会社と社員の"ヘルシーな関係"は、どうつくる? ―企業対抗健診グランプリ®から考える、健康経営の次のかたち―
健康診断の結果で企業が競い合う異色のプログラム『健診グランプリ』。近年、企業の関心がますます高まる「健康経営」をデータの面からサポートするこの取り組みの表彰式が、2026年6月に開催されました。参加企業が自社の強みと課題を発見し、互いの取り組みを称え合ったイベントと今後の健診戦の取り組みについて、博報堂 生活者インターフェースビジネス推進局・久保雅史がお伝えします。
健康診断は、どうしても「悪いところを見つけるもの」になりがちです。
今年の数値は大丈夫だったか。去年より悪くなっていないか。再検査は必要ないか。――個人が自分の結果と向き合う緊張感は、毎年繰り返されるあのドキドキ感とともに、誰しも身に覚えがあるのではないでしょうか。
ところが、一人ひとりのデータを束ねて「会社全体」として眺めると、健康診断にはもう一つの顔が浮かびあがってきます。
それが、その会社ならではの”健康個性”です。
どんな健康課題を抱えているか。どんな生活習慣が根付いているか。社員は健康についてどんな意識を持っているか。企業の健康状態は、じつは企業文化や働き方の"映し鏡"でもあります。
“自社の強みと弱み”が、他社との比較で見えてくる
企業対抗「健診グランプリ」は、そんな会社ごとの健康の特徴を健診データから可視化し、企業同士が競い合い、称え合う取り組みです。2025年度のグランプリには全日本空輸株式会社(以降、ANA)が輝きました。
しかし、この取り組みの面白さは「どの会社が一番健康か」を決めることだけではありません。
むしろ、他社と結果を見比べることで、「自分たちの会社には、こんな強みがあったのか」「ここはまだ伸びしろがある」と、それまで見えていなかった自社の姿に気づけることにあります。

今回の健診グランプリでは、健康診断の結果や生活習慣に関するデータをもとに、18の部門で企業の健康状態を可視化しました。総合的な結果は僅差でしたが、部門ごとに目を向けると、各社がそれぞれ異なる得意分野で存在感を発揮していました。
健康経営の“正解”は、一社一社ちがう
たとえばクライマークス社は「やる気力」で1位を獲得しました。
デスクワーク中心の働き方を踏まえてスタンディングデスクを導入し、社内の部活動も継続しています。
一方、肝機能については参加企業の中で低い結果となりました。良いところ、まだ改善できるところ――その両方が、他社と比較することでよりくっきりと見えてきました。
また別の会社では、高血圧の従業員への通院支援などを地道に続けてきました。その結果が「血圧力」という形で数字に表れましたが、同時に、「やる気はあるけれど、まだ行動していない」社員が多いことにも気づいたといいます。
ここに健康経営の本質が見えてきます。
健康施策をたくさん実施することではなく、自社の"健康個性"を知り、それに合った方法を探していく。企業文化や働き方、社員の構成によって、健康課題も、効果的なアプローチも変わってきます。だとすれば、健康経営に汎用的な"正解"などはないのかもしれません。
“勝った会社”にも、次の課題が見えている
2025年度のグランプリを獲得したのはANA でした。13部門でランクインし、8部門で金賞を獲得しています。客室乗務員や運航乗務員をはじめ健康管理を意識して働く社員の存在、そして同社に根付くチームワークが背景にありました。ANAの担当者は、参加を通じて「他の企業と比べて我々の強みと弱みがどこにあるかを発見することができた」と振り返ります。
<ANA茨木氏(労政部厚生チーム)>
一方で、課題も見えてきました。「間食がまん力」「夜食がまん力」などの結果を受け、オフィス環境そのものを見直す必要性を感じたといいます。
「社員に健康的な生活をしてください」と呼びかけるだけでなく、社員が自然と健康的な選択をしやすい環境を会社側がどうつくるか。データを評価で終わらせず、次の一手につなげる。そこに、健康診断を活用する意味があります。
“全員に同じ施策”では、動かない人がいる
もう一つ、今回の興味深い気づきをご紹介します。
博報堂では、脂質や肝機能などの結果から生活習慣に課題があることが見えてきました。さらに朝食のデータを掘り下げると、「朝ごはんを食べていない人」が特定の年代に集中していること、また出社している人のほうがむしろ朝食を食べていないことなど、新たな傾向が浮かびあがりました。
これまで一律に実施していたセミナーでは、本当に届けたい人に届いていなかったのです。そこで今年は、ターゲットを絞った朝食キャンペーンを実施しました。

