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HAKUHODO Live Commerce+ 事業成長に結びつくライブコマースを実現するために──海外事例に学ぶライブコマースの最新手法
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HAKUHODO Live Commerce+ 事業成長に結びつくライブコマースを実現するために──海外事例に学ぶライブコマースの最新手法

商品の魅力や特徴をリアルタイムのライブ配信で伝えるライブコマース。その手法が先んじて盛んになったのは、中国とアメリカでした。博報堂DYグループにおけるライブコマースの専門ユニット「HAKUHODO Live Commerce+」のメンバーによる座談会では、「ライブコマース先進国」である中国やアメリカの事例を掘り下げながら、単に売上を上げるだけでなく、企業の事業成長に結びつくライブコマースのあり方を考えていきます。

「ライブコマース先進国」中国における最新事例

清水
日本でライブコマースが話題になり始めたのは、5年くらい前からだったと思います。ライブコマース専用のプラットフォームに、インフルエンサーや企業の社員が登場して商品をリコメンドするのがこれまでのライブコマースの典型的なスタイルでしたが、最近ではSNSを活用したり、ユーザーが登場したりと多様な試みも進んでいますよね。

澤田
クライアントからのご相談も非常に増えています。日本のライブコマースは中国や米国に比べてまだ歴史が浅いので、現状では海外の事例を参考にしながら企画を考えることが多いですね。
清水
まずは、ライブコマース先進国である中国や米国の最新事情を魯さんから紹介してもらいたいと思います。
中国では、ライブコマースはすでに標準的なマーケティング手法の一つになっています。最近の注目すべき事例として、グローバルコスメメーカーの取り組みが挙げられます。このメーカーは、新しいブランドローンチキャンペーンにライブコマースを活用しました。有名なKOLを起用し、それぞれがチームをつくって売上を競うというエンターテインメント性の高い方法を用いて、大きな話題を集めました。
澤田
インフルエンサー、ライバー、コマーサーの中でも特に名前が知られていて、カリスマ性があって、ものを売る技術がある人たちを、「KOL=キー・オピニオン・リーダー」と呼びます。KOLが大きな影響力を持ち、メーカー側が商品価格を調整し、 KOLがモノを売りやすいように環境を整えているのが中国のライブコマースの大きな特徴の一つです。

自分が支持するKOLを応援するために商品を買うといった行動も中国では普通になっています。日本ではアイドルグループのファンが、自分が好きなメンバーを支援するためにCDを買ったりしますよね。それに近い行動と言えると思います。このコスメメーカーの事例は、規模が大きく、イベント性の高い方法でしたが、もっと小規模なライブコマースも中国では毎日24時間行われています。その中には、自社の社員が登場したり、AIのデジタルキャラクターが質問に答えたりするものもあります。ライブコマースで常に商品を露出させないと、競争力が落ちてしまう。そんな市場構造が中国では出来上がっています。

澤田
企業にとっても生活者にとっても、ライブコマースが日常的なものとして定着しているということですよね。だからこそ、イベント的なライブコマースをやるとかなりの盛り上がりを見せるわけです。

「売る」ことを目的としないライブコマース

一方、米国にも面白い事例があります。オウンドサイトでライブコマースを展開しているアパレルメーカーの例です。このメーカーは、商品を売るだけでなく、販売前の商品への意見や感想をユーザーから聞くためにライブコマースを活用しています。顧客のコメントを聞いて、顧客のニーズを満たす商品を開発する、つまり、顧客と一緒にブランドをつくるためのツールとしてライブコマースを使っているわけです。顧客の側から見れば、自分の意見がブランドに反映されることで満足感が得られます。それによって、ブランドエンゲージメントが高まることが期待できます。
澤田
D2Cブランドと親和性の高い手法ですよね。D2Cブランドは、顧客を「一緒にブランドをつくる仲間」と捉えています。それをリアルタイムのコミュニケーションで実現できるのがライブコマースということです。
清水
ライブコマースは、売上を上げるための手法と考えられることが多いのですが、このケースのように、ものを売ることを直接的な目的にしていない取り組みも最近は増えてきています。ライブコマースをブランドとユーザーがつながる接点と捉え、そこで顧客の生の声を受け止め、顧客のインサイトを把握したり、ブランドの深い理解につなげたりする──。そんな展開も可能なわけです。ライブコマースは一種のブランディングツールになりうると言っていいと思います。

