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ヒット習慣予報 vol.313 大人の「遊び直し」
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ヒット習慣予報 vol.313 大人の「遊び直し」

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの中村です。
4月も中盤に差し掛かり、新入社員と話す機会も増えてきました。彼ら彼女らの新しいスキルを習得したり経験を積んだりしようとする前向きな姿勢に、毎日刺激を受けています。そんな今回は、大人になってからの「新しい学びや経験」について書こうと思います。

大人の「学び直し」はいっときブームになり、書店にいけば大人向けの中学英会話や数学の学び直しの本がたくさん並んでいた時期がありました。この「学び直し」の潮流は、やがてDXの波の影響を受け、新しいことを学びこれまでとは違う職業や幅広い分野への挑戦を促進する「リスキリング」として昇華されました。 このように、大人になっても、新しいスキルや経験を取り入れようとする潮流は、世界的にどんどん大きくなってきています。

Google Trends「reskilling」検索量推移(2005年3月以降・すべての国)

今回は、そんな潮流の中で生まれた、大人の「学び直し」ならぬ「遊び直し」という新しい習慣をご紹介しようと思います。
「遊び直し」とは、子どもの頃に学んだこと/学べなかったことを大人になって学び直すように、子どもの頃に夢中になって遊んだこと/遊べなかったことを、大人になってから改めて経験してみようとする行動習慣のことです。今まで子どもならではの“特権”であった遊びが、大人にも浸透しようとしています。そんな兆しが垣間見える中で、僕自身がやってみたい!と気になっている3つの「遊び直し」をご紹介させてください。

1つ目は、「大人の積み木遊び」です。
幼稚園の頃に室内で遊んだ積み木の「遊び直し」になります。先日僕の友人は、「姪に積み木をプレゼントしたら、姪そっちのけで自分が小一時間積み木に没頭してしまった」と、目を輝かせながら語っていました。どうやら積み木には、大人も夢中になるほど、人の創造性を駆り立てる魅力が詰まっているようです。今では、子どもと大人が一緒になって遊べるような積み木や、大人こそハマるオシャレで難易度の高い積み木も販売されています。

2つ目は、「大人の昆虫採集」です。
子どもの頃に夢中になった虫取りの「遊び直し」になります。出逢った虫を記録・管理できるスマホアプリが登場したことで、真剣に昆虫採集をしていた子どもの頃のように、大人も世の中の生き物との出逢いを楽しむことができます。アプリ利用者のレビューを見てみると、「外出することが以前よりも楽しみになった」「より一層虫に興味が湧いてきた」と、日常の中で知的好奇心を満たせることが魅力のようです。子どもと一緒に虫取りを楽しむ親だけでなく、自然やアウトドア好きの大人のなかにも、このような昆虫採取アプリや生き物図鑑アプリを利用し始めている人がいるようでした。

3つ目は、「大人の絵本読み」です。
子どもの頃に誰しも魅了されたであろう絵本の「遊び直し」になります。絵本好きの大人のコメントを見ると、「優しい言葉と絵のタッチに癒やされる」「心の奥に訴えかけてくるメッセージにハッとする」と、大人になった今の自分だからこそ視点で、子どもの頃とは違う形で絵本を楽しんでいるようです。大人も絵本に夢中になれる「絵本カフェ」という施設も増加しています。僕も今まで印象に残っている絵本をいくつか振り返ると、考えさせられるようなものが多く、絵本の世界は奥深いなと改めて実感しました。

このように、子どもの“特権”でもあった子どもならではの遊びが、大人たちの間でも浸透している兆しが見て取れます。では、この習慣が広がりつつあることにはどんな背景や理由があるのでしょうか?考察してみました。

ひとつは、今の大人には「没頭できる時間」がより必要になってきていることです。
「タイパ」という言葉が流行るくらい、常に時間に追われる感覚を持つ現代の大人たちは、その終わりのないマラソンレースから一時的に解放させてくれるような「時を忘れて夢中になる」という体験を心のどこかで求めているのではないでしょうか。子どものように無邪気に没頭することができる「遊び直し」は、そんな大人たちにピッタリなのかもしれません。

もう一つの背景は、「当事者として世界に触れたい」という気持ちが世の中全体で高まってきていることです。
スマホやタブレットでのコンテンツが充実し、映画やドラマ、動画など、第三者として世界を傍観する受け身体験が蔓延した現代において、当事者として自分自身が直接世界に触れる体験の価値が高まってきているのではないでしょうか。子どもの遊びにおいて、自分自身はいつだって“傍観者”ではなく“当事者”です。大人であっても、“当事者”として世界と接続し、この世界に新たな発見をもたらすことができる「遊び直し」は、現代にとって貴重な体験であるといえるでしょう。

最後に、大人の「遊び直し」に関するビジネスチャンスについて、考えてみました。

大人の「遊び直し」のビジネスチャンスの例
■裸足で砂を踏みしめながら堂々と砂遊びとお酒を楽しめる「砂場遊びBAR」を開店
■オシャレなインテリアにもなる本格木製ミニチュア「大人のおままごと」を販売
■都会でも日常で生き物探しが楽しめる「生き物探索ナイトツアー」サービスを提供

今回、コラムを書いてみて、子どもの遊びには人間に本来備わっている本能的な欲求が詰まっているなと思いました。
もしこの記事を読んで、久々に遊んでみたいと思ったことや、子どもの頃に遊び残したことが思いついたら、「遊び直し」をしてみてはいかがでしょうか。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 株式会社博報堂 MD事業ユニット ストラテジックプランニング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2022年博報堂に入社。教育とサイエンスと人に興味があり、化学の教員を経てマーケターに。ゲームや漫画が好き。