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改めて知っておきたいBtoB企業のマーケティング新潮流「インバウンドマーケティング」の仕組みとはじめ方
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改めて知っておきたいBtoB企業のマーケティング新潮流「インバウンドマーケティング」の仕組みとはじめ方

アイレップは2019年11月、BtoB企業のマーケティング支援を目的とした新組織を設立しました。新組織では、2018年にアイレップのグループ会社となったタービン・インタラクティブと緊密な連携を取っています。また設立をしてすぐに、BtoBマーケティングを簡易に始めることが出来る「インバウンドマーケティング スターターパック」の提供も開始しました。
今回、BtoB企業のマーケティングの現状と、インバウンドマーケティングのはじめ方、スターターパックの内容などについてアイレップの山﨑信潔と、タービン・インタラクティブの志水哲也代表取締役に聞きました。

アイレップがBtoBマーケティングに特化した新組織を設立した背景とこれまでの取り組み

山﨑
日本では2013~2015年に「BtoBマーケティング元年」などと言われ、BtoB企業のマーケティングへの関心が高まりました。アメリカでは、5年くらい先んじて同様の動きがあったはずです。日本のBtoB企業には規模が大きく、グローバルでビジネスを展開しているところが多いという印象があります。こういった企業の場合、自社でマーケティングに関する全てに取り組むのは難しいんです。またそれをサポートする側も、Web製作からナーチャリングまで全体をプロデュース出来る企業がほとんどないという問題がありました。広告会社は広告だけ、マーケティングオートメーション(MA)ツールのベンダーはシステムの実装だけ、と専門領域が分かれているので、ツールを有効に活用するための方法についてはサポート出来ない、といった状況もありました。
そうした課題に対応するため、アイレップもタービン・インタラクティブも、それぞれがBtoBマーケティングに関するサービスをワンストップで提供するよう努めてきました。ただやはり、アイレップはSEOやコンテンツ制作に、タービン・インタラクティブはWeb制作やMAの導入コンサルティングに強い、といったそれぞれの得意分野があるため、今回、お互いの強みを生かしてより優れたワンストップサービスを提供するため、新たに専門組織を立ち上げました。
志水
当社タービン・インタラクティブは1999年に設立し、2018年末にアイレップのグループ会社になりました。設立当初は、BtoB企業向けの戦略的なWebサイト構築が主な業務でした。企業のホームページを作る場合、潜在的なユーザーとのコミュニケーションを主な目的にするのが一般的ですが、BtoB企業は近年までここに目が向いていませんでした。まずホームページの担当は広報部であることが多く、マーケティングの部署自体がないという企業もありました。私自身は元々マーケティングを専門としていましたので、BtoBの製造業でも、将来的にマーケティングが必要になることを感じていました。ただCRMが流行ってからもSFA(営業支援ツール)が流行ってからも、「ホームページに来ている人の反応を見て、それを営業に繋げませんか」という我々の提案はなかなかご理解いただけない状況が続きました。ですが、先ほど山﨑さんがお話されたBtoBマーケティング元年あたりを契機にMAがある種のブームになってから、状況が変わって来ました。
「日本もアメリカに追いつかないと」となった時点で、既にアメリカでは「HubSpot」をはじめとした優れたMAツールが活用されていました。我々は、日本企業にも同様の優れた仕組みを導入したいと考え、HubSpotのトップパートナーになりました。これが現在まで続いており、HubSpotをベースに企業のWebサイトを構築し、マーケティングを支援しています。

オフライン型/オンライン型の「リードジェネレーション」とは

山﨑
オンライン型のリードジェネレーションについてお話する前に、これまでの主流だったオフライン型のリードジェネレーションについてご説明させてください。これまでBtoBマーケティングの主体となっていたのは、展示会やセミナーなどのオフラインのイベントでした。人を集めて名刺をもらい、それを見て営業が電話します。この流れが長い間“マーケティング”と言われてきました。これは大きな成果を上げていた一方で、イベントに参加してもらえないと営業が出来ないことが大きな課題になっていました。
そして、従来のオンライン型のリードジェネレーションは、マス広告やテレマーケティングが主体だったといえます。こうした手法は自分から外に出て行くので「アウトバウンド型のマーケティング」と呼ばれます。
これに対して、「インバウンドマーケティング」という言葉が登場しました。訪日外国人を「インバウンド」と呼ぶことが一般的になってきたので紛らわしいですが、インバウンドマーケティングはそれとは全く関係がありません。情報を探している人を自社のホームページに呼び込み、ホワイトペーパーのダウンロードなどをきっかけにリード化し、そのリードを育成することで営業機会に繋げる、という手法になります。

