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なぜ博報堂DYがECを?ECビジネスを「フルファネル」で考える
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なぜ博報堂DYがECを?ECビジネスを「フルファネル」で考える

この記事は日経クロストレンドSpecial
「なぜ博報堂DYがECを?」 ECビジネスはフルファネルで考えるに掲載されました。

HAKUHODO EC+は、博報堂DYグループ内のEC領域のナレッジやスキルを集結し、クライアント企業のEC事業を戦略構築から実装・運用までフルファネル、ワンストップでサポートする一大プロジェクトとして、2021年に発足した。
グループの垣根を超えて優れた人材を集結させた「最強チーム」とも称される同プロジェクトだが、その核となるメンバー4名に、博報堂DYグループがECに取り組む意義とチームの強みについて語ってもらった。

奥山 貴弘
HAKUHODO EC+ リーダー
博報堂 ショッパーマーケティング事業局 局長代理
コマースDX推進グループマネージャー

桑嶋 剛史
HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/地域DXソリューション リーダー
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
コマースDX推進グループ イノベーションプラニングディレクター

菅 真輝
博報堂プロダクツ
カスタマーリレーション事業本部 本部長

毛利 崇之
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
ECマーケティング本部 副本部長

パンデミックを境に大きく変革したEC生活者に向き合う博報堂DYグループには必然だった

なぜ博報堂DYグループがECに注力し、「HAKUHODO EC+」を立ち上げたのでしょうか。

奥山
生活者の購買行動はコロナ禍を境にどんどんデジタルシフトしています。生活者にとってこれまでは利便性・省力性がECの魅力でしたが、今では、ECで「ワクワクする体験がしたい」といった、より質の高い購買体験へのニーズが生まれ、ECは生活者にとって単なる「買える場所」ではなく、「人とのつながりの場」というように捉え方や可能性が拡張してきているのではないかと考えています。そうなると、日頃より「生活者発想」を掲げて生活者に深く向き合っている博報堂としてはECマーケティングの推進は必然でした。
 博報堂DYグループ内には、様々な会社・部門・部署でECに取り組んでいる人材が多数いるので、ワンストップで束ねられたら強みになる。そこで、グループ横断型の一大プロジェクトとして、2021年12月にHAKUHODO EC+が発足しました。メンバー構成は、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂プロダクツ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)を中心に、グループ会社や外部の企業との連携を強化して、コアメンバーだけでも50名を超え、総勢数百名の体制です。

桑嶋
HAKUHODO EC+の中には、戦略を担うマーケター、クリエイティブスタッフ、プロデューサー、本社機能のスタッフなど、幅広くECを支援するメンバーが入っています。コールセンターや物流、データマーケティングも含めて、ECビジネスに必要なメンバーをグループ全体から集結させた最強チームなんですよ。
EC課題は、クライアントによって千差万別です。どんな課題が出てきても、我々ならワンストップで対応できることが強みです。集客から購買、ファン化、フルフィルメント※までも対応できることに驚かれることも多いですね。

ECで商品が注文されてからエンドユーザーに商品が届くまで必要な業務全般
毛利
博報堂DYグループは戦略構築から運用業務まで全てをワンストップで対応できるのが強みだと思いますね。

今も話に出ましたが、企業側はECでどんな課題を抱えているのでしょうか。

桑嶋
パンデミック前後で大きく課題自体が変わりました。以前は「ECが今後伸びますから一緒にやりましょう」と我々から提案させていただくことが多く、抱えられている課題も広告運用など従来型ダイレクトマーケティングの領域が多かったです。しかし、パンデミックを境に、生活者の購買行動が大きく変わり、ECは当たり前のものになりました。その結果、企業のEC課題も多様化し、経営戦略など戦略領域から、コールセンター・物流など各種実装領域までフルファネルでの対応力が求められるようになりました。
その中でも、よく聞く課題として、「社内にECに詳しい人がいないから、一緒に並走して社内に知見を貯めてくれるパートナーがほしい」、「上流の戦略を立てるところから、各専門分野で結果を出していくための力になるものがほしい」などがあげられます。そして、ECモール、自社EC、DtoCなど、あらゆるチャネルを統合して考えることが求められてきていますね。

毛利
DACがEC領域への取り組みを開始したのは2018年頃、あるEC系プラットフォームでの売上をどう伸ばすかという課題に対応するためでした。その後、生活者や企業のニーズの変化に応じてEC系プラットフォーム全般に対応する方針に変わり、ちょうど同じタイミングでHAKUHODO EC+が発足したのでグループでの連携も始まったわけです。

