対談!EC+【特別編③】地方企業や自治体のEC課題を解決する「地域DXソリューション」──「地域×EC」が開く新しい世界
博報堂DYグループ内のEC領域のナレッジやスキルを集約し、クライアント企業のEC事業を戦略構築から実装・運用までフルファネル、ワンストップでサポートする「HAKUHODO EC+」。そのメンバーがさまざまな領域のプロフェッショナルと対話する連載「対談!EC+」の特別編「地域DXソリューション」の第3回をお届けします。特別編最終回となる今回は、広告展開、事業診断、人材育成、ライブコマースのそれぞれを担当するメンバーに話を聞いていきます。
桑嶋 剛史
HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/地域DXソリューション リーダー
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
コマース DX推進グループ イノベーションプラニングディレクター
永見 拓哉
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
HAKUHODO EC+ コンサルタント
野口 陽介
ソウルドアウト ECコンサルティング本部 本部長
小城 流聖
SO Technologies DX教育事業本部 事業責任者
地域ECにおける広告展開の重要性
──地方の企業や自治体を支援する「地域DXソリューション」について紹介する連載も今回で3回目となります。このソリューションは6つの個別ソリューションで構成されているわけですが、今回はどのソリューションをご紹介いただけるのでしょうか。
- 桑嶋
- 〈EC事業診断〉〈地域DX教育〉〈地域ライブコマース〉の3つの機能を説明していきたいと思っています。そのお話に入る前に、地域DXソリューションの開発と運用を一緒に進めているソウルドアウトグループをご紹介します。
ソウルドアウトグループは、全国に20の拠点を設け、地方、中小・ベンチャー企業のデジタルマーケティング支援を行っており、2022年4月に博報堂DYグループの一員となりました。地域DXソリューションの中では、各ソリューション運営の中で必要になる広告領域の仕事と、今回ご紹介する〈地域DX教育〉の中で力を発揮してもらうことになります。
- 野口
- ソウルドアウトはこれまで、のべ3500社ほどの地方企業の皆さんの広告・マーケティングをご支援してきました。その実績やデータを地方DXソリューションの中でも生かしていきたいと思っています。
またこの4月には、「ECコンサルティング本部」という部署が新設され、地方企業のEC展開支援、自社ECメディアの運営、ECモールに出店する企業支援の3つの機能を集約しました。地方DXソリューションに参加することで、EC領域全般のスキルや知見を蓄積していきたい。そう考えています。
──地方におけるEC展開においても、広告は重要なファクターとなるのですか。
- 野口
- ECサイトを訪問してもらうためにも、そこで商品を買ってもらうためにも、広告によって情報を届けていくことは必要不可欠であると考えています。もっとも、地方、中小企業のクライアントの皆さんは、必ずしも潤沢なご予算を広告宣伝に投下できるわけではありません。限られたご予算の中で、どのようなメディアを活用し、どのようなクリエイティブで情報を訴求していくのが有効か。それを一緒に考え、伴走させて頂いております。
「見極め」と「人材育成」を支援するソリューション
──それでは、具体的なソリューションについて見ていくことにしましょう。まず、〈EC事業診断〉について説明していただけますか。
- 桑嶋
- 地方の事業者の皆さんがECを本格的に展開しようと思われたとき、多くの場合最初にぶつかるのが、「ECをやることが本当に正解なのかどうか」という疑問です。それを見極めたいけれど、誰に相談していいかわからない。そんな場合にお使いいただけるのが〈EC事業診断〉です。クライアントの事業内容や現在の経営状況などをお聞きして、ECをやるべきかどうか。やるべきだとしたら、どのようなチャネルで、どのような商品を売っていくべきか。そういったことをこちらからご提案させていただき、簡単な事業計画のたたき台もご提供します。それを検討していただき、「ECをやろう」となった場合は、その後のプロセスもしっかり支援させていただきます。
これまでの僕たちの経験では、「現状ではECをやるべきではない」という結論になるケースも少なからずあります。その場合は、ECではない別の手を一緒に考え、場合によっては博報堂DYグループのほかのサービスをご提案することもあります。もちろん、それを無理強いするわけではありません。あくまでも川上での「見極め」に特化したライトなソリューションが〈EC事業診断〉であると考えていただければいいと思います。
- 野口
- 初期の見極めは、地方事業者の皆さんにとってとても重要なプロセスです。コロナ禍の中で実店舗への集客が難しくなったので、とりあえずECサイトを立ち上げたけれど、なかなかうまくいかない。そんな話をよくお聞きします。一度ECを始めてしまうと、すぐにやめることはできません。始める前の見極めと具体的な事業計画は必須だと思います。
