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「生活者DATA WORKS™️」の舞台裏 Vol.2 ──生活者との接点をつくり出す「R&D開発エンジニア」
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「生活者DATA WORKS™️」の舞台裏 Vol.2 ──生活者との接点をつくり出す「R&D開発エンジニア」

博報堂DYグループにおいて基盤技術やサービスの研究・開発をミッションとする「マーケティング・テクノロジー・センター(以下、MTC)」。博報堂独自の統合マーケティングソリューション群「生活者DATA WORKS™️」の開発や運用を担っているのもMTCのエンジニアたちです。広告会社におけるエンジニアの仕事を掘り下げていく連載の第二回となる今回は、生活者との新しい接点づくりを模索する「R&D開発エンジニア」の仕事をご紹介します。

アメリカの研究機関との共同研究

──皆さんは現在ARクラウドを使ったソリューション開発に取り組んでいるとのことです。その取り組みについてまず説明していただけますか。

目黒
スマートフォンなどのデバイスを通して現実世界を見ると、実際には存在しないものが見える。それがAR(拡張現実感)です。それをさらに複数人でAR空間を共有し共体験を実現する技術がARクラウドです。そういった技術を生活者とのタッチポイントづくりに使えないかと僕たちは考えています。

博報堂グループはデータ活用に早い段階から取り組んできましたが、その「出口」はこれまで、メール、ウェブ、SNSなどに限定されてきました。しかし、最新のテクノロジーを使えば、もっと多様な出口をつくることができるはずです。これまでにないデータの出口、生活者とのタッチポイント、インターフェース──。それらを博報堂では「次世代顧客接点」と呼んでいます。僕たちが現在取り組んでいるのが、ARクラウドをその次世代顧客接点の一つにするための研究です。

──海外の研究機関との共同研究も進んでいるそうですね。

目黒
ニューヨークシティメディアラボ(NYCML)との共同研究ですね。ニューヨークはご存知のように金融とメディアの街ですが、リーマンショックのときにその二つの産業が大きなダメージを受けました。特定の産業に依存するのはリスクが高いということで、当時のジュリアーニ市長は、テクノロジーとさまざまな産業を掛け合わせて、産業を多様化する戦略に着手しました。その戦略の中心となる組織として立ち上げられたのがNYCMLです。

NYCMLの主な役割は、研究機関と企業をつなぐハブとなることです。シーズとニーズをマッチさせて、そこから新しい産業領域を生み出すことを目指しています。博報堂も一昨年からそのメンバーの一員となりました。現在は、現実空間の認識技術、現実空間とAR情報とのインタラクションなどについての研究を進めています。

──その共同研究における清水さんと大森さんの役割についてお聞かせください。

清水
博報堂がもっている技術基盤を協業先の企業や学術機関に提供して、相手先と一緒にARクラウドを使ったソリューションのプロトタイプをつくるというのが現在の取り組みで、相手の研究の方向性・得意分野とMTCの保有技術について議論を重ねてすりあわせ、技術的観点での開発要件の設定や全体的な設計をしています。
大森
僕は、実際に空間認識のシステム開発に携わりました。そのツールを使って、現実と拡張現実を融合させる仕組みくりを現在進めています。例えば、現実の床の上に仮想のボールを投げると、そのボールの位置情報が相手にも共有され、向こう側にいる人に届くといった仕組みです。これが実現すれば、現実空間と仮想現実を組み合わせたスポーツなども可能になると考えています。

今までにないものをゼロからつくるチャレンジ

──MTCのメンバーには、中途入社のエンジニアが多いようですね。清水さんと大森さんも中途で博報堂に入ったのですか。

清水
そうです。僕は2019年3月入社で、それ以前はゲーム会社などでアプリの開発などに携わっていました。ゲームの開発には高度な最新技術を使うケースも多く、やりがいのある仕事ではあったのですが、その技術をもっと広く社会に役立てることができないかと考えて博報堂に来ました。博報堂のような大手広告会社なら、世の中にさまざまなソリューションを提供して、人々の生活や企業活動をより豊かにできるのではないか。そう思いました。
大森
僕は2019年7月の入社で、前職は通信会社の研究開発部門でした。研究開発といっても、自分たちで実際に手を動かすのではなく、研究計画を立てて外部のパートナーに開発をお願いするのが主な仕事だったので、「自分でつくる」ということに飢えていました。実際に自分の手を動かすだけでなく、それを企業や生活者にどのように使ってもらうかまで考えて開発をする。そんなことが博報堂ならできると思ったのが転職の理由です。

──博報堂に入ってみての率直な感想を聞かせてください。

清水
現在の仕事はとてもやりがいがあると感じています。今までにないものをゼロからつくるというチャレンジができるのが一番の醍醐味です。その過程でいろいろなアイデアを出し合って議論ができるのも楽しいですね。エンジニアはどうしても技術的な枠にとらわれた発想をしがちなのですが、その枠を取り払って自由にものを考えることができるのは、これまでにない体験でした。博報堂はエンジニアの会社ではないので、技術の面ではまだまだ発展の余地が大きいと感じています。会社全体の技術力を上げることに一技術者として貢献できるのも嬉しいですね。
大森
自分の手を動かしてものづくりをしたいという思いは、協業機関との共同研究で早々に実現しました。それだけでなく、現在は具体的なクライアント案件にも携わることができています。「お客さまの顔」を見ながら開発をするというのは初めての経験で、とても充実した仕事ができています。

