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【第6回】顧客体験価値を向上させるリテールメディアサイネージの可能性
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【第6回】顧客体験価値を向上させるリテールメディアサイネージの可能性

ショッパーマーケティングを専門とする組織「ショッパーマーケティング事業局(SMK局)」に迫る本連載。第6回となる今回は、リテールメディアに特化したワンストップ統合窓口 「リテールメディアONE™」を新設したSMI(ショッパーマーケティング・イニシアティブ™ )のメンバーであるSMK局の堀江と、ドラッグストアを中心にデジタルサイネージのネットワークに強みをもつ株式会社MADSの高橋氏に、昨今注目されているリテールメディアの可能性について聞きました。
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高橋 信也氏
株式会社MADS 執行役員 CMO 広告事業部長

堀江 亮平
博報堂 ショッパーマーケティング事業局 リテールDX推進グループ
ビジネスプロデューサー リテールメディアマイスター

堀江
高橋さん、本日はよろしくお願い致します。
昨今、注目度がますます高まっているリテールメディア市場についてお話をお伺いできればと思います。御社はドラッグストアを中心とした日本最大級のデジタルサイネージ広告のメディアネットワークを運営されていらっしゃいますが、御社への問い合わせの傾向や最近の動向は何か変化などありますでしょうか。
高橋
はい、問い合わせは着実に増えていますね。
やはり3rd Party Cookieの活用制限による1st Party Dataの利活用への関心がさらに高まっていることが大きく影響しているのではと思います。
原価高騰やこの数年での生活環境の変化に伴い、最適なコミュニケーションの実現に向けて、業界全体が大きく動いていると感じます。
堀江
ドラッグストアなどの店頭に設置されたデジタルサイネージのメディア化は、どういった役割であり、どのような効果をもたらすものになるのでしょうか。
高橋
店頭に設置したデジタルサイネージは、店内で最も多くの来店者へのリーチが可能であり、認知、発見、瞬間的な購買意欲の向上が見込めます。
来店した生活者が事前に目的とする商品とは別に、店頭ディスプレイやサイネージの情報から、自分に必要な商品を判断し、購買行動に移す(非計画購買)ことが多いと分かっています。

堀江
先日、私自身も実体験で感じることがありました。X(旧Twitter)で新しい金木犀の香りのボディペーパーが少し話題になっていたのを見ていました。すると、数日後たまたま、別のものを買いにドラッグストアに行った際、店頭でその商品が紹介されていました。その時にX(旧Twitter)で話題になっていたことを思い出し、「あ、じゃあせっかく置いてあるんだったら買ってみようかな」という、まさに非計画購買の形があったなと感じました。
高橋
はい、こういった購買行動は皆さんの日常生活でも無意識の内に経験されていると思います。弊社の独自アンケートで、約80%の購買が非計画購買に該当すると言う調査結果が出ています。

店頭(店内や店舗入口)における情報接触をきっかけに商品購入を行うことがあるかという調査では、約70%があると回答しています。
こういったデータからも店頭におけるデジタルサイネージ広告の配信は非常に有効であるということがわかります。

堀江
私はリテールメディアに関わって約3年になりますが、このリテールメディアサイネージ広告に大きな可能性を感じています。広告配信対象者である来店者は、今まさに消費行動を行おうとしている、最も購買に対してモチベーションが高いタイミングで情報接点を創出することができます。高橋さんがご提示されたデータにも裏付けがあるように、この最適なタイミング、かつ来店者が必ず通過する店頭で情報を的確にインプットすることができれば、商品認知の獲得だけでなく、購買効果をもたらすことができると考えています。
高橋
例えば、居酒屋を例にすると、新しい居酒屋が「ここ安いですよ」という店前での声掛けを行う時に、ぼそぼそと元気なく声掛けするより、元気よくハツラツと「お店オープンしました!」とするだけで、そのお店への興味・関心は大きく変わってきますからね。
そういった役割が店頭でのサイネージ広告にあると考えています。
堀江
ただ、実際のところ、問い合わせは右肩上がりであるのに対し、実際の広告出稿量の伸びはそこまで大きくないという実態があります。この部分に対して、どのように思われますか。
高橋
はい、リテールメディアという言葉の認知はどんどん拡大していますが、まだまだ理解度は乏しく、具体活用のイメージがついていないことが多いと思います。消費財メーカーの方とお話をする際も、当然リテールメディアという言葉はご存じであるものの、それはECサイト内の広告や購買データを活用したWEB広告のことを指していて、ドラッグストアに設置されたデジタルサイネージがリテールメディアであるということに、全くピンときていらっしゃらなかったこともありました。
堀江
私もその部分は強く感じています。リテールメディアにおけるデジタルサイネージ広告はあくまで店内販促の一部としか捉えられていない、販促物であるという固定観念がこびりついてしまっているのではと思います。
高橋
その中でも最近はマーケティングコミュニケーションの一環にリテールメディアを活用するという動きも出てきてはいますよね。
堀江
はい、リテールメディアの活用方法の変化についてご紹介します。

