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AIと育つ子どもたち。α世代が描く、生活者とAIの未来 @メ環研フォーラム2026 レポートvol.3
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AIと育つ子どもたち。α世代が描く、生活者とAIの未来 @メ環研フォーラム2026 レポートvol.3

2026年7月7日、メディア環境研究所によるプレミアムフォーラム【情報圏のひらき方~「7つの認知タイプ」と「α世代」から見える未来~】が開催されました。

生成AIが急速に普及している今、AIは徐々に私たちの暮らしに欠かせないツールとなりつつあります。その利用は子どもたちにも広がり、Z世代に続く「α世代」は、幼い頃から生成AIに触れて育つ、最初の「AIネイティブ」世代に。彼らは生成AIをどのように使い、どのような価値を見いだしているのでしょうか。

レポートvol.3では「α世代と生成AI」と題し、「2010年以降に生まれた子どもたち」であるα世代ならではのAIとの付き合い方、そしてAIが彼らの情報圏で果たす役割を検討していきます。発表者は、メディア環境研究所・野田絵美上席研究員と、朝本美波研究員です。

α世代の3人に1人が「生成AIの利用経験あり」

早ければ乳児期、就学前には大半の子どもがスマートフォンやタブレットに触れ始めているα世代。さらに就学後はタブレットを活用したデジタル学習を行うなど、日常生活がデジタルとより深く結びついていると言えます。

今回は、全国の小学校1年生から中学3年生の1500名を対象に実施した「α世代のメディア生活調査2026」、そしてすでに生成AIを使っている小学校低学年から中学3年生までの8名へのインタビュー結果をもとに分析していきます。

まずはα世代の生成AIの利用状況について見ていきましょう。α世代全体では、すでに7割が生成AIを認知。利用経験があると答えた人は35.1%と、3人に1人は生成AIを使ったことがあります。中学生だけを見ると、51.1%が生成AIを利用している実態が見えてきました。

朝本 研究員
α世代がどのデバイスで生成AIを利用しているか聞いたところ、スマホ(80.5%)、タブレット(33.0%)と、身近なデバイスに回答が集まりました。一方で、パソコンでの利用は16.6%に留まり、Z世代の30.6%と比べてかなり低い利用率になっています。

利用のきっかけも、身近なところにあるようです。

Sさん(小6)
テレビの情報番組で見て、使ってみたいと思った。

 

Rさん(中3)
ChatGPTを使い始めたのは、TikTokで流行り始めた去年の夏。

 

朝本 研究員
生成AIを「特別すごいツール」というより「身近に流行っているアプリの1つ」としてとらえている点が特徴的ですね。

「気軽にやり取りできるアプリ」という認識は、入力方法にも出ています。特に小学校低学年の約4割は、音声入力でAIを活用しているという結果が出ました。

朝本 研究員
小学校1年生のYくんは、AIと音声入力を用いて「学校あるある動画」を作って楽しんでいるそうです。文字入力がまだ苦手なうちから、思いついたアイデアを遊び感覚で試して形にしているのはAIネイティブならではですね。

α世代のAIは「自分を育ててくれるもの」

幼いうちから遊び感覚でAIに触れている姿をみると、「AIに依存してしまうのではないか」「自分で考えなくなるのではないか」「AIとばかり話して、AIの世界に閉じこもるのではないか」と心配する方もいるかもしれません。

しかし、調査からはそのような不安とは異なる、2つの側面が見えてきました。1つ目は、α世代にとってAIとは「自分を育ててくれるもの」という点です。

生成AIの利用用途について聞いたところ、上位には「わからないことを教わる(86.3%)」「やり方をアドバイスしてもらう(49.6%)」「アイデアを考える(42.1%)」と、主に自分自身の成長をサポートしてもらうための用途があがっています。 

自分に合ったやり方で教わる=興味が広がる

また勉強でのAI利用についてのインタビューでは、こんなリアルな声が聞かれました。

Iさん(中2)
AIに問題の解き方を聞くと、僕が理解できるように返事をしてくれる。答えを聞くこともできるが、応用できないし自分のためにならないから、しない。最近では、勉強が楽しいという感覚が出てきた。

 

朝本 研究員
「解き方を聞かないと、自分のためにならない」という考え方が非常に印象的です。主に「作業効率化」「最適化」という形でAIを使っている大人とは異なる発想です。「わかる」という感覚を得て、モチベーションアップをしている姿が見えます。

 

Tさん(小5)
勉強にAIを使うと、「他に似たような意味で、これもあります」「ここ間違えやすいよ」などを教えてくれる。聞いたこと以外の情報も出るので、勉強の幅が広がる。

