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いまどき女子のデジタル活用術! VOL.1 ~インスタ映えはもう古い!?~最新のインスタインサイトと広告活用術とは【前編】
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いまどき女子のデジタル活用術! VOL.1 ~インスタ映えはもう古い!?~最新のインスタインサイトと広告活用術とは【前編】

本連載では、働く女性について研究している博報堂キャリジョ研※が、いまどきの女子を取り巻くデジタル環境、デジタル活用の実態などについてご紹介。彼女たちにはどんな広告アプローチが有効かを探っていきます。第1回は、博報堂DYメディアパートナーズの瀧川千智と佐藤有紗が、いまどき女子のインスタグラム活用実態について深掘りしていきます。

※博報堂キャリジョ研とは
博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性メンバーにて、2013年に立ち上げた社内プロジェクト。キャリア(職業)を持つ、特にお金と時間を自分のために使いやすい子どものいない女性を「キャリジョ」と定義し、インタビューや定量調査、トレンド分析などを通じて「キャリジョ」を徹底的に研究。その成果を社内外にナレッジとして共有し、日々のマーケティング・プランニング業務に生かしています。

■インスタユーザー女子の生態に迫る

瀧川
今回取り上げるのは、20~30代女性の多くが活用しているSNSのひとつ、Instagram(インスタグラム。以下インスタ)です。実際の利用者数も依然増加傾向にあり、情報感度の高い層が積極的に使っていることがわかっています。同じインスタユーザーでも、ほかのSNSと合わせてたまに使う程度の方もいますが、ここで紹介していくのは、日常的にインスタ内でブランドを知り理解して購買するところまでいくような“インスタ高感度”の人たち。購買ファネルの頭から最後までをインスタで完結させてしまうような層について紹介させてください。

彼女たちはまず、インスタ利用によって「自分の生活が変化したと思う」「写真の撮り方で人のセンスがわかる」と言うほど、インスタに影響を受けています。そもそもインスタの画面には、自分がアップしてきた過去の写真が載っている「プロフィール」と、写真が縦に表示されていく「フィード画面」がありますが、ここに2~3年前、写真や動画の投稿、ライブ配信ができて、投稿されたものは24時間以内に削除される「ストーリーズ」という機能が加わって、投稿された動画を横にスライドさせて見られるようになりました。ストーリーズの投稿数は非常に多くて、友だちやフォロー数が多いほど、彼らが上げていくストーリーズを見ても見ても終わらないという状態になっている。いずれにしてもこまめに新しいコンテンツが上がるので、彼女たちはトイレでも、会社の廊下を歩きながらでも、いつでも「呼吸するように」見ているそうです。特に20代は情報接触の速度も速くて、「高速いいね」「高速コンテンツ飛ばし」とも言えるような、1秒見たら次に行くというくらいのペースで、指をさっと動かし、トントンとダブルタップしては「いいね」をつけていく。そこの判断は一瞬です。

これは以前からの傾向なのですが、インスタ内では「情報のボーダーレス化」が起きています。「この冬のネイルは何が流行りかな」と思ったら、彼女たちはまずインスタ内のタグで検索し、この人いいなと思えばすぐにフォローする。そうすると似た特徴の人がおすすめされるので、数珠つなぎ状にフォローする人が増えていきます。雑誌などの場合は、ギャルならギャル雑誌、ママならママ雑誌とジャンルが縦割りになりますが、インスタ内だとママでもギャルをフォローしたり、英語が苦手でも外国人をフォローしたりといったことが起きていて、ジャンルも国も越えていくという特徴があります。

情報過多の状態ですが、だからこそ若者は「リコメンド信者」な傾向もあります。ネット上に多々あるサイトの中からは全然選べないけど、インスタなら「あなたにおすすめの投稿はこれ」といっておすすめしてくれる。一つ見ればさらに次のおすすめが上がってくるので、わざわざ文字で検索する必要もなくなります。検索画面に表示されるリコメンド投稿はユーザーに最適化されているので面白く、「1つ見始めると止まらなくなり眠れなくなるため、一度アカウントを消してやり直した」という子もいたほどです。このように延々とリコメンド投稿を見続けたり、どんどんクリックして深層へもぐってしまうことを、「時間が溶ける」「インスタの沼」と表現する子もいました。また、アカウントを一旦消してしまうということは、それだけSNSのアルゴリズムをわかっているということでもあります。特に20代前半の若者は、自分がいいと思うコンテンツには積極的に「いいね」を押してアルゴリズムの精度を上げる、つまりインスタに「学ばせる」という意識を自然と持っているようです。なので、たとえある投稿を面白いと思っても、もし自分のところに関連情報をおすすめされたくなければ、あえて「いいね」は押さない。それを一瞬で判断しているのです。