──2つめが〈地域DX教育〉ですね。
- 桑嶋
- これは、ソウルドアウトグループの一社であるSO Technologiesが提供している「ジッセン!」というデジタル人材育成サービスをベースにしたソリューションです。地域でECを運営していく場合、デジタル分野の知識を備えた人材の力がどうしても必要になります。その基礎的な知識をEラーニングなどで身につけることができるのが「ジッセン!」です。
このサービスを基礎として、「EC店長育成研修」「経営層向けのECビジネス講座」の2つのプログラムを組み合わせて構成したのが〈地域DX教育〉です。事業者や地方自治体の課題に応じて、3つのプログラムから最適なものを選んでいただくことが可能です。
- 小城
- 「ジッセン!」はもともと、広告会社の社員の皆さんのDX教育にお使いいただいていたサービスでした。現在では、地域の事業者にも幅広くご活用いただいています。動画教材をはじめ300ほどの教育カリキュラムをご用意していて、それをご要望に応じてカスタマイズして提供します。サービス名称を「ジッセン!」としているのは、たんに座学で学習するだけでなく、システムやデジタルツールに実際に触れて、デジタル活用を「実践」してもらうところまでを射程にいれたサービスだからです。
──自治体での活用例も多いのですか。
- 小城
- 多いですね。企業だけではなく自治体の人材育成をご支援できる点に、このサービスの特徴があると言えます。また、地元に住みながらデジタルスキルを身につけてもらったり、休職中の女性の復職に役立てていただいたりするケースも少なくありません。
──カリキュラムの期間はどのくらいなのですか。
- 小城
- それもニーズによってさまざまですね。半年間のコースを年2回、あるいは3カ月間のコースが年4回など、いろいろなプランニングが可能です。また、コース終了後のおつき合いの仕方もそれぞれ異なります。新入社員に向けて毎年同様のプログラムを提供する場合もありますし、デジタルスキルを身につけたご担当者のDXの取り組みを引き続きご支援するという流れもあります。
「ジッセン!」がクライアントにご提供できる最大の価値は「選択肢を知っていただけること」であると僕たちは考えています。DXにはどのような方法があって、どのようなツールやメディアが活用できて、それによってどのような成果が期待できるのか──。その目利きができるようになれば、最適な方向性を選択することが可能になります。そこまでの道筋をつくるのが「ジッセン!」の役割です。その選択の結果を受けて、その後もさまざまな形でおつき合いをさせていただくのが理想であると考えています。
地域で発揮されるライブコマースのプランニング力
──3つ目の〈地域ライブコマース〉についてもご説明ください。
- 永見
- HAKUHODO EC+の中に、ライブコマース支援に特化したLive Commerce+というユニットがあります。そのメンバーが中心になってご提供するのが〈地域ライブコマース〉です。ライブコマースは、短期的な売上を上げることが目的にされることが多いのですが、ブランディングや顧客との長期的な関係づくりの点でもライブコマースは力を発揮します。そのような視点を踏まえながら、地域や商品の特性に応じて企画立案や実運用をご支援します。
- 桑嶋
- 生の声で商品の特徴や魅力、ストーリーなどを伝えることができるのがライブコマースのよさです。その点で、ライブコマースは地域の特産品販売と非常に相性のいい手法と言っていいと思います。
- 永見
- ライブコマースはリアルタイムでの配信が基本ですが、その映像をアーカイブして広告などに活用することも可能です。また、事前にSNSで配信を告知して、そこで質問などを集め、配信中にそれに回答する、あるいはコメント機能をつけて、配信中にいろいろな書き込みをしてもらうといった仕組みもつくれます。もちろん、配信中にECサイトから商品を購入してもらうことも可能です。
──たんに動画を配信するだけではなく、いろいろなコミュニケーションの形をつくれるわけですね。HAKUHODO EC+ならではの強みがありましたらお聞かせください。
- 永見
- 1つは、地域放送局との広範なネットワークがあることです。博報堂DYメディアパートナーズが開発した「クラフトーク」というライブコマースのプラットフォームを活用して、地域の放送局とともにライブコマースを展開することができます。放送局の情報力、コンテンツ制作力などを活用させていただき、ライブコマースを企画する。そこに地域の事業者の皆さんに参加していただいて、商品を全国に向けて販売していく──。そのような取り組みを全国各地で実現することが可能です。
