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求職者が求める採用コミュニケーションを実現するために ──SNSでの採用広報を支援するNo Company
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求職者が求める採用コミュニケーションを実現するために ──SNSでの採用広報を支援するNo Company

博報堂DYグループのデジタル広告会社スパイスボックスの中に、SNSデータを活用した採用広報を支援する「採用コミュニケーション事業部」が発足したのは2018年のことでした。2021年10月、その事業部がNo Companyという新しい会社として独立しました。なぜ、SNSにフォーカスしているのか。そこで実現される新しい採用活動とはどのようなものなのか──。No Companyを率いる20代の社長、秋山真に話を聞きました。

採用広報にSNSデータを掛け合わせる強みとは

──スパイスボックスの⼀事業部から⼦会社として独⽴した理由をお聞かせください。

秋山
昨今、情報収集を始め就職活動全般がオンライン化しています。とくにアクティブに使われるようになっているメディアがSNSです。SNSを日常的な情報収集、情報発信の場としている求職者とコミュニケーションを行うには、企業側もSNSを上手に活用する必要があります。

私たちは、2018年にスパイスボックス内に「採用コミュニケーション事業部」を立ち上げ、SNSデータを活用した採用マーケティングをご支援してきました。以来、多くの企業の採用活動に携わってきましたが、この数年、オンライン採用活動支援のニーズはいっそう高まっています。事業部を企業化したのは、そこに大きな市場性があると判断したからです。

──さまざまなオンラインメディアがある中で、SNSにフォーカスにしているのはなぜですか。

秋山
求職者の日常に最も近く、求職者のインサイトを掴むのに最も適したメディアがSNSだからです。スパイスボックスにはSNSのデータを分析する「Social Data Lab.」というチームがあって、私たちはそのノウハウを活用することが可能です。また、SNSデータから採用トレンドを把握する独自のツール「THINK for HR」によって求職者の最新の動向を把握することもできます。

そのようなツールを活用してSNSデータを分析し、企業と求職者の最適なコミュニケーションの形をつくることをご支援するのが、私たちの基本的なビジネスモデルです。私たちはよく、求職者が求めている情報と企業が発信する情報を「接着」すると表現しています。

──企業が採用情報を発信するメディアとしてSNSを捉えると、どのような特徴があるのでしょうか。

秋山
通年採用に対応しやすく、生活者の日常的なタッチポイントに情報発信ができるのがSNSの特徴です。雇用のあり方は多様化していて、人材の流動性も高まっています。それはすなわち、ジョブマッチングの頻度が高まっていることを意味します。新卒採用においても、年に一度一括採用を行うというスタイルから、通年で必要な人材を何度も募集していくスタイルにシフトしています。

そのようなスタイルに適したコミュニケーションのあり方は、効率的にコンテンツをつくり機動性のある情報発信をしていくことです。そういったコミュケーションに適したツールがSNSです。

また、SNSデータを起点としたコミュニケーションは、ダイバーシティ&インクルージョンが求められる今日のコミュニケーションにも適しています。求職者は柔軟なワークスタイルを求めるようになっており、ジェンダーの尊重が重視され、価値観の面でも非常に多様化しています。SNSは、そのような求職者のリアルなニーズを捉え、「本音のコミュニケーション」を行っていくことを可能にします。

ライトできめ細やかなコミュニケーション

──クライアントに提供している具体的なサービスやソリューションを教えてください。

秋山
ソリューションは、大きく3つの領域に分けられます。1つ目が「STRATEGY」です。先ほど申し上げたスパイスボックスのソーシャルリスニングツールである「THINK for HR」を活用して、SNSデータ(エンゲージメント量や投稿内容)から求職者が求めている情報や大切にしている価値観を把握し、クライアントとともに採用広報戦略を最適化していきます。

「THINK for HR」は、SNS(Facebook、Twitter)上のエンゲージメント(「いいね」や「リツイート」「シェア」「コメント」などのアクション)データを定性、定量の両面で収集、分析することができるソーシャルリスニングツールです。企業が使用することで、自社が知りたいトピックに関してSNS上でどんな投稿や記事がどれほど話題になっているのかをタイムリーに把握することが可能です。

「THINK for HR」の分析はまた、社内の組織開発や人材育成、制度づくりなどに活用していただくことも可能です。働き方のトレンドをSNSのデータから読み取り、それを従業員のエンゲージメントを高めるために活用する方法です。