それほどのスピード感でインスタに向き合っている彼女たちですが、一方で、現在Youtubeで流行っているコンテンツに「ルーティンもの」があります。これは、インフルエンサーの子が「朝起きました、メイクします」とか「着替えます」といった1日のルーティンをアップしたもの。それを見るひとは時にだらだらと、こうした動画を楽しんでもいる。彼女たちの情報行動は速度的にかなりメリハリがあると言えます。

また、最近インスタは、自分以外に「いいね」数が非表示になる仕様に変わったのですが、それ以前、「いいね」数は基本的にオープンでした。彼女たち自身「いいねの呪縛」と表現しているのですが、「いいね」の数があまりに少ないと恥ずかしいと感じてしまうため、いかにいいね数をもらうかと同様、“いいね数の少ない投稿をいかに避けるか”にも工夫を凝らしています。たとえば「時間差投稿」。旅行先などから連続投稿すると見ている人は飽きてしまって、「いいね」が少なくなる。なので一度アーカイブに入れておき、他の人のフィードには上がらないようにします。そして、少し経ってから改めて投稿すると、そもそも投稿自体が古いのでフィード上には上がらず、自分のプロフィール欄にだけは一連のおしゃれな旅行の写真として残ることになる。少ない「いいね」をもらうくらいなら、最初から見せないというわけです。

そのほか、これからフォロワーが増えそうなアカウントに誰よりも早く「いいね」を押すことで情報感度の高さを誇示したり、共通の友人が同じ投稿に「いいね」を付けているかを何気なくチェックしたりといった、情報マウンティングも行われています。人間関係ももはや自分のブランディングツールとして捉えていて、おしゃれな写真だけにこだわるのではなく、友だちとの賑やかな写真を混ぜるなどして、プロフィール欄を恣意的にバランスよく仕立てているという印象です。

もちろん情報交換や情報入手の手段としてもインスタを活用します。「〇〇が好きな人とつながりたい」などのハッシュタグでゆるいつながりをつくる場にもなっていますし、プレ花嫁とか、写真が好きとか、大きなコミュニティがいくつも存在します。
さらにブランドや企業の公式アカウントも参考にしていて、気になったブランドをタップして着用イメージを見るなど情報収集に使っています。

■「インスタ映え」とはなんだったのか

瀧川
ここで、ブームにもなった「インスタ映え」について少し振り返ってみたいと思います。黎明期と言える2012年はパンケーキが流行し、インスタへの投稿のために花畑などに遊びに行くなど、「絵になるものを探す」という“フォトジェニック消費”が主流でした。私たちがインスタ強化期と呼んでいる2014年には、「もっと目立ちたい」という承認欲求の深化により、カラフルなコットンキャンディー(綿菓子)などとにかく派手で大げさなものや、自撮り機能で加工し、少しふざけた写真をアップして突っ込みを待つといった、とにかく目立つための投稿が主流になります。そして進化期である2016年以降、ユーザー数が増えてくると、派手で目立つだけではなく、おしゃれでかつ“私らしさ”もあるプロフィールページにこだわるようになります。たとえばある女の子が友人たちと大阪に行く予定を立てていたのですが、前日に「私はプロフィール欄は落ち着いた写真で統一しているから、大阪じゃなくて京都に行こう」と提案。旅先を変えたという話も聞きました。これはおそらくインスタ映えの究極の状態でしょう。インスタグラマー願望、とでも言えそうな、自らカバンの中身を公開したり、彼氏とおそろいの服を着ている写真を上げたりといった人も増えました。

