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ヒット習慣予報 vol.291『無心消費』
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ヒット習慣予報 vol.291『無心消費』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの吉田です。

今ではスマホを開けばたくさんのコンテンツが溢れかえっており、気が付いたらあっという間に時間が過ぎてしまう、ということも珍しくありません。私もいつの間にか休みが終わってしまい、慌てながら今回のコラムを執筆しています。
休みが終わったことを悲しみながらよく考えてみると、時間を忘れて何かを楽しむことで、どこかすっきりした気分になっている自分がいるようにも感じます。

そこで、同じように時間を忘れてコンテンツにのめりこむ人が増えてきているのではないかと思い、Googleトレンドで「没頭」と検索してみると、年々その検索数は増加しており、何かに没頭したいと考える人が増えていることがわかりました。

出典:Googleトレンド 「没頭」で検索

この傾向から、情報やコンテンツが溢れかえる現代において、「マルチタスク」や「ながら○○」のように複数のコンテンツを同時に摂取することがスタンダードになりつつある現代において、何か一つのことに無心で没頭できる体験やコンテンツが求められつつあると考えられます。
そこで、今回は、無心で没頭するようなコンテンツを楽しむ習慣を、「無心消費」と題しまして、日々の生活の中で手軽に無心状態になれる新しい習慣の事例をいくつか紹介したいと思います。

最初に紹介する事例は、あてはまる人も多そうな「無心で動画視聴」です。
自分が好きなクリエイターの動画や興味のある内容の動画をじっくり視聴するのではなく、無心で自分の興味関心がない動画までも見続ける人たちが増えてきています。
長い動画よりは短い動画を見る、というシーンでこの傾向は顕著であり、ショート型動画をひたすらに無心で見続けているうちに、気が付いたら1時間経ってしまった、みたいな経験は皆さんもあるのではないでしょうか。
個人的には、疲れ切っていて何もしたくないという時ほど、この「無心で動画視聴」をしやすいように感じており、楽しみにしていたコンテンツや興味のあるコンテンツとはまた違った需要があるのではないかと思います。

続いて紹介する事例は、「無心でゲーム」です。
最近、ゲーム配信界隈を中心に、あるゲームが大ブームを巻き起こしています。ゲームの仕組み自体は非常に単純なもので、とにかく無心でハイスコアを目指して挑戦し続けられることもあり、「気が付いたら時間が溶けていた」などのコメントがSNS上でも多く見受けられます。
このようなゲームの他にも、街づくりをするゲームでは、ひたすらにアイテムを集めたり土地を整地するなど、「作業」の要素を楽しむ人も増えてきていたり、「作業ゲー」などと揶揄されるようなゲームを好んで毎日プレイする人も現れはじめており、内容やストーリー性以外のゲームの価値が生まれつつあります。

最後に紹介するのが、「無心で料理」です。
時短レシピを代表するように、料理にもタイパが求められることが増えてきていますが、じっくりと料理に没頭するような料理の人気も上がってきており、無水カレーや自家製チャーシューといった時間がかかることが前提となる料理に挑戦する人も増えてきています。
長時間かけて料理に没頭することで、美味しいごはんを味わえるだけでなく、日々の疲れのリフレッシュもできる、ということで時間のかかる料理の人気も徐々に上がってきているのかもしれません。

ここまで事例をいくつか紹介してきましたが、コンテンツの中身のクオリティやストーリー性ではなく、いかに無心でそのコンテンツにのめり込めるのかが重視される傾向にあることがわかります。

では、このような、「無心消費」が新たな習慣の兆しを見せている背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。

まずひとつは、多種多様なコンテンツを浴び続けていることに対する反動が考えられます。私たちの普段の生活においてデジタルデバイスは必須アイテムであり、そこで提供される大量のコンテンツは簡単にはシャットダウンできない存在になりつつあります。そんな現代のコンテンツの洪水のような状況からの解放を求めて、無心で消費できるコンテンツに没頭することで、「コンテンツデトックス」をしているのではないでしょうか。
もう一つの背景は、モヤモヤや考え事から手軽に解放される点です。精神面のリフレッシュはしたいけど、瞑想や座禅では余計なことをついつい考えてしまう、そんな人も多いかと思いますが、今回紹介した事例のように、コンテンツを介することで、余計なことを考えずに簡単に無心で没頭する状況を作りやすいことも、「無心消費」が新たな習慣になりつつある要因だと考えられます。

このように、「無心消費」は溢れかえる情報やコンテンツのデトックス、ストレスや疲れのリフレッシュが目的であると考えられます。情報化社会、ストレス社会などと呼ばれる現代において、時間を忘れて無心で没頭するという行為は、新しい形の自己防衛と呼べるのではないでしょうか。

最後に、「無心消費」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「無心消費」のビジネスチャンスの例
■食体験に没頭できる、わんこそば形式コース料理の提供
■聴覚以外の感覚をシャットダウンした状態で音楽を聴けるサウンドルームの開発
■単純作業限定のワーカーマッチングサービスの開発

日々の疲れを癒すために、あえて作業に没頭したりしてみると、逆にリフレッシュできるかもしれませんので、ぜひ今度のお休みに試してみてください。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 北海道博報堂
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。