テレビとデジタルを往還する生活者の行動をリアルに把握する──博報堂とThe Trade Deskの協業から生まれた〈AaaS with TTD〉
テレビとデジタルをシームレスに行き来する生活者の広告接触実態とリアルな効果をどう把握するか──。博報堂はこれまで、独自の「テレデジ分析」の手法を駆使してその課題に取り組んできました。The Trade Deskの協業から生まれた〈AaaS with TTD〉は、そのテレデジ分析の新しい可能性を示すソリューションです。博報堂が保有するテレビ視聴データと、The Trade Deskが保有する広範なメディア接触データを連携させることから生まれる価値について、ソリューション開発と運用を牽引するメンバーに話を聞きました。
関連リリース:AaaS、The Trade Deskと提携し、新ソリューション「AaaS with TTD」提供開始
山中 竜也氏
The Trade Desk Japan
プリンシパル・テクニカル・アカウント・マネージャー
小澤 怜平
博報堂
プラットフォーマー戦略局 企画・開発部
佐原 利周
博報堂
プラットフォーマー戦略局 企画・開発部
テレビとコネクテッドTVのクロス分析が可能に
──The Trade Desk(以下、TTD)について、あらためてご紹介いただけますか。
- 山中
- TTDは、広告主や広告会社を支援するテクノロジー企業です。自社媒体を持たない独立系のDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)事業者である点に大きな特徴があります。さまざまな媒体社やパートナーから得られる膨大なデータを活用し、クライアントや広告主に対して効率的かつ効果的な広告配信を実施し、チャネルを横断したインサイトを提供できます。また、データの中立性や透明性が担保されていることもTTDの強みです。本社はアメリカにあり、日本では2014年からビジネスをスタートさせています。
──共同で開発したソリューション〈AaaS with TTD〉の概要をご説明ください。
- 小澤
- 博報堂のAaaSに蓄積されたデータとTTDのデータを突合して、精緻な分析を可能にするソリューションです。現在のところ、AaaSの大規模なテレビ実視聴データと、TTDが保有するデジタル広告の実接触データの連携を実現させています。
- 山中
- TTDはこれまで、TVerやSpotifyなど、さまざまな媒体への広告配信をご支援しながら、媒体を横断して広告効果を分析するサービスを提供してきました。アメリカでは地上波TVと連携したソリューションも展開しており、このような付加価値を日本においても提供していきたいと考えていました。広告環境が変化し続ける中、今回の協業で、博報堂が保有されている大規模なテレビ視聴データと連携する事で計測の枠組みをさらに補完・高度化し、プラットフォームを横断した広告効果をより包括的に把握する事ができました。

生活者が広告に接触してから、ウェブサイト来訪やコンバージョンに至るまでどのような流れを辿って来たのか。それを、テレビ接触を含めて細かく分析できるのが〈AaaS with TTD〉の特徴です。例えば、デジタル広告だけに接触した人、テレビ広告だけに接触した人、テレビとデジタルの両方に接触した人のそれぞれのコンバージョンレートを分析して、どのケースが最も広告効果が高かったかを明らかにする。そんな分析が可能です。
- 小澤
- 広告展開のKPIはクライアントによってさまざまです。〈AaaS with TTD〉はそれぞれのKPIに応じて、どのような媒体にどのような広告を出稿するのがよいのかを、回帰分析などの統計手法によって明らかにすることもできます。
- 山中
- もう一点、博報堂が保有するテレビ視聴データと、TTDが保有するコネクテッドTV(CTV)の視聴データを連携させることができるのも〈AaaS with TTD〉ならではです。従来テレビ広告を出稿してきたクライアントが、より広範な動画戦略の一環として新たにCTVを活用するケースが増えています。しかし、テレビとCTVの広告効果をクロスして分析する方法がこれまではほとんどありませんでした。それが可能になったのも、このソリューションを開発した大きな意義だと思います。
- 佐原
- クライアントに提供できる〈AaaS with TTD〉のメリットとして、生活者のリアルな行動実態を把握できることが非常に大きいと考えています。従来、広告予算の投資対効果を可視化することはできましたが、なぜそのような効果がもたらされたか、あるいはなぜ思うような効果が出なかったかを明らかにすることが難しいという課題がありました。

