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あらゆる空間をメディア化するチャレンジ|ARROVAと考えるイマーシブメディアの未来vol.1
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あらゆる空間をメディア化するチャレンジ|ARROVAと考えるイマーシブメディアの未来vol.1

2023年8月、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下DAC)が、イマーシブメディア領域のメディア事業専門会社「株式会社ARROVA(アローバ)」を設立しました。今後、さらなる市場拡大と顧客ニーズの増加が予想されるイマーシブメディアの未来について、ARROVAとともに紐解く連載企画をお送りします。
第一回は、メディア環境研究所所長でイマーシブメディアの研究、分析も行う島野真が、ARROVA代表取締役社長 荒井浩介に同社の展望とイマーシブメディアの可能性についてインタビューしました。

荒井 浩介
株式会社ARROVA 代表取締役社長

島野 真
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所所長

マスからデジタル、そしてその先へ。イマーシブメディアのポテンシャル

島野
まずは新会社の設立おめでとうございます。ARROVAでは、どのような事業を展開するのでしょうか。
荒井
ゲームプラットフォームや、AR・VRといったXR領域、イマーシブメディアと呼ばれるバーチャルコンテンツを新たなメディア領域と見立て、3D空間を活用したメディアプロダクトの開発や広告サービスを展開していきます。2年ほど前にメタバースという言葉がバズワード化しましたが、いま欧米では3D環境のコンテンツをイマーシブメディアと呼ぶことが主流になっています。「イマーシブ」というのは没入するという意味です。平面のディスプレイだけでは味わえない、立体的で深い体験ができるコンテンツの総称がイマーシブメディアであり、ARROVAが注目している領域です。
島野
なぜその領域に注目し、会社設立までに至ったのですか。
荒井
ひとつは個人的な実体験ですが、私は1996年生まれでZ世代のはじまりです。幼少期からゲームコンテンツが身のまわりにあり、コロナ禍を経てゲームの場がコミュニケーションの場に変わっているという実感を強く持っています。放課後集まっていた場所が、リアルからバーチャルに変わっている感覚ですよね。実際、Z世代の余暇時間の使い方を調べると、ゲームがソーシャルネットワークに迫る勢いで伸びていますし、α世代ともなると一部のセグメントではゲームがトップの割合を占めています。ゲームはニッチな領域ではなく、日常的に広く使われるものになっている。広告がマスからデジタルへ進化し、さらにその次のメディア領域はなにかと考えたとき、多くの人が多くの時間を費やすゲームがその場所になってきたと考えたのがきっかけです。

次に広告手法として、これまでグラフィックや動画など平面で訴求していたものを、3Dで投影できるようになり、さらに体験を付与できるようになったことも大きな魅力です。
ユーザーは純粋にコンテンツを楽しみながら、ブランドのメッセージを受け取ることができるのです。テレビ広告というのは文化をつくって需要を生み出すというファネルの一番上を得意としてきたと思うのですが、何億人も集まるゲームプラットフォームを使えば、それと同じことが再びできるようになる。世界中の人が体験をともにすることで、新たなカルチャーを生み出すこともできるのではないかというポテンシャルを感じています。

リアルとバーチャルの境目はあいまいに。それはますます加速する

島野
デジタルでの表現力や没入感が向上してきて、リアル以上の体験ができるようになってきたり、あるいは時や場所を選ばないという環境面でもすごく注目されていますよね。メディア環境研究所の調査でも「バーチャル空間のなかにアバターで入り、人々と交流したいか」という問いに、10代・20代の若い世代は30%近くが「はい」と答えています。

荒井
私より下の世代になると、たとえば服ひとつとっても、リアルとバーチャルの価値観がそれほど変わらなくなっているようです。
島野
以前、小学生の男の子をもつお母さんにヒアリングしたところ、リアルではまったく服にこだわらないのに、バーチャル空間ではアイテムを買って着飾っている。バーチャルのほうがよほど「ちゃんとしている」という話はおもしろかったですね(笑)。「境目」がなくなっている状況がどんどん加速している印象があります。昨年メディア環境研究所では、2040年*には、人々はARやVRなどさまざまな空間を現実空間と同等の「リアル」として捉え、自由に行き来しながら自己を切り替えて暮らしていく、と予測を発表しているのですが、昨今の生成AIの急速な発達もあり、もう少し近い将来の話になりそうです。
*メディア環境研究所「2040プロジェクト」

