おすすめ検索キーワード
【第13回】単なるPDCAに留まらない、
PLANNING

【第13回】単なるPDCAに留まらない、"事業変革につながるECコンサルティング"とは

ショッパーマーケティング・コマース領域を専門とする組織「コマースコンサルティング局(CC局)」に迫る本連載。
生活者にとって身近な購買接点であるECは、単に売上を伸ばすためのPDCA運用に留まらず、得意先の事業戦略そのものを左右する重要な経営基盤として、存在感を増しています。ECを通じて蓄積される購買・行動データに加え、ID-POSや購買パネルなど多様なデータをいかに次の打ち手に繋げるか、そして生成AIの急速な進化によってECプラットフォームでの購買体験は刻々と変容しています。
第13回となる今回は、ECコンサルティング部の山﨑、川口、長澤、吉田、川端の5名に話を聞きました。生活者発想と事業者視点に基づく事業戦略コンサルティング、生成AI時代の購買行動変化を見据えたAmazon統合運用、そして分析をアクションにつなげるデータサイエンスという3つの専門性を掛け合わせ、ECを起点に得意先の事業変革そのものを支援する彼らの実践と展望に迫ります。
連載一覧はこちら

山﨑 恭嗣
博報堂
コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
部長

川口 渉
博報堂
コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
ECアライアンス領域担当部長

長澤 大樹
博報堂
コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
データサイエンティストディレクター

吉田 陸人
博報堂
コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
ECコンサルタント

川端 俊也
博報堂
コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
データサイエンティスト

単にECの売上を増やすだけではなく、ECを起点に「得意先の事業変革を支える」

山﨑
私たちECコンサルティング部の役割は得意先のEC事業の売上を伸ばすだけではなく「ECを起点に、得意先の事業変革を支えること」だと考えています。生活者の購買行動において重要なタッチポイントであるECから得られる購買データや行動データから、店頭やマス広告だけでは捉えにくかった生活者の反応をより具体的に把握することで、ECは単なる販売チャネルではなく事業全体の意思決定を支える羅針盤になり得るということです。
だからこそ、ECの売上改善だけを目的としたPDCAに満足するのではなく、そこで得られる知見を事業戦略やブランド全体の変革にまで還元していく。そういう思いで、事業戦略コンサルティング、Amazon統合運用、データサイエンスという3つの領域を掛け合わせています。

吉田
よくご相談いただくのが「ECサイトは作ったものの、生活者ニーズと分断されてしまっている」「事業計画は立てたけれど、絵に描いた餅になっている」というお悩みです。実際に「このサイトは本当に生活者にとって使いやすいのか」「こう変えていきたいが、本当にニーズがあるのか」といった生活者視点でのご相談を多くいただきます。
こうしたギャップは、調査を必要に応じて実施しながら、生活者がどのようなニーズを持ち、どのような生活の中でECを使っているのかを、定性と定量の両面から深掘りしていくことが必要となります。
山﨑
そこで私たちは、生活者発想と事業戦略コンサルティングの知見を掛け合わせたアプローチをとっています。まず、一人一人をECの利用者としての側面だけでなく様々な側面を持つ「生活者」と捉えて分析し、データを生かしながらその価値観などを調査前の段階から生活者発想でアイディエーションしています。そして、得意先のブランドが生活者に提供する価値を議論して事業戦略コンサルティングの知見を掛け合わせ、最終的なKGIやKPIを見据えた設計に落とし込みます。さらにこれを構想だけで終わらせず、生活者が実際に接する場面にまで落とし込めるよう、UI/UX、運用PDCA、フルフィルメント、リテールメディアまで実装していくのが、私たちのアプローチです。
ここからは具体的なお話として、初めに川口さんからAmazon統合運用についてお話してもらいます。

生成AI時代の購買行動シフトを見据え、Amazonを事業成長のドライバーと捉えて運用

川口
得意先の中には「Amazonに出品して広告も出しているけれど、思うような成果をあげられていない」という悩みを抱えている企業があります。これはAmazonを単なる販売チャネルとして捉えてしまっているためで、私たちはAmazonを事業成長のドライバーとして捉えて、広告運用実績や費用対効果だけを追いかけるのではなく、「売場管理」「広告・施策管理」「事業管理」の三位一体で統合的に運用することを徹底しています。

