Z世代SNS利用の最新潮流をキャッチアップ! BeReal.から読み解くZ世代インサイトとマーケティング活用
Z世代の価値観やSNSの利用方法は日々変化し、マーケティング担当者にとってその実態を捉えることは大きな課題となっています。特に「リアルさ」を追求するSNS『BeReal』の台頭は、彼らのインサイトを象徴する現象と言えるでしょう。
このテーマのプロフェッショナルであるBeReal津田氏、博報堂生活者発想技術研究所兼若者研究所のボヴェ啓吾、Hakuhodo DY ONE テクノロジーR&D本部 研究開発局の高橋二稀に博報堂 グループメディアビジネス推進局 斎藤葵が最新潮流を聞いていきます。
津田 裕一氏
BeReal Japan Agency Partnership Lead
ボヴェ 啓吾
博報堂
生活者発想技術研究所 上席研究員 兼 若者研究所代表
高橋 二稀
Hakuhodo DY ONE テクノロジーR&D本部 研究開発局
斎藤 葵
博報堂
グループメディアビジネス推進局メディアインテリジェンス部 部長
「映え」から「実感」へ──変化するZ世代の価値観
- 斎藤
- 今のZ世代がどのような価値観を持っているのか、どのようなメディア・情報行動をとっているのか。まずはその全体感について探っていくことにしましょう。
若者研究所所長のボヴェさん、教えていただけますか。
- ボヴェ
- はい、私たち若者研究所は、大学生を中心とした学生研究員と共に、若者と未来の暮らしについて考える活動を15年ほど続けています。今回はその知見から、若者向けのSNSが支持される背景にあるZ世代の価値観変化について、4つの視点でお話しします。

まず1つ目は、「映え」や「承認欲求」から、「自然体」や「自己肯定感」を重視する流れです。かつて若者のSNS利用は「映え」のイメージが強かったですが、今はそれだけではありません。写真を撮る目的は、「いいね」をもらう承認欲求のためだけでなく、後から見返して「自分は恵まれているな」と自己肯定感を支えるため、という側面が強まっています。BeRealが日記代わりに使われることがあるのも、この文脈に沿ったものだと考えています。
2つ目は、情報収集が「検索型」から「引き寄せ型」になっている点です。タイムラインに自然と情報が流れてくるため、自ら検索するより、アルゴリズムに働きかけて自分好みの情報を「引き寄せる」ことが重要になっています。これはコミュニケーションにも言えて、自分の日常や興味を投稿することで、友達から「私も行きたい」と声をかけてもらう。相手に断る気遣いをさせない、現代的なコミュニケーションスタイルです。
また、AIとの「対話」も日常に根付いています。とりあえずAIに聞いてみるのが当たり前になり、愚痴や相談もAIに話す若者が増えています。その結果、リアルの人間関係では「もっと楽しい話をしていたい」という意識が生まれ、SNSでのコミュニケーション内容にも影響を与えているかもしれません。
3つ目は、「個人」から「分人」への変化です。これは、TPOに応じて仮面を使い分けるのではなく、家族の前の自分、友人の前の自分、そのどれもが「本当の自分」であると捉える感覚です。金融ポートフォリオのように複数の自分を運用する考え方で、これを「分人主義」と言います。SNSでも、かつての「裏垢」という言葉は聞かれなくなり、「趣味垢」や「別垢」といった形で、関心ごとに応じてアカウントやSNSそのものを使い分けるのが主流です。BeRealは、その中でも特に自分自身に近い、濃い人間関係のモードで使われることが多いようです。
最後の4つ目は、「情報」から「実感」へのシフトです。デジタルネイティブである彼らは、スマホの平面的な世界で生きているからこそ、風が肌に当たる感覚やサウナの熱さといった身体的な「実感」を非常に大切にします。「生きているな」という感覚です。分人主義のように複数の自分がいる中でも、「体は一つで、ここに存在している」という感覚が、身体的な実感によって支えられる。これは、BeRealが掲げる「リアル」の価値にも通じるものがあると考えています。

- 斎藤
- ありがとうございます。
BeRealが作った「自然体なのに、おしゃれ」という新潮流
- 斎藤
- では次にZ世代のSNS研究を行っていて、実際にZ世代でもある高橋さんにもお伺いしたいと思います。
Z世代のSNSのトレンドについてお聞かせください。
- 高橋
- はい、私自身も98年生まれのZ世代で、2021年からBeRealを使っています。広告技術研究所というデジタル特化の調査チームに所属しており、テックトレンドの視点からお話しします。