これを実現するためには、ホームページに来た人に対していかに興味がある情報を提供するか、個人情報を提供しても良いと思える有益な情報を与えるか、が重要になります。そのためにSEO、コンテンツマーケティング、リードを獲得するためのオファー、CTA(コール・トゥ・アクション)の最適化などの様々な手法を駆使します。これがリードジェネレーションです。

志水
インバウンドマーケティングという言葉は、元々HubSpot社が提唱したものなんです。電話番号リストを端から電話して自発的に営業していくのが従来のアウトバウンドだとすると、インバウンドは“見つけてもらうように努力する”手法です。ただし、せっかく自社のWebサイトに来てもらったとしても、そのまま帰られてしまってはマーケティングは 進みません。
従来のホームページでも、問い合わせや見積もり依頼が商談に繋がることはありましたが、それ以外の人はサイトに訪問しただけで帰ってしまっていました。そういった「お客様になる手前の、更に手前の人」に対しても、情報提供する代わりに個人情報をいただくことが出来ないか、というのがインバウンドマーケティングの考え方です。例えば、お困りごとがある人に対し、関連する統計データをダウンロードいただけるようにする代わりに、企業名やお名前などを入力いただくといったアプローチをします。こういったアプローチを「オファー」と呼びます。
HubSpotをはじめとしたインバウンドマーケティングのプラットフォーム上では、Webサイトへの訪問者を複数のポイントで採点します。資料をダウンロードしたか、送ったメールを閲覧したか、ソーシャルチャンネルをチェックしたか、料金表や無料相談フォームを複数回開いたか、などが基準になります。例えば無料相談フォームを一日に何回も開いては閉じている人であれば、「明日までに企画を出さなくてはいけない状況で問い合わせようか迷っている」可能性があります。そういう方にすぐに連絡することが出来れば、成約する可能性はかなり高まります。電話番号のリストだけを見て電話をかけまくるような方法より遙かに効率的です。
インバウンドが主流に変わってきたのは効率の良さに加えてもう一つ大きな理由があります。それは販売側よりも購買側にパワーが移ってきたことです。このような時代には、いくら販売側の都合で商品を売りつけても買ってもらえません。BtoBの場合はより顕著で、タイミングや条件が揃っていない相手に売り込んでも全く売れません。昔であれば、企業が近しい関係にある代理店を電話で呼び出し、求めているツールを探してもらう、といったことがありました。しかし今は、まずWebで探し始める企業がほとんどでしょう。

「ナーチャリング」と「クオリフィケーション」とは

志水
潜在的なお客様に対してご購買まで進んでいただけるようにアプローチすることを指しています。何らかのきっかけでホームページ上の資料をダウンロードしたり動画を見たりしていただいた方に、その後もサービスや料金形態などについての情報提供を続けます。自社の商品をご理解いただくサポートをして、購買に繋がるように潜在的な顧客を育てます。
リードジェネレーションとナーチャリングに加え、リードクオリフィケーションという言葉もセットで使います。属性や行動データからリードに対する点数を計算し、一定の点数を超えたら購買にとても近い方と判断し、営業が動くということを指します。ナーチャリングは「クオリファイの点数に達するまでの支援」とも言えますね。

──MAツールはマーケティングに関する機能に特化しているのでしょうか。営業に関する機能も備えているのでしょうか。

志水
CRMと言われる、顧客管理・営業支援の仕組みと組み合わせて運用するのが基本ですが、ツールの中に機能としてセットされている場合もあります。クオリファイから先は、マーケティングと営業がどう組んでいくか、我々としてはそれをどうご支援するかが大きなテーマになります。例えばツールでは、営業とお客様とのメールや電話の状況を管理したり、Web会議機能を使って顧客への相談会を開いたり、といったことも可能です。
Web会議について言うと、最近はお客様の会社に訪問せずに、Web会議で相談会を開くことがちょっとしたトレンドになっているんです。お客様としてもプレッシャーがかかりにくいし、営業する側も移動時間を省略し、追加のスタッフを参加させやすいというというメリットがあるので。
山﨑
MAには基本的にCRMの機能は入っていませんが、CRMと密に連携してデータをフィードバックします。

