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先行きが見えない時代だからこそ、イノベーションを「未来視点」で考えるべき4つの理由
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先行きが見えない時代だからこそ、イノベーションを「未来視点」で考えるべき4つの理由

前回は、問いが枯渇している時代にイノベーションを創出するために、前提条件を破壊し「課題を創り出す企業」になるべきであると書きました。(第一回はこちら)「産業の壁」「競争優位性」を例としながら前提条件を破壊するためのWHITE独自のフレームワークである「イノベーション・リサーチ・レンズ」「DXレンズ」を紹介しました。今回は、さらに大きな前提条件である「現在視点」を破壊し「未来視点」から考えるべき理由について解説します。

先行きが見えない時代に、あえて「未来視点」で考える

「未来視点からイノベーションを創出すべき」という考え方について、みなさんはどのように感じられるでしょうか?「VUCA*1時代に未来なんてわからないし、そこから事業を考える意味はあるの?」「未来予測など不可能だと思う」など、否定的な意見を持つ方も少なからずいるかもしれません。しかし、私は先行きが見えない時代だからこそ「未来視点」で考えるべきであると考えています。

*1:VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字からつくった造語で、現在を表現する言葉として使用されている。

イノベーション創出のために「未来視点」で考えるべき理由は4つあります。

1)未来には解決されていない社会課題が潤沢にある
2)今までは察知できなかった「未来の兆し」が感じられる
3)未来において利益を創出し続けられる事業がわかる
4)ビジョンドリブンなプロジェクトになる

1)未来には解決されていない社会課題が潤沢にある

前回述べたように、現在はあらゆる課題が解決されており、事業として取り扱うべき課題は少なくなっています。残されている課題は「SDGs」のように一般的には自分ごと化しづらい地球規模の課題、もしくは非常にニッチな課題*2となっており、事業として取り組むべき適度な課題はほとんど残されていません。

*2:ニッチな課題もグローバルニッチとして考えると大きな課題になるという点は一度考慮から外しています。

そこで重要になるのが「未来視点」です。カナダの未来学者フランク・フェザーがつくったモデルにおいて、人口の変化が社会の変化を引き起こすとされています。WHITEでは、人口の変化に加えて技術の変化をかけ合わせることで社会の変化、つまり新たな前提条件を創り出しています。

例えば、2030年の日本には3人に1人が65歳以上という超高齢化社会の未来が訪れると決まっています。「働き方」というテーマで未来を考えるならば、高齢者の一人暮らしが増加する、介護のために離職する人が増える、労働人口が減少するなどの様々な変化が予想されるでしょう。さらに技術の変化であるロボティクス・通信技術の発展、AIによるスキルの可視化という変化をかけ合わせると「場所にも、会社にも依存しない働き方が一般化する」「グローバルレベルで労働力のシェアリングが発展する」という現在とは異なる社会の前提条件が大きく変化した未来が創り出されます。
そして、その未来には解決されていない社会課題が存在しているはずです。現在の社会では枯渇している「事業として取り組むべき適度な課題」が、未来には潤沢に存在しているのです。

・化粧品業界を例とした新たな前提条件の考え方

2)今までは察知できなかった「未来の兆し」が感じられる

「未来視点」で未来を創り出した後に、生活者の変化や現在展開されている新しいサービスを見ると、今までは察知できなかった「兆し」に気がつき、本質的な意味が理解できるようになります。その「兆し」を未来視点でいち早く察知しファーストペンギンとなることで、先行者利益を得る可能性が高くなります。つまり、イノベーション創出における「新しい課題・価値を発見したけれど、すでに先行企業が存在している」という大きな課題は、未来視点で考えることで解決できるということです。

例えば、未来視点で「移動(モビリティ)」をテーマに考えてみます。
現在の移動の3大要因である仕事、学校、買い物が技術によりデジタル化(リモートワーク、Eラーニング、EC)すると移動はどのように変化していくのか? 単純に考えると移動が減少していきそうですが、視点を変えると「特定場所に対するアクセシビリティの重要性がなくなる」という解釈ができるため、定住せず目的に応じて「移動し続ける生活」という新しい前提条件の社会が創り出されます。

「移動し続ける生活」であれば、モノは所有しないほうがよいですし、住む場所はより自由に決められたほうがいいはずです。現在話題となっている「アドレスホッパー」「2拠点居住」という行動や、シェアリングエコノミー、ADDressのような住宅のサブスクリプション型サービスは、この未来の「兆し」であるとも考えられます。

また、この未来では「一時的なコミュニティ」が増えるとも想定されます。「一時的なコミュニティ」では「出会った人が信用できるかを即時に判断する」のが大きな課題となるためUber、Airbnbなどのプラットフォームが実装している「個人レーティング」の社会的な重要性が高まると予想されます。現在、LINEなど多くの日本企業が「信用スコア」のビジネスに参入している意味が非常によく理解できるのではないでしょうか? こういった「兆し」をいち早く察知し新たな課題を創り出すことで、未来においても魅力的な事業を他社に先行してリリースできるようになるのです。