興味の広がりについては、定量調査でも約半数が、AIを利用して「色々なことに興味をもてるようになった」と回答しています。AIから、自分に合ったやり方の情報を得ることによって興味を広げるα世代の姿が見えてきました。

やり方をアドバイスしてもらう=興味を導き「好きが深まる」

 中学3年生のHさん(中3)は、厳しい校則の中でなんとかおしゃれをしたいと「自分に合った垢抜けプロジェクト」をAIに相談しているそうです。

Hさん(中3)
「私が知りたいプチプラメイク」など、ウェブ検索なら結果を絞るのが難しい微妙なニュアンスも、ChatGPTには伝わる。商品や値段までリスト化してくれるので見やすい。長い動画を見ないと得られない情報を、簡潔に示してくれるのがいい。

 

朝本 研究員
Hさんは「ChatGPTのおすすめ情報は『買ってもいい』と思うくらい信用しているか」という問いに対して、「信用している」と答えています。α世代では、購買行動にまでAIが入り込んできているのですね。

他にも、ゲームや趣味の絵画など、自分の好きをさらに深めることにAIを活用しているα世代もいました。 

Lさん(小3)
好きなゲームの世界に自分を主人公として登場させて、バトルする物語をAIに考えてもらって、ストーリーブックを作った。

 

Iさん(中2)
絵を描くのが趣味で、AIに上手な絵の描き方を相談した。AIに聞いて描き方がわかったことで、手応えを感じ、絵を描くのがどんどん楽しくなっている。

このように定量調査でもAI利用によって興味のあることを深められるようになったと感じているα世代が過半数を占めています。 

アイデアを考える=ひらめきを具現化し「発想を楽しむ」

電車が趣味の小学5年生Tさんは、アイデアが思いついた時にはAIを使って、そのひらめきを実際に画像にしてもらって遊んでいるそうです。小学生ならではの豊かな発想が、AIのサポートによって想像にとどまらず、本格的に楽しめるようになってきていることが分かります。

Tさん(小5)
自分の思い描いた電車の絵を生成AIで形にする。理想を形にすることで、アイデアを練るのがもっと楽しくなる。

α世代はAIに対し一定の信頼を置いている様子ですが、その一方で、決して盲信しているわけではありません。彼らは、AIが間違った情報を出力することも念頭に置いて利用しているようです。

Lさん(小3)
AIは間違うこともある。習い事では、先生や友達が教えてくれる情報のほうを信頼している。

 

Tさん(小5)
今のAIはたまに嘘の情報も入る。理想をいうと、誤りがないAIがいい。

彼らの言葉からは、AIは間違うことを前提にして、いい距離感を取って活用している姿勢が見えます。では、α世代が思う「盲信しない、いい距離感での活用」とはどのようなものなのでしょうか?

Lさん(小3)
工夫していることはAIに全部頼らないこと。例えば、私は「自分のアイデアに対し、プラスのアドバイスをして」と聞く。丸ごと頼ると、自分で手作りしたという要素がなくなってしまって嫌。自分で成し遂げた感覚を大切にしたい。

 

野田上席研究員
自分の「好き」や「一生懸命」はAIには委ねない。こうやって自分の領域を守っているのですね。

 

朝本 研究員
何でもやってくれるAIが出てきたからこそ、自分なりの考えとか意思を持つことがやはり大切なのではないか、ということを直感的に感じているのかもしれません。

インタビューからはAIによって興味を広げ、好きを深め、ひらめきを具現化することで発想を楽しんでいる姿が見えてきます。しかし、主役はあくまで自分。彼らはAIをサポート役と位置付けて、うまく利用することで自分を強化しているのです。

生成AIを使って「友達とのいい関係を作る」

調査の中で見えてきた2つ目のポイントは、α世代にとってAIとは「友達とのいい関係を作るためのもの」になっている点です。

中3のHさんは、AIの音声モードによる対話を利用して、好きな人への話しかけ方を相談しているそうです。

Hさん(中3)
AIに「(好きな人と)好きな犬が同じだった」と話しかけると、AIが「それめっちゃ嬉しいね。共通の話題があって仲良くなれそう」と返答してくれました。家族や友人と会話をするようにAIとやり取りをしています。

また、電車が好きなTさん(小5)はこんな使い方もしているそうです。

Tさん(小5)
趣味の電車はマニアックで友達と共有できないから、AIと話して満足している。一方、AIで作ったおもしろ動画はウケ狙いで友達に見せる。共通の話題づくりができて仲良くなるきっかけになるので、AIは友人関係でも役に立ちそう。

