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グローバル化や少子高齢化、超スマート社会を背景に、企業のダイバーシティ&インクルージョン推進への取り組みが活況となっている。
経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」では、ダイバーシティ推進を、単なるCSR(社会的責任)活動として取り組むのではなく、企業が稼ぐ力を高める経営戦略を実行するために、競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方を検討している。
今やダイバーシティ推進活動は、リスクヘッジとして取り組むものではなく、マーケティングチャンスに繋げる取り組みへと変化しているのだ。

生活者の多様化は顕著になっており、セクシュアリティ(=性のあり方)という目に見えないアイデンティティの多様性にも企業が対応すべき時代に入ってきている。
博報堂DYグループのグループ横断型のベンチャー公募制度ad +VENTUREにおいて「株式会社LGBT総合研究所」が設立に至ったのも、こうした背景が大きく影響している。
従来型の性年代によるマーケティング活動に留まるのではなく、セクシュアリティという新たなセグメンテーションでマーケティングし、イノベーション創発=新たな価値創造を目標としたマーケティングエージェンシーである。

現在は、クライアント企業向けに「研修事業」「調査事業」「コンサル事業」を展開し、LGBTの理解増進と、生活者意識データの取得、商品開発やプロモーション設計などを幅広く取り組んでいる。
欧米では既にLGBTに特化したマーケティングエージェンシーやクリエイティブエージェンシーは多数存在しているが、現状、国内LGBTに関するデータや事例は皆無に等しく、我々は市場開拓を狙い、トライ&エラーの繰り返しを重ねている最中である。

そこで、今日は、多様性社会における生活者の捉え方の一例として、LGBTマーケティングの事例をひとつご紹介したい。
昨年5月、パナソニック株式会社から新商品「ボディトリマー(ER-GK60)」という全身用グルーミング商品が発売された。

この商品は、市場に展開されている多くの類似商品とは異なり、
V・I・Oゾーンをはじめとするアンダーヘアを剃っても肌を傷つけない構造が特徴だ。
美容感度が高い層をファーストターゲットに設定し、広くマス向けに展開していくことが広告戦略設計では企画された。
その時に注目したセグメントが「LGBT(内のG・B男性層)」というわけである。

LGBT総合研究所が事前に実施した調査によると、LGBTのファッション・理美容関連の支出は、非LGBTに対して高い傾向にあった。

またLGBTは、理美容に関する意識も高く、ボディケアに関する取り組みでも、非LGBTよりも高い傾向が確認された。

こうした意識データを基に、エクストリームユーザーであるとして、彼らの感性を存分に取り入れた商品開発、パッケージ制作等を行った。

また、情報関与では、情報行動は積極的で、新商品などのトライアル層であることを踏まえ、彼らをイノベーター層として、初動ターゲット化し、マスへ商品を拡散するインフルエンサーと捉えたコミュニケーション設計を狙った。

クリエイティブ制作においては数回の調査を重ね、LGBTに評価が高いもの、非LGBTにも支持を得られるクリエイティブを制作、マスメディアと当事者メディアでのプロモーション設計を図り、メディア別でのクリエイティブの使い分けなども行っていった。

マスクリエイティブ画像は、第60回日本雑誌広告賞において銀賞を受賞、大きな話題となった。
LGBTクリエイティブは、LGBT向けのセグメントメディアで話題化し、SNS等で多く拡散されることとなり、結果として、5月の商品発売から9月末まで、当初予測の200%を超える販売台数を記録。
販売店では予約が殺到し、欠品が相次ぐ程のヒット商品になったのである。

この事例は、単純なコミュニケーション戦略の工夫という域に留まるだけでなく多様性社会においては、従来と異なる生活者の捉え方で、マーケットを開拓したことに意味を持つ。
LGBTの生活者意識データを存分に活用することで、性年代のセグメンテーションでは気付かなかったニーズを掘り起こし、既存とは異なるクリエイティブ開発や、提供価値の構築を実現した。

多様性社会における生活者“データ・ドリブン”マーケティングでは、LGBTに限らず、生活者の捉え方にもイノベーションを忘れないことが重要だと我々は考えている。

プロフィール

森永 貴彦(もりなが・たかひこ)
LGBT総合研究所 代表取締役社長/最高経営責任者

1984年生まれ、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。2011年 株式会社大広 入社。
マーケティングプランナーとして、製薬、化粧品、トイレタリー企業など、数多くの企業のリサーチ、戦略立案、事業開発などを担当。博報堂DYグループのAd+Ventureプログラムを勝ち抜き、2016年、LGBT総合研究所を設立。
当事者として、セクシャルマイノリティに向き合う企業をマーケティング視点でサポートし、 ダイバーシティ社会の形成を実現していくことを目指す。
現在、LGBTに関する企業研修をはじめ、各種メディア取材やセミナーなどで多数の掲載、登壇をもつ。

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