山﨑
最近では生成AIの進化で生活者の購買行動の転換点を迎えつつあると思いますが、その点はどう考えていますか。
川口
従来はキーワードの一致度や過去の販売実績に基づいて商品が表示・推薦される仕組みが中心でしたが、生活者が対話形式で生成AIに目的やシチュエーションを相談し、生成AIが文脈や利用シーンを理解した上で商品を推奨する形へとシフトしていくと見ています。現在、この変化は始まったばかりですが、早い段階からの備えが重要です。
すでに経営陣の関心が高く、現場の対応策を検討・実践している会社もあります。私たちはこうした変化を先取りし、商品情報が生成AIに正しく理解・引用されるようタイトルや説明文などコンテンツの構造そのものを見直し、自社ブランドが生成AIの回答にどの程度・どのような文脈で反映されているかを競合と比較し、可視化するモニタリングにも力を入れています。単なる広告の最適化ではなく、事業の構造にまで踏み込んで支援できるのが強みです。
山﨑
Amazon統合運用では、AmazonのデータクリーンルームであるAMC(Amazon Marketing Cloud)も活用されていると思いますが、これはどのような役割を果たしていますか。
川口
AMCの活用としては、まずコンディション分析をして、様々な施策を部分最適で進めてきた結果、見えなくなっている「自社ブランドが今どういう状態にあるか」を可視化・具現化し、課題を特定して施策に繋げています。もう1つの重要な視点は、Amazonで得られた購買・行動データをAmazon内だけで閉じさせず、事業全体の営業戦略やオフライン、他リテールでの販売施策のヒントとして活用することです。
ただ現状、AMC分析とAI検索最適化(AIO)の連携にはまだ発展の余地が残されています。日本でもAmazon Rufusの提供が始まるなどしていますが、生成AIを介した商品探索や購買体験はまだ途上です。今後、各プラットフォームのAIが商品情報をどのように理解・推薦するのかを見極めながら、それぞれの環境に適した情報設計を探っていく必要があります。

データサイエンティストとして、データが具体的な施策にどう生きるのかまで設計する責任を持つ

山﨑
川口さんから話してもらったような運用を支えているのが、データサイエンスチームによる精緻な分析です。
川端
私たちデータサイエンティストは部署の中では少数ですが、様々な部署と横断的に連携しながら、コマース領域全体の案件に対応しています。メディア・施策のROIを横断的に可視化してメディア予算配分を最適化し、「どのメディア・施策に投資すれば、CPAを維持しながら限界まで売上を伸ばせるか」をシミュレーションします。また、購買データと意識データを掛け合わせた分析からCRM戦略を策定したり、データ利活用の枠組みを構築してマーケティングマネジメントの変革そのものに寄与したりする案件も手がけています。

長澤
現場でよくお聞きするのは、「データはたくさん蓄積されているのに、そこから経営課題を抽出したり、次のアクションに繋げたりできていない」という声です。ツールを導入してダッシュボードを整備したものの、その先の意思決定に活かしきれていないケースは実はとても多いです。
手掛けているテーマを大きく4つに分けると、①プラットフォーマーとも連携しながら、広告主のメディアやマーケティング施策の投資配分最適化や目標達成のためのKPI設定を提供するソリューション「Analytics AaaS」に関連する取り組み、②購買パネルや定量調査などコマース領域のデータ分析に基づいた支援、③得意先と共同で、データ利活用の構想、開発、実装・運用までを伴走する支援、④AMCを軸にした分析、となります。

山﨑
様々なテーマを並行して扱っているんですね。改めて、これらに共通する考え方や大事にしていることはありますか。
長澤
これらに共通しているのは、表面的な数字の裏にある事業課題を特定して実際のアクションに翻訳することを常に意識している点です。分析の前段階から得意先やインナーメンバーと会話して課題を深掘りし、アウトプットがどう施策に生きるかを設計・伴走する、フロント組織としてそこまで責任を持って取り組むようなスタンスを大事にしています。

3領域の融合によってECコンサルティング部が目指す事業変革パートナーとしての姿

山﨑
最後に、それぞれの立場から今後に向けたコメントをもらえますか。
吉田
私自身、事業戦略の構想フェーズから入る案件でも、データサイエンスチームと一緒にサービス開発そのものに関わる案件にも携わっています。戦略を絵に描くだけでなく、どんなデータを見ながら、どう検証していくかまで含めて一緒に設計できるので、絵空事にならない戦略を描けている実感があります。