最後に、韓国の自動車メーカーの事例をご紹介します。これは、ライブコマースで新しい顧客体験を創出することを目的にしたケースです。

コロナ禍の中で、リアルな新車発表会を開催することが韓国でも難しくなりました。そこでこのメーカーは、EVの新車発表会をライブコマースで行うことにしました。自動車専門誌の編集長とKOLがイベントを進行し、車のプロモーション映像を流したり、編集長自身がテストドライブをする映像を紹介したり、クイズによってユーザーの参加性を高めたりといった工夫をしました。それによって、見る人を楽しませたり、車の世界観を伝えたりすることを狙ったわけです。またクーポンを販売して、その価格よりも高い値引き率で商品が買えるというライブコマースも実施していました。

澤田
普通、車は試乗体験をしないと乗り心地などがわからないのですが、それを映像などで疑似的に体験してもらうというのが、このライブコマースの一つの目的だったと思います。ディーラーに実際に足を運ぶことと、ウェブサイトを閲覧すること。その間をライブコマースで繋げていると言ってもいいかもしれません。一般に高価格帯商品はライブコマースには向かないと考えられていますが、販売以外の目的でもライブコマースを活用できることを示す好例です。
清水
例えば、衣類や靴などは試着ができないので、オンラインでの販売はハードルが高いと言われてきました。しかし、体験映像などによってその商品の魅力を伝えれば、そこからリアル店舗に顧客を呼び込むこともできるわけです。オンラインで売りにくいものを、リアルへの誘導経路をつくって購買につなげていく。そんな手法もライブコマースにはあるということです。

KOLが活躍できる環境をいかに整えるか

清水
中国に比べると、日本のライブコマースは今後発展していく市場であると考えられます。現状における日本と中国のライブコマース市場の差はどこにあるのでしょうか。
中国では、KOLが活躍できる土壌が整っていることが挙げられると思います。KOLをマネジメントするさまざまな会社があり、KOLが活躍できるプラットフォームがあること。それが中国のライブコマース市場の特徴です。

そのような土壌が生まれた背景として、中国にはフェイク商品が多いという事情があります。中国の物販の50%はオンラインで行われていると言われていますが、オンラインで買ってみたら偽物のブランドが届いたというケースが少なくありません。どれが本物でどれが偽物かを見極めることは、中国では簡単ではないのです。しかし、社会的信用のあるKOLがライブコマースで推奨するブランドであれば、安心して買うことができます。生活者に安心感を与える役割をKOLが果たしているわけです。

それだけでなく、同じ商品でもどのKOLが売るかによって価格が異なる場合もあります。影響力のあるKOLがメーカーと価格交渉をして、他のKOLよりもより安い価格で売るというケースがよく見られます。

澤田
中国では、KOLを中心としたサイクルができていると言えそうですよね。ライブコマースが浸透する中で「この人に任せたら売れる」というKOLがどんどん出てきて、影響力を大きくしていく。そういう人は売り手企業やプラットフォーマーに対する交渉力をもっているので、より安い価格で売ることができる。そうすると、KOL間の競争が盛んになり、商品もたくさん売れ、ライブコマース市場全体が活性化する──。そんなサイクルが中国では成立しているのだと思います。
清水
日本では、ものを買うときに複数のECサイトやリアル店舗の価格を比較して、一番安いところで買ったりしますよね。それに対して中国では、どのKOLが売っているかによって購買を決めることが普通にあるそうです。それだけKOLの影響力が大きいということなのでしょうね。
澤田
KOLが活躍できる環境を整えることが、日本のライブコマース市場を活性化させる一つの方法と言えるかもしれません。KOLがものを売る技術を高める支援をし、売上に連動した報酬体系を確立することなどが今後は必要だと思います。そうしてKOLのモチベーションを高め、成功するKOLが次々に出てくれば、KOLを目指そうという人材も増えていくのではないでしょうか。

すでに博報堂DYグループは、そういった環境を整えるために、インフルエンサー向けの販売技術向上プログラムを開発して提供しています。今後も継続的にインフルエンサー育成を支援していきたいですね。

