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連載【ソウルドアウトのポテンシャルVol.2】デジタルの力で地方企業の成長を支援する──「マーケティングカンパニー」の地方企業との取り組み実績と新領域での挑戦
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連載【ソウルドアウトのポテンシャルVol.2】デジタルの力で地方企業の成長を支援する──「マーケティングカンパニー」の地方企業との取り組み実績と新領域での挑戦

2022年4月に博報堂DYグループの一員となったソウルドアウト。地方や中小企業支援を続けてきた同社のビジネスを紹介する連載の第2回目は、広告マーケティングの領域を担当する「マーケティングカンパニー」にフォーカスを当てます。同社の4つのカンパニー中、最も規模が大きい主幹事業であるマーケティングカンパニーのトップ、北川共史が地方企業支援にかける思いを熱く語りました。

北川 共史
ソウルドアウト グループ執行役員
マーケティングカンパニープレジデント 兼 CCO

デジタルマーケティングの最新ノウハウを地方企業へ

──ソウルドアウトのマーケティングカンパニーとはどういう組織なのか、改めてご紹介いただけますか。

北川
ソウルドアウトの事業は現在、4つのカンパニーに分かれています。その中で、デジタルを中心とした広告マーケティング事業という設立以来の主幹ビジネスを担っているのがマーケティングカンパニーです。特徴はベンチャー企業支援と地方展開に力を入れていることで、現在全国に20拠点を展開しています。取引先はおよそ1000社に上りますが、そのうち約半分は地方のお客様です。東京でデジタルマーケティングの最新のノウハウを磨き、それを地方のお客様に届け活用していく。それがマーケティングカンパニーの一つのモデルです。

──北川さんはソウルドアウト創設時からのメンバーなのですか。

北川
そうです。ベンチャー・地方企業にデジタルマーケティングの価値を届けるという理念に共感して、会社立ち上げ時にジョインしました。それが2010年のことです。それ以来、主に営業の現場で働いてきました。カンパニーのプレジデントとなったのは2021年の4月です。

──マーケティングカンパニーのこれまでの具体的なビジネス事例をお聞かせいただけますか。

北川
お客様のビジネス成長に寄与できた事例として印象に残っているのは、北海道に本社を構えるコンタクトレンズ販売を行う企業様です。そのお客様は、もともと眼科クリニックで、札幌市内にコンタクトレンズの実店舗を展開していました。その中で規制緩和によりコンタクトレンズのオンライン販売が可能になると、いち早く大型ECモールにおいて多店舗展開に取り組み、一気にシェアを拡大させました。しかし規模は拡大する一方で、ECモールへの依存度が高くなり、経営基盤が軟弱化するという課題も抱えました。そこで自社のEC店舗を開設し、そこに対してプロモーションを行いたいというご相談を我々にいただいたのが最初の出会いです。ちょうどその頃、弊社の札幌営業所が立ち上がったというタイミングも重なり、ECサイト立ち上げの段階からお仕事を担当させていただきました。現在でもお取り引きは続いています。

──地方企業といっても、ECに取り組む場合、ターゲットは全国の生活者ということになりますよね。

北川
そうです。「エリア to 全国」という展開です。重要なのは、全国で戦える商品・サービスを構築することと、ブランド名や社名を各地域を超えて、全国の生活者に知ってもらうことです。広告によって認知度を上げ、一度買ってもらうことができれば、その先はプロダクト力やプライシングで勝負することが可能です。このお客様の場合、当初は限られた予算で広告を出稿し、それから徐々に広告規模を拡大させ、ECモール以上の収益性を確保することに成功しました。現在は当初の数十倍の規模で、広告を展開しています。もちろん、それに伴いお客様、当社のビジネス規模も大きく拡大しています。

地方企業が成長する可能性を見極める

──デジタル広告以外の支援もしてきたのですか。

北川
はい。このお客様がプライベートブランドの開発に乗り出した際、デジタルマーケティングだけではなくマス広告を主軸としたブランディングも担当させていただきました。女優さんや音楽家さんをキャスティングしたTVCMを製作し、関東、関西、九州でCMを放映しブランドの認知度を大きく向上させました。現在は、取り扱い商品中、プライベートブランドが占める売上割合は20%近くになっていると聞きます。

