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協業によって広がるインフルエンサーマーケティングの可能性 ──デジタルネイティブ世代とのコミュニケーションを強化するDAC
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協業によって広がるインフルエンサーマーケティングの可能性 ──デジタルネイティブ世代とのコミュニケーションを強化するDAC

博報堂DYグループの一員で、デジタルマーケティングを幅広く手掛けるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下 DAC)は、2019年5月、ショートムービープラットフォーム「TikTok」に特化したインフルエンサーマーケティングを展開するRERAISE(以下、リレイズ)との資本業務提携を始めました。インフルエンサーマーケティングの最新事情とこの協業の狙いについて、3人のキーパーソンに語ってもらいました。

■「自然」であるがゆえの訴求力

中本
インフルエンサーマーケティングの始まりは、ブログが登場した00年代の半ばと言われています。様々なブログサービスが台頭する中で、多くの読者をもつアルファブロガー/パワーブロガーが登場し、そのブロガーたちが商品・サービスに関するレビュー記事を書くという形式が、現在に至るインフルエンサーマーケティングのスタートであると考えられます。
その後YouTubeが登場し、続いてインスタグラムが普及することによって、動画や写真を使ったコミュニケーションが盛んになり、カリスマ的なインフルエンサーが次々に現われました。ブログ、YouTube、インスタグラムと、ツールやプラットフォームが進化するのに合わせて、インフルエンサーマーケティングも段階的に進化してきたと言えます。
砂田
もっとも、インフルエンサーを「影響力のある人」と捉えれば、ラジオパーソナリティや映画俳優、テレビタレント、ミュージシャンなどもインフルエンサーということになります。そういった人たちが言及した商品や着ている服が流行するというのは何十年も前から見られる現象で、それも一種のインフルエンサーマーケティングと考えていいと思います。
そのような広義のインフルエンサーマーケティングと主にデジタルメディアを使った現在のインフルエンサーマーケティングの一番の違いは、影響力が可視化できるかどうかです。ブログならPV、YouTubeなら再生回数、インスタグラムなら「いいね」やシェアの数です。そのような数値によって影響力が量的に把握できるようになったのが、デジタル時代のインフルエンサーマーケティングの大きな特徴です。
生活者との距離感が比較的近い人たちが、生活者が日常的に接するデジタルメディアの中で、自然に商品やサービスの情報を発信する。生活者はそれを自然にコンテンツの一つとして楽しむ。そんな「自然さ」がインフルエンサーマーケティングの強みと言えると思います。
中本
「自然」ゆえの訴求力があるということですよね。情報にリアリティが増して、「この人が勧めているならその商品を調べてみよう」または「買ってみよう」という動機が生まれやすくなります。
砂田
もう一つ、「人」がメディアになるというのもインフルエンサーマーケティングの特徴です。インフルエンサーと呼ばれる人たちは、特定のメディアではなく、YouTube、インスタグラム、Twitterなど様々なプラットフォームで情報を発信しています。さらに、それらの情報はフォロワーを経て拡散します。クライアントから見れば、一人のインフルエンサーがいわば商品のアンバサダーとなっていろいろな場所に露出してくれるので、費用対効果が非常に高い手法と言えます。

■急速な成長を続けるインフルエンサーマーケティング市場

デジタル産業の市場調査などを手掛けているデジタルインファクト社の発表では、2018年のインフルエンサーマーケティングの市場規模はおよそ219億円です。インターネットマーケティング全体がほぼ2兆円ですから、その1%くらいという計算になります。割合からすればまだ少ないですが、2017年が約175億円であることから、かなりの成長率で伸びていることがわかります。
砂田
どこからどこまでをインフルエンサーマーケティングに含めるかという判断には難しいところもあります。例えば、出版社とのタイアップイベントなどにインフルエンサーを呼ぶ場合の費用は219億円の中には含まれていないものも多いと思われます。ですので、実際の市場規模はもっと大きいと考えられます。
現在インフルエンサーマーケティングがとくに力を発揮しているのは、ゲームなどのマスメディアだけではなかなかリーチしにくい若年層がターゲットの商品です。YouTubeのゲームの実況動画は人気コンテンツの一つで、そのようなコンテンツを活用して商品を訴求していく手法が定着しつつあります。
砂田
ほかに、コスメや料理など、映像で疑似体験ができる商材にもインフルエンサーマーケティングが向いていますよね。特にコスメの場合は嗜好性が細分化していて、例えば、自分と同じ肌質のインフルエンサーが勧めている商品を買うといったケースが増えています。ターゲットと嗜好性。その2つがインフルエンサーマーケティング活用のポイントになると思います。
中本
最近では、インフルエンサーが発信した情報の二次利用という手法も一般化しています。有名なインフルエンサーに紹介されたことを店頭POPで訴求する、あるいはインフルエンサーのお勧めコメントをパッケージに記載するなどといった方法です。