- 斎藤
- 2021年から?!早いですね。
ユーザーとしてどのような特徴があるかを聞かせてください。
- 高橋
- BeRealは「自然体でありながら共有したくなる見た目を成立させるアプリ」だと特徴づけられます。日本でトレンドになったきっかけは、BeRealのスクリーンショットをInstagramのストーリーなどで共有するバイラルな動きでした。
では、なぜ皆がスクリーンショットを共有したくなったのでしょうか?
それは、撮影するだけでおしゃれな加工が成立してしまうUI(ユーザーインターフェース)にあります。インカメラとアウトカメラが同時に撮影されるデュアルカメラ機能、かわいらしい角丸のUI、そしてそれらが自動でコラージュされることで、「加工していない自然な自分」でありながら「加工していないのにおしゃれでかっこいい自分」を表現できるのです。これは、承認されたい気持ちと、自然体でいたい気持ちの両方を満たす、絶妙な体験設計だと思います。
この「撮影するだけでおしゃれになる」という仕組みは、他の新しいSNSにも見られます。例えば、韓国発のVlogアプリ『Setlog』は、1時間ごとに2秒撮影し、1日の終わりにVlogが完成するというもの。友達とアカウントを共有すると、同じ時間に皆が何をしていたかマルチビューで表示され、それもまた角丸UIでおしゃれにコラージュされます。
また、Spotifyの『Wrapped』やYouTubeの『Recap』といった年末のまとめ機能も同様です。一人で楽しんでいる音楽の履歴が自動でビジュアライズされ、それを共有することで「一人時間もおしゃれに過ごす自分」をアピールできます。これもBeRealが作ったトレンドの流れを汲んでいると言えるでしょう。
今後トレンドになるかもしれないアプリとして、『TapNow』や『Airbuds』に注目しています。どちらもスマートフォンのホーム画面ウィジェットを使い、前者は友人のリアルタイムの写真を、後者は友人が聴いている音楽を表示するアプリです。ウィジェットは、アプリを起動しなくてもホーム画面上で最新情報を見ることができるパネルで、普通のアプリアイコンよりも大きく表示されます。同じサイズのアプリをただ羅列させるよりも、ウィジェットを使うと便利で画面映えするので、 Z世代はウィジェットを積極的に利用しています。『TapNow』や『Airbuds』を使うと、友達の写真やおしゃれな音楽のアートワークがウィジェットに表示されるので、よりホーム画面が華やかになります。ここでも「角丸UI」と「ウィジェットを使ったコラージュ感」がキーワードになっています。
こうしたトレンドを広告に活かすには、ユーザーに「真似したい」「シェアしたい」と思わせるクリエイティブが重要です。ダイナミックな画角、一人でも映える構図、そして日常の中にブランドを溶け込ませる自然体な演出がポイントになるでしょう。

Z世代の「なんでもない日常」に入り込むBeRealの広告戦略
- 斎藤
- では先ほどからも多く名前が挙がっているSNS・BeRealについて、まさにBeReal Japanの津田さんにお伺いしたいと思います。詳しく教えてください。

- 津田
- BeReal Japanの津田です。ではBeRealがどんなアプリで、どのようなデータやインサイトを提供できるかについてお話ししていきます。

BeRealは、一言で言うと「Z世代がハマっているアプリ」です。日本のMAU(月間アクティブユーザー数)は650万人で、その93%が13歳から27歳のZ世代です。特に大学生世代のカバー率はほぼ100%に達しており、他のSNSとはボリュームゾーンが全く異なります。

- 斎藤
- ほぼ100%!すごいですね!!
改めまして、なぜそこまで支持されるのでしょうか。
- 津田
- ユーザーに支持される理由は、「友人のリアルな投稿が見られる」こと、そして「なんでもない日常が残るのがいい」という点です。フィルターや加工は一切できず、カメラロールからのアップロードも不可。その場で撮ったありのままの写真だけが、相互フォローの友達にだけ共有されます。