インスタらしい行動が特に現れるのが「旅行」です。かつての旅と言えば、まずカタログやウェブで情報収集し、旅先を決め、旅行へ行き、旅先で記念撮影した写真を戻ってからシェアするという形が一般的だったと思いますが、彼女たちは、まずラインのグループ内で「こんな写真を撮りたいよね」と写真を持ち寄るフォルダをつくり、画像を上げていきます。そこから「この写真、タイのラン島らしいよ」というのがわかったら、ラン島を日本語でスポット検索し、日本人の写った写真を探す。グーグル検索と異なりリアルタイムの写真が分かるので、いまどういう格好で行くべきかがわかるんです。また、スポット検索で出てきた写真をタップすれば投稿した人のプロフィール欄が出てきます。普段おしゃれなライフスタイルを送っているような人だと分かれば、「そんな人が行っているラン島だから、イケてる」という証左になるわけです。実はグルメ情報も同じで、食べログレストランの口コミサイトはどんな人が投稿しているかわからないけど、インスタなら、普段おしゃれでセンスのいい食生活を送っている人が投稿しているお店だからハズレはないはず、と判断できる。投稿者の背景も含めて情報を参考にできるという意味で、ウェブ検索よりもインスタ検索するという子が多いのです。

話を戻すと、旅のメンバーも、相乗効果で自分もかわいく写れるよう、そこまで仲良くなくともあえてインスタ映えする友だちを誘うという話もありました。準備の際も、共通のハッシュタグをつくってみんなが投稿を見られる状態にし、たとえばユニコーンの浮き輪など、その年に流行った小道具を各自用意。海にいる3時間のうち2時間半は撮影に充て、持参した6着ほどの水着をグラビアアイドル並みに着替える。スマホだけではなく、一眼レフ、インスタントカメラや水中カメラも駆使して撮影し、帰国後はライングループに稟議フォルダをつくり、「この写真は投稿してもいい?」「これだとお腹が出て見えるので、ちょっと加工してください」などの確認をとってから投稿する。
かつてのようにまず行き先ありきで情報を集めていくというプロセスから、日常的にインスタで情報を蓄積するなかで、行き先を絞っていくという風に変化しています。これまで代表的な購買決定プロセスとしてAIDMAなどがありましたが、彼女たちの場合は商品を理解したうえでどんな写真が撮れるかを想像し、買い、体験し、自己演出する…という風にカスタマージャーニーを回しているわけです。

インスタ以外のソーシャルメディアにフェイスブックやツイッターなどがありますが、20代~30代女性にとってはインスタはそのなかでも“見せたい自分を見せる”ための「自分ブランディングメディア」と言えるでしょう。一方ツイッターに書くときは「本音でトークするメディア」、フェイスブックに投稿するときは、転職や結婚などのニュースがあった際に発信する「冠婚葬祭メディア」と言えます。なので、SNSの使い分けとしては、たとえば美容情報だったら、インスタでコスメの新しいトレンドを探して、ツイッターでそのコスメのリアルな評価を探します。インスタにはポジティブなことしか書いてないけど、ツイッターには美容アカウント(通称:美容垢)というのが多々あり、そこにはポジティブなこともネガティブなことも含めてリアルな商品に対する本音が書いてあるから、そのような使い分けをするのです。

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以上、前編ではインスタユーザーの女子の生態、インスタ映えの実態についてご紹介しました。
いよいよ後編では、「インスタ映え」以降はインスタがどう使われるようになっていくのか、検証していきます。

後編はこちら

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  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    雑誌局 業務推進部
    2005年博報堂入社。マーケティング職として8年従事し、化粧品、トイレタリー、飲料、通信会社などを担当したのち、博報堂DYメディアパートナーズの雑誌局へ。ファッション・コスメ・クルマなどを担当し、メディアプランニングやメニュー開発を行う。女性プロジェクト「博報堂キャリジョ研」のメンバーでもある。
  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    データドリブンマーケティング局
    データドリブンマーケティング部
    2012年からオンライン・オフライン領域含めた幅広いマーケティング業務に従事。戦略立案から実行までワンストップで携わる。
    博報堂DYメディアパートナーズに入社後は、飲料、食品、美容、金融、ECなどをクライアントとし、ダイレクト領域のマーケティング戦略や戦術プラニング、PDCAマネジメント、メディアプラニングを担当。
    働く女性を研究対象とした社内プロジェクト「博報堂キャリジョ研」のメンバーでもある。