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「人的資本」情報を求職者に効果的に伝える ―人的資本経営を促進する採用ブランディング
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「人的資本」情報を求職者に効果的に伝える ―人的資本経営を促進する採用ブランディング

2022年8月に内閣官房から「人的資本可視化指針」が公表され、今年度から有価証券報告書に人的資本に関する情報を記載することが求められます。SNSデータを活用した採用広報・マーケティング支援を行う博報堂グループのNo Companyは、今年1月に「企業の人的資本経営を促進する採用ブランディング」の支援を開始しました。
No Company 代表取締役社長の秋山真が、なぜ今企業は人的資本経営に取り組むことが求められているのか背景を紐解きながら、今回開発した新ソリューションをご紹介。サービスの概要やNo Companyならではの強み、今後の展望などを語りました。

株式会社No Company 代表取締役社長
秋山 真

なぜ今、「人的資本経営」なのか

──No Companyでは今年1月に、「人的資本経営を促進する採用ブランディング」の支援を開始されましたね。「人的資本経営」という言葉を耳にする機会が増えていますが、なぜ今注目されているのでしょうか。

秋山
人的資本経営とは、人材を大切な「資本」として捉え、それを最大化することで企業価値の向上を目指す経営のあり方を意味します。昨年(2022年)、内閣官房から「人的資本可視化指針」が公表されました。今年度からは、有価証券報告書に人的資本経営に関する情報を記載することが大手企業約4000社に義務づけられる見込みです。

こういった動きの背景にあるのが、日本企業における従業員エンゲージメントの低さです。残念ながら、日本企業の従業員の皆さんの仕事への満足度や働くことの幸福度は、海外の企業と比べて非常に低いと言われています。それを打開するためには、人材の価値を見直し、働きやすく成果の出やすい労働環境をつくる必要がある──。そんな課題意識が、人的資本経営を可視化すべきであるという議論につながっていると考えられます。

──どうして日本企業は従業員のエンゲージメントが低いのでしょう。

秋山
日本では、働き方や雇用のあり方が以前と比べて大きく変わっているわけですが、それに対応しきれていない企業が多いということなのだと思います。働き方に関する社内制度や環境を変えなければならないという意識はあるのだけれど、それをまだ実現できていないということではないでしょうか。現在は変化の過渡期にあって、今後はポジティブな方向に向かっていくと僕は考えています。その動きを後押しするのが僕たちの役割です。

──人的資本経営に関する情報開示は、企業にとって新しい取り組みとなります。課題もありそうですね。

秋山
情報開示が求められるのは、「⼈材育成」「エンゲージメント」「ダイバーシティ」などの7分野・19項⽬あります。問題は、その情報を世の中にどう伝えていくかということです。企業は、単に有価証券報告書に情報を記載するだけでなく、人的資本にまつわる経営方針を求職者、従業員、投資家といったステークホルダーに広く伝えることで企業価値の向上を目指していかなければなりません。では、具体的にそれをどう実現すればいいか。まったく新しい取り組みですから、そのノウハウをもつ企業は現在のところほとんどないのではないでしょうか。

企業の「スタイル」を、伝えるべき人に最適な形で伝えていく

──その課題を解決するために今回、No Companyが培ってきた採用広報やマーケティングのノウハウを活かして、人的資本経営を促進する採用ブランディング支援を開始されたのですね。その概要を教えてください。

秋山
まず、No Companyのビジネスには、大きく2つの柱があります。1つは当社オリジナルのソーシャルリスニングツール「THINK for HR」の提供です。これは、SNSの投稿データを収集・分析して、どのような投稿や記事が求職者から支持されているのかを明らかにするものです。それによって求職者のインサイトを把握することが可能になります。さらに、その「THINK for HR」のデータをもとに、コミュニケーション戦略立案や、メディアプランニング、コンテンツ制作などを支援するのが、もう1つのビジネスの柱です。

今回開始した採用ブランディングサービスは、そのフレームワークを人的資本のテーマに特化してご提供します。SNSからデータを収集する際のキーワードを、人的資本の中で特にクライアント企業が重視しているテーマにフォーカスして設定。「THINK for HR」を活用して、そのキーワードに関し求職者の間で特にどのような情報が共感を集めているかを分析しながら、その結果を求職者に向けたコンテンツや広告に反映します。
SNSの投稿データからクライアント企業の状況を客観的に明らかにしたうえで、人的資本に関する取り組みや企業の魅力を求職者に効果的に伝えるSNS広告や動画、記事といったブランディングコンテンツを企画し、制作、配信にいたるまでワンストップで支援していきます。

