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いまどき女子のデジタル活用術! VOL.4 キーワードは「エンパワメント」と「セルフラブ」~ソーシャルリスニングで読み解く女性たちの現在と未来【前編】
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いまどき女子のデジタル活用術! VOL.4 キーワードは「エンパワメント」と「セルフラブ」~ソーシャルリスニングで読み解く女性たちの現在と未来【前編】

近年、企業のコミュニケーションに「ソーシャル」の視点を組み込むことが重視されるようになっています。しかし、そこからしばしば抜け落ちてしまうのが「女性」に対する視点です。近年では、女性をめぐる広告表現が炎上をもたらすケースも増えています。女性の現状をより深く理解し、豊かなコミュニケーションにつなげていくにはどうすればいいのでしょうか。ソーシャルメディアに投稿された声を分析するソーシャルリスニングのプロフェッショナルである「65dB TOKYO」と、働く女性を分析する「キャリジョ研」のそれぞれのメンバーが、女性の現在と未来をテーマに語り合いました。
(キャリジョ研「いまどき女子のデジタル活用術!」連載 前回までの記事はこちら。VOL.1前編 後編 VOL.2前編 後編 VOL.3前編 後編 )

高まるジェンダーギャップへの関心

キャリジョ研
世界経済フォーラムが昨年発表した「ジェンダー・ギャップ指数2020」で、日本は153カ国中121位という結果になりました。先進国では最下位の結果となり、衝撃的でした。
65dB
ソーシャルメディアでも、ジェンダーギャップに関する話題量は年々増えていて、19年末では22万件の投稿数がありました。関心がとても高まっていることがわかります。
キャリジョ研
日本国内で普通に生活していると、「ジェンダーギャップがあるのが当たり前」という感覚になってしまいがちですが、ソーシャルメディアでさまざまな意見に触れることで、実はそれが当たり前ではなかったことに気づく。そんなケースも多いと思います。とくにTwitterは悩みや愚痴などを吐露しやすい「本音メディア」でもあり、Twitterの投稿を見てジェンダーに関する先進的な考え方を自分ごと化した人も多いのではないでしょうか。
65dB
私たちは具体的にどういうトピックが語られているかをソーシャルリスニングの手法で分析してみました。「セクハラ」や「性暴力」に関する話題はとくに多く、昨年1年間でおよそ68万投稿となっています。伸び率で見ると、「女性の働き方」「育児休暇」などのテーマが前年比で23%も上昇しています。「夫婦別姓」も、投稿数自体は他のテーマほど多くはありませんが、増加率は1年間で2倍となっています。
キャリジョ研
多くの女性が自分のアイデンティティを確立したいという意識をもち始めているのを感じますね。一方、男性の側の理解も徐々に深まっているような気もします。3年ほど前まで、育休は女性が取るのが当たり前でしたが、最近では身のまわりの若い男性の中に育休を取る人が確実に増えています。

「ラベリング」が炎上につながるケースも

65dB
ジェンダーギャップへの意識が高まっている一方で、広告におけるジェンダー表現が批判され炎上してしまうことも依然としてありますよね。
キャリジョ研
社会には古い価値観ももちろん残っていて、生活者のインサイトを探りながら広告をつくっていくと、女性をステレオタイプに捉える表現が出てきてしまう。そんなケースがまだまだあるのだと思います。クライアントも広告会社も、自らの価値観や表現方法をアップデートして、ステレオタイプに陥らないメッセージをつくっていくことが必要なのではないでしょうか。
65dB
より共感されやすいコミュニケーションとはどのようなものだとお考えですか。
キャリジョ研
これまでのようにターゲットを性別や年齢などのデモグラフィックデータで捉えるのではなく、トライブ(同じ志向性や生き方を持った人たち)として捉え、そこに向けて適切なメッセージを発信していくのが一つの有効な方法だと思います。
65dB
女性を一つの集合と捉え、「女性とはこういうもの」とラベリングしていく。そのようなやり方を変えていくことが必要なのかもしれませんね。とくに、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭生まれ)やZ世代(2000年代初頭以降生まれ)は、ラベリングに対する拒否反応が強いという実感があります。
キャリジョ研
意識せずにラベリングをしてしまい、それが結果として炎上につながるというケースはよくあります。また、表立ってラベリングをしていなくても、CMの世界観や背景に「女性はこうあるべき」という価値観があって、それが生活者に伝わってしまうケースもあります。それから、ラベリングは女性だけでなく男性に対してもありえますよね。例えば、「男性は料理が下手」とか「男性は家事をしない」といった古い価値観が前提になっている広告表現は炎上しやすいと言えます。
65dB
個人よりコミュニティを大切にするのが、以前の日本の文化の特徴だったと思います。しかし、近年は「個」の意識、あるいは人権に対する意識が高まってきているということなのではないでしょうか。もっと自分らしく生きていいし、自分のアイデンティティに誇りをもっていい。そんな感覚がとくに若い人たちの間では普通のことになってきているのだと思います。
キャリジョ研
その点では、ジェンダーに関する日本人の感性は欧米に近づいているのかもしれません。65㏈のメンバーは海外経験が豊富な人が多いので、とくに欧米と日本の違いがよく見えそうですね。
65dB
例えば、日本には「ワンオペ育児」という言葉がありますが、この言葉は日本特有のもので、欧米で「ワンオペレーションで育児をする」と言っても、まったく通じないと思います。育児は2人で行うのが当たり前のこと、になっているからです。
キャリジョ研
日本特有の事情としてもう一つ挙げられそうなのは、「女性はこうあるべき」という理想が非常に高いということではないでしょうか。仕事を完璧にこなしながら、育児も料理も家事もまったく手抜きをしない。そんな女性像を女性自身も内面化してしまっていて、その結果ストレスや不満が大きくなるところがあると思います。女性自身の意識を変えなければならない点もありそうです。