博報堂プロダクツは、20年近く通販業務を担ってきたセクションがあり、その中でECにも取り組んでいましたが、ECのニーズが増えたために2020年に専門部署ができました。もともと店頭販売やリアルイベントなど、オフラインに強い会社だったので、オンとオフをつなげていく形が得意です。どうやって売っていくのか、売り先は国内か海外かなど、スキームや構造によってECサイトの作り方も変わるので、作り方のコンサルティングから入っています。ECサイトのデザインは「レスポンスクリエイティブ」とも言いますが、ボタンをどこに配置して何色だと押しやすいのかなど、専門性を持ったクリエイターが必要になります。そういうデザイナーやコピーライター、そしてECに特化したシステムづくりの知見を持っている人材、全体を統括できるプロデューサーなどのスペシャリストが博報堂プロダクツにはそろっています。
桑嶋
以前はECというと、デジタル広告の運用PDCAを軸とした「ダイレクトマーケティングのもの」という理解をされていました。今では、数字で科学するダイレクトマーケティングの発想は持ちつつも、ユーザーにいかにブランド価値を伝えるかというブランドマーケティングを掛け合わせることが重要になってきています。例えば、我々の事業支援のなかには、新規商品を開発し、EC上でデータを分析しながら販促を行っていくものがあります。そうした場合、いかにユーザーがブランド価値を感じるか? SNSで口コミを広げたくなるか? などというブランド発想と、データ分析や広告PDCAを回すことによって成功確率を上げるダイレクト発想を組み合わせて行っていきます。まさに今のECは「ブランド×ダイレクト」が重要なのです。

では、HAKUHODO EC+をどのように活用してもらいたいですか?

奥山
マーケティングの目線で見ると、ECを基点に様々なデータが取得できます。これらは全体のマーケティングにも生かせるので、ECを基点としたマーケティングが可能になります。従来のECはチャネル戦略上の「出口」の一つであると捉えられていましたが、生活者と企業をつなぐ、まさに「入口」になりますよねと得意先にお話すると、ECマーケティングに対する見方を変えることができます。ご担当者のモチベーションまでを変えられるという醍醐味があります。
桑嶋
「0→1」の商品開発、そしてそのあとのオフラインへの広がり、というのも得意です。たとえば、ECモールでランキング1位を獲得し、その後にオフラインでも売るという事例も生まれてきています。ECはチャネルの一つではなく、チャネルをまとめるものになってきたという気がしています。
毛利
DACとしてのHAKUHODO EC+への関わり方として、博報堂と組んで動くこと以外にも、我々の強みの一つであるソリューション開発力を生かした、EC参入企業の方向けのSaaSツールの提供も行っているので、マネージドサービスのご相談だけではなく、SaaSツールの利用のみといった形でもHAKUHODO EC+をぜひ使って頂きたいですね。
今でも「博報堂さんが、ECをやっているの?」と言われることがあります。EC業務自体を行っていることは知っていても、倉庫やコールセンターまで対応できるというと驚かれますね。もともと事業支援などを行う部署ですから、得意先の商品開発、売り場づくり、物流まで。これが全部できると、事業のどこがネックなのかも自ずとわかります。当然、次回への提案にもつながりますので、事業自体のPDCAを回せることが、強みになっています。

ECをECビジネスだけで考えてはいけない企業を成長させる起点だと捉えるべき

次に、ECビジネスを成功に導くカギとは何だと考えますか。

奥山
「ECビジネスをECビジネスだけで考えてはダメ」だということでしょうか。私たちはECを事業だと捉え、事業成長をどう支援していくのかを大事にしています。きっかけがECであっても、マーケティングに生かし、フルファネルで考える軸になっていき、長期的に事業をどう成功させるかという支援につながります。当然、ECだけの狭い領域の話で終わりません。ECをECだけで終わらせず、例えば博報堂が得意なマーケティングコミュニケーション領域に広げていくとか、新たなサービス開発につなげる場合に、ECが起点になりやすいのです。
桑嶋
事業者としての意志をもって、ECビジネスを捉えること。事業が生活者からどう見えるのか、シンプルに考えることが大事です。詰め込みすぎで何がしたいか不明確だと、生活者に魅力が伝わらない事業になることも多いです。生活者にとって意味があり、事業者にとってもやりたいことの接合点を見つけないと意味がありません。我々は、生活者発想という博報堂のフィロソフィーの通り、いかに生活者の気持ちを考え、いかに生活者に愛されるECビジネスを作れるかを常に構想しています。そうした事業戦略に基づいて各領域のプランニングを立て、事業全体のプロジェクトマネジメントを行うことが重要でしょう。得意先と博報堂DYグループが垣根なく一緒にやっていくことが大事ですね。
毛利
私たちの立ち位置は、各プラットフォーム・各クライアントのゴールに合わせて戦略・戦術を考えて結果を出すことです。DACはもともとデジタル広告に強い会社ですが、ECビジネスは広告だけではなく、棚の整備やリアルでの売上も加味して、広告と非広告の両方、つまりトータルでソリューションを提供していくことが大事だと感じます。広告だけに捉われず、クライアントの課題に寄り添うことが重要でしょう。
車をECで買うなんて、昔は考えられませんでした。今はショップで現物を見てECで購入するような「ものを売らないお店」も出現しました。そんな行動パターンやニーズの変化に合わせて、ECサイトを構築する必要があります。「1回売って終わり」ではなく、継続してお客様とのリレーションを作っていく箱としてもECがあるので、単純にオンラインでショップを運営するだけではなくて、事業がさらに拡張していくようにしっかりサポートする。それが成功へのカギではないかという気がします。