──No Companyは「スタイルがいきる社会へ」というミッションを掲げていますね。その視点はこのソリューションにもいかされていますか。

秋山
働く人たちが自分の価値観を大切にして、多様なライフスタイルやワークスタイルが尊重される社会づくりを目指すこと。それが「スタイルがいきる社会へ」という言葉に込めた僕たちの思いです。その思いは、まさに今回のソリューションにも反映されています。

企業が人的資本経営の7分野・19項目からテーマを選び、それをステークホルダーに向けて発信していくということは、自社の「スタイル」を定義し、その価値を世の中に広めていくことにほかなりません。それぞれの企業の独自のスタイルを、伝えるべき人に最適な形で伝えていくことを支援するのが、このソリューションの本質的な機能であると考えています。

多くの人がいきいきと働ける世の中にするために

──今回の「人的資本経営を促進する採用ブランディング」では、KPIをどのように設定するのでしょうか。

秋山
No Companyが取り組んでいる採用マーケティング支援では、多くの場合大きく2種類のKPIを設定しています。まず短期的KPIとして、求職者とのタッチポイントでどのくらいの接触数があり、発信したコンテンツがどれくらい見られたか、実際に入社してくれた人たちにそのコンテンツがどんな影響を与えたのか?を定量と定性で把握していきます。一方、中長期的KPIとしては、内定承諾率やブランドリフトを指標にしたり、入社後3年間のパフォーマンスなどを理想の指標とすることもあります。

今回のソリューションにおいても同様に、短期的KPIと中長期的KPIの2種類が設定できると考えています。もちろん、クライアントのニーズに応じてより細かなKPIを設定することも可能です。

──「人的資本」なので、ROI(投資対効果)の向上がKPIになるという考え方もありそうです。

秋山
長期的な視点に立てば、そのようなKPIも当然ありうると思います。とはいえ、足元の課題として最も顕在化しつつあるのは、「人的資本経営に関するコミュニケーション」です。まず僕たちは、それを全力で支援していきたいと考えています。

──最後に、今回開発された「人的資本経営を促進する採用ブランディング」支援にかける思いをお聞かせください。

秋山
自分たちの企業で働くことにはどのような価値があるのか。従業員が心地よく働けるためにはどのような環境が必要なのか。現在働いている従業員にはどのような魅力があるのか──。そういったことを、あらゆる企業が真剣に考えなければならない時代になっています。重要なのは、考えるだけでなく、それを世の中に発信し、自社の競争力を高めていくことです。その活動に貢献していきたいと思っています。

5年前にNo Companyの前身となる事業を立ち上げたときも、2021年にNo Companyを起業したときも、常に僕の心にあったのは、商品やサービスを売るために培ってきたマーケティングのノウハウを、多くの人がいきいきと働けるようになるために使いたいという思いでした。その思いは現在もまったく変わっていません。人的資本経営にまつわるコミュニケーションを支援することによって、それぞれの企業のスタイルが社会に広まり、そのスタイルにマッチした人材が集まり、いろいろな人が活躍できる場が増えていく。そしてその結果として、多くの企業の従業員エンゲージメントが向上していく──。そう僕は信じています。今回開発したソリューションを1社でも多くの企業にご提供していくことで、そんな流れをぜひ実現させていきたいですね。

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  • 秋山 真
    秋山 真
    株式会社No Company 代表取締役社長
    2016年に、No Companyの親会社であるスパイスボックスに新卒入社。2年間のデジタルマーケティングプロデューサーの経験を経て、2018年に採用コミュニケーション事業を立ち上げ。2021年10月にNo Companyを設立し、代表取締役社長に就任。SNS起点の採用ソリューションを開発し、企業のオンライン採用やDXを支援。働き方や価値観の多様化に合わせて、企業の採用活動が進化できるよう独自のソーシャルリスニングツールである『THINK for HR』を活用して、Z世代やSNS世代に刺さる採用コミュニケーションの立案や実行などのサポートを行う。