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夫婦間にお金の共通認識を。そして誰もがお金に困らない社会へ。 OsidOri x HAKUHODO Fintex Base  (連載:フィンテックが変える生活者体験 Vol.12)
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夫婦間にお金の共通認識を。そして誰もがお金に困らない社会へ。 OsidOri x HAKUHODO Fintex Base (連載:フィンテックが変える生活者体験 Vol.12)

近年様々なフィンテックサービスが登場し、日常的に利用する人も増えています。フィンテックサービスに関する生活者の意識・行動の調査研究を行うプロジェクト「HAKUHODO Fintex Base(博報堂フィンテックスベース)」のメンバーが、フィンテックを支える多様な分野の専門家とともに、新しい技術によってもたらされる新たな金融体験や価値を考える記事を連載でお届けします。
第12回となる今回は、夫婦・同棲カップルの共有家計簿アプリ「OsidOri(オシドリ)」を提供している株式会社OsidOri 取締役COO CMOの中山知則さんと、HAKUHODO Fintex Baseの山本が、家計の管理に関する現状や課題、デジタルで実現できること、そして今後の展望などについて語り合いました。

株式会社OsidOri 取締役COO CMO
中山 知則氏

HAKUHODO Fintex Base/博報堂 第三ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 局長代理
山本 洋平

共働き世帯に寄り添うサービスを

山本
OsidOri社は、代表取締役CEOの宮本さんと共同で2018年6月に創業されたのですよね。中山さんは、どのような経緯で宮本さんと起業されるにいたったのですか。
中山
私が金融に担ってほしい役割は弊社ミッションでもある「誰もがお金に困らない社会を実現し、生きたい人生を歩めるようにする」ことなのですが、そこに関係してきます。起業以前も複数の企業で「デジタル×金融」の領域に携わってきており、OsidOri社を創業する直前は、ロボアドバイザー(自動資産運用サービス)を提供するフィンテック企業でマーケティング責任者をしていました。サービスは非常に伸び素晴らしい経験をさせていただいたのですが、その際、投資未経験の方に利用を促していくことの難しさを感じていました。資産運用を含め、便利な金融サービスを使うことで得られる果実をより多くの方に届けるためにはどうすればよいか。そのような時に、同様の考えを持っていた共同創業者の宮本と出会いました。
山本
そしてOsidOri社の創業を決意されたのですね。事業内容はどのように考えられたのでしょうか。
中山
サービスの将来像としてミッションにあうことはもちろんですが、「金融サービスの利用経験が少ない方でも気軽に使えるサービス」を作ることを第一に考えました。

さまざまな調査を通じて、夫婦や同棲カップルがお相手と「家計の共通認識」を共有できていないことがわかっていました。そこで、夫婦で若いうちからお金に関する認識を合わせていくことで、家計改善や資産運用などが進み、将来の資産形成に繋げられるのではないかと考えました。金融庁も「貯蓄から投資へ」を掲げておりますが、老後2,000万円問題に代表されるような将来の資産形成の課題があります。それらに対する第一歩になれるようにと考えて生まれたのが、夫婦・同棲カップルの共有家計簿アプリ「OsidOri」です。

山本
夫婦や同棲カップルの2人をターゲットとされているのですね。
中山
はい、20・30代の共働きの夫婦・同棲カップルをメインターゲットとしています。
共働きの家計管理には大きく2パターンがあり、我々は「合算制」と「分担制」と呼んでいます。合算制は昔からよく用いられており、一度2人の収入を合算して、その中からそれぞれにお小遣いを渡す形です。分担制は、家計に必要なお金をそれぞれが各自の収入から出し合い、残ったお金は各自の自由となるもので、現在の共働き世帯はこちらが主流です。

これらのいずれのケースでも、2人で家計管理をする場合、パートナー同士による情報共有・認識合わせが非常に重要になってきます。一方が家計に無頓着であれば、月の予算超過や子どものための貯金に悪影響が出るかもしれませんし、また、情報共有不足に起因するお金のケンカもよく聞きます。

OsidOriでは、夫婦でお金の情報共有をしやすいように、2人で一緒に見る「家族画面」があります。例えば、家族画面には家賃や食費などの生活費や家族の貯金口座を登録して、毎月の収支結果や貯金額をいつでもそれぞれが確認することができます。家族画面に情報を集約することで簡単に情報共有が済みますし、言った言わないのミスコミュニケーションも防止できます。

