連載【ソウルドアウトのポテンシャル 最終回】デジタルの力をクライアントの成長の力に──中小・ベンチャー企業の課題をデータやテクノロジーで解決するアンドデジタル
日本全国の中小・ベンチャー企業を支援するソウルドアウト。そのグループ企業の1つが、デジタルやデータ領域のビジネスを担うアンドデジタルです。2022年4月に博報堂DYグループの一員となったソウルドアウトグループにおけるアンドデジタルの役割、ビジョン、ビジネスモデルなどについて、若き二代目社長・津田翔平に語ってもらいました。
津田 翔平
アンドデジタル 代表取締役社長
クライアントともに限りない成長を
──アンドデジタルの成り立ちについてお聞かせください。
- 津田
- 創設は2021年7月で、ソウルドアウトグループの中で最も若い会社です。ソウルドアウトの主要なビジネスはインターネット広告事業ですが、ソウルドアウトが主戦場としているSMB(中堅・中小企業向けビジネス)市場には、インターネット広告以外の支援を必要としている企業が少なくありません。営業活動にデータを活用したい。データの力で売り上げを向上させたい──。そんなニーズに対応していくことを目指してスタートしたのがアンドデジタルです。現在の社員は25名ほどで、全国およそ130社程のクライアントとお取引きをしています。
──具体的なビジネスモデルについてご説明ください。
- 津田
- データを使った売り上げ向上支援がアンドデジタルのメインのビジネスです。MA(マーケティングオートメション)、SFA(営業支援システム)によるデジタル活用支援(データ化)、CDP(顧客データプラットフォーム)、BI(ビジネスインテリジェンス)等のデータ利活用を通して、マーケティング・営業活動の自動化や顧客獲得のプロセスの高度化を行い、効率的に売り上げを上げる仕組みづくりをお手伝いしています。
──ツールは自社で開発しているのですか。
- 津田
- 外部ベンダーのプロダクトを活用しています。どのプロダクトも非常に素晴らしい機能を持っていますが、どれも高度な設計・構築の専門性が必要です。それらを連携させ、クライアントの事業に合った仕組みを設計・構築するのがアンドデジタルの強みです。このモデルの最大のメリットは、コストを大幅に下げられる点にあります。多くの場合、大規模なシステム開発には年に数億円の予算が必要になりますが、僕たちのサービスは年に数百万円でのご提供が可能です。
──なるほど。まさに地方、中小・ベンチャー企業向けのサービスモデルということですね。クライアントにはどのような業種が多いのですか。
- 津田
- さまざまな業種のクライアントにサービスをご提供していますが、広告以外の施策が必要だったり、社内のデータ管理に課題をお持ちの企業はBtoBやリード獲得系(問い合わせから営業マンが介在するモデル)に多いので、BtoBやリード獲得系企業が主要な顧客となっています。
──アンドデジタルのようなビジネスを展開している企業はほかにもあるのでしょうか。
- 津田
- 大手企業向けのサービスを提供している会社は、SIerやコンサル会社をはじめ多数ありますが、SMB向けということでは、ほぼ唯一だと思います。独自のポジションを獲得していると自負しています。
デジタルとクライアントの業務をフィットさせる
──地方、中小・ベンチャー企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、企業ごとにかなり差がありそうです。支援の難しさを感じることはありませんか。
- 津田
- おっしゃるように、デジタルツールはExcelしか使っていない企業や、ほかのデジタルツールを導入したけれど使いこなせていないといった企業は少なくありません。また、SMB企業がDXを進めるのは、ご予算の面で難しいのではないかといった意見もたまに耳にします。
しかし、これまで多くのクライアントを支援する中で僕が感じてきたのは、地方、中小・ベンチャー企業こそDX成功の可能性が高いということです。企業の規模が大きくなると、マーケティングやセールスなど部門ごとの独自の動きが必要となるケースが多いので、データを統合的に活用するのが難しいという問題に直面することになります。それに対して、SMB企業は規模的にもマネジメント的にもシステムやデータの統合を進めやすく、経営者の強い意志があればDXを完遂することが可能です。
