おすすめ検索キーワード
「進化を続けるAaaSの現在地と次なる革新への挑戦」vol.2  購買ログからAIペルソナを生成。『Jitsulog Chat™』が実現する、ファネルを「逆上がり」させる広告プラニングとは
PLANNING

「進化を続けるAaaSの現在地と次なる革新への挑戦」vol.2  購買ログからAIペルソナを生成。『Jitsulog Chat™』が実現する、ファネルを「逆上がり」させる広告プラニングとは

博報堂DYグループは2020年より、広告産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)として、広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS(Advertising as a Service)」を掲げ、広告領域のイノベーションを推進しています。
テレビとデジタルを横断した成果の可視化や統合プラニングが新たな局面を迎える中で、広告を従来の「枠」としてではなく、広告主の事業成長に貢献する「効果」として捉え直すことを提唱するAaaSがどのように進化していくのか──本連載ではその現在地と挑戦に迫ります。

マーケティングファネルの下流に当たる「購買」に関するデータをどう有効活用するか。そんな現場の課題意識から生まれた新しいAaaSソリューションが「Jitsulog Chat™(ジツログ・チャット)」です。アクチュアルなデータからAIペルソナを生成し、ペルソナとの対話から得られた示唆を広告戦略などに活用していく──。そのコンセプトが実現した経緯と、それによってもたらされる価値について、担当者たちに話を聞きました。

連載第1回はこちら

(写真左から)
高橋 和歩
博報堂 プラットフォーマー戦略局

畠山 貴翔
博報堂テクノロジーズ 開発第2センター

山﨑 宏太
博報堂 プラットフォーマー戦略局 兼 ストラテジックデザインセンター PFデータハブ

アクチュアルな購買データから生成されるリアルなAIペルソナ

──この7月にAaaSの新しいソリューション「Jitsulog Chat™」がリリースされました。どのような機能を持つソリューションなのでしょうか。

高橋
ひと言で言うと、実購買ログデータを用いたAIペルソナを生成し、チャットボットとの対話によってマーケティングプラニングに活用できる、というソリューションです。生成したAIペルソナと対話をすることによって、購買に至った動機や商品に対する評価などを細かに把握することができます。複数のペルソナを生成することも可能で、クライアントのニーズに応じて何種類かのターゲットを生成し、チューニングをしながらどのペルソナにどのようなことを聞くかを決定していきます。

山﨑
これまでもデプスインタビューなどの対話を通じて生活者のインサイトを把握する方法はありましたが、ニッチな商材のユーザーを見つけるのに苦労したり、長時間のインタビューが難しいといった難点があったりしました。
しかしAIペルソナであれば、求めるターゲット像を生成することができるだけでなく、長時間にわたる対話が可能であり、人対人の間ではなかなか聞きにくい質問をすることもできます。

──「Jitsulog Chat™」で生成するAIペルソナは、リアルな生活者の代替になりうるのでしょうか。

山﨑
なりうると自信をもって言えます。「Jitsulog Chat™」のAIペルソナ生成に使われるのは、Amazonが保有する膨大な量のファーストパーティーインサイト(※)です。それをもとにして、非常に高い解像度の生活者像をつくり出すことができます。
また今後は、購買行動に基づいたアクチュアルデータだけではなく、博報堂DYグループが保有する生活者データや、クライアントのファーストパーティーデータを組み合わせることで、より多様な生活者像を再現していくことが可能になると考えています。
(※)ショッピングやストリーミングなどの履歴に基づく、個人が特定されない形で抽出・集約されたオーディエンスインサイト

──ペルソナとの対話の結果は、どのような施策に生かされるのでしょうか。

山﨑
現状では、クリエイティブ開発に生かすことを主に想定しています。例えば、Amazonで商品を販売しているクライアントが、Amazon内の広告のROAS(広告の費用対効果)を高めたりCPA(顧客獲得単価)を下げていきたいというニーズをお持ちだったとします。
商品の実購買データからいくつかのペルソナを生成し、ペルソナに商品の魅力や購買理由を尋ねていくことによって、これまで考えられていたのとはまったく異なる視点が明らかになることも少なくありません。その視点をクリエイティブに反映させて広告をつくり、運用していくことで、ROASやCPAを向上させる。そんな展開がありうると考えています。