3)未来において利益を創出し続けられる事業がわかる

そもそもイノベーションとは、未来においても利益を創出し続けるべきだと考えています。あえて極端にいうならば、生活者も気づいていない未知の課題をインタビューから発見したとしても、その課題が直近の1年間しか存在しないのであれば事業としては取り組むべきではないということです。では、どうやって判断ができるようになるのか?それは未来の社会を創造する他にはありません。
少し前によく議論にあがっていた「中国のように信用スコアのビジネスって日本で普及すると思う?」といった問いに対しても、未来が「移動し続ける生活」となるならば「一時的なコミュニティ」が増加し信用スコアのビジネスは日本においても普及していくだろう、と判断できるということです。

また、WHITEが支援させていただいた保険会社の事例では、高齢者の安全運転をサポートするサービスとしてリリースされ、自動車事故を予防する、安全運転の寿命を延伸する、という価値を提供しています。既述の通り、2030年の日本は超高齢化社会となります。
高齢ドライバーが増加した社会において、完全自動走行車の普及はまだ先であるため、ドライバーがどれだけ長く安全運転を続けられるか、高齢者の移動手段をどのように確保するか、という問題は現在よりも切実な社会課題になる可能性が高くなります。保険会社としても、自動車の運転を続けていただける限り自動車保険の契約は継続されるため、未来において利益を創出できるよいサービスであると思います。

4)ビジョンドリブンなプロジェクトになる

最近、ビジョンの重要性が語られることが多くなっています。ビジョンとは、どういった世の中を実現していきたいのか? というプロジェクトの根幹となるものですが、それが曖昧なまま進んでいることが多いのが現状です。「突然、個人としてのビジョンを持てと言われても困る。」というのが正直な感想であろうと思います。しかし、イノベーション創出において「ビジョン」は重要です。なぜなら、イノベーション創出は不確実性が高いプロジェクトであり、上申が通らない、既存事業から敵として認識されるなど「死の谷」に突き落とされることも多く、その困難を乗り越えるためには、個人・チームの熱量=ビジョンが何よりも重要だからです。

では、個人としてのビジョンが持てないのは何故でしょうか?その原因も「問いの枯渇」にあると考えています。以前は、社会的な意義と一定規模の利益創出を両立できる課題について、フレームワークを活用することで発見できました。しかし、現在はその両立が難しくなっているため、個人として成し遂げたいこと、つまり意義を感じられる課題を見出すのが困難になっています。一方で、未来には解決されていない社会課題が潤沢に存在しています。その課題から、個人として成し遂げたいこと、会社として成し遂げるべきことの重なりを探索することでビジョンドリブンなプロジェクトの実現が可能となるのです。

個人、チームのビジョンを考える際に大切なのは、未来を予測するのではなく「未来を創る」という意識です。人口と技術の変化から引き起こされる社会の大きなトレンドは、残念ながら我々には変えられません。しかし、その社会に存在する課題は解決できるはず。つまり、自ら創出したイノベーションにより未来の社会課題を解決し、よりよい未来が創れるということです。自分が創りたい未来を想像するとめちゃめちゃワクワクしてくると思います。
そのためには「きっかけ」が必要です。個人のビジョンを内発的に無理矢理に考えるのは難しいでしょうから、まずは会社のビジョンを起点に新たな前提条件である未来を考え、課題を創り出してみましょう。その刺激をきっかけに、個人としてワクワクする、成し遂げたいことを考えてみてはいかがでしょうか?

今回はイノベーション創出にとっての「未来視点で考える」重要性について解説しました。未来視点で考えることで「課題を創り出す企業」となり、イノベーションの第一歩を踏み出していただけると筆者としては非常にうれしく思います。未来視点で考える際に活用できるワークシートは、WHITEの新規事業・イノベーション創出のためのクラウド型支援サービス「innovation design compass」のWEBサイトで無料公開しています。少しでも興味がある方はダウンロードしてプロジェクトにご活用ください。
 

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  • 株式会社WHITE 取締役
    新規事業開発、サービスデザイン、UXデザイン、経営戦略などの様々な知見、ツールを組み合わせ、日本企業における新規事業開発・イノベーション創出のために最適化した独自プロセス「WHITE SERVICE DESIGN」を考案、実践している。
    イベント登壇、メディア寄稿、コミュニティ運営、企業内勉強会などでWHITEの独自ノウハウ・フレームワークをオープンにすることで、新規事業開発の「ノウハウ」に対するアクセシビリティを向上し、新規事業担当者がチャレンジしやすい環境づくりにも積極的に取り組む。

    <株式会社WHITE>
    「新しい、を価値にする」をミッションに掲げるイノベーション・デザイン・カンパニー。企業のデジタルシフトに対応した新規事業開発、イノベーション創出を独自のプロセスにより支援します。
    HP:http://255255255.com/