もちろん、僕たちが構築したシステムやデータ環境を現場で最初から使いこなせないケースもあります。その場合は、アンドデジタルのメンバーがクライアントの業務に伴走し、ツールやデータ環境をチューニングしていきます。その業務を僕たちは「フィッティング」と呼んでいます。デジタル×データと業務をフィットさせるということです。そのフィッティングの期間を得て、最終的にはクライアント側で自走していただくことを目指しています。
──クライアントの事業を深く理解することも必要になりそうですね。
- 津田
- その通りです。ツールやデータ環境を構築しても、それがクライアントの事業成長に結びつかなければ意味がありません。事業を理解し、必要があればビジネスプロセスを改善するお手伝いもします。ツールは合理的に構築されるものなので、ビジネスプロセスをツールに合わせることで業務の合理化が進むケースも多いですね。デジタルとビジネスを一体のものと捉える視点が必要だと思います。
──経営レイヤーの方々とお話をするケースも多いのでしょうか。
- 津田
- よくあります。クライアントの事業内容だけでなく、経営者のビジョンや企業カルチャーを理解することも大切なので、経営層の皆さんとの対話はとても重要だと思っています。僕たちの仕事にはデジタルスキルだけでなく、コミュニケーション力が求められると言えますね。
──クライアントからの信頼を獲得するために必要なことをお聞かせください。
- 津田
- クライアント自身が気づいてない課題を掘り起こし、それに対する解決策をご提案することだと思います。「ここにこんな問題があったの?」「この業務も自動化できるの?」──。そんな「驚き」を引き出すことが僕たちの役目です。その驚きが信頼に変わると考えています。
成果を見える化するビジネスモデル
──アンドデジタルのサービスブランドである「カシカ」とはどのようなものですか。
- 津田
- データを集約し、利活用できるデータ環境をつくり、見える化するサービスが「カシカ」です。サービス名はデータの可視化を意味しています。
例えば、インターネット広告を配信した場合、どのくらいの資料請求があったかをデータから把握することは可能ですが、それが売り上げにどのくらいつながっているかを明らかにすることはできません。なぜなら、広告配信データと企業側の売り上げデータが紐づいていないからです。「カシカ」を活用いただければ、広告の配信データを企業側の売り上げデータと連携させて、ダッシュボードでその関係を見える化するといったことができます。
──これまでのクライアント支援の実績についてお聞かせください。
- 津田
- いろいろな実績がありますが、比較的多いのはマーケティングとセールスのデータ環境構築です。ネット広告で獲得した問い合わせから売上までのデータを統合、利活用を支援します。また、デジタル導入がされておらずデータが存在しない場合はデジタルツールの導入から行い、得意先製品の販売率を向上させるケースなどがあります。先ほどご説明したように、僕たちはツールやデータ環境をチューニングして実績に繋げていくことを目指しています。ですから、僕たちの支援によって成果がまったく出ないということは基本的にありません。未導入企業が多いからこそ、成果に繋がりやすいと考えています。
──ソウルドアウトグループ内では、どのような連携の形があるのでしょうか。
- 津田
- お取引きのあるクライアントのほぼ半数は、ソウルドアウト経由でおつき合いが始まった企業です。そういった営業連携のほか、ソウルドアウトが広告を担当し、僕たちがローワーファネルのデジタル施策を担当するといったコラボレーションも多いですね。また、同じグループ企業であるSO Technologiesのクライアントに「カシカ」をご提供するケースもあります。
──アンドデジタルはソウルドアウトグループ全体のポテンシャル向上にどのように寄与しているとお考えですか。
- 津田
- 広告・マーケティング会社に求められるのは、主に「クリエイティブ」「戦略」「データ」の3つの領域におけるクライアント支援だと考えております。このうちの「データ」を担っているのがアンドデジタルです。この領域のビジネスを僕たちが牽引することによって、ソウルドアウトグループ全体の成長をドライブできると考えています。