友人との関係作りに利用する一方で、友人には言えないことをAIと話すという声も聞かれました。

Hさん(中3)
人に言いにくい自慢や愚痴をAIに話している。AIはどんな自慢を何回言っても聞いてくれる。こちらが我慢をする必要がない。愚痴はAIに言うことで、友達に言うことが減った。以前よりもストレスが減ったと思う。

このようにAIは「友達へのいい声かけ」「共通の話題作り」で活用され、さらに「友達には言いにくい自慢や愚痴の発散先」としても機能していました。

 何かを作るなら「人が作ったものの方がいい」

α世代にとってのAIは「情報圏をどんどん広げながら、リアル世界の自分を育て、さらに人間関係を育むもの」として役割を果たしていることが見えてきました。しかし、その一方でAIと人の違いを感じとっている声も上がりました。

Iさん(中2)
絵を描くとき、手本やアドバイスを聞くならAIの方がいい。AIの方が素早く反応や出力をするから。でも作品の良し悪しでいうと、人が作ったものの方がいい。絵に込められた思いが伝わってくるのは、やはり人が作ったものの方だと思う。

インタビューからはAIをうまく使いつつ、一方で人間ならではの感情や経験にも価値を感じ始めている様子が見えました。

デジタル体験に留まらず「寄り道」も重視

調査からは、α世代にとってAIは自分を支え人とのつながりを広げる身近な存在である一方、人にしか生み出せない感情や経験の価値も強く意識していることが見えてきました。

今回の調査結果から、今後の情報環境には2つの大きな変化が起きると考えられます。

1つは、情報との向き合い方。アルゴリズムによって興味のある情報が次々と届く時代だからこそ、その外側にあるリアルな体験や人との出会いが、情報の偏りを補う重要な役割を担っていくでしょう。

もう1つは、AIとの付き合い方。α世代はAIを単に作業を代替する存在ではなく、自分を成長させ、人とのコミュニケーションを広げるパートナーとして活用しています。その一方で、AIにはない「人間らしさ」の価値も強く意識しています。

これまではSNSの発展に伴い、加速度的にデジタル空間での自己拡張が続いてきました。しかしデジタルが当たり前になっていく未来では、むしろデジタルを使った上でリアル世界の自分を拡張していく方向に進んでいくと考えられます。

最後にこうした変化の中で、α世代が求める体験を象徴するキーワードを2つ紹介します。それは「手触り」と「寄り道」。インタビューを通してα世代は、五感を伴うリアルな体験である「手触り」、そして、アルゴリズムの外で生まれる偶然の出会いや発見をもたらす「寄り道」をデジタルの体験と同時に重視していることがわかりました。

Lさん(小3)
ショート動画で見たスクイーズの感触を実際に触ってみたいと思った。

 

Hさん(中3)
一番楽しい時間は、友達と散歩をしながら街を歩く時間。みんなで気になったお店になんとなく入ったりして、かわいい雑貨とか見ながらおしゃべりをずっとしているのが楽しい。

 

Rさん(中3)
AIは人間の「てかさぁ」というように、新しい話題は出してこない。いい意味でも悪い意味でも余計な話をしないのがAI。やっぱり友達との雑談が楽しい。

最適化されたデジタル環境が当たり前になった今だからこそ、α世代はリアルな世界でしか得られない手触り感や偶然、人とのつながりに価値を見出しています。AIやアルゴリズムを使いこなしながら、その外側へ自ら踏み出す。それが彼らの情報との向き合い方であり、情報圏のひらき方なのかもしれません。


(編集協力=沢井メグ+鬼頭佳代/ノオト)

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。

 

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  • メディア環境研究所 上席研究員
    2003年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、食品やトイレタリー、自動車など消費財から耐久財まで幅広く、得意先企業のブランディング、商品開発、コミュニケーション戦略立案に携わる。生活密着やインタビューなど様々な調査を通じて、生活者の行動の裏にあるインサイトを探るのが得意。2017年4月より現職。生活者のメディア生活の動向を研究する。
  • メディア環境研究所 研究員
    2021年博報堂DYスポーツマーケティング(現博報堂スポーツマーケティング)入社。プロ野球などスポーツコンテンツのプロデューススタッフとして、広告制作や企画運営業務を担当。その後、官公庁や教育機関に対するコンサルティングといった新規事業推進や、スポーツを通した生活者インサイト調査などに従事。大型スポーツイベントのメディア接触実態などの調査分析にも従事。2024年12月より現職。元ダブルダッチ日本代表。