2つ目のソリューションは「CREATIVE」です。これは、採用広報戦略に基づいたコンテンツ制作をお手伝いするもので、1つ目の領域「STRATEGY」で明らかになった、求職者の価値観をもとに、どのような情報を、どのような形で発信していくかを決めるところからクライアントに伴走しクリエイティブを制作します。アウトプットはオンライン上に限らず、ターゲットのニーズや、企業が発信したいメッセージによっては、交通広告やリアルイベントの設計を行うこともあります。

そして3つ目が「MEDIA」です。2つ目の領域で制作したコンテンツを、より効率的にターゲットに届けるために、SNSで情報が広がりやすいメディアの選定や投稿の最適化など、採用広報における情報流通設計をクライアントにご提案します。

まとめると、例えば、「THINK for HR」やアナリストの作業によって、「働き方」「ダイバーシティ&インクルージョン」「SDG’s」など企業のターゲット層の就活生や求職者が共感している価値観やトレンドを分析、抽出し、企業やブランドが的確なメッセージをターゲット層が読んでいる効果的なメディアで発信できるようするなどの支援を行います。

──採用コンテンツづくりの具体的なコツを教えていただけますか。

秋山
私たちがとくに重視していることは2つあります。1つは「複数の視点でコンテンツを発信する」ことです。例えば、新入社員、中堅社員、経営層の視点を意味します。それぞれの層の社員を個別にインタビューするなどして、求職者に対して会社の姿を立体的に伝えることが大切であると私たちは考えています。

もう1つは、「求職者の疑問や不安を潰していく」ことです。これは、採用の面談などの際に出てきそうな疑問を想定し、それをコンテンツ化するということです。例えば、会社が掲げる大きな目標に対して、「でも、それって実現するのは難しいですよね」と疑問を寄せる人がいることが想定されるなら、それに対する答えをコンテンツにして、あらかじめ疑問を払拭してあげるという考え方です。求職者の立場に立ったコンテンツづくりと言ってもいいかもしれません。

──デジタル人材が社会全体で不足していると言われています。デジタル領域における企業と人材のマッチングのニーズは今後さらに高まっていきそうですね。

秋山
そう思います。デジタル領域はとりわけ、兼業、副業、ジョブ型など働き方が多様化しています。企業側は、職種、ジョブの内容、人材に求められるスキルなどを求職者に細かく伝えていかなければなりません。つまり、緻密な採用広報が求められるということです。一方で広報活動は通年化するので、情報発信の頻度は多くなります。日常的なタッチポイントになっているSNSの傾向から効率的に求職者のニーズを捉えて、継続的な情報発信を行い、マッチングの精度を上げていくこと。それが、私たちが考える新しい採用広報のあり方です。

高まる採用広報活動の重要性

──「No Company」という社名は非常に独特ですね。どのような意味が込められているのですか。

秋山
ダイバーシティがいっそう進んでいくこれからの世の中では、会社組織に関する固定観念や既成概念を壊していく必要があります。これまでの会社組織のネガティブな面に対して「No」と言い、組織を大胆につくりかえていく。企業のそんな勇気ある取り組みを力強く支援したいという思いをこの社名に込めています。

──秋山さんがスパイスボックスに入社したのは2016年だそうですね。働き始めて5年程度で会社を立ち上げる人はなかなかいないのではないでしょうか。

秋山
博報堂DYグループの中に起業を支援する制度があることもあって、早い段階で会社を立ち上げようと考える人は必ずしも少なくはありません。若い社員に可能性が与えられているグループと言っていいと思います。

博報堂は歴史ある会社ですが、今後は社員の働き方やキャリアの重ね方は変わっていくと思います。私自身、若手人材のロールモデルとなって、新しい働き方や新しいキャリアのつくり方を示していきたいと思っています。

──No Companyが博報堂DYグループの一員であることの強みについてもお聞かせください。

秋山
若年人口が減ってきて、優秀な人材を獲得するのが難しくなってきている中で、企業活動における採用広報の重要性は以前よりも増しています。企業のコミュニケーション活動全体の中に採用広報をしっかり位置づけ、ブランディング、クリエイティブ、メディア展開などのノウハウを使ってコミュニケーションを設計していけること。それが、博報堂DYグループの一員であることの何よりの強みであると考えています。

