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【連載 Creative technology lab beat Vol.5】 AIの進化とクリエイターに求められる新しいスキル ──デジタルマーケティングのパラダイムシフト
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【連載 Creative technology lab beat Vol.5】 AIの進化とクリエイターに求められる新しいスキル ──デジタルマーケティングのパラダイムシフト

「クリエイティブ×テクノロジー」をテーマに、広告制作業務の効率化と新しい価値創造を目指す博報堂DYグループの横断型組織「Creative technology lab beat(以下、beat)」。そのメンバーやプロダクトを紹介する連載の第5回をお届けします。
今回は、パフォーマンスクリエイティブ領域を専門で担当しながら、メディアやクライアント業務にも携わる2人のメンバーに登場してもらいます。米国におけるデジタルマーケティングの新しい動きなど、さまざまな興味深い話題が交わされました。

木下 陽介
博報堂DYホールディングス 統合マーケティングプラットフォーム推進局 局長
兼 博報堂テクノロジーズ マーケティングDXセンター 副センター長
Creative technology lab beat

石井 智之
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) 博報堂デジタルイニシアティブ 
プロセス&クリエイティブデザイン本部 副本部長 
兼 クリエイティブ推進局長
Creative technology lab beat

青木 創太
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) 博報堂デジタルイニシアティブ 
プロセス&クリエイティブデザイン本部
クリエイティブ推進局 第1パフォーマンスクリエイティブ推進部長
Creative technology lab beat

「メディア×テクノロジー×クリエイティブ」という視点

──お二人のbeatにおける役割をご説明ください。

石井
beatを構成するユニットの一つであるDACの博報堂デジタルイニシアティブ(HDI)に所属し、beatが開発しているプロダクトのPoC(実証実験)などを担当しています。クライアント業務の中で得た知見を開発担当にフィードバックし、プロダクトのブラッシュアップを支えるのが大きな役割の1つです。
青木
我々が携わっているのは、beatの3本柱である「ブランデッド領域」「パフォーマンスクリエイティブ領域」「先端技術領域」の中の「パフォーマンスクリエイティブ領域」です。
広告を出稿する媒体の特性を考えながら、テクノロジーとクリエイティブの力で広告のパフォーマンスを最大化していくのが仕事です。「メディア×テクノロジー×クリエイティブ」という視点が求められる立場と言えます。

──beatのリーダーである木下さんから見た二人の人材力とはどのようなものですか。

木下
パフォーマンス型広告の一般的な指標は、CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)ですが、最近はブランデッドの要素、つまりブランドのメッセージやイメージをパフォーマンス広告に加えていきたいというニーズも高まっています。生活者視点に立ちながら、いかに広告に接する人の心を打ち、行動を促し、具体的な成果に結びつけていくか。つまり、いかにブランデッドとパフォーマンスを統合していくか──。その課題解決に取り組む力をもっているチームであると捉えています。

──担当しているソリューションをお聞かせください。

石井
広告文を自動生成する〈H-AI SERACH〉、広告画像の効果を予測する〈H-AI IMAGES〉、生活者が広告のどこを見ているかを判別する〈H-AI EYE TRACKER〉などのH-AIシリーズに加え、ChatGPTをベースにした独自のソリューションも担当しています。

関連リリース:H-AI SEARCH、大規模言語モデルを活用し、Yahoo!ディスプレイ広告向けの広告文生成を実現

米国におけるデジタルマーケティングの最新潮流

──デジタルマーケティングの現状をどう見ていますか。

石井
マーケティングのアプローチが大きく変わろうとしていると感じています。
デジタルマーケティングの大きな強みは、マスと比べて非常に細かなターゲティングができることです。この20年ほどの間、ターゲティングの精度を上げていくことがデジタルマーケティングにおける最も重要な取り組みの1つでした。

しかし、デジタルマーケティング先進国のアメリカでは、そのような考え方に変化が見られます。きっかけはAIの進化です。ターゲティングを精緻に行うということは、対象とする生活者を絞り込んで広告を配信するということです。それはすなわち、AIに学習させる教師データの量が少なくなることを意味します。AIの精度を高めるには、むしろターゲティングをせずにあらゆる対象に配信して、大量の教師データを獲得していくことが正解になります。アメリカではそのような考え方をもとにして、ペルソナ設定などのマーケティングプロセスが事実上省かれる傾向にあります。

──そのような動きは日本にも波及しているのでしょうか。

石井
まだほとんど波及していませんが、効果が明らかになることによって加速度的に変化が進んでいく可能性は大いにあると思います。僕たちは今、従来のデジタルマーケティングの方法と新しい方法をツーラインで運用し、その差分を積み重ねて新しい方法論の有効性を明らかにする取り組みを行っています。
青木
ターゲティングを行わずに広告を配信しようとすると、クリエイティブがパフォーマンス改善における最大の運用レバーになることから、大量且つ最適なクリエイティブが必要になります。媒体や配信面ごとに最適なクリエイティブの傾向やフォーマットが異なり、加えて常にフレッシュなクリエイティブを追加し続けることも重要だからです。そうなったときに、広告文を自動生成したり、広告の効果を事前に予測したりすることができるH-AIシリーズが力を発揮すると僕たちは考えています。
木下
おそらく今後は、先ほど話したようなブランデッドの要素がAIのアルゴリズムに加えられることになるはずですし、すでにその予兆はあります。たんにパフォーマンスを上げるだけでなく、人々の心を打つクリエイティブを短時間でたくさんつくることができること。それが僕たちの競争優位性になると思っています。

