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ヒット習慣予報 vol.220『つまみ食いライフスタイル』
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ヒット習慣予報 vol.220『つまみ食いライフスタイル』

皆さんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。ヒット習慣メーカーズの山本です。

自分の周りだけでしょうか。最近なんとなく、大胆な選択をする人が増えたなあと思います。特にコロナが始まってから、ますますそう思うようになりました。仕事を変えてみたり、地方に移住してみたりと、ライフスタイルを大きく変えている知人友人が多いのです。そんな彼らの新生活の話を聞くと、暮らしをガラッと変えるというのは刺激的でいいよなあなんてことを思うわけで、今回は、そんな「新しいライフスタイル」にまつわる話になります。

情報があふれる現代では、自分の身近な生活だけではなく、自分とは全く違った職業や居住地で暮らす人々の生活を知ることができるようになりました。動画配信サイトを開けば、田舎で暮らす古民家生活、バンで暮らすバンライフなど、様々なライフスタイルや生き方がすぐに見られてしまうような時代です。経験したことのないライフスタイルやいまとは違った暮らしに、興味や憧れを持つ人は増えているのではないでしょうか。

しかし、ライフスタイルを変えるというのは大変なことです。様々なライフスタイルを知っては、素敵な暮らしだなあと思いつつも、仕事や家庭環境を変えてまでライフスタイルをすぐに変えることはできない。そんなジレンマを抱えている人も多いのかもしれません。
そんな気持ちの受け皿として、気になる暮らしを“お試し的に”実践できる場所やサービスが増え、いろんな暮らしのありようをつまみ食いのように体験する人が増えているという話が、今回ご紹介する「つまみ食いライフスタイル」です。

少し具体例を挙げてご紹介します。

まずわかりやすい例なのが、「お試し移住」です。
ニュースでも取り上げられているように、コロナ禍の影響を受けて、都心から地方へと移住する人が増えています。そんな流れを受け、見慣れぬ土地や生活文化の中でいきなり暮らす前に、まずはお試し的に移住体験をしてもらおうと、奨励補助金や無料の住宅貸出などのサポートを行う地方自治体が増えてきているようです。自治体ごとに支援プランなどは異なるようですが、実際にGoogle トレンドで「お試し移住」と検索してみると、ここ数年、検索数が伸びてきているのがわかります。

神奈川県秦野市が行っている空き家のログハウスを活用した移住お試し住宅事業では、募集開始から約30分で5か月分の予約枠が埋まるほどの人気ぶりのようで、移住生活をトライアルとして楽しみたい人が増えていることがうかがえます。

「ホームステイ」は、留学生が渡航先の文化を知るために、現地の生活者の家に住み込みで暮らすという、いわばお試し的な生活体験の一種ですが、「つまみ食いライフスタイル」の流れの中で、他にも様々な「○○ステイ」が人気になってきているようなので、続けてご紹介しようと思います。

そのひとつが「ファームステイ」です。ファームステイは、農泊とも呼ばれているもので、農山漁村に住む地元の人と一緒に、住み込みで農林体験をするというものです。調べてみると、国内でも小旅行感覚でできるものから、就業体験としてある程度の期間の住み込みが必要なものまで、いろいろあるようです。また最近では、担い手や働き手不足に悩む農家と、報酬付きで農業を手伝いたい若者をマッチングするアプリが人気のようで、なるべくライトに自給生活を体験してみたいという気分がうかがえます。
ちなみに、僕の会社同期の友人は以前、有休を使って、1週間のあいだ北海道の漁師と生活を共にする「漁船ステイ」を実行していました。「毎日食卓で食べるものがどのように届けられているのかを知ることができてよかった」という彼女の感想を聞いて、気になるライフスタイルにお試し感覚で足を踏み入れることができることに、価値を感じてしまいます。

また「お寺ステイ」も、最近人気があるようです。これは、僧侶のように心を鍛える生活体験を求めて、お寺や神社が運営している宿泊施設(宿坊)に寝泊まりして、瞑想や修行体験を行うというものです。マインドフルネスの流行を受けて、心や精神の鍛錬に関心が集まっているように思いますが、より生活レベルで実践する手段として、お寺ステイが盛り上がりを見せているようです。また、浜松市の某寺院では、1日1食の精進料理による断食生活を行う「断食宿坊」というステイパッケージが好評というニュースもありました。健康法としても断食が注目される昨今ですが、修行生活をお試し的に体験したいという、つまみ食いライフスタイルの精神がここでも垣間見られます。

さて、ここまでご紹介してきた「つまみ食いライフスタイル」ですが、その背景にある要因は何でしょうか。

ひとつ目は、コロナ禍を踏まえ、生き方や暮らし方を見つめなおす人が増えたことがあるように思います。移住者が増えているという先の話の通り、新しいライフスタイルへの関心が増している中、その受け皿として、自分の知らない様々な生活をつまみ食い的に体験してみたいと考えている人が増えていそうです。
また、これまでご紹介したようなお試し滞在体験が、旅行体験としても質の高いものとして評価されていることも背景にありそうです。SNSでのソーシャルリスニングをしてみてわかったのは、薄く広く“観光する”旅のスタイルではなく、狭く深くその土地の“生活文化に身を浸す”旅のスタイルは、新しい気付きや刺激が多いという点で人気であることです。昨今の旅トレンドである「リトリート」は、数日間住み慣れた土地を離れて、仕事や人間関係で疲れた心や体を癒す隠居型の旅スタイルとして人気ですが、このような文脈もうけて、生活OSがガラッと変わるようなショートステイ体験をしたいと考える人が増えているように思います。
また、働き方改革やリモートワークの推進で、ワークプレイスや休暇取得が柔軟に対応できるようになったことも、お試しライフスタイル体験のハードルが下がった要因としてあるかもしれません。

最後に、「つまみ食いライフスタイル」をめぐるビジネスチャンスについて考えてみました。

「つまみ食いライフスタイル」のビジネスチャンスの例
■おためしバンライフが体験できる旅パッケージ商品の開発
■ベジタリアン入門生活が体験できるお試し就農体験の開発
■「○○ステイ」に特化した生活体験マッチングプラットフォームの開発

こうして書いていると、僕も今の生活とは全く違う暮らしをプチ体験したいなという気持ちになってきました。笑
最近僕は、パーマカルチャーという最近注目を集めている農業のライフスタイルに興味があり、今度の長期休暇には、お試し的に生活体験するのもありかななんて思っています。みなさんもぜひ、気になるライフスタイルがあれば、お試し的につまみ食いしてはいかがでしょうか?

「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017年に博報堂入社以来、ストラテジーやブランドデザインを軸として、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。ミレニアル世代/グローバル領域の業務経験多数。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。