■10代をターゲットにしたマーケティングを強化する

砂田
この5月にDACはリレイズとの資本提携を発表しました。リレイズは、ショートムービープラットフォームであるTikTokに特化し、堅実にインフルエンサーを育成している企業です。それだけでなく、コンテンツをどのように展開すれば効果が見込めるかということを科学的に分析しています。僕たちは何よりもまず、その姿勢に共感しました。
TikTokのユーザーの多くはデジタルネイティブ世代です。DACはこれまでもインフルエンサーマーケティングに注力してきましたが、デジタルネイティブ世代へのコミュニケーション施策が手薄な層でした。その点で、TikTokに精通し、かつビジネスに向かう姿勢や方向性に共感できるリレイズと提携することで、この分野のビジネスを成長させられると考えました。
中本
リレイズの独特なところは、キャスティングのみではなく、TikTokを軸としたコミュニケーション展開の企画も自社で手掛けている点にあります。お互いにいろいろなアイデアを持ち寄れば、これまでなかったことを実現できる。そんな期待もあります。
TikTok自体のメディアパワーも魅力です。
TikTokの急成長の要因として、機械学習技術が非常に優れていることが一つ挙げられます。いろいろな動画を閲覧しているうちに、自分の趣味や嗜好性に合った動画がフィードに流れてくるようになります。ほかのプラットフォームにもある機能ですが、そのマッチングの精度が非常に高いのがTikTokの特徴です。
もう一つは、動画の加工や投稿が簡単にできることです。ユーザーが気軽に情報を発信し、気軽にシェアすることができる。それが広い世代に人気を集めている理由だと思います。
中本
TikTokには10代のユーザーのみならず、20代、30代のユーザーも多く存在しており、中高生の母親世代が一緒に楽しんでいるケースもあります。教育やペットのような家族をテーマにしたコンテンツや、英会話など母親世代の学びにフォーカスしたコンテンツ展開にも向いていると言えますね。

■インフルエンサーマーケティングの効果指標を確立したい

砂田
DACはインターネット広告の黎明期にスタートした企業で、これまで20年以上にわたってデジタルマーケティングのノウハウを蓄積してきました。デジタル業界におけるネットワークの広さという点でも国内有数であると自負しています。一方、リレイズにはインフルエンサーのキャスティング力とコンテンツの企画力があります。その両者の強みを掛け合わせることで、クライアントがインフルエンサーマーケティングに寄せる多様な期待に応えることができると考えています。
「#Challenge(ハッシュタグチャレンジ)」というTikTokの企画型広告商品において、広告枠の販売だけでなく、そこで配信するコンテンツの企画制作までを含めたパッケージ商品をリレイズと一緒に開発し、展開しています。
今後は、単発的な企画の実施で終わるのではなく、TikTok上でユーザーとの継続的なコミュニケーションを実現できるアイデアを提案していきたいですね。今回のリレイズとのパッケージ商品の中ではTikTokの公式アカウントを取得し、動画を定期的にアップしていく施策のサポートもさせていただきます。
中本
TikTokの中にファンコミュニティをつくっていくということですね。さらに、TikTok内のみではなく、マスやODM(アウトドアメディア)との連動によってコミュニティを拡大させていくという方向性もあり得ると思います。
砂田
動画によるコミュニティづくりは、これから開拓していくべき領域です。今後はコンテンツマーケティングと呼ばれる分野とも重複していくことになるでしょう。インフルエンサーやコンテンツを軸にした多面的で継続的な展開に大きな可能性があると考えています。
インフルエンサーマーケティングの市場は今後どんどん拡大していくし、クライアントからのニーズも多様化していくと思います。クライアントの要望、それを実現する表現、そしてプラットフォームの機能。この3つをうまくマッチングさせて大きな成果を出していきたいですね。
中本
TikTokを活用したマーケティングには、まだスタンダードなビジネスモデルがありません。リレイズとのパートナーシップによって、汎用的なビジネスモデルを確立していくことも今後の目標の一つです。
砂田
いかに効果指標を明確化していくかが、現在のインフルエンサーマーケティングの課題です。インフルエンサーのフォロワー数を単純に基準にしていたのが従来だとすれば、ターゲットとしている生活者に本当に情報が届いているかどうかを、いろいろなデジタルツールを使ったり、メディアから提供されるデータを分析したりすることで明確にするのが現在であると私たちは考えています。TikTokでの取り組みを通じて、そのような指標を作り、客観的で根拠のあるプランニングを確立していきたいと考えています。
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  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
    メディアソリューション本部 副本部長
    編集プロダクション、デザインブティックを経て、2005年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。動画広告の開発、マスメディアのデジタル事業開発を担当。新規事業開発を推進する傍ら、グループ企業、出資先の取締役も兼任。現職では、デジタル領域におけるブランディングにつながるコンテンツマーケティングや、マスメディアのデジタルトランスフォーメーションをプロデュースする。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
    メディアソリューション本部 シニアマネージャー
    2007年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。動画メディアのバイイングや、テレビ×デジタル連動企画立案・動画広告商品開発などに携わった後、現在はメディアソリューション本部にて様々なコンテンツメディアのバイイング・商品開発を担当する部門を管掌。2018年6月よりグループ会社の株式会社プラットフォーム・ワン取締役も兼務。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
    メディアソリューション本部 第一メディア部長
    2013年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。入社当初からYouTubeをはじめとする動画メディアのバイイングや商品開発を担当。現在は動画メディアやキュレーションメディアのバイイングや商品開発、インフルエンサーマーケティングの推進に従事。