──リードジェネレーションの段階から全てを記録管理しているということは、営業の方も「このお客様はこういうことに興味がある」ということが予め分かっているということですね。

志水
そうなんです。どういう方で、どういうことに困っているのか、ということを把握した上で営業は課題解決のお手伝いをすることが出来ます。ただし、把握しすぎているのは、時にお客様にとって不快に感じられる場合もありますので、伝わり過ぎてしまうと怖がられてしまうこともあるので適切に情報を利用することが大切です。

現在のBtoB企業の抱えているマーケティング課題

山﨑
志水さんから最初にご説明いただいたとおり、いまだに企業サイトの管轄はマーケティング部門の担当ではなく、マーケティング部門がホームページ上で何か取り組もうとした場合にその調整がとても大変であることと、もう一点は、経営層からは数字を求められがちであることです。何も取り組んだことのない状況で具体的な数字を出すことは出来ませんし、PV数が上がったとしてもそれ自体はお金には繋がりませんよね。動くのは大変なのに成果は求められる、という大変難しい状況であると思います。
今回我々が「スターターパック」という形で提供を始めたのは、そういった悩みを抱えているマーケティング部門の力になりたいと考えたからです。会社の既存のホームページから切り出して、ミニマムにWebマーケティングをスタートしませんか、という思いを込めています。
志水
大きい話になってしまいますが、今回のパッケージは「売り手よりもお客様が力を持っている現状を踏まえ、仕事のやり方を変えましょう」というコンセプトで作りました。
BtoB企業では近年、マーケティングのセクションを新設する動きが活発なのですが、更に営業とマーケの中間的な組織である「インサイドセールス」というセクションを作るのもトレンドです。インサイドセールスは、電話営業やメール対応、ソーシャル・チャット対応などを担います。これまで「メールやサイトに問い合わせてきた、インバウンドで入って来た人に対して営業とマーケティングのどちらが対応すべきか」ということが議論されて来たのですが、そこに専門組織で対応しようという発想で生まれたのがインサイドセールスです。
今回のスターターパックには、そういったインサイドセールスが担うような業務をサポートする意味もあります。MAツールを既に入れていても、機能が豊富過ぎて何をどこまでやればいいか分からない、と悩まれている企業は多くいらっしゃいます。スターターパックには、「まずはこれをやりましょう」というものを詰め込んでいます。SEOを実施するために必要になる、コンテンツ作成もセットに含んでいることが大きな特徴です。
山﨑
BtoBの企業がコンテンツマーケティングをするのってとても難しいんです。例えばボールベアリングを扱っている企業が、摩擦係数をテーマにコンテンツを作るような場合、それを書けるライターの方を見つけるのって難しいですよね。だから、文章を書くのに慣れていない社員の方に無理矢理書いてもらう、といった形になりやすいんです。私は長くコンテンツマーケティングに関わって来たので、ボールベアリングのような内容を専門知識のないライターの方が書くことは絶対に出来ないことを知っています。かといって、多忙な技術者の方に慣れない文章を書いていただくのも非効率です。
また多くの企業は、製品を過剰に持ち上げた記事ではなく、自社の製品に対して愛を持っている人が書くコンテンツを求めているのですが、その一方で「ここは書いて欲しくない」といった制限もかけがちです。でも顧客が求めているのは、企業が出したくない情報にこそあったりするんです。しかもそういった情報は、外に出してもマイナスがあまりなかったりします。コンテンツマーケティングをするには、このようにどのような内容を掲載するかの判断も求められます。
我々はこれまでのコンテンツマーケティング業務を通して、専門的な知識と高いインタビュースキルを持った多数のライターと繋がりがあり、どういった形で情報を発信すれば一番効果が高いかの知見を持っています。こうした経験やノウハウは、BtoBマーケティングに関するサービスをワンストップで提供する上で、特に強みとなる部分だと思っています。
志水
スターターパックでは、お客様のペルソナを考え、どのようにして該当サービスに興味を持っていくかというストーリーを企業と一緒に作ります。BtoB企業のSEOの場合、キーワードは非常にニッチなものになりがちです。その言葉の検索数自体が非常に少ないこともあるのですが、それでもすごく濃い人が来てくれるならやろう、といった判断になりますね。