「フルファネル型ライブコマース」の実現を目指して

清水
日本でも以前からテレビショッピングという販売方法があって、一定の支持を集めてきました。テレビショッピングがきっかけとなって爆発的にヒットした商品もあります。そう考えれば、日本でもライブコマースが発展する文化的基盤はありそうな気がします。
澤田
映像で実演販売をするという点で、テレビショッピングとライブコマースには共通点がありますよね。ライブコマースがテレビショッピングと異なるのは、テクノロジーによってリアルタイムのコミュニケーションや簡単なアクションでの購買を可能にしている点です。もう一つ、使用されるデバイスとターゲットの違いもあります。主にスマートフォンなどで見られるライブコマースは比較的若年層に人気があるのに対し、テレビショッピングの購買層は年齢がやや高めです。スマートフォンの普及率が高まるのに従って、テレビショッピングの視聴層にライブコマースを用いてアプローチすることにもトライする必要が出てくると考えます。
清水
さて、現在の日本でももちろんライブコマースに成功している例はあります。その事例を紹介してもらえますか。
澤田
一つはコスメメーカーの事例です。通常コスメメーカーでは、ビューティコンサルタントやビューティアドバイザーと呼ばれるスタッフの皆さんが各店舗で顧客対応をしています。しかし、コロナ禍でそういった人たちの活動が制限されてしまいました。そこでそのメーカーは、ビューティコンサルタントの活躍の場をライブコマースに求めました。インフルエンサーとビューティコンサルタントが対談するリアルタイム映像を流し、その映像を見た人がのちのち店舗に足を運ぶ。そんな新しい導線をつくるのにライブコマースが役立ったわけです。

もう一つ、ショッピングモールの事例をご紹介します。入居しているテナントが顧客向けの映像をライブコマースで配信し、さらにその映像をアーカイブして、動画メディアとして運営しています。面白いのは、ライブ映像配信の際のユーザーとのコミュニケーションもすべてアーカイブしたことです。テナントとユーザーのやり取りを見ることで、別のユーザーが購買の参考にできると考えたわけです。ライブ配信で終わるのではなく、コンテンツを資産化し、役立てていく取り組みと言っていいと思います。

清水
僕たちHAKUHODO Live Commerce+は、今後どのような方向でライブコマース市場の発展に寄与していくべきだと考えていますか。
澤田
ライブコマースをどう事業成長に結びつけていくか──。その視点からライブコマース戦略をクライアントとともに考えていくことが何より大切だと思います。どの企業にも事業戦略があり、事業課題があります。それを踏まえ、認知、購買、リピート、さらに結果としてのLTV向上という一連のカスタマージャーニーのどこでどのようにライブコマースを活用していくのか。あるいは、KPIをどう設定するのか。そういった戦略を緻密に考えるお手伝いをしていくことが、私たちの役割だと考えています。

私たちは、事業戦略に基づく統合コミュニケーションとしてのライブコマースを「フルファネル型ライブコマース」と呼んでいます。それを実現するために、博報堂DYグループのクリエイターやプランナーにもチームに参加してもらい、さらに外部のパートナー企業の力もお借りしながら、戦略を実行していくこと。それによって、クライアントの事業成長に確実に寄与すること。さらに、ライブコマースを中心とした新たな購買体験を創出しやすい環境を整えること。それらが、今後僕たちが注力すべきことだと思います。

さまざまなマーケティング手法がある中で、ライブコマースでなければ実現できないことをクライアントの皆さんと一緒に実現していきたいですよね。海外事例を参考にしながら、日本ならではのやり方を模索していきたいと思います。
清水
市場の特徴やブランドの目的に合わせて、ライブコマースの目的をしっかり定義することが必要だということですよね。そのコンサルテーションができるのは、総合コミュニケーション企業である博報堂DYグループならではだと思います。今後も、日本のライブコマース市場の活性化を全力で支援していきましょう。

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  • HAKUHODO Live Commerce+ リーダー
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局 コンサルタント
    HAKUHODO EC+ メンバー
    2017年に博報堂入社。営業・メディアプラナーを経て現職。EC事業の中長期戦略策定・D2Cブランド立上げ・ECチャネル戦略策定など、ECを起点とした事業プラニングを担当。
  • HAKUHODO Live Commerce+  メンバー
    博報堂 DXプロデュース局 ビジネスプラナー
    2018年博報堂中途入社。金融、グローバルメーカー等のビジネスプロデューサーを担当後、2021年より現部署。HAKUHODO DX_UNITEDの統合プロデュース機能を担うDXプロデュース局にてビジネス創出から実装まで幅広く担当。ライブコマースプロジェクトの一員として案件のビジネスプロデュースを担う。
  • HAKUHODO EC+
    グローバルマーケティングDX推進局
    2019年博報堂中途入社。
    その前までは、デジタル広告のメディア戦略・運用コンサルティングを担当。
    博報堂に入社後、飲料、消費財、小売り、自動車、航空など幅広い業種のデジタルマーケティング全般に携わる。1st Party Dataを活用したデータマーケティング戦略・ECマーケティング・データ基盤構築のコンサルティングなど、ASEAN地域におけるマーケティングDXの推進を支援している。

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