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「社員のスキルやつながりの見える化」から生まれる新しいチームビルディング——スキルマッチング・アプリが実現するイノベーションの形
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「社員のスキルやつながりの見える化」から生まれる新しいチームビルディング——スキルマッチング・アプリが実現するイノベーションの形

2023年8月、YOMIKOは企業内のチームビルディングを支援するスキルマッチング・アプリケーションを日本ビジネスシステムズと共同開発し、さまざまな企業へ向け受託開発事業を展開することを発表しました。現在このアプリはYOMIKO社内で導入され、効果的な運用に向けた実証実験がスタートしています。スキルマッチング・アプリという新たな分野を切り開いた読売広告社の立田、岡村と、開発・導入にご協力いただいた 日本ビジネスシステムズ 梅村氏にお話を伺いました。

立田真一郎
読売広告社 マーケットデザインセンター センター長代理 デジタルストラテジスト

岡村明理
読売広告社 マーケットデザインセンター 第2マーケットデザインルーム データビジネスグループ データストラテジスト

梅村聡氏
日本ビジネスシステムズ クラウドソリューション事業本部 コンサルティングサービス部

チーム作りやコラボレーションを促す「スキルマッチング・アプリケーション」とは

——今回、チームビルディングの視点で人的資本の有効活用を促す「スキルマッチング・アプリケーション」を日本ビジネスシステムズ(JBS)と共同開発し、受託開発による販売をスタートしたそうですが、どのようなアプリケーションなのでしょうか?

立田
簡単に言えば「高度な電話帳」のようなWEBアプリケーションです。このアプリを使えば、社員1人ひとりの名前や部署情報のほか、各人が持っているスキル、たとえば「こういう企画を考えることができる」「SNS活性化のプロジェクトに携わってきた」といったように実績や得意分野を確認できます。また、その人が社内外のどういう人とつながりがあるのかを閲覧できるので、知り合いを介して自分のプロジェクトへの協力を求めたり、チームメンバーに加わってもらったりなど、通常の仕事のなかでは見つけられなかった人材を発見して新たなシナジー効果を生むことができます。

——コミュニケーションアプリや人事用のHRアプリとは違うのですか?

岡村
それらのアプリとはまったく性格が異なります。仕事のなかで「こんな人に意見を聞きたい」「教えて欲しい」と思うことは多々あると思いますが、そんなスキルや知識を持つ人と必要としている人をマッチングすることが目的なので、スキルマッチング・アプリケーションと呼んでいます。

コミュニケーションアプリは必要な人にコンタクトを取ることはできますが、その人がどういうつながりを持っているのか、どんな分野が得意なのかは見えません。また、このアプリは人事担当者が業務で利用するものではなく、社員1人ひとりが自分の得意分野や持っているスキルをハッシュタグで登録します。仕事を進めるなかで「こんなスキルを持っている人や会社を探したいな」ということがあれば、ハッシュタグ検索して、その人や会社とコンタクトを取るためにどんな人とつながりがあるのかを見て連絡を取り、チーム組成の迅速化を支援します。

——なるほど。自分のスキルはハッシュタグで登録するとのことですが、社内の人とのつながりをどんな仕組みで可視化しているのですか?

立田
当社はMicrosoftのクラウド サービス「Microsoft 365」を利用しており、OutlookやTeamsを使って会議やコミュニケーションをとっています。今回はこの通常業務で利用しているMicrosoft 365とデータ連携し、このデータを基に各人のつながりを可視化しました。通常の電話帳なら常に情報を更新する必要がありますが、このアプリは日々利用するMicrosoft 365のデータを利用しているので、社員自身が特別な作業をする必要はありません。それも大きな特長です。
岡村
開発当初から、忙しい中で使ってもらうアプリだからこそ、入力に手間がかからないように通常業務のなかでデータを収集することを意識して設計しました。

コロナで失われた社員同士の「つながり」と「得意分野」を普段の業務データから可視化する

——開発のきっかけを教えてください。

立田
1つは、社内にある「プロデューサー」や「プランナー」という職種が一見しただけではわかりにくく、各人が具体的にどんなことができるのか、何が得意なのかを把握できなかったという課題がありました。そのスキルが可視化できれば、チームやプロジェクトを組む時により的確なアサインができます。
岡村
開発に着手した時期はコロナ禍だったのですが、当時の課題として「テレワーク中心になり、社内のつながりが見えにくくなった」という状況がありました。以前は隣の席の同僚に「これわかる人知っている?」と聞いて探すことができましたが、それが難しくなっていました。入社2~3年目ともなると1人でプロジェクトを回していくことがありますが、まだ社歴が浅いのでなかなか社内でつながりが作れず、「誰に頼めばいいか全然わからない」という雰囲気でした。

——JBSと共同開発した経緯は何だったのでしょう?