現場の問題意識から生まれたソリューション

──ソリューションの開発の経緯についてもお聞かせいただけますか。

高橋
実購買データはこれまで、主にマーケティング施策の購買効果検証に使われてきました。このデータを、マーケティングファネルの上流、つまり戦略立案やクリエイティブなどの「マーコム領域」に使うことはできないだろうか──。そんな問題意識がはじめに現場にありました。
山﨑
そのような問題意識を受けて、まずはプラットフォーマー戦略局内で、購買データからAIペルソナを生成する仕組みのプロトタイプをつくってみようということになりました。クライアントにもご協力いただきながらPOC(実証実験)を行ったところ、広く活用できる手応えを得ることができました。

ぜひ汎用的なソリューションにしていこうという話になったのですが、プラットフォーマー戦略局には本職のエンジニアはいません。そこで、博報堂テクノロジーズの畠山さんに相談させてもらった──。そんな流れです。

畠山
博報堂DYグループ内の担当者が活用して、クライアントにレポーティングするためのツールであること。スピーディに仕上げてほしいということ。そんな話が最初にあったと思います。開発に当たっての技術的なハードルはそれほど高くはなかったのですが、複雑なペルソナ作成フローをシステム側で吸収し、ユーザーが簡単な設定項目を記入・選択するだけでペルソナ作成~チャットまでがスムーズにできるようにするための工夫は必要でした。
とくに苦労したのは、チャット時の添付ファイルの扱いと使いやすいUI(ユーザーインターフェース)をつくることでした。AIペルソナと会話するにあたりクライアントのマーケティング文脈をAIに理解させるためにさまざまな資料を添付することが求められるケースがあります。それが添付ファイルです。それを読み込む仕組みを読み込み精度とコストのバランスを取りながら検討することは1つのハードルでした。

UIに関しては、社内の担当者が使うツールであるとはいえ、デザインをシンプルにしすぎるとユーザビリティが下がってしまいます。しかし、プロのデザイナーに依頼する費用や時間はありませんでした。この問題は、「Claude Design」というAIデザインツールを活用することで解決しました。
はじめの2カ月で基本的な機能を完成させ、さらに2カ月くらいをかけて機能やデザインをブラッシュアップさせていく。そんな作業でした。

山﨑
現場の問題意識を理解してくれて、スピーディに開発を進めてくれるメンバーが近くにいることは本当にありがたかったですね。このような体制を柔軟につくることができるのが博報堂DYグループの強みであると、あらためて感じました。

「越境」と「ボトムアップ」の文化

──プロトタイプの段階から、いくつかの案件でこのソリューションを活用してきたとのことです。これまでの手応えについてお聞かせいただけますか。

高橋
すでに30近い実用例がありますが、クライアントや現場担当者からはたいへん高い評価をいただいています。例えば、ある商品の関心層ごとにAIペルソナをつくり、対話を重ねた結果をメッセージングに反映させて広告配信を行ったところ、すべての関心層においてCTR(クリック率)やROASが向上したという例もあります。
山﨑
本音を聞きたい生活者像を設定できるのがとても便利といった声もいただいています。社内の担当者やクライアントからのフィードバックをすべて細かに検証し、次の開発に生かしていきたいと考えています。
畠山
評価をいただけると、苦労して開発した甲斐があると感じます。具体的なフィードバックをいただけるのもありがたいことです。随時対応しながら、ソリューションのクオリティをどんどん上げていきたいと思っています。

──「Jitsulog Chat™」の開発と展開に発揮されている博報堂DYグループの強みをお聞かせください。

山﨑
2つあります。1つは、AIペルソナの生成にグループのフィロソフィである生活者発想が生かされていることです。生活者理解に基づいた僕たちならではの解釈を加えてチューニングすることで、より実際の生活者に近いペルソナを生成することができます。