- 斎藤
- なるほど。特別な瞬間だけではなく、ハレとケでいうと「ケ」である「日常」を大切にし、その日常がストック・共有されるという側面が受けているのですね。今までのSNSとはまた違っていて興味深いですね。
他にBeRealならではの特徴があれば教えてください。
- 津田
- 最も特徴的なのが「BeReal Time」です。毎日ランダムな時間に「2分以内に撮ってね」という通知が全員に一斉に届き、この瞬間に日本では250万~300万人のユーザーがアプリを開いて投稿します。また、自分が投稿しないと友達の投稿が見られない仕組みのため、ユーザーの80%以上が毎日投稿するという高いエンゲージメントを誇ります。
- 斎藤
- 自分が投稿しないと友達の投稿は見られないということをZ世代は楽しんで日課にしている、という感じなのでしょうね。
ではマーケティング活用視点としてBeRealが得意としていることはありますか。
- 津田
- BeRealが得意とすることは大きく二つあります。一つは「インサイト分析」です。例えば、私たちの調査では、中高生が作りたいクレジットカードの第一位は、多くの大人が想像するブランドではないブランドが上位という、意外な結果となりました。銀行口座も同様の結果が出ています。若年層のリアルな意識を把握できる「Z世代調査パッケージ」というサービスも提供しており、クライアントの課題発見に活用いただけます。
もう一つは「第一想起の獲得と自分ごと化」です。BeRealの広告は、友達の投稿数が少ないタイムラインに挟まれるため、一つ一つの投稿が丁寧に読まれ、広告認知が他メディアの1.9倍という調査結果も出ています。
さらに私たちは、「原体験の自分ごと化」というアプローチを提案しています。
部活動の休憩中に飲んだスポーツドリンクのように、学生時代のキラキラした時間とブランド体験を結びつけることで、大人になっても記憶に残り、ブランドを好きでいる理由になります。例えば、頑張っている部活の瞬間をBeRealで投稿してもらうキャンペーンなどを通じて、ブランドが彼らの青春に寄り添うことが可能です。実際にあるお菓子メーカーで実施した施策では、インセンティブなしで1.7万件ものUGC(ユーザー生成コンテンツ)が生まれました。
- 斎藤
- Z世代の日常や生活に自然な形で寄り添いながら自分ごと化しているものがコンテンツになる、これはとても理想的なコミュニケーションですね。
- 津田
- はい。BtoB企業の認知度向上や、掃除用品などの日用品まで、多様なクライアント様にご活用いただいています。
- 斎藤
- では、具体的にBeRealと相性が良い商材について教えてください。
- 津田
- やはり若年層に課題感をお持ちのクライアント、特に金融、学校、コスメ、そして店舗を持つチェーン店さんなどは非常に相性が良いです。
- 斎藤
- エントリーユーザー獲得やLTVの最大化の目的には最適ですよね。
- 高橋
- クリエイティブの観点からは、ロゴや商品がアイコニックな飲食系は面白いと思います。UGCを誘発する素晴らしい企画がいくつも実現されていますよね。
生成AI時代における「リアル」の価値

- 斎藤
- 生成AIが浸透していく中で、BeRealのようなSNSの存在はどうなっていくのでしょうか?
- ボヴェ
- SNSの重要性は変わりませんが、中身は変化するでしょう。AIに悩み相談をする分、人とのコミュニケーションはよりポジティブなものを求めるようになるかもしれません。一方で、AI生成コンテンツへの疑いも増す中で、BeRealのようにAIが介在する余地のない「リアルさ」は、より際立った価値を持つと思います。AIと人間が相互に刺激し合い、新しいカルチャーが生まれる可能性も感じます。
- 高橋
- Z世代はもともとクローズドな環境を好む傾向があります。BeRealが外から見えにくいプラットフォーム内で深く楽しまれているのは、その証拠です。内側でしっかり定着している感覚がありますね。
- 津田
- 生成AIが広がる中でも、人為的に加工されていない“リアル”な瞬間を共有するというBeRealならではの価値は、今後も大切にしていきたいと考えています。
他のSNSがAIと融合していく中で、独自のポジションを確立していくと考えています。
- 斎藤
- 生成AI時代において「リアル」の価値、大切さは増していきます。
デジタルネイティブといわれるZ世代にとっては、加工や盛りが当たり前の中で、逆にデジタルやAIに介在されないBeRealのように「リアル」が基本となっているSNSは確実に拠りどころとなり、生活の一部として定着しているのだと感じました。
Z世代攻略のポイントは「リアル」や日常生活に寄り添うこと。
BeReal含め今後のSNSの動向にも注視していきたいと思います。
本日はZ世代にまつわる大変示唆に富むお話、誠にありがとうございました。

※肩書は取材当時のものです
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津田 裕一BeReal Japan
Agency Partnership LeadDSP媒体、Xを経て2025年1月にBeReal Japanに入社。
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博報堂
生活者発想技術研究所 上席研究員
若者研究所 代表
東京大学教養学部 客員准教授2007年博報堂入社。マーケティング局にて企画立案業務に従事した後、博報堂ブランド・イノベーションデザインに加入。ブランドコンサルティングや商品・事業開発の支援を実施。東京大学教養学部「ブランドデザインスタジオ」の講師など、若者との共創プロジェクトを多く実施し、2019年より若者研究所代表を兼任。2024年度からは生活者発想技術研究所に籍を移し生活者発想を基軸とした研究開発を行う。
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Hakuhodo DY ONE
テクノロジーR&D本部 研究開発局2020年 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(現 Hakuhodo DY ONE)入社。アドテクやソーシャルメディア、生活者に近いテクノロジーを中心としてデジタルビジネスのトレンド調査、事業開発に従事。
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博報堂
グループメディアビジネス推進局 メディアインテリジェンス部 部長2002年博報堂入社。メディアプロデューサー、メディア環境研究所研究員を経て現在は博報堂DYグループ内外に向けてメディア・デジタルマーケティング関連のセミナーイベント企画・プロデュースを行う傍ら、❝生活者データ・ドリブンマーケティング通信❞サイトの編集部員として取材・発信活動も行う。