──HubSpotの使い方についてのコンサルティングもパックに含まれているのでしょうか。

志水
HubSpotの操作自体は非常に簡単なのですが、機能が多すぎるくらいあるんです。ですので、どの機能から使った方がいいかなどのアドバイスをさせていただきます。
山﨑
価格やコンテンツの本数にしてもそうなのですが、スターターパックはあくまで叩き台のように考えていただいて、これをベースに柔軟にカスタマイズする流れになると思います。スターターパックの価格には、HubSpotのライセンスを含んでいますので、例えば既に別のMAツールを導入されている企業様にご導入いただく場合は状況に合わせてパックの内容をアレンジさせていただく予定です。

──英語版のサイトにも対応しますか。

山﨑
勿論対応します。
志水
海外進出しようと考えたときに、「こういうことをやっている企業でこういう実績があります」というページを作るのはとても効果があります。「国内向けのマーケティングページはないが海外向けだけ用意している」という企業もあるくらいです。
山﨑
BtoBのビジネスをしている日本企業の場合、企業名は知られていないけれども製品自体は世界でも有数の品質、といったことがよくあります。だから海外の方も、ボールベアリングのような言葉でそれを扱っている日本企業を検索することはよくあるんです。

隣の会社はもう取り組みを始めている。

志水
このスターターパックは、マーケティングの話をよく聞くし、やらなくてはいけないと思っているけど、どういうステップを踏んでいいか分からない、という方にお勧めしたいです。「この期間内にこれだけのことが出来る」というパックなので、とても分かりやすいと思います。
また、既にMAツールを入れたけれどもどう使っていいか分からない、担当がいない、コンテンツを用意したし見ている人もいるがそれを次のアクションに生かせていない、といった方にもご検討いただければと思います。パックの内容は柔軟にカスタマイズ可能ですので、これを機にもう一度チャレンジしていただけたらと思います。

──今回設立した新組織と、今後のサービスの展望を教えてください。

山﨑
BtoBマーケティングは一度サイトを作って終わりではなく、コンテンツを出し続けることが重要です。我々の提供するサポートも、長い期間に渡ってPDCAを回すお手伝いをすることになりますし、商材の理解も欠かせません。マーケティングに関するどんなこともお手伝い出来る組織でありたいと思います。
志水
アイレップにBtoBセクションが出来て、タービン・インタラクティブもそこに入ることでより多くの企業にサービスが提供出来ます。日本のBtoB企業のマーケティングをサポートさせていただき、より良い方向へ進むお手伝いが出来ればと思っています。
山﨑
BtoBマーケティングについて丁寧にお話するとかなり専門的に感じられるかもしれませんが、取り組みをスタートしている企業は急激に増えています。まだ取り組んでいらっしゃらないようであれば、「隣の会社はもう始めていますよ」ということをお伝えしたいです。
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  • 志水 哲也
    志水 哲也
    株式会社タービン・インタラクティブ 
    代表取締役
    1999年に株式会社タービン・インタラクティブを設立。BtoB企業に向けた戦略的なWebサイト構築、マーケティング支援を進める。2014年にHubSpotのパートナーとなり、2016年にはBtoBマーケティング小説『ベテラン営業マンと若手Web担当者がコンビを組んだら』を上梓。2018年よりアイレップのグループ会社としてBtoBマーケティングサービスを拡大している。
  • 株式会社アイレップ
    ソリューションビジネスUnit インバウンドマーケティングDivision B2Bグループ
    Group Leader
    大手出版社での雑誌や実用書などの編集者、Web事業会社でのコンテンツマーケティング、SEO責任者を経て、2017年にアイレップに入社。入社後は、業態を問わず、Web・コンテンツ制作、SEO、CRM・MAを利用したクライアント企業のコミュニケーション設計など、オウンドメディアを利用したデジタルマーケティングを全方位で担当する。現在は、2019年に発足したBtoB事業向けの専門組織のマネージャーとして、マーケティングだけでなくDX推進に向けたコンサルティングを手掛けている。

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