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AIエージェント時代のマーケティングOSへ ― 「人間にだけ届く」広告という新たな選択肢と広告価値
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AIエージェント時代のマーケティングOSへ ― 「人間にだけ届く」広告という新たな選択肢と広告価値

博報堂DYグループから誕生した「Ads for Humanity(以下、AFH)」は、OpenAIのサム・アルトマン氏らが共同発明した人間認証技術「World ID※1(虹彩画像撮影技術を用いて、ユーザーが唯一無二の人間であることを認証)」とブロックチェーンを掛け合わせた次世代の広告配信プラットフォームを展開しています。

AIエージェント時代における広告のあり方や、広告主が意識しておくべき留意点、「人に確かに届いたこと」を検証できる手段の重要性について、株式会社Ads for Humanity 代表取締役社長の森田英佑、取締役COOの本村勇人、CBOの田島弘貴が語りました。

※1 World IDの認証方法については、Tools for Humanity公式サイトをご参照ください。
https://www.toolsforhumanity.com/ja-jp/orb

森田 英佑
株式会社Ads for Humanity
代表取締役社長CEO

本村 勇人
株式会社Ads for Humanity
取締役COO

田島 弘貴
株式会社Ads for Humanity
CBO

AIエージェント時代に、「人間に届く広告」をどう実現するか

森田
広告事業においては、長年「アドフラウドの問題」と「プライバシー保護の強化やサードパーティークッキーの利用制限に伴うデータ活用の問題」が顕在化してきました。そこへAIが台頭したことで、状況はさらに複雑化しています。
生成AIによってWebサイトやコンテンツの制作・量産のハードルが下がり、さらにはAIエージェントが人間に代わってWeb上の操作を行うようになったことで、広告への接触や反応が人間本人によるものかを確認する重要性が高まっていると考えています。

こうした課題に対し、私たちはまず、広告の届け先が人間であることを確認する仕組みに着目しました。その実現に向けて、広告主と媒体をつなぐ広告会社の立場から、主体的に取り組むべきだと考えました。

課題解決のアプローチを探る中で、私たちは、利用時の匿名性を守りながら、生体認証を通じて「人間であること」と「同じ人が重複して登録されていないこと」を確認できる仕組みに着目しました。そこで出会ったのが、「World ID」です。
利用時のプライバシーを守りながら、人間であることと、同じ人による重複がないことを証明するという仕組みに、私たちは可能性を感じたことが、AFHを設立するきっかけになりました。

将来的に、オンライン広告にとどまらず、コマースをはじめとする多角的な事業展開を見据えた際、利用者が自身のプライバシーを守りながら、人間であることを証明できる基盤は、重要な役割を果たすと考えています。

田島
ECサイトやメディアといったあらゆる媒体において、その情報は「人間に届けるためのもの」なのか、「AIに届けるためのもの」なのか、という区別が求められる時代になってきています。極端な話、AIだけに伝わればよい情報なら、マークダウン形式のシンプルなページで十分かもしれません。
しかし、どんなにテクノロジーが進化しても、インターネットの主役は人間です。だからこそ、人間が楽しめる居心地のよい場所を創り、守っていくことが、インターネットの健全なあり方を問う本質的なテーマだと感じています。

人類のコミュニケーション手段の歴史を振り返ってみると、まず言葉が発明されたことで、目の前にいる相手とのやり取りが可能になりました。次に文字が発明されたことで、より広範囲でのコミュニケーションが実現しました。さらにインターネットの登場で、グローバルに情報が民主化されてきたわけです。

しかし今、AIが爆発的に普及し、情報空間であるインターネットにAIが入り込んでいくと、これまで人類が築き上げてきた「情報の民主化」という基盤そのものが崩れてしまう恐れがあると感じています。
インターネット空間の主な収益源は広告であり、この構造が崩れればインターネット自体の存続も危ぶまれかねません。そのため、情報の民主化という価値を守りつつ、広告という収益構造を進化させることが必要になります。このような課題を解決できるのが、WorldとAFHの組み合わせだと考えています。

森田
デジタル広告はマーケティングの中核として進化を続けてきましたが、AIの普及によって、「広告を誰に届けるか」という問いが、改めて重要になっていると考えています。マーケティングの基本である「誰に」「何を」「どのように届けるのか」を考える際にも、人間本人による行動と、AIが人間に代わって行う行動を区別して捉える視点が求められます。つまり、広告への接触や反応が、誰によって、どのような意図で生じたのかを把握する重要性が高まっているということです。