もう1つは、先にも触れたように、現場と開発がワンチームとなって動く体制をつくれることです。これによって、新しいバリューを生み出し、それをクライアントに届けるサイクルをスピーディに回していくことができます。

畠山
とくに2点目については、僕も常々実感していることです。いろいろな部署が開発担当に気軽に相談して一緒に新しいものを生み出していける「越境文化」があるのが、博報堂DYグループの大きな強みだと思います。
高橋
僕は、「ボトムアップの文化」があることが博報堂DYグループの特徴であると考えています。現場のメンバーが自由な発想で新しいアイデアを出し、現場が主導して具体的な形をつくっていくことができる。それができる広告会社は決して多くはないと思います。その文化から生まれたのが「Jitsulog Chat™」です。

データドリブンなテストマーケティングの仕組み

──担当者やクライアントからのフィードバックを得て、あらためて見えてきた「Jitsulog Chat™」の可能性はどのようなものですか。

山﨑
「Jitsulog Chat™」が生み出す大きな価値は、ロウワーファネルからアッパーファネルに「逆上がり」ができることです。「購買」というロウワーファネルで獲得したインサイトを、より上流のクリエイティブやマーケティング戦略に生かしていけるのがこのソリューションの特徴です。その「逆上がり」の射程をさらに拡大していけるという手応えを得ています。
高橋
マーケティングファネルの上流領域での拡大はもちろん、ファネルのさらに上流である商品開発まで「Jitsulog Chat™」の射程を広げることも可能だと思います。
山﨑
Amazonのファーストパーティーインサイトから生まれたAIペルソナの意見を元に新商品を開発し、それをAmazonでテスト販売する。同時にAIペルソナとの対話に基づいた広告展開を行いながら、ユーザーの反応を検証する──。そんな展開もできそうです。そうすれば、まさにデータドリブンなテストマーケティングの仕組みが出来上がることになります。

──最後に、今後の具体的な展開についてお聞かせください。

高橋
先ほども話に出たように、博報堂の生活者データや、その他のさまざまなデータを掛け合わせて、より多角的なペルソナを生成していくことが次のステップになりそうです。Amazonのデータクリーンルームである「Amazon Marketing Cloud」を活用すれば、それを実現することができます。
畠山
データクリーンルームを使うことになれば、システムも複雑化していくことになります。複雑化に対応しながら、これまで以上の使いやすさを実現していくことが開発の次のチャレンジになりそうです。
山﨑
ソリューションの機能の拡張やブラッシュアップに取り組みながら、グループ内での活用事例を増やしていきたいと考えています。戦略プランナーやクリエイティブだけでなく、さまざまな職種の人たちにこのソリューションを使ってもらい、フィードバックをもらいながら、クライアントに提供できる価値をさらに拡大していきたい。そう考えています。

※肩書は取材当時のものです

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 博報堂 プラットフォーマー戦略局
    2024年博報堂DYメディアパートナーズ入社。
    Amazon・楽天の媒体担当として、Prime Video AdsのローンチやJitsulog Chat™の開発など、各媒体における広告セールス推進・ソリューション開発業務に従事。 現在はAmazon・楽天に加え、TVer・ABEMA・Netflix等のOTTが担当媒体に追加。全体のセールス戦略の策定やソリューション領域での推進をリード。
  • 博報堂テクノロジーズ 開発第2センター
    2015年に金融系SIerに入社し、金融系システムやAIプロダクトの開発に従事。2023年4月より博報堂テクノロジーズに入社し、デジタル領域の各種プロダクト開発を担当した後、Tele-Digi AaaS(for Reach & FQ、Jitsulog Chat™) の PO/PM を担当。
  • 博報堂 プラットフォーマー戦略局 兼 ストラテジックデザインセンター PFデータハブ
    2015年博報堂DYメディアパートナーズ入社。
    デジタルメディアプラナーを経験した後、データを起点にした統合メディアプラニングに従事。現在はプラットフォーマー戦略局とストラテジックデザインセンターを兼務し、PFデータ等のメディアアセットをマーケティングに活用するプラニング手法やソリューション開発をリード。 マーケティング領域においてプラットフォームを横断的に活用するビジネス開発を推進。