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オンラインがけん引する生活変化 ~【エンタテインメントカテゴリー】におけるNewNormal
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オンラインがけん引する生活変化 ~【エンタテインメントカテゴリー】におけるNewNormal

新型コロナウィルスによる外出自粛の影響により、オンライン活用の拡大と、それによる生活変化が幅広い領域で起こっています。博報堂は3月および5月に、こうした変化に対する生活者の意識や今後に向けてのニーズを調査。ウィズコロナ時代における新たなソリューション開発・マーケティングチャンスの探索を行っています。

本稿では、「エンタテインメント/イベント」のジャンルで起きた変化について、より詳しい姿を掘り下げていきます。

【エンタテインメント/イベントカテゴリーにおけるNew Normal】

■リアルの場が制限されたからこそ生まれた可能性

今回のコロナでの世界的な混乱でも、過去に起きた大災害時でも、緊急事態が訪れた際に真っ先に制限を受けてきたのが、エンタテインメント分野です。コロナ下においては、密な接触を避けるという目的で、多くのライブハウスやイベント会場、エンタメ関連施設が自粛という形で営業休止を余儀なくされました。言うまでもなく、重要な収入源であるステージに出演を希望するアーティストやエンターテイナーは当時数多くいましたが、活動自粛という選択を取らざるを得ませんでした。ただ、そんな中でも、“自粛生活”を逆手にとったポジティブで新しい動きが次々と出てきました。たとえばテレビ収録などが中止となり、時間に余裕のできたタレントや芸能人が、自分の知名度を生かして「ステイホーム」のメッセージをSNS上で呼び掛けたり、手洗いをレクチャーする動画などを通して感染予防の知識を楽しく伝えるといったコンテンツがいくつも配信されました。

これは多くの人にとって、鬱々とした気持ちになりがちな自粛生活の中で、気持ちも晴れるし、非常に勇気づけられるような取り組みだったのではないかと思います。また個人的には、普段なかなか見られないような有名人同士のコラボレーションが見られたのは興味深かったですし、あるSNSには“投げ銭機能”が追加されていて、オンラインのライブ中にバッジを購入すると出演者を支援することができるというのも、ユニークでポジティブな取り組みだと感じました。さらには、イベントの最中に、イベントを見ている参加者同士がつながって盛り上がるなど、新しい変化の兆しを感じさせる事象が次々と起きている。リアルの場が制限されるという条件のもと、オンラインをフルに活用した新しいエンタテインメントの形ができてきたように感じます。

■変化の兆しは今後何を生んでいくか?

ではここから、具体的にどういうエンタテインメントの形がでてきたかを見ながら、その可能性を検証したいと思います。

まず従来のエンタテインメントは、ライブやイベント会場、ホールなどの施設に行くという手間はもちろん、移動にかかる時間と金銭的コスト、また日程を確保するといった、総合的な体力が求められることでした。それがオンラインであれば、スマホなりPCなり、ネットに接続する機器と環境さえあればどこからでも参加できるという利便性があります。また、「少し興味はあるが、わざわざチケットを取って観に行くのは面倒」と感じていたような人でも、オンラインでのライブなら自宅でぱっと画面を開くだけで視聴できる。心理的なハードルがぐっと下がり、「時間もあるし興味も少しはあるし、見てみようかな」という気持ちになりやすいのが大きな特徴です。これまでリーチできていなかった層や、ファンになる種を持ったような人たちに興味を持ってもらい、そこからファンづくりに進めていけるかもしれません。確実に、既存ファンのすそ野を広げる大きな可能性があると考えます。

もう一つは、有名人とファン、ブランドと生活者といった関わり方に生まれた新しい兆し。有名人同士のコラボ配信や、オンラインイベントの最中に参加者同士がやり取りを楽しむなど、新しい双方向性が生まれています。これまで生活者は、イベントそのものや、有名人が発信するコンテンツ、メッセージを一方的に与えられ、ただただ消費する側だったと言えますが、新たに生まれた双方向性によって、有名人との相互のやり取りを楽しめるようになりました。SNSの広がりとともにそうしたコミュニケーションはすでに可能ではありましたが、今回のコロナをきっかけに、変化の傾向がより加速したように感じられます。これは、今後のエンタテインメントの形にも大きな変化をもたらすのではないかと予測しています。

■鍵となるのは、“使い分け”

連載vol1の「オンラインFace to Faceで近づく距離・広がる可能性」の項で述べられたように、今後はオンラインとオフライン/リアルの場が、うまく使い分けされていくのではないでしょうか。そして、発信する側に立って言えば、同じコンテンツをオンラインとオフラインで提供するというよりも、それぞれの特性を活かした内容に変えて発信すべきではないかと考えています。たとえばライブステージなどのオフライン/リアルの場では、アーティストのかっこいい「ON」の姿を存分に見せ、オンラインでは、意外性のある素顔など「OFF」の部分を見せていく。そうしたギャップをあえて発信していくことで、新たなファンを獲得しやすくなったり、あるいはすでにファンの人にも驚きを提供し続けることができ、よりロイヤリティを上げていくことが可能になるのではないかと考えます。

また、オンラインの場合は、大きな武器である「手軽さ」を最大限に活かして、より細かいターゲットに分けた無観客のミニイベントなどを開催することもできるでしょう。オフラインで不可欠だった広い会場やいい設備が必ずしも必要なくなることで、今後はもしかしたら、最低限の設備が整ったレンタルスペースのような場のニーズも増えていくかもしれません。

冒頭に述べたように、エンタテインメント分野はコロナ下において真っ先に制限されることとなりました。ただ逆説的ではありますが、気分が落ち込んだり、困難に陥ったときにこそ必要なのがエンタテインメントの力だと感じています。個人的にも今回オンラインでさまざまなコンテンツを体験し、それぞれに面白いと感じ、元気をもらってきました。コロナをきっかけに拡張された、オンライン/オフラインという場を大いに活用し、新たな形のエンタテインメントが生まれることを期待しています。

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  • 博報堂関西支社第二ビジネスデザイン局第二プラニングチーム
    ストラテジックプラナー
    2017年博報堂入社後、ストラテジックプラニング職として食品、飲料、住宅、消費財を中心にコミュニケーションプランニングや商品開発を担当。
    アイドルやアーティストのライブ空間のように、多くの人が幸せを実感する瞬間をプランニングすることを目標に、2020年からは関西で日々奮闘中。