先程も触れさせて頂いた通り、現状のサイネージ広告は小売流通とメーカーとの商談の中で販促施策メディアとしての活用が最も多いです。
その理由には、リテールメディアが小売流通毎に個別メディアとして運用されており、配信設計・データ利用範囲・レポート内容など、スペックが統一されていないこと、また、単体のメディアだけではリーチボリュームへの課題があります。

そういった課題に対して、我々の「リテールメディアONE™」の取り組みでは、消費財メーカーを中心とした広告主様の課題に合わせ、複数のリテールメディアを「統合」したプランの提案&運用を行うことで、個別流通向けの販促施策ではなく、マーケティングコミュニケーションにおけるリテールメディア活用を実現しています。

これまで、ブランドマーケティング領域と、店頭販促を含めトレードマーケティング領域とは一線を画す立ち位置となっていました。
しかし、昨今はブランド戦略から店頭領域までトータルの戦略設計を求められることが非常に増えてきています。
そういった背景の中で、従来のブランド戦略とリテールメディアの連動がどのように生活者の態度変容に影響を及ぼすのかについて、調査・分析も行っています。
例えば、テレビ広告とリテールメディアサイネージの広告を同時出稿した時に、ブランドリフト及び購入意向度にどのような差が生じるのか、同期間において各施策の実施エリアを分けて調査を行ったところ、テレビCMとリテールメディアサイネージの出稿を同時に行うことで、ブランドリフト・購入意欲向上に寄与しているということがわかりました。

「リテールメディアONE™」でもこうしたメディアの統合的なプランニングのニーズにも応えることができるように体制を整えています。

堀江
最後に、この先のリテールメディアの未来についてどう思われるか教えてください。
高橋
サイネージ広告については、カメラによる視聴データやモバイルデバイスID・位置情報データなど、あらゆるデータ統合が進み、顧客の入店タイミングに、サイネージからパーソナライズドされたおすすめ商品や必要な商品情報の配信がされるなど、より精度の高いコミュニケーションが実現できるようになっていくのではと思います。
リテールメディアの注目度がさらに高まり、生活者の購買行動に不可欠な存在になれるよう、我々は日々取り組んでいきます。
堀江
我々としてもこのリテールメディアを通じて、生活者の買物体験の向上を目指しています。生活者にとってどういう情報を発信していけば良いか、驚きや発見を与える買物体験をどう創出するか、日々追及しています。このリテールメディア市場を良い波にしていけるよう引き続き尽力していきたいと思っています。

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  • 高橋 信也
    高橋 信也
    株式会社MADS 執行役員 CMO 広告事業部長
    サイバーエージェント出身。BtoB、BtoCの複数企業において
    マーケティング責任者を歴任。
    マス~デジタル、広告~PR、あらゆるマーケティングにおける戦略立案、
    コミュニケーション設計~エグゼキューションに携わる。
    Google SaaS Day 2020登壇、
    NIKKEI BtoBマーケティングアワード2021ファイナルに選出。
    2022年11月にデジタルOOH事業をMADSに参画。
  • 博報堂 ショッパーマーケティング事業局 リテールDX推進グループ
    ビジネスプロデューサー リテールメディアマイスター
    ネット専業広告会社にて、メディア営業・プランナーを経験し、多くの企業のデジタルマーケティング課題解決に取り組む。2017年から印刷会社にて、メーカーを中心としたOMOの支援、販促DXの推進業務やメディア開発を含むリテールDXの推進業務を経験。2022年7月博報堂入社。現在は、広告×販促×店頭領域を統合するOMOソリューションの開発や生活者発想に基づくリテールメディアの開発等、リテールDXの推進に従事。