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博報堂 データドリブンマーケティング局 局長 辻田敏宏

データドリブンマーケティングの実行方法として、多くの企業が共通して実践するトレンドがあります。その一方で、業種ごとに違う方法で対応しなくてはならない課題も存在します。データドリブンマーケティングの有効な施策を考える場合、業種分類はどのように行うべきで、どのようなツールを使うのが有効なのでしょうか。博報堂 データドリブンマーケティング局 局長 辻田敏宏が、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの3社主催で行った“生活者データ・ドリブン”マーケティング領域に関するセミナーで語りました。

業種別課題に対応する、データドリブンマーケティングの俯瞰図

私は1990年の入社以来、飲料、食品、日用品、小売、自動車、家電、不動産、情報通信、金融など様々な業種のマーケティングプラニングを担当してきました。またネクストマーケティングやスマートコミュニティ、消費税などクライアント横断型の様々なプロジェクトを主導してきました。そして2014年からはデータドリブンマーケティングに関わっています。

様々な業種での業務経験を踏まえて、“統合マーケティングを考える際、業種別に最適な方法が異なる”、ということについて本日はお話しさせて頂きます。まずその前に、全ての業種で共通している課題についてご説明します。

近年、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉がよく使われ、バズワードになっています。その背景にはデジタルテクノロジーが進化したことで「デジタルを使わないと」と考える企業が増えたことや、測定できるアクチュアルデータが増えたこと、市場が飽和して人口が減少しているためにマーケティングをひとりひとりに最適化する必要が出てきたこと、働き方改革などにシステムで対応する必要があること、などがあります。

そうした中で業種を問わず共通して取り組むべきことは、まずはデータ自体を可視化してどうコントロールするか。「効果の可視化=ROI把握のための、BIツール導入」をしたうえで、CRM=既存顧客や潜在顧客をどう動かしていくのか。
「潜在顧客をより大切にするための、顧客基盤システムの構築」や、「潜在顧客の選定と掘り起こしをするための、拡張配信およびリードジェネレーション」をすることで、縮小傾向に陥らずに顧客を獲得していくことが大切です。そのためにも「生活者との接点を強化するためのUI・UX」が重要になってきます。このようなことが共通して取り組むべきことと思いますが、業種によって注力すべきポイントが異なってくると考えられます。

データドリブンマーケティングでは販売チャネルと生活者の検討時間で4つの業種に分類できる

では、データドリブンマーケティングにおいて業種ごとに違うポイントは何でしょうか。まず自社商品の購買顧客が把握出来ているかどうかです。これは販売チャネルが自社か/オープンチャネルかによります。もう一つは生活者が購買に当たって、検討してから購買する商品か/瞬間で購買を決定する商品かによって変わってきます。

業種は、販売チャネルと検討時間を軸に4つに分類することが出来ます。自社チャネルで時間をかけて検討するAは自動車や金融、情報通信など、同じく自社チャネルで時間をかけずに購買するBは量販小売店や外食チェーンなどです。
オープンチャネルで時間をかけて検討するCは嗜好性や機能性の高い一般消費材などで、同じくオープンチャネルで時間をかけずに購買するDは一般的な飲料や食品などになります。

それぞれの業種について見て行きましょう。Aゾーンの業種(自社チャネルで時間をかけて検討する自動車や金融、情報通信など)におけるポイントは、潜在顧客に対するアプローチを行い、顕在化した瞬間をいかに捉えて自社の長期顧客にするかです。例えば自動車でしたら買い替えのタイミングだけでなく、日頃のメンテナンスなどから深く顧客に関わることができるかが重要になります。自社顧客化した後にLife Time Valueを最大化することも大切です。

そういった課題に対応することが可能なソリューションを紹介していきたいと思います。博報堂DYグループ独自のものや、ソリューションを提供する際によく使われるツールをご紹介します。まず潜在顧客に対するアプローチで有効なのが、検索行動でコンバージョンする可能性の高い層を抽出できる「Handy TV Insight」、テレビ広告のコンバージョン効果の把握などが可能になる「Atma」です。

生活者が潜在から顕在化した瞬間を捉えるためには、Web閲覧行動の変化を捉えることができる「AudienceOne」と、生活者のリアルなオフライン行動データを活用し来店者分析や来店効果の分析ができる「ACTAG」が有効です。「急に金融情報サイトを見るようになった」といった場合にはAudienceOneで、「週末に住宅の展示イベントに行った」といった場合にはACTAGで行動を捉えることができます。

顕在化した生活者を段階的に口説き落とすフェーズでは、「CROSSWORD TARGETING」が有効です。検索ワードの検索遷移から、検討ステージに応じた適切な広告メッセージを出すことが可能です。自社顧客化した後のLife Time Valueの最大化にも、AudienceOneが有効です。商品自体の買い替え顕在顧客化や付随的な別のサービスでの顕在顧客化を観察し続けることが出来ます。

