おすすめ検索キーワード
CES ASIAレポート~CES ASIAから見る「未来」と中国生活者の「現在」~
TECHNOLOGY

CES ASIAレポート~CES ASIAから見る「未来」と中国生活者の「現在」~

今年開催5年目となるCES ASIAが、6月11日から13日までの3日間、中国の上海にて開催された。1月に開催される米国ラスベガスCESのアジア版の位置付けだが、CES ASIAは、本家CESとは規模や内容も異なり、中国独自のテクノロジーや中国企業を中心とした内容だ。今年で3回目の参加となるが、CES ASIAも毎年出展社や参加者が増え、スピーカーの顔ぶれも豪華になり、日本人も増えてきているように感じる。

日本から初めて来る方には、CES ASIAだけでなく、めまぐるしく変わる上海の街頭テクノロジー体験視察もお勧めしている。中国市場は、AIやコネクテッドなどの最新技術がカンファレンスやコンセプトではなく、世界のどこよりも早く、街中の店頭で実際に体験できるのが特長だ。
今回は、CES ASIAと上海街頭の現地レポートを紹介する。

1)5Gによるテクノロジーの融合と進化
2)中国ベンチャー企業、中国サービスとの積極的なアライアンス
3)上海街頭テクノロジー体験 ~NIO試乗、SPACELAB、Ratio、NIKE~

今年は、米中貿易問題の流れの中でOpening KeynoteがHUAWEIということもあり、どんな話が出てくるか期待していたが、主催のCTA(Consumer Technology Association)のGary Shapiro氏は「CES ASIAは、5G、AI、自動運転といった生活者向けのアジアの最先端テクノロジーを集結し、未来に向けたより良いエコシステムの構築を目指す、Life Changing Solutions, Changing Life Society」と、米中貿易問題には一切触れず、両国を配慮したスピーチからイベントが始まった。

*昨年のCES ASIA 2018については、こちらの記事を参照ください

1. 5Gによるテクノロジーの融合と進化

今回の一大トピックである5Gを軸に、次期戦略を語る企業が多く見られた。5GとAIは明確な次世代戦略テーマとして、中国企業は日本企業よりも強く打ち出していたのが特徴的だった。中国における5Gの現状は、政府が5Gラインセンスを各キャリアに発行し、一部地域はすでに5G電波をカバー。2020年には大規模商用化する予定となっている。一部中国国産メーカーは、既に5G携帯を発売。5Gの時代は遠い未来ではなく、すぐ目の前と言えるだろう。

エンタメ、画像認識等のユーザーニーズに対応し、各家電メーカーが8Kのテレビ、映像技術を展示。TCLが5G対応の8Kテレビを展示。5Gの高速送信でわずか数秒で高精度映像のダウンロード、閲覧が可能になる。

中国では画像認識技術、小型カメラが様々な分野に普及。BOSMAが8K対応監視カメラを展示。今後ハイクオリティ映像で、リアルタイムの現場状況が把握可能になる。

HUAWEIが5GベースのCloud VR技術を発表。コンテンツを走らせる高性能端末が不要となり、ケーブルを使わないため、ユーザー体験がより良く、利便性が高くなる。車、イベント等の広範囲な移動シーンにも適用可能。既存VRのペインポイントを解決する。

中国自動車メーカーの自動運転技術も数多く展示されていた。4月の上海モーターショーと重複する部分もあったが、中国メーカーは技術開発を進める際、基本的に5Gを前提としたコネクテッド技術と自動運転技術を搭載予定。5Gによりリアルタイムで高精度地図の利用や、周囲の車両との通信(V2X)が可能になるため、ハードウェアに要求される水準が抑えられ、自動運転の開発、製造コストが低減できる。