従来のデジタル広告でも、ボットやクローラーなどによるアクセスを識別し、広告の配信や計測から除外する対策が進められてきました。これからはAIエージェントの登場によって、人間のために行われる自動操作も含め、アクセスの性質をより丁寧に見極める必要があると考えています。
特に、ボットなどを悪用して広告の表示やクリックを水増しするアドフラウドは、広告費の無駄につながる問題です。また、人間による反応と自動化されたアクセスを区別せずに集計すると、顧客理解やターゲティング、効果測定の精度を損なうおそれがあります。

このように、人間とAIがともにインターネット上で活動することを踏まえ、広告の配信対象や成果の捉え方、計測の仕組みを見直す必要があると考えています。私たちは、こうした変化が広告にもたらす影響を広告主やメディア企業と共有し、人間認証を活用した新しい広告の仕組みを、ともに具体化していくことをミッションだと捉えています。

本村
デジタル広告は国内広告市場の約半数を占めるまでに成長し、一部の広告主や媒体は「デジタル広告の効果や健全性に対する課題意識」を持ち始めています。こうした状況のなかで、博報堂DYグループのように業界全体と接点を持つ立場が、特定企業の枠を超えて新しい概念を広げていくことに意義があります。

その結果として、デジタル広告そのものの健全性を高め、広告主にとっての効果を守り、ひいてはデジタル広告市場全体の持続的な発展につながると捉えています。

人間認証はデジタル広告の「成果」にどう貢献するのか

森田
人間認証を通じてデジタル広告の価値を高めるアプローチは、大きく3つあると考えています。
1つ目は、広告配信の信頼性を高めることです。World IDで人間であることが認証されたユーザーを配信対象とすることで、ボットなどへの配信リスクの低減を目指します。配信先の品質や広告の表示状況を確認するアドベリフィケーション(広告検証)と組み合わせることで、広告が人に届く確かさを高めていきます。

2つ目は、人間の一意性の確認を活用し、ユーザーへの適切な価値還元を支えることです。World IDによる認証と特典の付与管理を組み合わせることで、同じ人が複数のアカウントを使って特典を重複して受け取る行為を抑える仕組みを設計できます。

3つ目は、ユーザーの同意に基づいて蓄積したデータを、将来の施策に生かせる資産として活用することです。一度の広告配信による成果に加え、その後のコミュニケーションや購買への貢献まで含めて、広告投資の価値を捉えていきます。
当社では、アプリ「Humad」を通じて、ユーザーが自身の意思でデータを提供し、その対価としてポイントを受け取るモデルを構築しています。提供された属性や広告への反応を、同意された利用目的の範囲で活用することで、一人ひとりへの理解を深め、より関心に合った情報を届けることを目指しています。
こうした直接的な顧客接点を育てることで、サードパーティークッキーへの依存を減らし、適切なデータ管理と配信先との連携を前提に、過去の接点を次回以降の施策につなげていきます。広告投資によって、目先の成果とともに、将来に生きる顧客理解や関係性を蓄積する。それが、私たちの目指す継続的な広告価値です。

本村
広告の「透明性」は、広告主にとって非常に重要です。単に広告としての成果の良し悪しだけでなく、予算として用意した広告費が無駄なく、正しく運用されているかは、社内で共有したり、ステークホルダーに対して説明したりするうえで、不可欠な要素だと思います。

その中でWorld IDを活用すれば、「人間だと確認されたユーザーにのみ配信し、ボットやクローラーには配信していない」という事実を証明できます。加えて、ブロックチェーン上で「いつ、誰に、どこで配信したか」を可視化することで、広告配信の透明性を飛躍的に高められます。

現状、アドフラウドは国内では約5%、海外では5回に1回程度の割合で発生していると言われています。そうしたアドフラウドを排除し、人間だけに広告を配信することで、それだけでも広告効果が十分に改善できる余地があるでしょう。

今後はAIによるトラフィックの割合が増え、アドフラウドは一層深刻化することが予想されるなかで、私たちが提供する人間を識別した広告配信の価値は、さらに高まっていくのではないでしょうか。

森田
今は先行して、限られた企業様にのみ広告出稿を留めている段階ですが、旅行、製薬、不動産、金融といったさまざまな業界から引き合いをいただいています。

お問い合わせいただく背景には、大きく2つのパターンがあると考えています。
1つ目は、コーポレート領域を中心としたニーズです。獲得数などの直接的な成果に加え、限られた広告予算を、人間への確かな接点につなげることを重視されています。広告の配信先の品質やブランドイメージへの影響にも関心が寄せられるなか、人間認証を活用して配信対象の信頼性を高め、広告予算を有効に活用するという考え方に、期待をいただいています。