また、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)の策定も行いました。地方企業にはMVVがないケースが少なくありません。しかしそれらがないと、事業拡張や新規事業開発の方向性が定まりません。例えば、新規事業を検討した際、社員から「北海道の企業だからカニを売ろう」という意見が出たとしても、それを却下する明確な理由がなかったのです。そこで、経営層の皆さんや現場の社員様とのディスカッションを重ね、約3カ月間かけて企業の使命や理念、行動指針を改めて言語化し、目指す未来により早く到達するためのMVVを策定しました。現在もこのMVVが経営指針となっています。

──この事例において、とりわけソウルドアウトの力が発揮されたのはどのような点でしたか。

北川
3つあると考えています。1つめは、地方に拠点を構えて、地場のマーケットや地域の生活者の理解を深める取り組みを続けていたこと。2つめは、売上向上のためのデジタルテクノロジーを中心としたマーケティングに関する広範なナレッジやノウハウがあったこと。そして3つめは、「この企業は伸びる」と見極める力があったことと、何があっても最後まで伴走しきると覚悟を決められたことです。

──3つめの「見極め方」について具体的にお聞かせください。

北川
さまざまな地方企業の支援をさせていただく中で、成長している企業の特徴を洗い出し、共通する要素をピックアップし、独自のチェックリストを設けております。例えば、「対象とする市場が年率120%以上伸びているか」「BtoCビジネスの場合はターゲットとなる生活者が100万人以上いるか」「経営者がデジタルマーケティングに注力する方針を掲げているか」などです。そのうちの70%を満たしていれば、その企業は成長する可能性が高いと判断し、足元の広告予算に関わらず支援をするようにしています。

──地方企業を支援する際はどういう点を重視して行っているのですか。

北川
地方クライアントの場合、広告手法のお話しよりも、その上位にあるブランドやコミュニケーション設計からお話を始めることが多いですね。企業としての強みはどこにあるか。顧客が求めているものは何か。何を目標にビジネスを進めていくか──。そういった点についてしっかりディスカッションし、ブランドの価値やコミュニケーションの方向性をしっかり設計したうえで、具体的なメディア運用プランやクリエイティブをつくっていくという流れです。そのプロセスを軽視するとプロモーションはうまくいかないということがこれまでの経験からわかっています。その設計に基づいて小規模な広告出稿からスタートし、PDCAを回しながら、少しずつ施策の規模を拡大していく。そんな取り組みが必要だと思います。

自らD2Cビジネスに乗り出した理由とは

──マーケティングカンパニーは、自社のD2Cブランドにも取り組んでいるそうですね。

北川
2021年3月にアパレルのD2Cブランドを立ち上げてから、これまで4つのブランドをローンチしてきました。一番新しいのは、廃棄をできるだけ行わないサーキュラーエコノミーの実現をコンセプトに掲げた「RTC(アールティーシー)」というブランドです。
サイトURL:https://roundthecity.jp/

──D2C事業に自社で取り組む理由をお聞かせください。

北川
お客様のビジネスのうち、これまで我々が支援してきたのは主にプロモーションの領域でした。しかし、それはビジネス全体のバリューチェーンの一部にすぎません。製造業であれば、その川上に商品企画、原料調達、製造、流通といった過程があります。その領域の知見を保有した上で、より深いコミットメントをしながら、お客様を支援したいというのが私たちの想いです。そのためには、マーケティング以外のケイパビリティを備えなければなりません。であれば、自分たちで事業を手がけてみて、ビジネスのノウハウを研磨しようと考えたのがD2Cビジネスにチャレンジした理由です。

──生活者に直接向かい合うことの難しさを感じられましたか。

北川
感じましたね。当初は想定していなかった生産や在庫、キャッシュフローなどの課題に直面し、ブランドを一からつくっていくことの大変さを実感しました。なるほど、生地ひとつとっても、事業主の皆さんはこういうところで悩んでいらっしゃるんだ──。そんなことを肌身で感じることができました。現在に至るまで苦難の連続ですが、一方で商品が売れたときの喜びは何ものにも代えがたいと感じます。そのすべてが貴重な経験になっています。まだ始めてから1年半ほどですが、これまでの経験をもとにしたコンサルティングサービスをお客様に提供できるようになっています。実はこのジャケットもRTCの新作なんですよ。オンライン会議や軽い会食などには最適なので、是非ご検討ください(笑)