女性をめぐる2つのキーワード

65dB
では、企業は女性たちをどのような形で応援していけばいいのでしょうか。私たちのソーシャルリスニングから、2つのキーワードが見えてきました。「エンパワメント」と「セルフラブ」です。エンパワメントとは、「女性が自分の環境や生活をコントロールできる力を持つ」ことであり、セルフラブとは「女性がありのままの自分を肯定し、自尊心を育てられる」ことです。それぞれのキーワードに関して、2017年度から19年度までの3年間の投稿推移や変化を分析してみました。

まず、エンパワメントに関するできる投稿は、17年度が45万件、18年度90万件、19年度140万件と、3年間で大きく伸びています。具体的なトピックとして多いのは、「キャリア」や「教育」です。この2つに関連する投稿数は、3年間で約5倍も増えています。やはり、仕事や自己研鑽などへの関心が高まっているということなのかもしれません。

キャリジョ研
事実として、働く女性の数が増えているということがありますよね。博報堂・博報堂DYメディアパートナーズでも新入社員の女性比率は年々上がっています。働いている女性がSNSで仕事やキャリアのことを話題にするのは自然なことだと思います。またそれにともなって、女性向けのセミナーや教育コンテンツも増えています。そう考えれば、「キャリア」と「教育」に関する投稿が増えていることには納得感がありますね。

キャリア・教育における「我慢しなくていい」意識の高まり

65dB
この3年間で意識の変化も如実に見られます。17年度の時点でも、就職活動や職場での差別に対して不満をもつ女性はもちろんいたのですが、「我慢すべき」とか「女性にはそのぶん特権がある」といった意見も少なくありませんでした。例えば、「女性だけが化粧をしなければならないのは不平等」とか「就職先が男性よりも限定されている」といった意見がある一方で、「女性割引や女性専用車両など女性が優遇される場面も社会には多くある」といった主張があったりしました。それが変わってきたのが2018年からです。
キャリジョ研
医学部入試差別問題が起きたのがその年でしたね。確かにその頃から女性の意識が高まってきた印象があります。その後、職場でハイヒールを履くことを疑問視する「#KuToo(クーツー、苦痛とかかっている)」のムーブメントがSNSで広まったりもしました。これまで女性は我慢をしてきたけど、もう我慢をしたり無理をしたりしなくてもいい──。そんな風潮がこの数年で広まりましたよね。
65dB
最近とくに増えているのは、就活や就労の服装ルールに関する不満です。就活時のヘアスタイルを自由にしようとパンテーンが手掛けた「#HairWeGo」キャンペーンもまさにその一つですよね。
キャリジョ研
就労規則には女性特有の項目がまだ数多くありますからね。就活でも、「自分の個性を出すことが大事」と言われる一方で、スーツや髪型などでは無個性を強要されます。働き始めてからも、「働くときはオフィスカジュアルでいいと言われたけれど、それがどんな服装なのかわからない」という声をよく聞きます。明確に規則があるわけではないけれど、周囲の目を気にして着るものを変えてしまう人も少なくないようですね。
65dB
アメリカでは、海外からの留学生を対象にした「ボストンキャリアフォーラム」という大規模な企業説明会が毎年開かれていますが、そこに参加する日本人学生はみんな黒スーツなので、かなり異様な光景でした(笑)。
キャリジョ研
そんな文化に違和感を抱く人も増えているのでしょうね。
後編では、ヘルスケアやセルフラブに関するテーマを深堀してみていきましょう。
後編に続く
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