もう1つは、キャスティング力です。ライブコマースに誰に出演してもらうかは、商材の特性やターゲット、配信する媒体といった観点を踏まえて決めていく必要があります。フォロワー数の多いインフルエンサーの出演が有効な場合もあれば、専門的な視点から商品を解説してくれる人の方が適している場合もあります。また、生産者や販売店の担当者が出ることでアピール力が高まるケースも少なくありません。どのようなキャスティングが最適なのかを見極め、適切な人材をアサインできるのも僕たちの強みです。
- 桑嶋
- 「地域×商品×キャスティング」を考えることが大事ということですよね。その視点に立ってライブコマースをプランニングし、ソウルドアウトが広告施策によって集客し、確実に売り上げにつなげていく。〈地域ライブコマース〉を活用していただければ、そんな流れをつくることができます。
これまで見たことがなかった世界を見てみたい
──地域DXソリューションによって今後どのようなことを実現していきたいか。最後に、それぞれのお立場からお聞かせください。
- 小城
- 地域の自治体や事業者の皆さんは、DXに関してさまざまな課題をお持ちです。あらゆる課題に対応できるよう、常に新しい手法やテクノロジーなどに目を配りながら、教育・育成ソリューションの質を高めていきたいと思っています。
同時に、地域の社会課題解決に寄与するという視点を持ち続けたいですね。人口減などの課題に対応するために地域の魅力を伝えて人を呼び込む「シティプロモーション」に注力する自治体が増えています。また、インバウンドを増やすための観光戦略づくりも各地で進んでいます。いずれの取り組みにおいても、基盤となるのは「人」です。人の育成を通じて、地域活性化を支援していきたい。そう思っています。
- 永見
- ライブコマースは、透明度の高い情報伝達ができる手法です。この手法によってあまり知られていない地域の魅力、地域の特産品の魅力を広めていくお手伝いをこれからもしていきたいと考えています。
- 野口
- ソウルドアウトの社員には地方出身者が多く、それぞれが自分の出身地に対する強い思いを持っています。そのような思いを地方の事業者や自治体の皆さんを支援する力に変えていけるのが地域DXソリューションであると考えています。これからの展開に僕自身とてもワクワクしています。地域の商材を日本全国だけでなく、世界に向けて販売していく取り組みにもぜひチャレンジしてみたいですね。
- 桑嶋
- マーケティングにおいてECはたいへんホットな領域であり、一方、地域には非常に大きなポテンシャルがあります。「地域×EC」によってどのような世界が広がっていくかがとても楽しみです。これまで見たことがなかった世界を、地域の事業者や自治体の皆さんと一緒に見てみたい。そう思っています。
現在のソリューション数は6つですが、今後実績を重ねて知見を蓄積しながら、7つ目、8つ目のソリューションも開発していきたいと考えています。たくさんお仕事をさせていただき、できることの幅を広げていって、日本中を元気にしていきたい。それが僕たちの願いです。ぜひ、一緒に地域を盛り上げていきましょう。
この記事はいかがでしたか?
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HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/
地域DXソリューション リーダー
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
コマースDX推進グループ
イノベーションプラニングディレクター通販事業の運営チームを経て、博報堂のEC支援チームの旗揚げに参画。米国Kepler社への短期出向を経て、現職。ECを軸に、新規ビジネスの立ち上げや変革、事業設計を得意とする。各種講師や記事/書籍執筆なども担当。
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博報堂 ショッパーマーケティング事業局
HAKUHODO EC+ コンサルタント
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野口 陽介ソウルドアウト ECコンサルティング本部 本部長デジタル専業のマーケティング支援会社にてSNSを用いた企業のマーケティング戦略の立案、インフルエンサーやD2Cなど新規サービスの開発に従事。
2022年、前職のD2C事業をソウルドアウトへ譲渡するとともに転籍。
現在はECコンサルティング本部 本部長として自社ブランドの企画開発と運営及び、EC/D2C企業のマーケティング支援を担当。
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小城 流聖SO Technologies DX教育事業本部 事業責任者2016年以降、デジタル人材育成および新規事業開発を担当。大手総合広告代理店や事業会社のデジタル人材育成、DX組織の立ち上げ支援、自治体との地域活性化支援などを経験。2021年、ソウルドアウトグループのアンドデジタル株式会社立ち上げに参画し、DX領域での人材育成サービス開発をけん引。2023年5月、SO Technologiesへのグループ内事業移管にともない現職。