2. 中国ベンチャー企業、中国サービスとの積極的なアライアンス

昨年も紹介した中国No.1の家電量販店「SUNING」は最新のリテールテックを披露。自社のリテールに関するビッグデータ、AIソリューションから外販サービスを提供、中小リテールショップ向けに店舗管理、運営を支援するRaaS(Retail as a Service)サービスを紹介。他企業でも画像認識技術や小型カメラによるAmazon GO的なリテールテックが昨年は多かったが、QRコードやタグ、ペイメント機能も関連するリテールテックの多機能化が進んでいた。リテール以外の企業、特に自動車メーカーも現地の中国ベンチャーとの積極的なアライアンス、投資を含む積極的な提携が盛ん。

各種リテールテックを提供する「SaaS」、ビッグデータ、AIにより経営管理を支援する「PaaS」、データ蓄積、活用に必要なインフラ構築をサポートする「IaaS」、ヒューマンリソースを提供する「HaaS」により構成されるSUNING RaaS。

なお、SUNINGは全ての家電メーカーに開放するスマート家電用OS「BiuOS」を紹介。今まで各メーカーがそれぞれのOSを持ち、消費者が複数ブランドの商品を利用する際に商品間の連動がうまくできない課題に対し、メーカー間共通のOS基準を提供。

HONDAは、中国で展開する第二世代HONDA CONNECTについて、アリババとの連携を発表。アリババ傘下のスマートスピーカー T-mall Genieを搭載することで、中国語の音声認識機能やモバイル決済機能を強化。なお、第三世代HONDA CONNECTを、アリババとAI音声識別が強みの中国系テクノロジー企業「iFLYTEK」と共同開発する予定。

Audiはテクノロジーによってユーザーに乗車中の時間を有効に活用させ、1日24時間を「25時間化」することを目指している。以前から他のカンファレンスでも同様の説明をしており、CES ASIAでは「在中国 In China、為中国 For China」と中国重視と共に、Audi Connect、V2X、holoride、Audi AI:MEの4つを紹介。

 中国のエンジニアやデザイナーが早い段階から中国のパートナーとこれらのソリューション開発を開始し、中国展開を語っていた。Audi Connectは、中国の若者に普及しているアプリ、QRコードを使えるようにしている。
ガソリンや駐車場の支払いには、WechatやAlipayをそのまま車でも使えるように、自動車向けAIスタートアップのMobvoi社や中国で最も普及しているアリババの音声アシスタントのT-mall Genieとの音声アシスタントサービスを提供。
1月のCESで発表した、車内VRサービスのholorideは「浩楽行」と中国名を用意し、中国独自コンテンツを用意する予定と発表。

HYUNDAIも、キーノートに登壇し、CRADLE(Center for Robotic-Augmented Design in Living Experiences)の北京版、CRADLE-BEIJINGを紹介。CRADLEは、ベンチャー投資と研究開発やLab機能を統合させたようなユニークなオープンイノベーション事業として、世界主要国に展開。HYUNDAIが目指す次世代モビリティの実現を、中国のベンチャー企業と実現させていく実例として、IMMOTOR社(E-scooterメーカー)、KuanDeng(HD Map)、UBiAi(保険)の3社との取組みを紹介。

3. 上海街頭テクノロジー体験 ~NIO試乗、Ratio、SpaceLab、Nike上海/001~

中国のテクノロジー進化をより身近に体感するために、街頭視察も行った。

新興系 高級EVメーカー「NIO ES8」
市内移動に利用した車は、話題の中国新興系EVメーカーの「NIO ES8」。外観、内装のデザインもモダンかつ、EVのためアクセルを踏んだ時のパワーや静粛性も抜群である。

音声アシスタント「NOMI」で、ナビ目的地の入力から、窓の開閉、席別のエアコン温度設定、マッサージ、アプリと連動したモバイル決済サービスなどが可能、優れたユーザーエクスペリエンスを提供。NOMIの液晶画面は、目が表示され、表情も演出される。