では最後に、博報堂DYグループがECに取り組む意義と強みについて、お伺いします。

博報堂DYグループ内にはあらゆるECに関するスペシャリストが揃っています。得意先の様々なニーズに応えられるチーム、それがHAKUHODO EC+なのだと思います。これまで広告で培ってきた生活者発想やデータを事業につなげていくこともできる。博報堂DYグループが行う意義はそこにありますし、それができることが強みだと思います。
毛利
あらゆる人材が1つに結集していることがHAKUHODO EC+の強みです。クライアントと広告の話をしていると、制作までできるのか? と聞かれたり、自分たちが想定していないニーズを求められたりすることが多々あります。今までは「ウチではできないんですよ」というしかなかった。でも今はHAKUHODO EC+という体制があり、グループの9社が集まっているので、クライアントのニーズがどんなものであれ、ほとんど対応できることが強みだと思います。

HAKUHODO EC+ チーム構築力

あらゆるバリューチェーンにおいて多様化するEC課題に対し、トータルサポートが可能なチーム体制を構築

桑嶋
博報堂のフィロソフィーとして、「パートナー主義」を掲げています。中長期的な目線で得意先とパートナーとして向き合い、目先の結果だけではなく、一緒にパートナーとして並走しています。そのため、我々のEC支援の業務においても、博報堂も売上責任を負いながら数年後の売上に応じてレベニューシェアをするプロジェクトもあります。こうしたパートナー主義で得意先と寄り添うことが博報堂の大きな強みだと思います。
奥山
先見性という博報堂の強みをさらに生かせるチャンスも生まれるはず。今、私たちは「新しいコマース」をどう設計するか考えています。例えばライブコマースでは、リアルタイムで人とつながってものを買うだけでなく、ライブコマースとクイックコマース※と掛け合わせたらどんなコマース体験が生まれるのか。例えばメタバース上のコマースで、どういう新たな価値を生むのかなど、実際に得意先を巻き込みながら知見を蓄えつつ、取り組んでいるところです。「これからのコマースがどうなっていくのか」、ワンチームで考えられるのも強みでしょう。

ライブコマース:ライブ配信で商品を紹介して販売する販売形態。クイックコマース:注文から一定時間内に商品を届けるサービス
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  • HAKUHODO EC+リーダー
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局 局長代理 兼
    コマースDX推進グループマネージャー
    2004年博報堂中途入社。大手通信会社を中心に長らく営業職を担当し、2019年より現職。ショッパーマーケティング・イニシアティブのメンバーとして、EC領域に特化した組織横断型プロジェクトチームである「HAKUHODO EC+」を推進する。
  • HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/
    地域DXソリューション リーダー
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局
    コマースDX推進グループ
    イノベーションプラニングディレクター
    通販事業の運営チームを経て、博報堂のEC支援チームの旗揚げに参画。米国Kepler社への短期出向を経て、現職。ECを軸に、新規ビジネスの立ち上げや変革、事業設計を得意とする。各種講師や記事/書籍執筆なども担当。
  • 博報堂プロダクツ
    カスタマーリレーション事業本部 本部長
    2005年に博報堂プロダクツへ入社以降、長年制作営業に従事。飲料食品メーカー等を担当後、2020年よりEC領域を中心としたOMOセクションを兼務し、2022年よりダイレクトマーケティングを担う現事業本部へ遷る。EC事業対応をはじめダイレクトビジネスの拡張を推進し、コマース事業全般のプロジェクトマネジメント推進を行っている。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
    ECマーケティング本部 副本部長
    2008年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)新卒入社。WEB広告枠の営業、運用型広告のトレーディングデスク業務等を経て、2018年にEC領域の出品メーカー事業主に対するコンサルティングチームを立ち上げる。2022年からは複数のECプラットフォーム横断でメーカー事業主の抱える課題を解決する現組織の運営に従事。