ゲーム内にひとつの世界をつくる時代。言葉以外でブランドのメッセージを伝えられる

島野
ARROVAは会社設立前の2021年からDACのプロジェクトとして活動していましたが、具体的にはどのような取り組みをしてきたのでしょうか。
荒井
広告事業としてプロダクトの開発をするという文脈では、ロブロックスをはじめとするゲームプラットフォームの空間内に屋外広告のネットワークをつくり、さまざまな空間を横断して広告が配信できるサービスをつくりました。いくつかのレーシングゲームを束ねて車会社の広告を配信したり、場の世界観にあわせた広告を制作、出稿したりしています。
島野
効果や反響はいかがですか。
荒井
看板広告でいうと、ゲームは特定の空間に繰り返し滞在しますし、すごく注視するメディアなので、動画広告並にエンゲージが高いことがわかりました。ロブロックス内でアバターを使ってブランドリフト調査をしたところ、いずれのスコアも高いポイントを示していて、非常に手応えを感じています。世界観の一部になるクリエイティブを提供することで、長時間接触しているメディアでありながら、ユーザーの体験を邪魔しないということも重要なポイントです。家庭用ゲームの中に、特定のブランドのワールドをつくるといった施策も行なっています。ブランドの伝えたい訴求メッセージを言葉以外で伝えられるということにすごくポテンシャルを感じますね。海外ではそういった取り組みが多く行われていて、ファストフード店が子ども向けの職業体験的なゲームをつくり、クリアしたら実際のクーポンがもらえるといった仕掛けで話題になりました。
島野
インゲーム、XRなどというとすごく先進的なもののように思われがちですが、子ども向けの親しみやすいコンテンツもあるし、色々な幅をもってアプローチできるということなのですね。
荒井
そうですね。まずはそのプラットフォームを利用しているユーザーに向けて、何をどう伝えるかが大事です。現在、ロブロックスやフォートナイト、マインクラフトなどプラットフォームごとに専門のスタジオが立ち上がり、優秀なクリエイターが多く存在します。ARROVAはアドネットワークを販売するだけでなくブランドコンテンツの制作も行いますので、優秀なクリエイターやスタジオと提携して、どのようなプラットフォームでも提案ができる体制をつくっています。
いまはゲーム内にひとつの世界観を丸ごとつくることができる時代です。映画の公開告知などエンタメ系はもちろんですが、金融関係などでも、たとえば金融教育のシミュレーションゲームをつくって子どもに学んでもらうなど、さまざまなアプローチができることにも注目していただきたいです。

新たなIPビジネスの創出から店舗販促まで。空間をメディアにする

島野
メディアとしての魅力だけでなく、マーケティングの場としても魅力を増し、広告の場としても価値ある場所になっているわけですね。そういった中で、ARROVAは広告という「出口」だけでなく、コンサルティング領域のサポートも行っているということですが、具体的にはどのような取り組みをされていますか。
荒井
現在、コンサル事業としては、IPコンテンツを保有するパブリッシャーとの取り組みがメインになっています。日本のコンテンツは世界中で人気がありますし、フォートナイトでも一番反響があったコンテンツは日本のアニメ作品だったりします。その世界観をゲームプラットフォーム内につくり遊べるようにする。そこには非常に大きな可能性を感じています。これを新たなIPビジネスとして、パブリッシャーと一緒に世界に出ていきたいです。そして、その収益がクリエイターや作家たちに還元されるような仕組みをつくっていきたいと思っています。
島野
イマーシブメディアは IPビジネスの場としてもチャンスがあるということですね。そのほかにはどういった取り組みをしていくのでしょうか。
荒井
IPコンテンツを持つクライアントの支援というだけでなく、ARやVRを含めてオフラインの場でも新しいメディアプロダクトやマネタイズの仕組みを提案していきたいと考えています。
たとえば、巨大なサイネージを使ってアバターが接客するシステムをつくってみたり、ホログラフィック・ディスプレイを使って商品を紹介したり、XRの技術を店舗販促にも活かしていきたいです。
これからさらに技術革新が起きて「場がメディア化」することを考えると、バーチャルの世界だけでなくリアルな場のソリューションも提供する必要があると考えています。
島野
デジタルだけにこだわらず、リアルの場にも展開していくわけですね。
荒井
ARROVAには空間をメディアにするというテーマがあるので、それを体現するためにできることがあればリアルの場にもしっかり入り込んでいきたいですね。

