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「社会課題解決プロジェクト」が目指すもの【Vol.2】GX実現に向けた道筋をどう描くか
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「社会課題解決プロジェクト」が目指すもの【Vol.2】GX実現に向けた道筋をどう描くか

博報堂の「社会課題解決プロジェクト」は、産業や経済活動の脱炭素化を目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)」への取り組みを始めています。企業や地域社会がGXに取り組む意味と、それを推進する難しさ、さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)とGXの関係について、DX・GX人材育成サービスを手がけるアイデミーの代表取締役社長石川 聡彦さんとBizDev & Communication部の柳田 晃輔さんと社会課題解決プロジェクトのメンバーが語り合いました。

「変革のエバンジェリスト」を育成する

堀内
博報堂の「社会課題解決プロジェクト」は、地方の皆さんと一緒に日本の未来を創る活動を続けています。これまでは主に地域交通の改革などに取り組んできましたが、最近では、行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)や、地域経済のGX(グリーントランスフォーメーション)なども大きな課題となっています。

今回は、企業のDXやGXに関わる教育研修プログラムを提供されているアイデミーの創設者である石川さんと、最近アイデミーの一員となられた柳田さんをお招きして、DXとGXの課題を解決していく方法についてお話していきたいと思います。はじめに、アイデミーという会社についてご説明いただけますか。

石川
アイデミーは、2014年に創業した東京大学発のスタートアップです。僕が大学3年、21歳のときに起業しました。AIをはじめとするデジタルテクノロジーを活用できる人材育成支援が主な事業で、この領域のオンラインサービスの中でユーザー数日本トップ*という認定をいただいています。昨年(2021年)からは、GXへの取り組みも始めました。まずはGX分野の教材を10コース開講し、日本企業初のCDP教育&トレーニングパートナーに認定して頂きました。

堀内
なぜ、GXだったのでしょうか。
石川
DXは「コストを下げるために必要な施策」であり、「やらなければならないからやる」という意識で取り組まれていた企業の皆さんも以前は多かったと思います。しかし、DXは本来、企業活動を変革し、新しい価値を生み出したり、競争力を強化したりするための手段です。この数年でそういった積極的な意識が広まってきたという手ごたえを感じています。

この考え方は、GXにも当てはまります。エネルギーの効率化や脱炭素への取り組みを義務や制約条件と考えるのではなく、企業の価値を上げていくための活動であり、絶好の成長の機会であると捉えるべきある。そう僕たちは考えています。ということは、これまで僕たちがご提供してきたDX支援のモデルがそのままGXにも活用できるはずです。そんな発想が発端になっています。

堀内
サービスを人材育成に特化している理由もお聞かせいただけますか。

石川
DXやGXを進めるために最も重要で、かつ最も難しいのは、組織の中に「仲間」をたくさんつくることです。DX推進部、GX推進部をつくっても、現場の皆さんが変革への意志を共有できなければ、DXやGXを実現することはできません。しかし、意志を共有する仲間をボトムアップでつくっていくのは非常に時間がかかります。

僕たちが企業の経営層やDX、GXのご担当者にお勧めしているのは、「リーダー候補」を育成することです。一般に、教育研修プログラムを20人に受講していただくと、そのうち2人から3人くらいは、変革を自分事と受け止め、主体的に動こうとする人が出てきます。そういう人をいわばエバンジェリストにして、いろいろな部門に配属し、経営企画やDX推進、GX推進の部署と連携し、現場に意識を浸透させていく。そんな方法が最も有効であると僕たちは考えています。そのためのツールが教育研修プログラムということです。

蜂須賀
とても共感できるお話です。上から「変革を進めよう」と言われても、それを自分の役割と受け止められる人は多くはないと思います。しかし、DXやGXについて学習する中で、変革の必要性を自ら感じ取ることができれば、前向きに行動しようという気持ちになります。そういう人が10人に1人でもいれば、その人が社内におけるインフルエンサーになるわけですよね。

井村
とくにグリーンの課題は、自分事化することがなかなか難しいと思います。SDGsで目標が示されているといっても、「これは世界全体の目標であって、自分達の企業の目標ではない」そんなふうに考える人も少なくありません。それに対してGXは、自分が働く企業、自分たちが生み出している商品やサービスに関わる取り組みです。そのことを理解できれば、何をすればいいかが見えてくると思います。