一方、共働き世帯ですので、自分のお金はその額や使い道を含めてプライベートに管理したいというのも本音でしょう。そこでOsidOriでは「個人画面」も用意しています。例えば個人の給与口座や個人的な買い物データを登録して管理することができ、もちろんパートナー側からは見ることができません。大きな出費をする場合はパートナーに相談するとチーム運営上良いと思いますが、細々したプライベートな買い物の使途までも全部報告するのは、ちょっと疲れてしまいますよね。

※OsidOriでは一般的な家計簿アプリと同様にさまざまな金融サービスと連携して自動で家計簿を付けることも可能。現在、銀行・カード・証券・電子マネーなど1,251サービスと連携(2023年2月時点)。

夫婦で家計への共通認識を持てるように

山本
サービスは2019年9月にリリースされたのですよね。現在ユーザー数はどのくらいいらっしゃるのですか。
中山
おかげさまで現在40万人以上のお客さまにご利用いただいており、若い共働き夫婦・同棲カップルがここまで集まっているサービスはあまりないかもしれません。これまでは広告はあまり出しておらず、オーガニックがメインでお客さまの数が着実に増えてきました。また、各種メディアでも取り上げていただき、日経新聞には現代の夫婦の家計管理の変化とOsidOriのお客さまインタビューを、日経トレンディのスタートアップ特集ではブレイク候補企業としてご紹介いただきました。

山本
主にどのような属性の方が多いのでしょうか。
中山
お客さまの8割以上が20~30代のミレニアル世代の共働きの方々です。ご結婚前後からOsidOriを知っていただくことが増え、年齢の中央値は30歳弱ですのでご夫婦お二人か、小さいお子さんがいるご家庭が多いです。
山本
比較的若い世代の方が多いのですね。
現在、OsidOriに競合するサービスはあるのですか。
中山
直接の競合、と言えるサービスは少ないと思います。家計簿アプリのポジションは、「個人で使うか、家族で使うか」という利用人数の軸と、「手動入力か、自動入力か」という入力方法の軸で整理できます。日本において家計簿アプリサービスが始まった2011年以降から現在まで、主流となっているものは1人称視点であり、2人以上で利用することは想定されていないように思えます。そのような環境下においては、夫婦や同棲カップルで家計を共有管理できるOsidOriは、非常にユニークなポジションです。
山本
なるほど、利用人数の軸と入力方法の軸で考えるとわかりやすいですね。
OsidOriのユーザーの方からはどのような声が届いていますか。
中山
お客さまにご協力いただいた調査で、95%の方から「夫婦で家計について共通認識が持てるようになった」というお声をいただいています。サービスを作る前に認識していた課題が解決されてきていることを嬉しく思うとともに、まだまだやりたいことはたくさんあるので、また新たな気持ちになりました。その他、「家計改善が進んで貯金ができた」「お金のことでケンカをしなくなった」といったお声もいただいていますね。
山本
「共通認識が持てるようになった」という言葉は響きますね。我が家の場合、資産運用などは私が、家計の管理は妻が主に担当しています。分担できていると言えばできているのですが、お互い具体的にどのように管理しているのかあまり共有できていないのが悩みです。
中山
弊社の調査では、日本では家計管理をしているのは圧倒的に女性が多く、理解も作業も女性に偏ってしまっています。育児の分担については近年社会課題として認識され、少しずつ進んできた印象ですが、家計管理の分担はまだまだ進んでいません。女性のお客さまからは、「家計のことを夫にも理解してもらえてとてもうれしかった」という声もいただいていて、家計について切実に悩んでいるのも女性が多い印象です。家族の家計・資産管理こそ、夫婦で一緒にやるべきではないかと考えています。
山本
そもそも夫婦で生活をしているのに、家計管理はどちらかに偏ってしまっているなど、日本には心理的アンバランスがまだ色濃くあると思っています。その意識改革ではないですが、バランスをあるべき姿に是正していく可能性をOsidOriに感じました。

目標は、デジタルのファイナンシャルアドバイザーになること

山本
今後OsidOriは、サービスをどのように拡大していこうと考えていらっしゃいますか。
中山
家族で一緒に家計管理を行うための機能はそろってきたので、今後は、どういった金融サービスを利用したらいいかといったお悩みに答えるナビゲーションや、投資・預金・決済など実際のアクションをサポートするサービスまで、ワンストップで提供できるようにしていきたいと考えています。