〈AaaS with TTD〉を活用することで、広告接触後の生活者のアクションを分析して、有効に働いた媒体やクリエイティブ、接触経路などを明らかにすることで、広告効果をもたらした要素を細かに把握することが可能になります。その検証をもとに、マーケティング戦略や広告戦略をブラッシュアップし、より効果の高い広告展開ができるようになる。それが〈AaaS with TTD〉の大きなメリットです。
- 山中
- 一般に、広告効果の分析は「集合体としての生活者の傾向」を明らかにすることを目的としています。それに対して〈AaaS with TTD〉は、プライバシーに配慮した形で個としての生活者の動向を把握することが可能です。ある生活者が、どのタイミングでどの広告に接触し、次にどの広告を見て、それからどのくらい経ってからコンバージョンに至ったか──。そこまでの細かな分析をすることで、生活者一人ひとりの動きをイメージした精緻なプランニングができるのも、このソリューションの大きな特徴です。
コラボレーションから生まれた新しい価値
──〈AaaS with TTD〉リリース後の反響についてお聞かせください。
- 小澤
- 2025年10月のリリース後、たくさんのクライアントからご相談をいただきました。
分析検証のフェーズに入っている案件も増えています。
- 佐原
- ご相談をいただいたクライアントの課題感はさまざまです。リーチを広げたい、指名検索を増やしたいといったご要望のほか、複数の課題のそれぞれに効果のある媒体を把握したいといったニーズもあります。
- 小澤
- あるブランドの分析がうまくいったので、別ブランドでも分析したいと言っていただいた案件もありました。また、媒体やクリエイティブ素材を変えながら、どういう条件のときに生活者の態度変容がおきやすいかといった検証も実現しています。
- 山中
- 先ほどお話したテレビとCTVのクロス分析によって、媒体の組み合わせ効果を可視化できた案件もありしたね。そういった検証を踏まえて、メディアプランニングの最適化のご提案をすることが次のステップであると考えています。
──TTDが博報堂とコラボレーションする意義について、お考えをお聞かせください。
- 山中
- 大きく3つあります。1つは、すでにお話しているように、テレビの実視聴データを活用できることです。これによって、TTD単独ではできなかったデータ分析ができるようになりました。
2つ目は、ソリューション開発を担える方々がたくさんいらっしゃることです。
〈AaaS with TTD〉は、小澤さんや佐原さんをはじめ、「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってくださる方々がいて、かつ皆さんが開発のスキルをお持ちだったからこそ実現したソリューションです。人材力が博報堂の大きな強みであることが、今回ご一緒してよくわかりました。
3つ目として、広範なクライアントネットワークがあること。これも博報堂ならではだと思いました。POC(実証実験)の段階で、テストユーザーとしてソリューションを使ってくださるクライアントがすぐに見つかったのも、博報堂のクライアントネットワークがあったからこそです。
──博報堂から見たTTDとの協業の意義はどうお考えですか。
- 佐原
- 山中さんからお話があったように、TTDの技術を使うことで、ID単位で媒体接触頻度や接触した順番などを把握することができます。そのような緻密な分析によって、クライアントへの提案の内容を高度化できること。それが何より大きな意義であると感じています。またTTDは、OTTやOOHなど広範な媒体のデータを保有しています。それを活用させていただけるのも大きなメリットですね。
──ソリューションを運用する中で見えてきた課題がありましたら、お聞かせください。
- 山中
- 開発段階では、クライアントにとって有用であると思われる機能を想定しながらソリューションをつくり込んでいきました。しかし実際に運用してみると、我々が想定していなかったご要望がいろいろあることがわかりました。想定外のご要望はこれからもどんどん出てくると思います。そういったニーズを1つ1つ取り込んで、ソリューションの機能を拡張していく取り組みが必要であると考えています。
- 小澤
- 幸い、機能の改善や追加ができる開発メンバーがこのチームには豊富にいます。また、TTDが展開しているサービスの中には、今後〈AaaS with TTD〉に組み込んでいける可能性があるものがまだまだあります。クライアントのメリットをより大きくしていくために、柔軟にソリューションの機能を増やしていきたいと思っています。

