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スマホゲーマーを生活者視点で洞察する専門集団「BXMゲームプロジェクト」とは
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スマホゲーマーを生活者視点で洞察する専門集団「BXMゲームプロジェクト」とは

BXMゲームプロジェクトは、BXマーケティング局内のスマホ向けゲームアプリ案件に特化した領域特化型のストラテジックプラニングチームです。2021年1月の発足以降、スマホゲーマーを生活者視点で分析した定量調査データベース「GATRIX(ガトリックス)」を軸とした独自ソリューションを開発、大型案件やアプリストアで上位にランクインするような話題作のローンチプロモーションを多数手掛けてきました。立ち上げの経緯や強みとする各種ソリューションの概要、今後の展望などについてメンバーの長縄、鳥本、濱下に聞きました。

スマホゲーム業界での存在感を高めるため発足した領域特化型チーム

――BXMゲームプロジェクトを立ち上げた背景を教えてください。

長縄
2021年1月にプロジェクトを立ち上げる以前から、博報堂はスマホ向けゲームアプリのプロモーションを手掛けてきましたが、まだまだ業界における存在感が薄い、という課題感がありました。加えて、提案においては常にターゲット規模、コスト感、キャンペーン効果等を正確に算出する高いビジネスコミットが求められます。スマホゲームのプロモーションにおいては、テレビCMやWeb、SNSなどをまたがった統合的なコミュニケーションが必要になるので、最適な予算配分の提案も必要です。どれも基本的なことではありますが、カテゴリの特性を正確に踏まえたうえで、明快なロジックに基づいた提案を行うことが求められます。これら全てをオリエンを受けてからクライアント提案まで非常に短期間で行わなければなりません。
鳥本
スマホゲームはどれくらいの人がダウンロードして遊んでくれたか、といったことが数字として凄くはっきりした形で見えます。他業界の案件であれば、好感度スコア好意の増加をはじめとする、いわゆるブランド指標でマーケティング施策を評価いただくケースが多いのですが、スマホゲームではより直接的に売り上げに結びつく数字をシビアに求められますね。
長縄
これらの課題を解決するために考えたのが、専門的な人材と知見を集約し、ゲームカテゴリに特化した汎用ソリューションを作ることでした。事前に市場環境などを調査しておけば調査にかける時間を短縮し、その分を戦略プラニングに充てることが可能となりますし、マーケティング施策についても組織にノウハウがたまれば精度が高まります。また、ある程度汎用的に使えるソリューションを作ることができれば、案件獲得の際の強みになりますし、提案やマーケ施策立案の負荷を下げることにもつながります。そういった取り組みの結果として成功案件が増えていけば、ゲーム業界での評価も高まると考えました。

――BXMゲームPJのメンバーはどうやって集まったのでしょうか。

長縄
プロジェクトになる前の時点から、「局内でゲームやエンタメに興味がある若手をゲームPJに入れたい」と部門長に相談しまして、声をかけてもらいました。
鳥本
ゲームアプリの案件を手掛ける場合、ゲーム自体への興味はもちろんなのですが、キャラクターを軸にしたコンテンツとしての展開などにつながるケースが多くあるため、関連するエンタメに複合的に関心を持っている必要があると感じます。実際にゲームPJにはそういったメンバーが集まっていますね。

「ゲーマー」という単一の側面ではなく、ゲームを含めた生活全体を楽しむ「生活者」と捉え、洞察

――BXMゲームPJで開発したソリューションについて教えてください。

長縄
2021年に、スマホゲーマーの定量調査データベース「GATRIX」、GATRIXをベースに国内のスマホゲーマーを7トライブに分類した「GATRIBE」、GATRIBEで発見したユーザー拡大のキーとなるトライブを動かすためのマーケティング施策「BILLIARD PLANNING」の3つを開発しました。2022年からは、GATRIXやGATRIBEで分かったスマホゲーマーの動向を対外的に発信し、国内外のイベントで講演するなどしてきました。