GXを自分ごと化する「スイッチ」をつくる

堀内
柳田さんはどのような経緯でアイデミーにジョインされたのでしょうか。
柳田
もともと、アイデミーのGX教育研修コンテンツ開発のお手伝いをしていて、そこから社員になったという流れです。グリーンに関連する仕事には以前から携わっていました。最初はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)で、その後資源エネルギー庁、コンサルティング会社を経て現在に至っています。

堀内
環境問題に関心をもつようになったきっかけは何だったのですか。
柳田
国連が1997年に地球温暖化対策の世界的な枠組みを設定しましたよね。いわゆる京都議定書です。その頃から環境問題には関心がありました。とても強烈な体験だったのは、北極の氷の上に取り残されたシロクマの赤ちゃんの映像を見たことです。「気候変動が進めば、こういうことがいろいろなところで起こるんだ」と思いました。

グリーンへの取り組みは、とかくCO2の排出量などで表現されますが、もっと具体的に実感できる事象として伝えていく必要があると僕は思っています。例えば、「CO2がこのまま増え続ければ、シロクマの数が半分になってしまう」とか、「海洋プラスチックの数を減らせば、たくさんのウミガメの命を救うことができる」というように、多くの人にとってわかりやすい表現に変換していく努力が必要だと思います。

石川
同感です。僕も、セミ取りが好きな地方出身の友人が「最近セミの種類が変わった」と言っていたことで、地球温暖化を実感した経験があります。気候変動を自分事として感じられる「スイッチ」は人それぞれだと思います。そのスイッチを工夫してつくっていくことで、多くの人の意識が変わり、行動が変わる。そんなふうに思います。

堀内
そこはまさしく博報堂が得意とするところです。アイデアやクリエイティブの力でGXにつながる有効な「スイッチ」をいかにつくっていくか。それが僕たちにとってのこれからの大きな課題だと思います。

生活者に提供する価値を向上させるための「X」

柳田
企業がGXを実現するための課題は大きく2つあると僕は考えています。1つが人材で、それについてはアイデミーが提供している教育研修プログラムが有力なソリューションの1つになります。もう1つの課題はコストです。GX実現には投資が必須ですが、それを回収する方法は具体的にはビジネスにおける収益しかないと思います。グリーンへの取り組みを収益につなげるには、顧客の理解を醸成し、商品やサービスの価格にある程度コストを転嫁することを受け入れてもらわなければなりません。

別の言い方をすれば、脱炭素社会は企業と生活者が協力してつくっていくものであるということです。その流れをつくるには、生活者の意識変革が必要です。働きかけるべき生活者のタイプはおおむね3つくらいに分けられると僕は思っています。「環境問題にそもそも関心がない人」「環境問題の重要性は理解しているが、何をすればいいかわからない人」、そして「環境にやさしいと言われている商品を買っているが、それがどれだけの貢献になっているかわからない人」です。それぞれの生活者にどうアプローチしていけばいいか。それをしっかり考えていかなければならないと思います。

井村
日常の購買行動からどのくらいのCO2が排出されているかを可視化する仕組みなども出てきていますが、排出量が可視化されることと、脱炭素が自分事化されることの間にはまだまだ距離があると思います。GXに対する意識を企業だけではなく生活者にも浸透させていくこと。それは僕たち博報堂がやるべき仕事だと思います。
蜂須賀
例えば、僕たちが富山県の朝日町で取り組んできた相乗りサービス「ノッカルあさひまち」は、住民の皆さんの利便性が向上するだけでなく、稼働する車の数が減るので実はGXにもつながっています。生活者の日常の生活に便益を提供することが、同時に脱炭素の取り組みにもなっている。そんなサービスをいろいろ考えていきたいですね。
井村
企業目線で考えると、DXは実はGX実現の手段でもあります。DXは効率化、つまりいろいろな「無駄」をなくすための取り組みが多いからです。企業活動の無駄が削減されれば、必然的にCO2の排出量も減ります。DXへの取り組みとGXへの取り組みを一連のものとして顧客に伝え、脱炭素実現のパートナーとなってもらう。そんな活動も求められそうです。