ナビゲーションとは具体的には、アプリ内でライフプランニングをしたり、保険や住宅ローンについて相談できるサービスですが、一部は既に提供を始めています。昨年1月に家族の保険選びや見直しをアプリ内で専門家に相談できる「OsidOri 家族の保険相談」を、昨年7月には住宅購入相談サービス「OsidOri おうちの相談窓口」をスタートしています。現在はパートナー企業の方と一緒にご相談を受けているのですが、将来的には弊社メンバーも対応できるように進めていきたいと考えています。

また、今年の春頃には家族の一生涯のお金のライフプランニングができる機能をリリースする予定です。この機能をきっかけに、従来の短期的な家計管理から、ライフステージに応じて中長期的にお金のマネジメントができるサービスに進化していきたいと考えています。
どうしても家計簿だけでは目の前のお金に集中してしまい、老後資金問題に対応する「将来を見据えた資産形成」にはつながりにくい側面がありますので、そういった社会課題に対しても実効性を持って、お客さまに生涯寄り添えるサービスにしていけたらと思っています。

山本
貯蓄から投資へと大きく社会が動き始めている中、御社も短期的視点でなくライフステージに寄り添った長期的視点でのサービス展開に挑戦されているのですね。日本社会が抱えている大きな課題は、おっしゃる通り一朝一夕では解決できないものばかりです。だからこそ、長い目線で人生を捉えたときに、本当に必要となるサービスをしっかりと提供していくことが、これからのフィンテック企業には求められるのかもしれませんね。
最後に、中山さんの今後の目標や、描かれているゴールを教えてください。
中山
今後の目標は、まずは先ほどお話しさせていただいたとおり、現在提供している短期的な家計管理から進化し、お客さまが中長期的にお金のマネジメントができる状態を作っていくことです。
その後は、家計改善や金融商品のアドバイスや実際のアクションもサポートしていきたいと思っています。例えるならば、デジタルのIFA(Independent Financial Advisor:金融商品仲介業)のようなサービスがイメージに近そうです。そして、誰もが簡単に家計改善や資産形成を行えるようになり、お金を理由に歩みたい人生の可能性が狭まることなく、生きたい人生にチャレンジしやすい世界にしていきたい、それが目標です。
山本
家計管理や資産運用、その先のファイナンシャルマネジメントサービスなど、機能的なベネフィットはもちろんですが、将来に対する心理的不安を取り除くことがもっとも大きなメリットだと思います。不安があると、前に進みづらかったり、ちょっとした挑戦も諦めてしまったりしますよね。日本では今まで金融・お金に関する教育はあまりなされてきませんでした。今年から高校で金融教育が始まりましたが、今の社会人などは自分で勉強しているのが現状です。OsidOriのようなサービスによって、少しずつ生活者の金融リテラシーが向上していくことで、日本全体に前向きなエネルギーが生まれてくると思っています。我々HAKUHODO Fintex Baseもさまざまな活動を通じて、生活者の背中を押すフィンテックサービスをこれからも応援していきたいと思います。
本日はありがとうございました。
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  • 中山 知則氏
    中山 知則氏
    株式会社OsidOri 取締役COO CMO
    バーティカルメディアやFXサービス等の複数の事業会社におけるマーケティング・サービス企画・PL管理等の経験を経て、前職ではロボアドバイザーを提供するフィンテック企業で、サービスリリース時よりマーケティング責任者としてBtoC・BtoBtoC全般を担当。2018年6月にOsidOriを共同創業。
  • HAKUHODO Fintex Base/博報堂 第三ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 局長代理
    新卒で外資系大手SIer入社。その後、大手メディアサービス企業にてネット業界ブランディングに従事、総合広告会社を経て現職。システムからクリエイティブ・事業と振り幅の広いスキルを最大限に活かすフィールドを求め、博報堂に転身。現在は、通信・自動車・HR・Fintechとあらゆる業種を担当し、事業視点からのマーケティング戦略を策定するストラテジックプラニングディレクターとして活動。JAAA懸賞論文戦略プランニング部門2度、広告ビジネス部門受賞。

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