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いまどき女子のデジタル活用術! VOL.4 キーワードは「エンパワメント」と「セルフラブ」~ソーシャルリスニングで読み解く女性たちの現在と未来【後編】
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いまどき女子のデジタル活用術! VOL.4 キーワードは「エンパワメント」と「セルフラブ」~ソーシャルリスニングで読み解く女性たちの現在と未来【後編】

女性の価値観はこの数年でどう変化しているのでしょうか。ソーシャルメディアに投稿された声を分析するソーシャルリスニングから明らかになったのは、「エンパワメント」と「セルフラブ」という2つのキーワードでした。その2つを企業のコミュニケーションに取り入れていく考え方や方法について、ソーシャルリスニングを用いてマーケティング戦略を立案する「65dB TOKYO」と働く女性を分析する「キャリジョ研」のメンバーたちが意見を交わし合った座談会。その後編をお届けします。
(キャリジョ研「いまどき女子のデジタル活用術!」連載 前回までの記事はこちら。VOL.1前編 後編 VOL.2前編 後編 VOL.3前編 後編 VOL.4前編

女性のヘルスケアにおける意識変化「完全タブーからの脱却」

キャリジョ研
ソーシャルリスニングから読み取れる変化には、ほかにどのようなものがありましたか。
65dB
女性のエンパワメントに関する大きなトピックとしてもう一つ挙げられるのは、「ヘルスケア」です。ヘルスケアに関連するSNSへの投稿数は、この3年間で175%の伸びを見せています。とくに生理や女性の性など、これまでオープンに語ることがタブー視されてきたテーマの投稿が増えています。
キャリジョ研
そのようなテーマに関連した企業のコミュニケーションが炎上したケースも多々ありますよね。
65dB
そうですね。プライベートな話なので、企業がコミュニケーションする時は、まだまだ慎重になるべきトピックだと思います。しかし最近では、生理やピルの正しい知識を広める個人の投稿がTwitterでたくさんリツイートされたことなどがきっかけになって、それらの話題に関して個人がSNS上で発信することが普通になってきました。昨年くらいからは、企業が個人の情報発信をハッシュタグなどを通じて後押しするケースが見られ、さらに多くの女性が自分の生理や性の悩み、自らの体験などを投稿するようになりました。
キャリジョ研
生理や性に関する話を人前でするのは恥ずかしいこと、生理や性の苦しみは我慢して当たり前──。そんな風潮がずっと続いてきたわけですよね。でも、SNSでそのような悩みを吐露できるようになれば、いろいろなアドバイスがもらえるし、一人だけで悩まなくても済むようになります。
65dB
女性のヘルスケアに関する話がオープンにできるようになると、女性に限らず、職場の同僚や上司などの男性も楽になると思います。生理休暇の取得を勧めることができるなど、自然な気遣いができるようになるからです。
キャリジョ研
キャリアや教育に関するテーマもそうですが、女性をめぐるさまざまな問題を女性たち自身が自分の問題と捉えることによって、活発な意見の交流が生まれ、それが多くの女性に、声をあげ、自分の意見を主張する勇気をくれる。そんな動きが生まれているということですよね。その結果、女性を取り巻く環境・社会の改善につながり、最終的にはジェンダーギャップが是正されていく、ということなのだと思います。

日本における「セルフラブ」事情

キャリジョ研
もう一つのキーワードである「セルフラブ」についても説明していただけますか。
65dB
セルフラブとは「ありのままの自分を受け入れる」ことですが、トピックで見ると「ありのままの生き方」に関する話題量が31%、「ありのままの見た目」に関する話題量が43%増えています。

一方、英国のデータと比べてみると、英国ではセルフラブの話題量が48%であるのに対し、日本は14%となっています。そう考えると、日本はまだまだ「セルフラブ後進国」ということになります。この理由をどう考えればいいと思われますか。

キャリジョ研
欧米の場合、一つの国の中にたくさんの民族や人種が暮らしている場合が多く、人々の肌の色や容姿が日本と比べてとても多様ですよね。その多様性を尊重することと、それぞれの人が「ありのままの自分」を受け入れることは、ほぼイコールなのではないでしょうか。一方、日本にはまだそこまでの多様性はないので、「ありのままの自分」を大切にする必要性もそれほど強く意識されていないということなのかもしれません。

