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積水ハウス×博報堂 共同プロジェクト説明会速報レポート ~住まい手の生活行動データのAI解析で 潜在意識を可視化し、新サービスの共創を目指す~
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積水ハウス×博報堂 共同プロジェクト説明会速報レポート ~住まい手の生活行動データのAI解析で 潜在意識を可視化し、新サービスの共創を目指す~

博報堂は、生活のデジタル化により、あらゆるモノや場がインターネットでつながる「生活者インターフェース市場」を標榜し、これまでさまざまな企業や団体と、新しいサービス・体験を共創してきました。そして今回新たに、「プラットフォームハウス構想」を推進している積水ハウスと、住まい手の無意識の「行動の源泉」(潜在意識)を膨大な「生活ログ」から可視化することで新たな価値創造を目指す共同プロジェクトをスタートさせました。
さる2023年9月20日、このプロジェクトに関する記者説明会が開催され、両社の担当役員より、その狙いとビジョンに関する説明がありました。

●生活行動データを活用し、住まい手のニーズに寄り添うサービス開発を目指す

吉田裕明(積水ハウス株式会社 執行役員 プラットフォームハウス推進部長)

吉田
1960年からの30年間は「安全・安心」な住まい。1990年からの30年間は省エネやユニバーサルデザイン(UD)を重視した「快適性」の追求。積水ハウスはこれまで、それぞれの時代のニーズに合った住まいを提案・提供してきましたが、デジタル化が加速する2020年以降の30年を見据え、生活行動データを活用した住まいづくりを考えたいと思いました。それが今回ご紹介する「プラットフォームハウス構想」です。

玄関ドアの施錠。照明のオンオフ。エアコンの操作。窓シャッターの開閉。
私たちは日々の生活の中で、無意識にさまざまな行動をしています。
「プラットフォームハウス」は、こうした無意識の行動から「行動の源泉」を探り出し、新たなニーズを探り出し、次のサービスや価値創造につなげていくという考え方です。
この「プラットフォームハウス」を構築するために積水ハウスが構想しているのが、
 ①住まいの情報セキュリティの強化 
 ②必要なサービスを必要な時にインストールできる家 
 ③住環境データとライフスタイルデータの蓄積 という3つのステップですが、
今回の共同プロジェクトで重要になるのが②のステップです。
その具体的な取り組みとして積水ハウスは2021年に「PLATFORM HOUSE touch」というサービスを開始しました。

「PLATFORM HOUSE touch」は、住まい手が専用アプリをスマートフォンにダウンロードすることで、エアコン・照明などの操作や、窓の開閉状態の確認、玄関ドアの施錠等のホームセキュリティ、そして熱中症アラートなど住環境のモニタリングが可能になるサービスで、すでに1800の新築住宅(積水ハウス設計・施工の新築戸建住宅の約40%)で導入されています。スマートフォンさえ持っていれば、デジタルリテラシーを問わずに誰もが間取りと連動したUIで直感的に使いこなせるサービスで、先進の利便性を提供するとともに、住まい手の無意識の行動を「生活ログ」として蓄積することができるのが大きな特徴です。

●住宅メーカーならでのビッグデータをどう活用していくか

では、こうして蓄積されたデータをどう活用し、いかに新たなサービス提供につなげていくのか。積水ハウスが目指すのは、住まい手の生活に関するデータを間取りや家族構成など住まいの情報と紐づけた総合的な「生活ログ」として蓄積し、それらをAI解析することで、住まい手の特徴的な生活意識が現れる瞬間=「生活モーメント」(商標出願中)を可視化、さらには「生活習慣」や「行動の源泉」までも可視化することです。

たとえば、照明のオン・オフの状況と間取り・家族構成のデータから、「家族との時間を大切にしたい」といった価値観が読み取れたり、玄関ドアの開閉や施錠のデータから「安心な暮らしがしたい」という欲求がわかったり、「生活ログ」というビッグデータを解析し、住まい手の「行動の源泉」を可視化することで、住まい手に寄り添ったサービス提供が可能になり、究極のパーソナライズを実現することができます。
もちろん、ご提供いただいたデータの活用に関しては、徹底したセキュリティを担保するのは当然のことです。解析する膨大な「生活ログ」データは同意を得たもののみを活用し、独自に開発したエッジシステムにより、家庭内でのサイバー攻撃にも備えます。
こうした情報セキュリティの徹底というスタンスを前提とした上で、積水ハウスは今回、こうした「行動の源泉」を可視化する上で、独自のデータ分析力と生活者発想に基づく多くの知見を持つ博報堂の協力を得、共同プロジェクトを推進することになりました。