立田
Microsoft 365のデータを活用して、新たにスキルマッチング・アプリケーションの仕組みを開発したいと日本マイクロソフトに相談し、そこでJBSをご紹介いただきました。
梅村氏
当社はもともとMicrosoftサービスが強い会社です。YOMIKOから「Microsoft 365と共に、Microsoft 365のデータを収集・分析して社員の生産性や労働時間、パフォーマンスを可視化する『Microsoft Viva Insights』を活用して人脈やネットワークをわかりやすく可視化したい」というお話を伺い、ご協力させていただくことになりました。

Viva InsightsではMicrosoft 365が蓄積している社員のメールと予定表、Web 会議やインスタントメッセージのメタデータを利用し、コミュニケーションスタイルや傾向を把握できます。これを「社内のコラボレーション促進に使いたい」というアイディアは非常に時代に即したもので、面白い視点だなと感じました。実際に当社の社内でも「誰が何をやっているかわからない」という声があり、このアプリケーションの導入を検討する声も出始めています。

——開発に当たり、工夫した点を教えてください。

梅村氏
VivaインサイトはMicrosoft 365のデータしか持っていないので、なるべく社員の方の手を煩わせないように、裏側で人事システムにある人事データや組織データ、労務データと連携する必要がありました。

また社外との人的ネットワークを可視化するため、取引先の企業の方にはそのデータを入力していただく仕組みになっているのですが、その入力フォームにMicrosoft Formsを採用し、Power Automate経由でアプリケーションに入力データを連携する仕組みを構築しています。このように、Microsoftプラットフォームをフル活用し、その上で動作するアプリケーションになっています。お客様にご提供する時には、受託開発なので連携するデータは要件によって柔軟に対応しますが、Microsoftプラットフォームを前提にしている点は同じです。

チームやプロジェクトの成果を向上、社員の挑戦も促進

——YOMIKOではこのアプリケーションを自社導入し、運用されているそうですね。

岡村
現在は「チームビルディングを活性化するためにどう運用していくか」という実証実験フェーズで、2023年6月からスタートしました。

——どのような形で運用しているのか教えてください。

立田
人事データや労務データ、人の個性や才能を診断したデータの連携をしました。これらのデータを基に社会人歴や勤務歴を割り出し、社員が入力したスキルのハッシュタグや人的ネットワークを表示しています。

岡村
開発中に人事部キャリアデザイン局の社員に話をしたところ、「今持っているスキルだけでなく、将来やりたいことや挑戦したい分野もハッシュタグで示してくれたら、こちらから研修案内や資格取得のサポートができるかもしれない」というアドバイスがあり、それも取り入れることにしました。

——この実証実験フェーズで目指している成果は何でしょう?

立田
まずは「利用されている状態を作る」ということですね。マネジメント層と現場で使い方は異なると思うので、そういう部分までしっかり落とし込んでいき、しっかり利用できるようにすることを主眼に置いています。
岡村
もともと「成果を出せる強いチームを迅速に作りたい」という思いでスタートしたので、実際にチームビルディングを行う工程が速くなったのかを検証したいという思いもありますし、しっかり競合ピッチに勝てる成果を出しているかも検証していきたいです。もちろんそれはもう少し時間がかかりますが、現段階でいくつか成果が出ているものもあります。あるプロジェクトチームでは、発足時にコアメンバーがアプリを使って候補者リストを検討・共有しているそうですし、ニッチな分野で定性調査行うチームでは、その分野に詳しい社員をアプリで検索してインタビューし、調査票の叩き台を作ったそうです。

個人的には、社員がやりたいことを発信することで、先輩社員や上の人が抜擢していくような流れができることも期待しています。また広報担当者からは「降りてきた案件ではなく、自分がやりたいプロジェクトでチームを組める『この指とまれ』のような機能があればうれしい」という相談を受けました。この点についてはJBSと相談しながら改修していきたいと考えています。

企業内の異色コラボレーションを促し、イノベーション創発を支援

——これから共同で受託案件を開拓していきますが、引き合いはいかがですか。

立田
社員のつながり強化やチームビルディングに課題意識を抱える企業は多いので、そういった企業からお問い合わせをいただいています。ただ、その問題がどれほどの影響を及ぼしているかに気付いていないケースもかなりあるので、こうした仕組みでその課題が解決できればどれだけ便利かを実際にお伝えできると、ニーズがさらに顕在化すると考えています。

岡村
実際に当社の営業からも「異なる職種のコラボレーションを必要としているクライアントがいるので、このアプリを提案したい」という相談がありました。これまでのように部署別や担当企業ごとにチームを作るのではなく、異色のコラボレーションを求めている企業は多いと思うので、チームビルディングを活性化したいとお考えならば、このアプリはきっと役立つはずです。
梅村氏
当社の方にもいくつか問い合わせをいただいています。今回、YOMIKOでこのアプリを利用して社内のコラボレーションやチームビルディングをより活発化しているということなので、今後はさらに機能を改善・拡張しながらそのノウハウを多くの企業に応用し、皆さまの事業活動をご支援したいです。

——ありがとうございました。

*Microsoft 365, Outlook, Microsoft Viva Insights, Microsoft Forms, Power Automateは Microsoft グループ企業の商標です。

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  • 読売広告社 マーケットデザインセンター センター長代理
    デジタルストラテジスト
    2013年読売広告社入社。
    最先端のデジタルとストラテジックプランニングを活用した、マーケティングならびにDX支援業務を担当。事業戦略支援、マーケティング、プロモーション、CRM設計、MA活用など、幅広い領域において実施計画の策定実績多数。オリジナルの広告配信手法等、自社ソリューション開発も多数手掛ける。
  • 読売広告社 マーケットデザインセンター 第2マーケットデザインルーム データビジネスグループ
    データストラテジスト
    2015年読売広告社入社。以後、営業職として不動産や、インフラ・エネルギー業種をメインに担当。2021年よりデジタル領域のストラテジックプランニングを中心に、マーケティング・ミックス・モデリングを用いた購買予測、メディア予算配分、広告の効果予測等の得意先PDCA業務に従事。現在はAI・データ領域を中心に自社向け/外向けソリューションを開発中。
  • 梅村 聡氏
    梅村 聡氏
    日本ビジネスシステムズ クラウドソリューション事業本部 コンサルティングサービス部