もう一つ、これは博報堂生活総研調査にもありますが、日本人女性は男性に比べて自分に自信のない女性は多く、しかも年々そのスコアは上がっています。「スマートでなければならない」「美しくなければいけない」といった固定観念が女性自身にあって、その理想とのギャップが自信のなさにつながっていると考えられます。

65dB
なるほど。理想に縛られてしまう傾向が日本の女性には強いのですね。一方で、女性のオピニオンリーダーがセルフラブを喚起するメッセージを発信したり、従来の「美」の規範には必ずしも当てはまらないような女性が人気を集めたりする動きも活発になっていますよね。
キャリジョ研
アパレルブランドなども、いわゆるモデル体型ではない「ボディポジティブ」なタレントを積極的に起用して、女性の自己肯定感に訴えるようなコミュニケーションを実践するようになっていますね。とてもいい動きだと思います。

徐々に高まってきたセルフラブの意識

65dB
日本でも「ありのままの見た目」を受け入れようという風潮は確実に高まってきていることですね。
キャリジョ研
そう思います。ただ、「ありのまま」という言葉で注意したいのは、「ありのままの自分」とは、「化粧をしない自分」とか「ファッションに無頓着な自分」ではないということです。「ありのまま」とは、自分を磨くための努力をしないということではなく、自分を磨く努力のベクトルが「自分らしさ」であるということです。押しつけられた価値観に従うのではなく、自分がなりたい自分に向かって自分を高めていく。それがセルフラブということなのではないでしょうか。
65dB
それはとても重要な視点ですね。おそらく、これまで日本の女性を縛ってきた「理想像」や「あるべき姿」自体も変わってきているので、自分の価値観を追求しやすくなっているということもあるのだと思います。決まった理想像があった時代から、いろいろな理想像、いろいろなあるべき姿がある時代になってきている。だから、それぞれの女性が自分の理想を求めていけばいい。そういうことなのかもしれません。

一方、セルフラブのもう一つの要素である「ありのままの生き方」に関しては、男性の関与が重要になる場面が多いと思います。先ほど、育休を取得する男性が増えているという話が出ましたが(前編参照)、パートナーや職場の同僚、上司などが意識をアップデートして、女性に対する理解を深めることによって、女性もありのままの生き方ができるようになるのではないでしょうか。

キャリジョ研
とくに仕事に関しては、男性の理解は必須ですよね。一方、これも先ほどの「炎上」のくだりで出ましたが、男性にも「男性らしさ」を押しつけないという視点も大切だと思います。

女性も男性も、これまでは確固たるロールモデルがあって、それに向かって努力する生き方が普通だったと思います。今後は、「ロールモデルはいらない、それぞれが自分のモデルをつくっていけばいい」という時代になっていくのではないでしょうか。

「社会全体で女性を支援していく」という視点を

65dB
エンパワメントやセルフラブに関する意識は、今後さらに高まっていくと考えられます。女性を対象にした商品やサービスを提供する企業にとって、コミュニケーションにその2つの視点を入れていくことがこれからますます重要になりそうですね。
キャリジョ研
女性マーケティングを考える上で、エンパワメントやセルフラブは欠かせない要素になっていくと思います。大切なのは、一方的にメッセージを伝えるのではなく、女性の共感を上手に引き出していくことです。そして、女性目線に限定するのではなく、男性を巻き込みながら「社会全体で女性を支援していく」という視点を持つことも求められるのではないでしょうか。
65dB
エンパワメントやセルフラブは、女性一人ひとりの問題であると同時に、社会全体の問題でもあるということですよね。その視点を企業が持つことによって、企業は社会の変化に寄与できる可能性があるということなのだと思います。
キャリジョ研
まさしくそのとおりですね。ソーシャルリスニングによって、時代のキーワードや、生活者の意識の変化、これからの兆しなどが明らかになることがよくわかりました。今日はありがとうございました。
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