- 佐原
- もう1つ課題があるとすれば、メンバーのスキルを今まで以上に磨いていかなければならないことです。〈AaaS with TTD〉によってこれまでにない緻密な分析ができるようになったぶん、その結果を解釈して次のプランニングにつなげていく高度なスキルが求められます。分析結果をわかりやすいアウトプットとして表現する力や、より効果につながるご提案をする力を身につけていく必要があります。
広告効果を継続的に高めていく取り組みを
──このソリューションを活用して、今後どのようなことを成し遂げたいか。それぞれの思いをお聞かせください。
- 佐原
- 生活者の広告接触行動の実態をありのままの姿で可視化したいと考えています。
例えばリテールメディアなどのプロモーション接点や、従来は効果検証が難しいと考えられてきた領域も含めて、マーケティング活動全体を線として捉えて、その線上で生活者がどのように行動しているかをリアルに浮き彫りにしていくことがこれからの目標です。
- 山中
- 私は2つの目標があります。1つは、〈AaaS with TTD〉の守備範囲を大きく広げていくことです。クライアントが必要としている分析軸は多岐にわたります。メディア、クリエイティブ、広告予算の配分など、広範囲な分析軸での検証を可能にし、かつ、佐原さんがおっしゃるように、それをわかりやすいアウトプットにして、最適なプランをクライアントに自信をもってリコメンドしていけるようにしていきたいと思っています。
もう1つは、〈AaaS with TTD〉を使った分析によってパフォーマンスが高いことがわかったセグメントを、次の広告の配信ターゲットにするといった流れをつくることです。
これは、すでにあるTTDのソリューションを使うことによって比較的簡単に実行することが可能です。分析、次のキャンペーンのプランニング、さらに広告配信までを一気通貫でご提供できるサービスの開発を目指していきたいと考えています。
- 小澤
- そういう一気通貫のサービスによって、PDCAサイクルを回しながら広告の精度を継続的に向上させていく。そんな展開をぜひ実現させたいですね。
僕の長期的な目標は、多岐にわたる分析のナレッジを統合して、トータルなプランニング手法を確立していくことです。その統合的なプランニングの方法論の中で、「このようなケースなら〈AaaS with TTD〉をお使いください」とクライアントに提案していく形をつくれれば理想的だと思います。そのためには、TTDの皆さんのご協力が不可欠です。これからもこのコラボレーションをぜひ続けていきたいですね。

※肩書は取材当時のものです
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山中 竜也The Trade Desk Japan
プリンシパル・テクニカル・アカウント・マネージャーIT・データ分析分野での経験を経て、2020年The Trade Deskに参画。トレーディングポジションを経て、2025年より現職。クライアントと協働しTTDの技術を広告主・広告会社などのパートナーと連携し、独自ソリューションを開発する取り組みのサポートや、データやインベントリの新規パートナー連携(Integration)のテクニカルサポートを中心に、プラットフォーム/APIのトラブルシューティングやエンジニアリング・プロダクト部門との連携を担っている。
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博報堂
プラットフォーマー戦略局 企画・開発部2020年博報堂DYメディアパートナーズ(現博報堂)入社。TV視聴ログデータを活用した開発業務に従事した後、現在はプラットフォーマーアセットを用いた企画開発業務を担当。TVやデジタル広告の効果可視化ソリューションの開発の他、インフルエンサー/コンテンツ/クリエイティブ/コマース領域におけるプラットフォーマーデータ活用を推進。
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博報堂
プラットフォーマー戦略局 企画・開発部2022年博報堂DYメディアパートナーズ(現博報堂)入社。メディアプラニング職として、金融、フィットネス、家電、人材等幅広い企業のメディア戦略、PDCA運用・構築を担う。2025年10月より現職にて、データアセットを活用した企画開発・PM業務に従事。「テレビ/デジタル広告の効果可視化」「OOHプラニング手法開発」等、クライアント課題解決を見据えたソリューションの構想~開発~実装~セールスまで一貫して携わる。