宇宙をコンセプトにしたレストラン「SPACELAB」
画像下部のタブレットと「Alipay」「WechatPay」等のキャッシュレスアプリが使える端末で全ての注文や支払いができるうえに、料理が渦巻状のレールにより無人で席まで届く。調理と掃除以外はほとんど無人で対応可能。

ロボットカフェ「Ratio」
コーヒー、カクテルなどの飲み物を全てロボットに完成させるカフェ。飲み物の注文、お好みの調整、支払いを全てWechat上で完結。ロボットがつくるゆえにプロセスが標準化され、用意されるまでの時間が正確にわかる。

NIKE HOUSE OF INNOVATION 上海/001
NIKE最新のパーソナライズされた体験を提供する旗艦店「上海/001」。NIKE SNEAKER LABという会員になることで、店内で買った商品を無料でカスタマイズできるサービスや、NIKE EXPERT STUDIOやNIKE BY YOUというNIKEのプロから1 to 1の特別アドバイスを個室で受けることができるパーソナライズサービスが用意されている。上海オリジナル商品の展開も豊富。B1フロアには360度カメラが設置されたコートがあり、全方位撮影ができる。NIKE商品を着用し、その動画をSNSへシェアすることも可能。

最後に、今回の街頭ツアーで自分が中国の一番変化を感じた場所である「中国の駐車場」について紹介する。上海の大手ショッピングモールは、駐車場行きのエレベーターに、QRコードが大きく表示(貼られている)。QRコードでモールのアプリをダウンロードし、車ナンバーと紐づけさせれば、駐車場費用はアプリで支払いが可能。駐車場を出るときには車両ナンバーが画像認識され、ゲートが自動的に上がる仕組みが普及している。(Alipay提携モールの場合、アプリのダウンロードすら不要、支払いが自動的にAlipayで引き落とされ、そのまま駐車場から出られる)。日本の駐車券の時間制やポイントシステムと大きく異なる。実際に試してみたが、スマホ1つで精算から駐車場ゲートを出るところまで非常にスムースであった。

これらの他にも体験先候補として、Hema(アリババ系生鮮スーパー)やHema Robotレストラン、Luckin Coffee、LePick(無人コンビニ)、有品小米、Heyteaなど、類似の中国テクノロジー導入店舗がたくさんある。洗練されていない部分もあるが、実際に店頭展開しているスピード感は学ぶべき。またテクノロジーによってビジネスモデルやサービス自体を変え、中国独自のブランドを生み出し、顧客を集め、短期間でビジネス化している点も注目すべきだろう。テクノロジーによって、大小にかかわらず新興ブランドが革新をおこしている。

今回のCES ASIAと上海街頭テクノロジー体験を通じて、中国の現在と未来を実感することができた。キャッシュレス先進国として、支払いが便利になっただけでなく、Alipay、Wechat Payの2強のエコシステムに紐付いた自動化、データ連携によるユーザー体験の進化に驚かされた。

これらのスマホ上で、人々の日常生活に既に普及している「現在」のペイメントやデリバリーサービスと、これから来る「未来」の5G、AI、自動運転といったテクノロジーが融合した時に、近い将来、どのようなサービスや体験が新しく生まれ、どのようなエコシステムが考えられるか、今後も世界の先を行く中国テクノロジーの進化に注目すべきだ。

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 博報堂 CMP推進局 リサーチャー
    2018年大学院卒業後、博報堂入社。アジアのDMP構築運用、データマーケティング領域をメインに担当。中国におけるテクノロジー、サービス、自動車市場の最新動向リサーチも行う。
  • 博報堂 CMP推進局 局長代理
    博報堂のフィロソフィーである生活者発想を軸に、デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プランニング、マネジメント、事業開発、イノベーション、グローバル展開を担当。自動車、IT、精密機器、エレクトロニクス、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、データ基盤構築、組織開発など、マーケティングの高度化を支援。中国駐在経験もあり、アジア、中国、インドの海外業務やテクノロジー動向にも精通。海外広告賞審査員も行う。