――GATRIXはどのような目的で開発されたのでしょうか。

長縄
スマホゲーム業界では多くのメーカーが、自社のゲームがどれくらいダウンロードされて、どれくらいの時間遊ばれて、どれくらい課金があって、といった1stパーティーデータを精緻に分析しています。一方でその外側にある、ユーザーが自社アプリを遊ぶ以外にどんな時間を過ごしているか、ユーザー候補になり得る人にはどんな特徴があるか、といったデータは保有していないケースが多いのです。ですから、我々がスマホゲーマーの定量調査を行い、それに基づいた提案をすることで、クライアントの求める価値を提供できると考えました。そうした構想を基に、濱下がGATRIXの調査設計やレポート構成を考えました。
濱下
GATRIXの開発においては3つの目的がありました。まずゲームのプレイ実態やゲーマーとしての意識を深堀することです。例えば、どのゲームアプリをダウンロードしており、そこにどういった理由や意識があるのか、ゲームをプレイすることでどんな気持ちになりたいのか、どんな機能や特徴をゲームに求めているのか、といったことです。これをタイトルやゲームジャンルごとに調べています。
 2つ目は、スマホゲーム以外でどんなことに興味を持っているかです。どのようなメディアに接触していて、ゲーム以外にどんな趣味があるかといったことを調べています。
 3つ目は、どんな情報発信をしているのかです。友達や家族に、関心のあるゲームをどのように勧めているか、といったことを調べました。

鳥本
案件ごとにそのジャンルをプレイしているユーザーを調査する、といったケースはあると思うのですが、我々のようにスマホゲーマーを包括的に捉えることを目的としたものは他にないと考えています。
長縄
こうした形で調査を行う流れになったのには、我々の思考のOSとして博報堂の「生活者発想」があるからだと思っています。対象を単にスマホゲーマーとするのではなく、ゲームを含めた生活全体を楽しむ「生活者」として捉え、洞察することで新たな価値を見出していく、というのは博報堂ならではのアプローチだと考えています。
鳥本
GATRIBEは、そうした思想をより体現したものになっています。

――ではGATRIBEについて教えてください。

長縄
GATRIXのデータをクラスター分析という手法で分析したところ、スマホゲーマーを7つのパターン、「トライブ」に分類できることが分かりました。ただ7パターンある、と言ってもイメージが湧きにくいので、それを血が通った人だと感じられるように実際のゲーマーの姿に落とし込んで行きました。この集計結果をどう見せるかという部分は腕の見せ所でしたね。メンバーと話しながら、「こういうゲーマーっているよね」というそれぞれの実体験などに照らして、トライブに名前を付けていきました。

鳥本
そこには、やはり普段自分がゲームで遊んでいて感じたことが生きています。例えば、普段一緒にバトルロワイアル系のゲームを楽しんでいる友人は、複数人で協力プレーをするゲームに夢中になっています。飲食店を経営しているある友人は、コロナ禍で時間ができたことを機に、リアルな友達と交流できるゲームをやるようになりました。こうしたタイプのゲーマーは、ゲーム性だけでなく複数人で同じ時間を過ごし、コミュニケーションすることをゲームに求めているんだなと感じていました。こういった方々は、トライブでいうとワイガヤゲーマーに分類されますね。
 同じように以前から感じていたのは、ゲーム全体がゲーム性に関わらず登場するキャラクターを重視したものになっているということです。そのため、アイドルの推し活に近いことがゲームでも活性化し、グッズ販売やクロスメディア展開などの周辺ビジネスに広がっていく流れが強くなっています。そのため、推し活ゲーマーのようなトライブも昨今では一般的になりました。

長縄
トライブ分析をやっていて面白かったのは、ユーザーがどんなジャンルのゲームを遊んでいるかということは表層的なことであり、ゲームに対して本質的に求めていることが何かが見えてくることでした。つながりを求めていたり、自分のプレーの凄さを人に示したかったり、一人で質の高いコンテンツに没入したかったり。そうした本質的な欲求を基にした分類ができたと感じるので、マーケティングコミュニケーションにも生かせるものになりました。

――7つのトライブを捉えたことで、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

長縄
スマホゲーマーの大きな傾向として、自分が遊んでいるゲームを周りの人に推奨する人とそうでない人がはっきり分かれるということが把握できました。そこから分かることは、新規タイトルの立ち上げを成功させたいメーカーは、ゲームを周りに推奨するユーザーにアプローチすべき、だということです。我々が設定した7つのトライブでは、「ワイガヤゲーマー」「ドヤ顔ゲーマー」「推し活ゲーマー」の3つのトライブが推奨側のトライブとなっています。
 ワイガヤゲーマーはコミュニティ欲求が強く、プライベートでも飲み会の幹事をやるような、くったくなく周囲を巻き込む人です。ドヤ顔ゲーマーは、自分のゲームスキルの高さを誇示したい人ですね。推し活ゲーマーは、アイドルやタレントのファンと同じように、良いと思っているキャラクターの価値観を共有したい人です。
 調査により、新しいスマホゲームが一定以上のダウンロード獲得を目指す場合、この3つのトライブのいずれか、もしくは複数を動かすことが大事であることが分かりました。近年は、マスメディアやWeb広告などの情報のみでダウンロードしてくれるユーザーがどんどん減っているので、こうした口コミ的な部分の重要さが増しているのです。
 この3つのトライブを動かして、他のトライブにプレイヤーを拡大するための方法を体系化したソリューションが「BILLIYARD PLANNING」です。ゲーマー洞察に基づき、玉突き型にユーザーを動かして 情報波及のピークを作る手法で、博報堂のオリジナルソリューションとしてクライアントに提供しています。