石川
DXにせよGXにせよ、重要なのは「X」、つまりトランスフォーメーションです。井村さんがおっしゃるように、DXを進めることでGXが実現する場合もあるし、GXを進めるためにDXが必要とされることもあります。いずれも、企業変革を目指す取り組みであり、その結果として生活者に提供できる価値を向上させることができる。そんなふうに考えることが必要なのだと思います。
堀内
DXやGXへの取り組みの成果をどう世の中に出して価値化していくかということですよね。例えば、最近「クラフト」の価値が若い人を中心に支持されています。クラフトチョコレートやクラフトジンなどです。クラフトチョコレートには「ビーントゥバー」という考え方があります。カカオ豆(ビーン)がチョコレートのバーになるまでのすべての工程において、誰がどこでどのようにつくったかを明らかにするという考え方です。それに共感して、「ほかのチョコレートよりちょっと高いけれど、信頼できるから買おう」という生活者も増えています。

蜂須賀
プロセスを可視化するにはデジタルの技術が有効であり、可視化することで環境負荷を軽減させる取り組みも可能になります。そう考えれば、まさにDXとGXによって商品の付加価値を上げられるということですよね。

井村
海外のクラフトビールなどの場合は、使っている素材が信頼できるというだけでなく、多様な素材の中から自分に合ったビールを選べることも重要なポイントになっているようです。「好きなものを選べるので、少し高くてもお金を払おう」と考える人がクラフトビールを買うわけですよね。商品のストーリーを伝えたり、価値を提供する新しい仕組みを考えたりすれば、生活者の共感をより得られるようになると思います。
石川
顧客から支持される商品やサービス、よいと思ってもらえる商品やサービスをつくるための方法がDXでありGXである。その考え方を企業の皆さんにお伝えしていきたいですね。
堀内
企業のDXやGXの取り組みを支援することに加えて、そこから生まれた価値を生活者に届け、ビジネスの成長に結びつけていく道筋をつくることがこれからますます重要になると思います。そのためには、商品やサービスのコンセプトやストーリーをしっかり考えることが必要です。アイデミーの人材育成サービスと博報堂のマーケティングやクリエイティビティをうまく組み合わせることで、クライアントのDXとGXの実現に寄与していきたいですね。
石川
ええ。ぜひ、一緒にチャレンジしていきましょう。

*「オンラインAI人材育成サービス受講者数No.1」 調査元 :ESP総研 調査対象:JDLA E資格認定講座所持企業 18社の提供する無料・有料個人受講者数(累計) 調査期間:2021年6月3日~2021年7月26日

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  • 石川 聡彦氏
    石川 聡彦氏
    アイデミー 代表取締役執行役員 社長CEO
    東京大学工学部卒。同大学院中退。在学中の専門である環境工学 水処理分野での機械学習の応用研究に従事した経験を活かし、DX/GX人材へのリスキリングサービス「Aidemy」やDXプロジェクト伴走支援サービス「Modeloy」を開発・提供している。著書に『投資対効果を最大化する AI導入7つのルール』(KADOKAWA / 2020年)など。世界を変える30歳未満の30人「Forbes 30 Under 30 Asia 2021」選出。
  • 柳田 晃輔氏
    柳田 晃輔氏
    アイデミー 事業本部 BizDev & Communication部
    前職では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、資源エネルギー庁、コンサルティングファームにて、省エネ・再エネ・クレジットとGXに関する分野に幅広く携わる。2022年アイデミー入社。GXに関する新規事業企画・開発を担当。人材育成だけでなく、脱炭素化に直接貢献する新サービスの開発に従事。
  • 博報堂 DXソリューションデザイン局ソリューション開発推進二グループ グループマネージャー/生活者主導社会を導く社会課題解決プロジェクトリーダー
    京都生まれ京都育ち。2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。
    事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。
    近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやDXソリューション開発など、広告会社の枠を拡張する業務がメインに。
  • 博報堂 DXソリューションデザイン局
    ソリューション開発推進二グループ マーケティングプラナー
    2015年消費財メーカー入社。海外現法のBPR業務、営業・マーケティング部門の分析基盤構築に携わる。社長秘書業務にも従事。2021年に博報堂へ入社してからは、消費財メーカーのCRM施策やソリューション開発、社会課題解決プロジェクトに取り組む。
  • 博報堂 DXソリューションデザイン局
    ソリューション開発推進二グループ マーケティングプラナー/データアナリスト
    2018年博報堂入社。研究開発部門にて統計解析、機械学習を活用したマーケティング・ソリューションの研究開発に従事したのち、現部署に異動。データ・メディアを活用したソリューション開発やDX推進、社会課題プロジェクトにて脱炭素・地方創生に取り組む。