「みんなに同じ」から、「必要な人に届く」へ。
これは健康経営における大きな転換点ではないでしょうか。生活者一人ひとりを見るマーケティングが解像度を上げてきたように、健康施策もまた、「誰に、何が必要か」をデータから考える時代に入っています。
健康診断を"評価される日"から"行動を始める日"へ
当日は、40年以上にわたって読者の「健康で、かっこいい生き方」を発信し続けてきたアクティブ・ライフスタイル誌『Tarzan』の矢野編集長にもオブザーバー参加、メッセージをいただきました。

昨年より良くなったところを見つける。同じ会社の仲間と喜ぶ。他社の取り組みからヒントをもらう。そして、来年はもっと良くしようと思う。そう考えると、健診は"評価される日"ではなく、"次の行動を始める日"に変えられるのです。
Trademark TARZAN owned by EDGAR RICE BURROUGHS,INC. and used by permission.
『ターザン』の登録商標は、米国エドガー・ライス・バローズ社と(株)マガジンハウスとの契約によって使用されています。
健康経営は、“制度から文化”へ
健診グランプリのフィードバックミーティングの最後に、私からみなさんにお伝えしました。
「会社と社員がヘルシーな関係をどうやって築き、続けていくか。これは文化だ」
健康経営という言葉が広がり、企業はさまざまな健康施策に取り組むようになりました。しかし施策を導入するだけでは、社員の行動は変わりません。
大切なのは、健康について話せること。良くなったことをみんなで喜べること。他社の取り組みを知って、自分たちもやってみようと思えること。そして、健康を「自分だけの問題」にしないこと。

健診グランプリがつくろうとしているのは、単なる企業間のランキングではありません。一年に一度の健診データをきっかけに、会社と社員、社員と社員、そして企業と企業の間に、新しいコミュニケーションを生み出すこと。その先にあるのは、健康を”管理する”のではなく、みんなで”育てていく”文化なのかもしれません。
健康診断は、会社の健康状態を測るだけではありません。そこには、その会社らしさが映っています。そして、その”健康個性”に気づくことが、次の行動を変えるきっかけになります。
2026年度の健診グランプリでは、『Tarzan』全面バックアップのもと、参加企業の健康増進アクションをさらに後押ししていきます。
健康診断を、もっと前向きに。会社の健康を、もっと面白く。健診を起点に、企業と社員の新しい関係をつくる挑戦は、これからも続いていきます。
★チャレンジする仲間を募集中です!さぁ、ご一緒に!

「企業対抗 健診グランプリ 史上最強ターザン企業決定戦 powered by 健診戦® × Tarzan」応募要領
・スケジュール
~2027年3月 :エントリー受付、社内告知・健康診断実施
2027年4月~5月頃 :参加企業各社から健診データ提供
2027年6月頃 :結果発表ならびに授賞式
・表彰内容 :総合グランプリ・18部門賞・特別賞(審査員賞)
・お問合せ :博報堂健診戦事務局(kenshinsen@hakuhodo.co.jp)
※肩書は取材当時のものです
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博報堂 生活者インターフェースビジネス推進局
健康経営エキスパートアドバイザー
ISO30414リードコンサルタント/アセッサー(個人資格)航空会社・外資系広告エージェンシーを経て、07年博報堂にキャリア入社。
ビジネスプロデューサーとして、通信キャリア・飲料メーカー等をはじめ、国内外ナショナルクライアントのマーケティングコミュニケーション領域での戦略立案~実行支援にフロントラインで携わった後、新規事業開発部門ではウェルビーイング/ヘルスケアテーマでの新規事業創出をリードしながら、スタートアップ投資にも携わる。26年4月より現職。健診戦で、健康になりました。