GATRIXを起点に、eスポーツやメタバース、VTuberなどゲーム周辺領域にも進出

――現在開発を予定しているソリューションはありますか。

長縄
現在GATRIXの第二弾を構築すべく、調査を進めている段階です。ポイントの1つが、日本国内の主要タイトルを網羅したスマホゲーマーのペルソナブックを作ることです。
鳥本
直近で成功したタイトルや、リリースからあまり日が経っていませんが成功する可能性が高いと見た国内タイトルを、計45タイトル掲載しています。ゲームの情報やダウンロード数といった基本的なことに加えて、マスメディアやWeb、SNSなどを通じてどのようなマーケティングコミュニケーションを行ったのかを全て追っています。ユーザーの特徴を捉えたペルソナブックであると同時に、マーケティングの成功事例集にもなっています。
濱下
もう1点新しい部分が、スマホゲームに限らず、コンシューマー(据え置き型)ゲームやPCゲームのプレイ実態についても調査している点です。例えば、コンシューマーゲームであればシューティングゲームを遊ぶのにスマホゲームでは遊ばない、という人は一定数いると思います。そういう方は、スマホゲームに何かしらの改善があれば遊んでくれる可能性が高いと思うので、メーカーの方に参考にしていただけるデータになるのではないかと感じています。
 eスポーツを意識した調査項目も増やしており、そういった広がりにもつながればと考えています。
長縄
GATRIXの構築によって博報堂がゲーム市場の状況を深く理解している、とメーカーの皆様からもご認識いただけるようになってきたため、ゲームから広がった他分野の案件を私たちBXMゲームPJで手掛けさせていただくケースが増えています。例えば、ゲーム配信をするVTuber事務所のブランドコミュニケーションのお手伝いが挙げられます。最近はスマホゲームをメタバースのプラットフォームとして活用するケースも増えてきています。ゲームに関連した市場は他にも沢山あると思いますので、そういった領域にも手を広げていけたらと思います。

――今後の展望を教えてください。

鳥本
ペルソナブックのデータをより充実させ、新規タイトルのローンチの参考にできるよう確度の高い情報を載せていくことですね。この他にも、メーカーの皆様に有益な情報をゲームPJならではの視点で提供していこうと考えているので、今後の活動に注目いただけたらと思います。
濱下
私もGATRIXをはじめとして、様々な形でスマホゲーマーに対するインサイトを深められたらと思います。eスポーツやメタバース、VTuberなど周辺領域の幅広いクライアントのお手伝いもさせていただけたらと考えています。
長縄
クライアントが、「チャレンジングな案件だけれども知見がなく自信を持ってスタートできない」といった場合にサポートしていけたらと思いますね。博報堂のDNAである生活者発想をベースに、クライアントがお持ちでないデータをご提供できることが我々の一番の強みなので、是非ご相談いただけたらと思います。
 最近はゲーム発のIPビジネスが増えているので、ゲーム以外の市場でIPビジネスを成功させるお手伝いもしていきたいです。博報堂は異業種をつなぐサービスを作るのが得意なので、そういった部分でもお役に立てるはずです。
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  • 博報堂 BXマーケティング局
    イノベーションプラニングディレクター
    教育系出版社で企画・制作の経験を経て、2014年に博報堂入社。食品メーカー、旅行、自動車、ゲーム、自治体など幅広い業種でコミュニケーション戦略の策定を担当。2017年より現職。オンラインとオフラインを統合した体験設計で、生活者の幸せとクライアントのビジネス貢献の両立を実現することを信条とする。
  • 博報堂 BXマーケティング局
    イノベーションプラナー
    2017年博報堂入社。関西支社のマーケティング部門に配属後、医薬品、消費財、不動産、自治体などの業種でマーケティングを支援。現在は東京に移り、ゲーム、金融、人材サービス、半導体までと幅広い業界を担当し、顧客体験設計を軸に広告からサービスデザインまで事業成長のサポートを行う。
  • 博報堂 BXマーケティング局
    マーケティングプラナー
    2020年博報堂入社。マーケティングセクションにてゲーム以外に自動車、金融、医薬品、消費財日用品などのマーケティング戦略の策定を担当。ゲームは入社初年度から担当していて、普段もゲームが好きでよく遊んでいるので、そこで感じたことを仕事に生かすようにしている。

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