現在、私たちが関わっている案件の2割近くは、博報堂DYグループの他セクションとの協業によるものです。グループの中で採用領域に特化したビジネスを展開している唯一の企業として、グループ全体の価値向上に寄与していきたいと考えています。

採用活動の「B面」を強化する

──昨年発表した「学⽣の注⽬企業 2021」も大きな反響がありましたね。

秋山
「学生の注目企業」は、採用コミュニケーション事業部の頃から毎年行っている自主調査で、「THINK for HR」でSNSを分析し、どのような企業が注目されているかを発表する取り組みです。2021年調査では、まず学生が就職活動で使用しているメディアやSNSプラットフォームをリサーチし、その中でどの企業の情報のエンゲージ度が高いか、つまり「いいね!」やリツイートなどのリアクションが多いかを集計しました。

おっしゃるように、この調査にはたいへん大きな反響をいただきました。例えば、企業のプレスリリース配信のプラットフォームであるPR TIMESで「SNS上で最も注目されたリリース」と発表されたり、ランクに入った企業のニュースリリースで紹介していただいたりしました。フォロワーが数十万人もいるようなビジネスインフルエンサーの皆さんがツイートしてくださったのも大きかったですね。

──調査の中から見えてきた傾向はありますか。

秋山
大手メディアが発表している人気企業ランキングには入らないようなベンチャー企業、あるいは、一般にあまり知られていない企業がランクに入っているのが大きな特徴です。また、社長や社員がSNSで積極的に情報発信している企業が支持されているという特徴もあります。これは仮説ですが、SNS上では会社のリアルな情報を伝えようという姿勢を持っている企業が人気を集める傾向があるように思います。

──最後に、今後の展望をお聞かせください。

秋山
クライアントの採用活動のオンラインシフトやメディアシフトを支援する形はほぼできていると考えています。今後は、新しい採用活動を一過性のものとせず、定着させていくお手伝いをしていくことが大きな目標です。

新しい採用活動をサステナブルにしていくために必要なことは、大きく3つあると考えています。1つは、採用活動の「B面」を強化することです。採用活動の「A面」は就職情報サイトなどに載っている基本的な情報です。それに対して「B面」とは、会社のカルチャーや社員の価値観などをさまざまな視点で切り取った情報です。「B面」の情報は働く人それぞれの視点や表現で情報発信をすることが必要なので、SNSとの親和性が高いと言えます。

2つ目は、「候補者体験」を向上させることです。インターン、面談、面接、求人コンテンツなど、企業と求職者の接点はいろいろありますが、そこにおける体験がポジティブであれば、求職者は自らそれをほかの人とシェアしてくれます。ポジティブな情報が自然に広がっていく形をつくることは、採用活動が通年化している現在においてとても重要な広報戦略です。

3つ目は、データの活用です。データから求職者の最新のデータを読み取り、それに合わせてコミュニケーションのあり方をアップデートし続けていくことが必要です。

データはまた、企業のカルチャーや社員の皆さんのマインドを変えていくきっかけやヒントにもなります。採用活動を現場で担っている皆さんの多くは、優秀な人材を獲得するためには採用のあり方を変えなければならないと考えていらっしゃいます。その声を経営層に届け、説得する際に活用できるのもデータです。逆に、最近では企業の役員クラスの方々から「社員の意識を変えるためのバックデータとして活用したい」というご相談をいただくケースも増えています。そこでもデータが役に立ちます。私たちが分析したデータを社内説明のツール、説得のツールに使っていただき、意識変革を進めていただきたい。そう考えています。

私たちは、「スタイルがいきる社会へ」というタグラインを掲げています。働く人たちが、自分の価値観を大切にして、多様なワークスタイル、多様なライフスタイルを持てること。また、企業が自社の独自のスタイルを世の中に発信していけること。その実現を支援して、個性が尊重される社会づくりに寄与していくことが私たちの目標です。その目標の達成に向けて、これからも努力していきたいと思います。

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  • No Company 代表取締役
    2016年にスパイスボックスへ新卒入社。2年間デジタルマーケティング領域でプロデューサー経験を積んだ後、2018年に採用コミュニケーション事業部を立ち上げ事業部長に就任。SNS起点の採用広報ソリューション開発や企業のオンライン採用、採用DX化などを支援。2021年10月にNo Companyを設立。

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