クリエイターに求められる「アノテーションスキル」

──「ChatGPTベースにした独自のソリューション」という話がありました。これはどのようなものなのですか。

石井
戦略プラナーの仕事をサポートするソリューションです。「訴求生成AI」と言って、ChatGPTベースで開発されており、クライアントの商品のサイトURLを入力するだけで、プラニングに必要とされる要素が自動生成されます。具体的には、カスタマージャーニーやペルソナ、訴求コピー等が瞬時に吐き出されます。これを使うことによって、プラナーの発想の幅が広がり、より最適なプラニングができるようになることが期待されます。
青木
このソリューションによって、プラニングのスピードを上げることも可能になります。プラニングをする際は、対象となる企業、ブランド、ユーザーなどの深い理解が必要です。AIを活用することによって、その時間を短縮することができます。プラニングの生産性を高めるツールと言っていいと思います。

──生成AIを活用する際に、どのような点が重要になると考えていますか。

石井
AIに学習させるデータの権利をしっかり保護する仕組みをつくることが大前提です。そのうえで必要なのが、現場のクリエイターやクリエイティブディレクターの「アノテーションスキル」であると考えています。
AIは学習するデータありきのテクノロジーなので、データが画一化すればアウトプットも画一化していくことになります。それを避けるためには、有効な教師データを見極めてAIに学習させることが必要になります。その「見極め」の力がアノテーションスキルです。このスキルがないと、成果につながる広告クリエイティブをつくることはどんどん難しくなっていくと思います。
青木
クリエイティブの現場では、AIが生成したコピーを参考にしながら個々のクリエイターがコピーライティングをすることが可能になっています。しかし、AIがつくったコピーが「ほかの商品でも同じことが言えるよね」といった内容であった場合、そのままでは人々の心を打つクリエイティブにはなりません。凡庸なアウトプットを生み出さないためにも、アノテーションスキルは必須になります。それに加えて僕たちには、生成AIの日々の進化にキャッチアップし、AIを有効に使う方法を常に更新していくことが求められていると考えています。

beatのプロダクトの質を高めていくために

──beatが掲げている「テクノロジー×クリエイティブ」というテーマをどう捉えていますか。

石井
先ほど青木君から話があったように、僕たちのミッションは、「テクノロジー×クリエイティブ」に「メディア」という視点を加えて、クライアントの目標達成を支援することです。デジタルマーケティングにおけるメディアとは、ほぼプラットフォームと同義です。変化を続けるプラットフォームのアルゴリズムを理解し、最適なテクノロジーの活用法を考え、優れたクリエイティブによって生活者の心を捉えて、広告効果を最大化していくこと──。それが僕たちのミッションであると考えています。
青木
プラットフォームのアルゴリズムが進化すると、クリエイティブに求められる要件も変わります。現場のクリエイターがその動きについていくのはたいへんなことです。そういった変化への対応をサポートするのがテクノロジーの力です。AIの自動生成機能や広告効果予測機能を使いながら、最適な方向性を踏まえたうえで、一人ひとりのクリエイターが優れたクリエイティブをつくる作業に専念することができる。それが「テクノロジー×クリエイティブ」の1つのあり方だと思います。

──今後、beatという枠組みの中でどのような価値を生み出していきたいと考えていますか。

石井
僕と青木君のチームは、日常的にクライアントと直接向かい合っています。その中で、クライアントや生活者にベネフィットを提供できるソリューションを見極めていくことが、僕たちがやるべきことです。
beatが開発したソリューションがすべて有用なものであるとは限らないし、改良が必要なものもあるはずです。クライアント目線、生活者目線で開発を担当する仲間に必要な方向性をフィードバックすることで、beat全体のプロダクトの質を高めていきたいですね。
青木
僕たちが所属するパフォーマンスクリエイティブ部門は現在30人ほどの規模ですが、パフォーマンスクリエイティブの重要性の高まりを考えれば、今後50人、100人規模の組織にしていく必要があると思います。もちろん規模だけではなく、メンバー一人ひとりのスキルを上げていくことも重要です。テクノロジーを上手に使いながら、パフォーマンスクリエイティブ領域の仕事の水準を向上させて、beatの価値をさらに大きくしていきたいと思っています。

木下
beatが動き始めてから1年半ほどになります。その間にメンバーやチームの連携が進み、プロダクト開発もどんどん進んできました。今後は、世の中を動かすクリエイティブ、新しい価値観を提示できるクリエイティブを生み出せる組織にbeatを育てていきたいと考えています。そのキーとなるのは、やはり生成AIです。生成AIという汎用的ツールを用いながら、いかに独自のクリエイティブプロセスをつくり、いかに画期的なクリエイティブを生み出していくか──。そのテーマに引き続き一丸となって取り組んでいきたいと思います。

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  • 博報堂DYホールディングス 統合マーケティングプラットフォーム推進局 局長
    兼 博報堂テクノロジーズ マーケティングDXセンター 副センター長
    Creative technology lab beat リーダー

  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) 博報堂デジタルイニシアティブ プロセス&クリエイティブデザイン本部 副本部長
    兼 クリエイティブ推進局長
    Creative technology lab beat

  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) 博報堂デジタルイニシアティブ プロセス&クリエイティブデザイン本部
    クリエイティブ推進局 第1パフォーマンスクリエイティブ推進部長
    Creative technology lab beat