業にいたるまで幅広い領域に携わっている。ヒット習慣メーカーズの延長で都市をもっと豊かにする活動「New Urban Guerrilla」の連載を始めたので、そちらも是非チェックしてみてください。