Bゾーン(自社チャネルで時間をかけずに購買する、量販小売店や外食チェーンなど)の課題は商圏顧客を捉え直し、ヘビー客の頻度や単価をアップすることです。そのためには、生活者にとっての自社店舗の位置付けを知り、近隣の競合とどのように使い分けているのかを把握する必要があります。ライト客の商圏セグメント配信による集客や、既存ヘビー客との恒常的な情報接点をつくること、プリストアからインストアに繋げていく試みも重要になります。

生活者にとっての自社店舗の位置付けは、自店データ=「内海」のデータと、家計簿アプリの購買データ=「外海」のデータを比較によって知ることができます。昼までは自店で商品が売れているが、夕方近くになると売れずに他店に移って買っている、といったことが分かります。

ライト客の商圏セグメント配信には、居住地の郵便番号によるターゲティングや、スマホアプリのGPS履歴などの情報を利用できます。既存ヘビー客との恒常的な情報接点をつくる場合に有効なのが、小売企業様向けCRMプラットフォームの「Katta!」です。アプリ開発からコンテンツ運用、効果検証が容易にできます。CRMによって、閲覧や購買履歴に基づいた情報を配信し、来店・購買動機を高め続けられます。

プリストアについてはアプリやモバイル広告で、店頭ではデジタルサイネージで、インストアではスマートレジやスマートシェルフで、といった具合に連動させることで、顧客の誘引・購買促進を図ります。

オープンチャネルの業種には、商品への関与度が高い生活者のプロファイル分析が必要

Cゾーン(オープンチャネルで時間をかけて検討する、嗜好性や機能性の高い一般消費材など)についての課題は、顧客IDがないため継続的な関係をつくりにくいことです。これを解消するには、関与の高い生活者のプロファイル分析や、流通・ポイント業者と連携した特定チャネルベースでの擬似的CRM、セグメントのボリュームを勘案したメディアプラニングが効果的です。

関与の高い顧客のプロファイル分析には「POS-AD」と「Querida」が有効です。POS-ADは購買データにWeb閲覧データを統計的に結合することでターゲットを想定でき、Queridaは調査データとWEB閲覧行動データを組み合わせることにより生活者の意識や行動を捉えることでターゲットを可視化できます。

擬似的CRMについては、流通・ポイント事業者と連携し、購買データとCookieを連動させることで、デジタル上で箱庭的にCRMを実現することが可能です。購買データをベースにセグメント配信をアドネットワーク上で実施したり、購買データの変化に応じて優良顧客を育成するためのメッセージ変更を実施できます。

セグメントのボリュームを勘案したメディアプランニングは、AudienceOneやQueridaのデータを連携することで実現できます。例えば購買データとTV視聴データを連携させ、マスメディア出稿を考える、といった具合です。

Dゾーン(オープンチャネルで時間をかけずに購買する、一般的な飲料や食品など)の課題はマスマーケティングの効果・効率を高めるためにデジタル・データを活用することです。ここは課題が多く非常に難しい、チャレンジングなゾーンです。有効な施策はCゾーンと同じ関与の高い生活者のプロファイル分析と、マルチターゲット×マルチメッセージのテスト、マーケティング施策の最適予算配分です。

関与の高いプロファイル分析をやる事自体はCと同じですが、別の手法も使えます。購買パネルデータ「QPR」から、優良顧客分析&判定ツールの「Framingham」を使ってHOT度の高い顧客セグメントを抽出し、プロファイルを洗い出します。

マルチターゲット×マルチメッセージのテストについては、分析したターゲットのインサイトをベースに、セグメントごとにメッセージを開発・配信し、ABテストを行います。

マーティング施策の最適予算配分については、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)ツールの「m-Quad」を使います。テレビ・デジタル・流通販促費用などの最適な配分を決めることができます。

Dゾーンは購買データや意識データから、どういうクリエイティブをつくるかが非常に難しいところです。購買トラッキングでいい成績を残したものをマスに展開するなど、いろいろなやり方が考えられます。

4つのゾーンにおけるデータドリブンマーケティングについて話してきました。個別、局面的な課題対応だけでなく、全体のマーケティングの指針もあります。日々データは更新や追加されていきます。その中で対応方法を考えていく必要があります。

博報堂にはそういった状況に対応出来る人材、ノウハウがあり、クライアント企業に合わせたオリジナルの提案が可能です。ぜひご相談いただければと思います。

プロフィール

辻田 敏宏
博報堂 データドリブンマーケティング局 局長

1990年博報堂入社。飲料・食品・日用品・小売・自動車・家電・不動産・情報通信・金融など様々な業種のマーケティングプランニングを担当。また、ネクストマーケティング・スマートコミュニティ・消費税などのテーマでのクライアント横断型のプロジェクトを主導。2014年よりデータドリブンマーケティングに携わり、2016年より現職。

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