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多くのメーカーはこれまで、アナログなセールスプロモーション(SP)を行ってきました。商品の購買データを持っているのは流通であり、メーカーはそのデータを扱うことができなかったためです。しかし、近年のデジタル化によりこの状況が変わってきました。SP領域のデジタル化によってマーケティングはどのように変わるのか、博報堂DYメディアパートナーズ統合メディアプラニング局プラニンググループスーパーバイザーの窪田充が、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの3社主催で行った“生活者データ・ドリブン”マーケティング領域に関するセミナーで語りました。

SP領域をデジタル化すると、自販機がマーケティング装置になる

メーカーはこれまで、顧客の顔が見えないなかでSPを行ってきました。しかし、この状況がデジタル化によって大きく変わりつつあります。ある飲料メーカーの取り組みをご紹介します。

このメーカーでは自動販売機とLINEを連携するサービスを構築しました。利用者は、飲料の購入時にスマートフォンのLINEアプリをかざすとポイントを獲得できます。このデータによって、メーカーはどのような属性の生活者が、どの商品を、どの地域・時間帯で買っているかを知ることができます。つまり、自販機を購買装置からマーケティング装置に変えることができるのです。

このサービスを提供するにあたって、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)のソリューションである「DialogOne」が採用されました。DialogOneは、LINEとの連携や制御に加え、顧客データの管理や、ポイント決済などを実行できるプラットフォームです。

このメーカーの事例には2つのポイントがあります。1つは、既存の自販機にビーコンを設置するだけでサービスを始められることです。そのため、急速に全国展開することが可能でした。

もう1つは、既存のLINEアプリが利用でき、新規に独自のアプリなどを入れる必要がないことです。つまりユーザー側の負担が非常に少ないと言えます。

キャンペーンに変化を与える、リアルタイムの顧客データ分析

自販機から得たデータによって、新たに様々なことが分かるようになりました。例えば、同社の主力製品は上位10%の顧客が自販機売り上げの45%を占めており、上位30%で見ると売り上げの8割を占めていることが分かりました。

また、どのような優良顧客が定着し続けているかなども把握できるようになり、対策をとれるようになりました。この飲料メーカーでは、博報堂が提供しているクラウド型データ分析ツール「HAKQEN」でリアルタイムにデータ分析をしています。HAKQENを使うと、どの商品が売れているか、どの自販機での販売が多いか、など様々な視点でデータを見ることができます。

キャンペーンのやり方も変わりました。「自販機の近くでLINEアプリを振るとLINE Payの残高がもらえる」といったキャンペーンを展開することで、告知に対してどれだけの人が反応したか、キャンペーンが顧客のLife Time Valueにどう機能したか、といったことが分かるようになりました。

店頭でのSPについても、新たな施策を展開しています。商品に応募用のシリアルコードを添付し、LINEアプリを通じて複数回シリアルを入力すると、景品が絶対にもらえるマイレージキャンペーンを実施しました。従来は店頭で、はがきを持って帰ってもらったりノベルティを付けるといった一方的なコミュニケーションしかできませんでしたが、この新施策により対面販売のようなコミュニケーションが可能になりました。しかも、従来のハガキなどは約1~4%ほどしか返信がこないのに比べ、アプリを使った新キャンペーンでは約16%の返信があったということです。

LINEアプリを利用しているため、途中までCPポイントを貯めているにも関わらず、休眠しているユーザーに対して「あと少しで景品が絶対もらえますが、貯めるの忘れていませんか」といったメッセージを送ることもできます。こうした個別のアプローチも、DialogOneを利用することで実施することが可能です。

デジタルとSPを融合させた専門組織「SP EXPERT’S」の誕生

このように、DialogOneはLINEを活用したマーケティングを大きく進化させますし、今後は、Facebook Messengerなどの様々なSNSとの連携も増やしていく予定です。
当社ではこのほど、SP関連のソリューションを使いこなす「SP EXPERT’S」と呼ぶ専門のチームをつくりました。DialogOneについてもこのチームで担当していきます。

SP EXPERT’Sは、これまでの長年にわたる博報堂DYグループのSP領域での取り組みの結果、誕生しました。SP領域のデジタル化には、当初はデジタルの専門家であるDACを中心に取り組んでいましたが、販促系の知識が不足しておりました。その次に、販促系の博報堂プロダクツが取り組みましたが、デジタルの知識が不十分でした。今回のSP EXPERT’SはDACと博報堂プロダクツがお互いの専門分野を活かしてタッグを組んでできたものです。

SP EXPERT’Sは、デジタルとSPという全く違う2つの文化を融合することに力を入れてきており、それがいかに難しいかを痛感しながら様々な事例で試行錯誤してきました。この経験は、他のクライアント様の事例でも生かすことができるはずです。

今日ご紹介したようなDialogOneを活用したソリューションは、日用品だけでなく、自動車メーカーや外食チェーンなどでも活用出来るはずです。自動車メーカーであればディーラーが、外食チェーンであればフランチャイズオーナーが購買データを持っています。こうした分断を解消することができるのが、今日紹介したソリューションです。是非、お問い合わせいただけたらと思います。

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  • 株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 統合メディアプラニング局 プラニンググループ スーパーバイザー
    2010年博報堂DYメディアパートナーズ入社。デジタル媒体担当、大手飲料メーカー営業担当を経て、現在は統合メディアプラニング業務に従事。