──エンジニアとしての幅が広がったという実感はありますか。

大森
広がりつつありますね。MTCのミッションは、これまでになかった新しいものをつくり、それを企業や生活者に届けることです。新しいものを生み出すには、まだ世に知られていない技術に向かい合う孤独な作業が必要です。その作業から生まれたものの価値を社内の人たちに伝え、理解してもらい、さらにそれを広く社会に提案していく。そういった根気強い取り組みがMTCのエンジニアには求められていると思います。「伝える」というスキルをもっと磨いていきたいですね。
清水
僕は視野が大きく広がったと感じています。一般に、エンジニアは一つの専門領域にフォーカスすることを求められる仕事で、ほかの領域についてはあまり考えなくてもいいとされています。しかし博報堂のエンジニアは、広告やマーケティングだけでなく、社会全般に対する広い視野が求められます。それがないと、本当に企業や生活者にとって価値ある技術を生み出すことができないからです。博報堂に来なければ、そのような視野を得ることはできなかったと思います。

エンジニア自身が「答え」を考えていく

──エンジニアにもいろいろな立場がありますよね。お二人の立場はどのように表現できそうですか。

清水
要件が固まったシステムではなく、生活者の新たな価値体験を創造するために必要な技術の研究・開発に取り組んでいるという意味で、「R&D開発エンジニア」と言っていいと思います。
大森
よりよいユーザー体験を生み出すにはどうすればいいかを議論しながら開発を進めるのがR&D開発エンジニアの仕事の特徴です。それから、プロトタイプをつくり、検証し、ブラッシュアップしていくという作業を繰り返すのもこの仕事ならではですね。
目黒
例えば、サーバーをつくる場合などは、明確に要件が決まっているわけですよね。しかし、新しいユーザーインターフェースの可能性は多岐にわたります。僕たちが現在取り組んでいるARクラウドにも、使い方の「正解」はまだ決まっているわけではありません。それを自分たち自身で考えていくのが、R&D開発エンジニアの仕事の醍醐味だと思います。

──MTCという組織の特徴についてはどう感じていますか。

清水
一番の特徴は多様性だと思います。それぞれのエンジニアに多彩な専門領域や個性があって、それぞれの要素を持ち寄りながら一緒に研究開発を進めていくことができる。それがMTCのよさですね。組織内の部署が縦割りになっていると、こういう有機的な結びつきをつくるのは難しいと思います。イノベーションを生み出すことが求められるこれからの研究開発組織には、このようなスタイルが必要なのではないでしょうか。
大森
人材の多様性はまさにMTCの強みですよね。営業から来た人もいるし、システム会社から来た人もいる。マーケティングのバックボーンがある人もいるし、専門性を深掘りすることを目指す人もいる。その多様な人材の交わりが大きな刺激になるし、そこから新しい気づきを得ることもできると感じています。
目黒
サービスやソリューションだけではありませんが、新しいものは何かと何かの組み合わせで生まれることが多いと思っています。だから、それぞれが専門領域に閉じていると、新しいものを生み出すことが難しくなります。それぞれのメンバーが、自分が関わってきた領域の知見や経験を持ちよって、これまでになかった世界をつくっていく。そんな形が理想的だと思います。

──エンジニア人材が今後ますます求められるようになると言われています。MTCでこれから活躍できるのはどんな人材だと思いますか。

大森
博報堂はメーカーのようなものづくりの会社ではないので、逆にものづくりが得意な人材は貴重だと思います。そのような人材がいれば、クライアントや社会の課題を解決するための概念を考えるだけでなく、具体的なシステムやサービスとして体験できる形で解決法を提示することが可能になります。プロトタイプが早い段階で制作できれば意思決定のスピードに大きく影響します。
清水
僕は、既成概念にとらわれない人にぜひMTCに来てほしいですね。エンジニア的発想にとらわれないことはもちろん、従来の広告やマーケティングの発想にもとらわれず、新しいものをゼロから生み出していける。そんな人が活躍できるのがMTCだと思います。

──みなさんは、NYCMLとの共同研究のようなグローバルなプロジェクトで活動しています。MTCでは今後もグローバルな仕事が増えていきそうですか。

目黒
技術に国境はありません。僕たちは常に世界に目を向けているし、いいものがあればそこにアプローチしていくというスタンスを大事にしています。その点では、今後もグローバルなプロジェクトは増えていくはずです。エンジニアがグローバルに活躍できるチャンスも大いにあると思います。
清水
僕はこれまでいくつかの会社で働いてきましたが、エンジニアがグローバルに働けるという点では、博報堂が一番ですね。グローバルな活躍がしたいという人とぜひ一緒に仕事をしていきたいと思います。
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  • 株式会社博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発1グループ
    2007年博報堂入社。空間コンピューティングやAI等の先端技術によって可能となる新たなソリューションやユースケースの開発や、新しいコミュニケーション手法についての研究を進めている。
  • 株式会社博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発1グループ
    2019年博報堂中途入社。前職では大手通信会社にて、ARCloudに関する研究開発、海外AR関連企業とのアライアンスなどを経験。博報堂入社後は、ARCloud、空間コンピューティングに関する研究開発に携わり、新たなコミュニケーション体験の研究開発を進めている。
  • 株式会社博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発2グループ
    電機メーカーやゲーム業界でのアプリ開発・新規事業開発など経て2019年に博報堂入社。ARクラウドをテーマとした研究を進めており、主に技術面でのディレクションを行なっている。

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