──地方でもD2Cに取り組もうという企業が増えているのですか。

北川
確実に増えています。D2Cのモデルによって、これまで培ってきたブランドやコミュニケーションのあり方をリデザインしたい。そんなふうに考える企業は年々増加していると感じます。「地方×D2C」の波が来ていると感じますね。

──地方の公共系お客様の支援にも取り組んでいるのですか。

北川
「地域活性化起業人制度」という国の制度を活用して、地方の公共機関に社員を派遣しています。現在は、岩手県の釜石市と島根県の雲南市の市役所でそれぞれ1人ずつ社員が働いています。この制度は、民間企業の力で地方を活性化することを目指したもので、私たちは市役所を通じて地元の企業のマーケティングをお手伝いしたり、市役所自体のコミュニケーションの支援等を行っています。

──サステナビリティ活動の一環と考えてよろしいですか。

北川
サステナビリティ活動の側面もありますが、当然短期ビジネスとしての収益性も追求しています。私たちの目標は地方経済の発展に寄与することですが、この取り組み自体が将来に向けての我々の市場開拓という側面もあります。また、地方の皆さんの悩みごとをお聞きする中から新規事業の種が見つかることもあると考えています。さらに、社員を地方に派遣することが人材育成にもつながります。ソウルドアウトの社員は地方出身者が非常に多く、地方の力になりたいと考えている人が沢山います。実際に地方で働き、直面する課題を解決していくことが、働く喜びとなり、そこからキャリアビジョンが見えてくる。そんなケースも少なくありません。さまざまな意義のある取り組みと言っていいと思います。

地方や中小企業支援において圧倒的ナンバーワンを目指す

──ソウルドアウトは2022年4月に博報堂DYグループの一員となりました。今後、マーケティングカンパニーとしてどのようなシナジーを生み出していきたいと考えていますか。

北川
グループインしてから、博報堂DYグループの皆さんと対話を重ねる中で、大きく2つの課題があることがわかりました。1つはデジタル領域の人材不足、もう1つは地方や中小企業を支援するリソースの不足です。その2つの領域は、まさしく我々の得意分野です。今後、それらの課題を解決するために力を発揮していきたいと思っています。

一方、博報堂DYグループがもつさまざまなアセットのレベルの高さをあらためて感じています。それを私たちのネットワークを通じて地方のクライアントに届けることで、地方企業の成長と、博報堂DYグループ全体の企業価値の向上、その両方に貢献できると考えています。

──経営統合の手応えを感じていますか。

北川
はっきり感じています。博報堂DYグループは「パートナー主義」というフィロソフィーを掲げています。まさにビジネスパートナーとして対等な形での話し合いの場をこれまで何度も設けてもらいました。その中から、新しい価値をつくり出す道筋や実例もすでに出始めてきております。ソウルドアウトはこの統合によって、「第二の創業期」に入ったと考えていますし、社会にとってより必要な会社になっていきたいと思います。

──最後に、マーケティングカンパニーのプレジデントとしての意気込みをお聞かせください。

北川
ソウルドアウトは、「中小・ベンチャー企業が咲き誇る国へ。」というコーポレートスローガンを掲げています。その目標を実現するには、私たち自身のビジネスをスケールさせていかなければなりません。この領域で圧倒的なナンバーワン企業になっていくこと。そのためには、地方拠点をさらに拡充して、我々がまだ見ぬお客さまに出会える環境を整備していく必要があります。

私たちのビジネスが伸長することはすなわち、博報堂DYグループのビジネスが地方、中小・ベンチャー企業へ大きく拡大していくことを意味すると考えています。それによって、地方企業の皆さんにご提供できる価値もさらに大きくなっていくはずです。私たち自身の成長、グループの成長、そして地方や中小企業の成長──。そのすべてを目指して、これからも技術を磨き続けていきます。

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  • 北川 共史
    北川 共史
    ソウルドアウト
    グループ執行役員
    マーケティングカンパニープレジデント 兼 CCO
    1984年生まれ。2007年に株式会社オプトへ入社。2010年にソウルドアウトの立ち上げに参画。東日本・西日本営業部長・営業本部長を歴任し、2018年より当社営業執行役員に就任。デジタルマーケティングの課題解決力を武器に、全国の中堅・中小企業を最前線で支援し続ける。2019年4月より上席執行役員CRO(=Chief Revenue Officer、最高売上責任者)に就任。2021年3月より現職。2022年8月よりCCO(=Chief Compliance Officer)を兼任。

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