2つ目はダイレクトマーケティング領域です。購入や申し込み、その手前の行動も含めて、広告投資の効果を高めることが求められています。人間であることが認証されたユーザーへの配信を通じて、ボットなどによる無効な接触や反応を減らし、効果測定の精度や獲得効率の改善につなげられる可能性に関心を持っていただいています。

本村
昨年、博報堂がTools for Humanity CorporationおよびLG Electronics Inc.と共同で、広告主10社・参加者3,500人超を対象に実施したPoCでは、従来型のWeb広告と比較して、CTRが約10倍に向上し、直帰率も約15ポイント改善するなど、高い広告効果が確認されました。

この結果を踏まえると、かつてインターネットが普及し始めたタイミングで、広告の考え方や予算配分が大きく変わったのと同じように、今回のAIエージェントの登場もそれに匹敵するほどの変化だと捉えています。
つまり、マーケティングの基本的な枠組みや考え方そのものを、あらためて見直さなければならない時期に来ているのだと思います。

これまで運用してきた従来のインターネット広告においても、AIへの対応は避けられないテーマです。また、アドフラウドの深刻化や人間以外のデータの混入による学習阻害といった課題がすでに顕在化しつつある現状に対し、広告主の皆さまが危機感を持ち、関心を寄せていただくことが何より重要だと感じています。

生活者・広告主・媒体社を分断せず、「三方良し」で紡ぎ直す広告の未来

森田
現在は、人間認証を起点とした広告の仕組みづくりに取り組んでいます。その先に目指しているのは、自分のデータが生む価値を、多くの人が知り、その還元を実感できる社会です。
自分の意思でデータを提供し、その活用によって生まれる価値の一部を対価として受け取れる仕組みをつくりたいと考えています。人間認証や、ブロックチェーンを含む技術の活用を通じて、不正な重複利用を抑えながら、データの利用や還元の仕組みの透明性を高めることを目指します。

今後、AIを活用したサービスが広がるなかで、ユーザーデータから生まれる価値を誰が受け取り、どのように分配するかが、さらに重要な論点になると考えています。だからこそ、私たちは、生活者が情報や還元を受け取り、広告主が広告効果を高め、媒体社が良質なコンテンツやサービスを支える収益を得られる、三者に価値が循環する仕組みを目指しています。

一人ひとりの選択や行動が生む価値を、本人の意思を尊重しながら、本人にも還元する。その仕組みを広告事業から社会に広げていくことが、私たちの目標であり、使命だと考えています。

本村
私たちが目指すのは「生活者」「広告主」「媒体社」という広告を取り巻くさまざまなステークホルダーが「広告から価値を受け取れる状態」をつくり、対等な関係性をもう一度つくり直すことです。
現状、広告主にはアドフラウドの問題があり、媒体社は広告単価の低下によって収益を確保するために、ユーザーにとって必ずしも望ましいとは言えない広告の出し方をせざるを得ない場面があります。そうした状況が続くと、ユーザーは広告に対してストレスを感じてしまうと思います。

この課題を解消する手段として、人間認証を導入し、広告を届けるべき人だけに正確に配信することで、ターゲティング精度を高めることが必要だと考えています。それが実現すれば、広告主にとっては広告効果が高まり、媒体社にとっては広告による収益が向上し、より良いコンテンツに投資できるようになるでしょう。

私たちは「生活者発想」を掲げている会社だからこそ、広告主や媒体社だけではなく、生活者の立場もしっかりと捉えながら、この三者の関係性をもう一度、より良い形に紡ぎ直していきたいと思っています。

森田
広告配信やECをはじめ、これからのコミュニケーションには、人間が直接情報に触れる場面と、AIが人間に代わって情報を探し、比較する場面の双方を踏まえた設計が求められると考えています。
中長期的には、人間認証が、広告への信頼や生活者との関係を支える重要な基盤の一つになると考えています。

その実現に向けて、まずは広告主や媒体社とともに、人間認証を活用する意義や効果を検証し、広告の信頼性を高める取り組みを広げていきます。
また、広告が生む価値をユーザーにも直接還元する仕組みを広げ、生活者・広告主・媒体社の三者にとって、より価値のある広告のあり方を示していきたいと考えています。
これからも、一人ひとりの選択や行動が生む価値を大切にし、本人の意思を尊重しながら、その価値が本人にも還元される広告の仕組みづくりに取り組んでいきます。

※肩書は取材当時のものです

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