川口
各領域で連携しながら、売場・広告・事業管理を三位一体で見られるからこそ出せる打ち手を、より多くの得意先に提供していきたいと思っています。AI検索やエージェンティックコマースの広がりのように、購買行動を取り巻く環境は今後も加速度的に変化していくはずですが、一つ一つの取り組みだけでは変化のスピードについていけません。データが多すぎてまず何をしたらいいかわからないという得意先の課題もよくあるだけに、複数データを組み合わせた高度な分析を私たちが担うほか、オンラインとオフラインを横断した分析でデータサイエンティストが専門性を発揮して購買データまで扱える強みを発揮できるでしょう。多様な領域の専門性の掛け合わせがますます重要になってくると感じています。
長澤
戦略や現場運用と地続きであることが、分析の質そのものを高めてくれています。現場を知らないまま分析だけをしていたら、きっと今の解像度では見えてこなかったはずです。私たちの強みは、購買データや調査データに生活者視点を掛け合わせ、事業戦略から実際の実行・運用まで一気通貫にアップデートできること。データサイエンスの立場から見ても、事業戦略やAmazon運用の現場を知っているメンバーが同じチームにいることの価値を、日々実感しています。
川端
購買行動やメディア環境は今後も大きく変化していくはずです。私たちとしても、分析手法や技術基盤そのものをアップデートし続けながら、変化に対応できる支援体制を築いていきたいと考えています。直近では、プラットフォーマーとも密に連携しながら、私たちが提供しているソリューションの基盤そのものを日々アップデートしています。特にデータサイエンスの領域は技術の進歩が速いので、こうした連携も活かしながら常に新しい手法をキャッチアップし、チーム全体の分析力の底上げにも貢献していきたいです。
山﨑
ありがとうございます。皆さんの話を聞いていて改めて感じるのは、事業戦略の構想があるからこそAmazon運用の打ち手が生きるし、データサイエンスの分析があるからこそ戦略も運用も磨き込まれていくということです。3つの専門性が重なり合うことで、単独では出せない事業成長への貢献が生まれています。
私たちは、ECを起点とした事業変革のパートナーでありたいと考えています。ECの売上を伸ばすための日々の改善にとどまらず、購買に近い重要なタッチポイントであるECを起点に、そこで得られる知見を事業全体の意思決定や変革につなげていくことを目指していきます。

※肩書は取材当時のものです

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 博報堂
    コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
    部長
    通信販売会社、通信会社を経て、博報堂に入社。通信販売会社では、MD・海外生産地開拓を行う。通信会社では、ECモール・ライブコマースのサービス立ち上げから事業戦略・実装までEC領域全般に携わる。博報堂では、「HAKUHODO EC+」に所属し、事業戦略から実装に至るまで推進。
  • 博報堂
    コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
    ECアライアンス領域担当部長
    クレジットカード会社にて、パートナーシップマーケティングやブランドマーケティングなどの業務に従事。その後、外資系ECモール会社のブランドコンサルタント、ビジネスディベロップメントを経験後、2022年博報堂入社。決済とECの知見を活かしたEC事業コンサルティング業務に従事。
  • 博報堂
    コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
    データサイエンティストディレクター
    2014年に鉄道会社に入社し、中長期の需要予測や輸送計画、それにかかわる設備計画の策定業務に従事。
    2022年に博報堂に入社し、消費財メーカー・流通小売を中心にデータ分析に基づくマーケティング戦略・施策コンサルティングを担当。統計モデルを用いたソリューションのPdMを担う。
  • 博報堂
    コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
    ECコンサルタント
    2022年博報堂入社。自動車メーカー等のプロデュース職を経て現職。EC事業の中長期戦略策定、D2Cブランドのコミュニケーション戦略立案などを担当。
  • 博報堂
    コマースコンサルティング局 ECコンサルティング部
    データサイエンティスト
    一橋大学大学院経営管理研究科研究者養成コース修了。在学中はミクロ経済学や計量経済学、統計的因果推論を用いて、イノベーションと企業ダイナミクスの関係を理論と実証の両面から研究。
    2024年に博報堂にデータサイエンティストとして新卒入社。ショッパーマーケティング・コマース領域において、統計学や機械学習に基づくソリューション開発、MMMや統計的因果推論によるマーケティング施策の効果検証、CRM戦略・戦術の策定など、幅広い業務に従事。修士(商学)。

関連記事