ARROVAの強みは、実績と人材とネットワーク。さまざまな才能と未来を創造したい

島野
なるほど、今後ますます忙しくなりそうですね。いま、イマーシブメディアと呼ばれる領域に取り組む企業がいくつもある中で、ARROVAの強みは何ですか。
荒井
ひとつは、会社設立前の2年間のPoCでさまざまなメディアプロダクトをローンチしてきたという実績です。
そしてマーコム領域以外の上流の戦略から並走できるコンサルティング人材や、メディアプラニングができる人材、Web3のコミュニティをつくっていた人材など、コンサル、メディア、テック、クリエイティブすべてに強みを持った人材を揃えていることです。
さらには、初期からゲームプラットフォームに注力したこともあり、何百というゲームタイトルを接続したプロダクトを持っていますし、ロブロックスやフォートナイトなどすでに数千人、数億人以上の人を集めているプラットフォームを取り扱っています。圧倒的にメディア基盤の大きいところを押さえているのが強みだと考えています。
島野
実務の経験も、人材も、ネットワークもあるということですね。
荒井
今後はポケモン GOとの取り組みをスタートさせていく予定になっています。とにかく人が集まる場所にはくらいついて、商品化していきたいですし、現状でも非常に強いコンテンツが集まっていると自負しています。
島野
すごく勢いを感じますね!DACから生まれた会社ということもあり、インターネットメディアの領域で様々なサービスやプロダクトをつくってきたDACの精神も影響しているのではないでしょうか。
荒井
DACは1996年に社員数名でスタートした会社なんですよね。そこから27年で約2,000人規模に成長しています。DACはいまでもベンチャー精神が根付いていて、ARROVAにもさまざまなトライをさせてくれますし、私たちも自分たちのカルチャーでARROVAらしいブランドをつくっていきたいです。非常に優秀なクリエイターやスタートアップなど、これまでにないネットワークが広がっていてすごく刺激的なんです。
私がいま考えているのは、次の時代のクリエイティブディレクターはどのような人がなるのだろうということです。コピーを書いたりデザインしたりするだけでなく、体験や世界観をつくることができる人が必要になった時、建築ができる人でもいいし、ゲームをつくる人でもいい。アバターのことを考えればファッションをやっていた人でもいいかもしれません。そういう新しいクリエイティブディレクターの定義を広げることもやっていきたいですね。

さまざまな能力を持った人とつながって一緒に未来をつくっていきたいので、ARROVAの活動に興味を持っていただけたら、ぜひ声を掛けていただきたいです。

博報堂DYグループ・“生活者データ・ドリブン”マーケティングセミナーにARROVA代表取締役社長 荒井浩介が登壇します。
メタバース/XRの世界の潮流なども見据えながら、XR技術を新しい生活者インターフェース体験としてマーケティングに生かす可能性について語ります。荒井からは「メディア変革」視点を中心に、ARROVAの具体事例も交えてお話しします。企業のマーケティング、広告・宣伝、メディアの担当者様、DX及びCX領域の担当者様、必見のウェビナーです。
ぜひご視聴ください!

【開催概要】
博報堂DYグループ・“生活者データ・ドリブン”マーケティングセミナー
『顧客体験変革とメディア変革へ ~XRマーケティングの可能性~』
開催日程  2023年10月17日(火) 15:00 ~ 16:30
開催形式  オンライン
参加費用  無料
申込締切  2023年10月13日(金) 12:00

登壇者名  
株式会社博報堂
HAKUHODO-XRリーダー
クリエイティブディレクター
尾崎徳行

株式会社ARROVA
代表取締役社長
荒井浩介

株式会社博報堂
HAKUHODO-XR
エクスペリエンスディレクター
中島 優人

詳細はこちら

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  • 荒井 浩介
    荒井 浩介
    株式会社ARROVA 代表取締役社長

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