グループ全体のデジタル力を高めるために
──ソウルドアウトグループが博報堂DYグループの仲間になったのは2022年4月でした。博報堂のグループカルチャーについてどう感じていますか。
- 津田
- 博報堂DYグループにジョインしてから、研修などでたくさんの人と話をしましたが、とてもオープンで優しい人ばかりという印象を持ちました。一方で、一人ひとりの個性がとても強く、組織がそれを阻害していないとも感じました。
──具体的な連携も進んでいるのでしょうか。
- 津田
- 博報堂DYグループのクライアントのデータ活用を支援させていただくケースが増えています。また、コンペに一緒に参加させてもらうことも多いですね。僕たちがチームに加わることによって、クライアントに提供できる付加価値を高めていくことができればいいと思っています。
それから、人材交流も進んでいます。博報堂DYグループのテクノロジー系の横断組織である博報堂テクノロジーズにアンドデジタルのメンバーを派遣して、今まで扱う事の無かったマスデータなどの知見も上げる事が出来ています。
──博報堂DYグループのフィロソフィである「生活者視点」や「パートナー主義」についてのお考えをお聞かせください。
- 津田
- どちらにもとても共感できますね。「生活者視点」はデータ活用との親和性が高いフィロソフィです。生活者が本当に必要としている情報を届けるには、データ活用が欠かせないからです。また、パートナー主義はまさに僕たちのビジネスの基本でもあります。クライアントのデータ活用をトータルに支援するには、ツールベンダーやほかのプレーヤーとのパートナーシップが必要です。
──今後、博報堂DYグループの一員として、どのようなことに取り組んでいきたいですか。
- 津田
- グループのデジタル領域にはまだまだ伸びしろがあると感じています。グループ内に分散しているアセットを統合し、グループ全体のデジタル力を高めるために助力したいと思っています。僕たちは博報堂DYグループの新参者ですが、新参者だからこそ見えること、言えることがあるはずです。博報堂には、どんな意見でも受け止めてくれるおおらかな雰囲気があります。積極的に意見を伝え、グループ全体の力を伸ばして、クライアントに提供できる価値を高めていきたいと思っています。
意思決定者として成長を続けたい
──アンドデジタルとしての目標と、ソウルドアウトグループとしての目標。その両方をお聞かせください。
- 津田
- 地方、中小・ベンチャー企業のデジタル×データ活用支援のトップランナー──。2025年度までにその認知を全国に広めていくことが当面の目標です。認知を拡大し、指名でのオーダー数を増やしていきたいと思っています。
一方のソウルドアウトグループには「中小・ベンチャー企業が咲き誇る国へ。」というミッションステートメントがあります。僕はこのステートメントが心底好きで、これこそがまさに僕たちのビジネスの根幹であると信じています。デジタル×データの力によって、SMB企業が咲き誇るお手伝いをすることで、ソウルドアウトグループ全体の底力を上げることができると考えています。
──最後に、個人としての目標をお聞かせください。
- 津田
- 僕がアンドデジタルの二代目社長に就任してから1年ほどが経ちます。この1年間はとても楽しく、充実していました。もともと経営者になることが目標で、自分が打ち込みたい仕事に大好きな仲間たちと取り組むことができました。
しかし、経営者としてはまだまだだと思っています。今はまだ50人以下の会社を引っ張る力しか僕にはありません。今後会社の規模が大きくなって、売り上げや利益が拡大したときに意思決定者としてどうふるまえるか。世の中に大きなインパクトを与える意思決定ができるか──。それがこれからの僕の課題です。
現在僕は30歳ですが、あと少なくとも40年間は経営者でありたいと思っています。これからの長い経営者人生の中で成長を続け、いつか博報堂DYグループを代表するような意思決定者になりたい。そう思っています。
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津田 翔平アンドデジタル 代表取締役社長