●生活のデジタル化がもたらす、新たなDX

青木雅人(株式会社博報堂 執行役員 HAKUHODO DX_ UNITED担当)

青木
コロナ禍を機に普及したオンライン会議のシステムといった技術の進化は、単に会議のあり方を変えただけでなく、働き方や暮らし方など、生活の革新を実現しています。
現在、生活の隅々まで進んでいるデジタル化を読み解くと、もはや情報のデジタル化だけでなく、生活そのもののデジタル化が進んでいると言ってもいいでしょう。
博報堂は、こうした生活のデジタル化により、あらゆるモノがインターネットにつながることで新しい接点が生まれ、生活者との情報のやり取りが可能になる「生活者インターフェース市場」を標榜していますが、今後も、そのインターフェースが増え、私たちの暮らし方も変わっていくと考えています。

今回、積水ハウスとの共同プロジェクトをスタートさせるにあたり、私たちは、「デジタル技術が進化し、人々の生活を豊かにすること」こそが真の意味でのDXだととらえたいと思います。長年、住まい手の暮らしを見続けてきた積水ハウスと、生活者発想を企業フィロソフィーとする博報堂がそれぞれの強みを発揮し合うことで、新しい価値創造型DXが実現することを期待しています。

●新しい暮らし方、働き方、家族像が可視化される価値共創プラットフォーム

具体的な取り組みとして、まず、数千万件に及ぶ膨大な「生活ログ」を活用し、AI解析することで、人の手および目ではなかなか発見しにくい生活パターンを探り出します。そして、そこから、いくつかの特徴的な生活パターンを抽出。実際の暮らしを考察することで新たな暮らし方、家族像が浮かび上がってきます。

たとえば、照明のオン・オフや施錠といった「生活ログ」をAIで解析すると、コロナ禍以降、在宅ワークが普及したことで、“外に出たら仕事、家に帰ったら父親”という従来の父親像とは異なる、“家の中で仕事も父親としての家事も器用に両立させる父親“という新しい父親像が浮かび上がりました。いわば、新たな職住融合スタイルの暮らしが見えてきたとも言えます。

このように、積水ハウスが「PLATFORM HOUSE touch」で蓄積した膨大な「生活ログ」から「生活モーメント」を発見し、「生活習慣」を読み取り、「行動の源泉」を探り当てるというプロセスで、今まで私たちが使っていた調査方法・データなどでは探りきれなかった家族像や生活像を可視化することができるようになります。
さらに、このように分析・可視化されたデータは、住まい手が幸せになる新たなサービス開発につなげるだけでなく、住宅業界以外の多様な企業と共有することで、新たな価値創造につながるDXを促進することが可能になります。
今回の共同プロジェクトは、そうした「価値共創プラットフォーム」を実現することが、目指すゴールです。

●多様なパートナーと、できるだけ多くの価値創造を

吉田
情報を預けていただける住まい手の皆さんにご安心いただくために、「生活ログ」等のデータの取得に関しては、「PLATFORM HOUSE touch」の利用規約で同意済みのデータのみを活用し、外部提供する際の同意取得も徹底します。また、積水ハウスがお客様から預けていただいたすべてのデータは、セキュアなクラウドによる環境で管理し、最小権限の原則に基づいたアクセス権限の運用を実施するとともに、独自のエッジシステムを開発し、家の中でのサイバー攻撃に対しても、安全・安心を確保します。
このようにして住まい手からお預かりした情報から、価値を創造し、新たなサービスという形でお客様にフィードバックすることが今回のプロジェクトの第一の目的ですが、さらに今回、積水ハウスと博報堂が目指すのは、業種や事業領域を問わず、多くの価値創造が可能になる「価値共創プラットフォーム」を構築することです。

たとえば小売業、サービス会社、ヘルスケア企業、運輸業など、その提携の可能性は大いにあると言っていいでしょう。いずれにせよ、その起点となるのが、積水ハウスで蓄積された「生活ログ」と博報堂の生活者理解力とデータ分析力を掛け合わせた「共創データベース」です。
博報堂と積水ハウスは、今回のプロジェクトを始動するにあたり、中長期的ではなく、
スモールスタートで始めて、できるだけ短期間で、できるだけ多くのパートナーと新たな価値創造を進めたいと考えています。

生活シーンのあらゆるモノがインターネットでつながり、新しいビジネスや体験が生まれる「生活者インターフェース市場」。新しい価値創造型DXを推進する博報堂と、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンの実現を目指しデータ活用を推進する積水ハウスの共創プラットフォームは、業種を問わず多様な企業が参加することにより、価値創造の可能性が広がるとともに、ビジネスに多くの新しい風景を生み出していくことでしょう。

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