おすすめ検索キーワード
ミドルファネルでタイアップ企画が果たす役割と効果測定 ~PrimeAd パブリッシャーサミット2023 レポート
MEDIA

ミドルファネルでタイアップ企画が果たす役割と効果測定 ~PrimeAd パブリッシャーサミット2023 レポート

2023年3月28日、オールアバウトが運営するコンテンツマーケティングプラットフォームPrimeAd主催によるパブリッシャー向けイベント「PrimeAd パブリッシャーサミット2023」が開催されました。PrimeAdに参画する提携メディアを招聘し、90社以上が参加。事業会社のコンテンツマーケティングを支援するパブリッシャー側の課題やPrimeAdの活用などについて、さまざまなナレッジが共有されました。

本稿では、PrimeAd、および広告会社各社の講演に続いて設けられた、4社によるパネルディスカッションの模様をレポートします。参加された媒体社の方々から事前に募った質問も取り上げながら、現状と今後について話し合いました。

モデレーター
箕作 聡氏
オールアバウト
PrimeAd プロダクトマーケティングマネジャー

林 聡太氏
電通デジタル
メディア&コミュニケーション領域 プラットフォーム部門
プラットフォーム戦略部 メディアビジネス推進グループ グループマネージャー 

並河 圭氏
ADKマーケティング・ソリューションズ 
プラットフォームビジネスセンター プラットフォーム戦略局 局長 

藤川修一郎
博報堂DYメディアパートナーズ 
新聞雑誌局 デジタルアカウント推進部部長

タイアップ記事出稿のニーズは減っていない

――オールアバウトで、コンテンツマーケティングプラットフォーム「PrimeAd」のマーケティングマネージャーを務めている箕作(みつくり)です。このセッションでは、コンテンツマーケティングに関して、広告会社側と媒体社側がそれぞれどういったことを考えているか、目線合わせの場として活用いただければと思っています。
 大きく、過去から現在までの変化と、現在から未来をどうつくるか、という2つのテーマを設けました。まずこれまでの変化について、電通デジタルの林さんはどうお考えですか?

コンテンツマーケティングとして、メディア記事のタイアップ需要自体は以前と変わっていないと捉えています。ただ、環境が変わったため、タイアップの提案数は減っている印象です。
環境変化の要因のひとつは、運用型広告の広がりです。スピード重視で提案・運用し、結果のレポートも日次で管理できる利点があります。また、デジタルマーケティングの運用は得意な人材が増える反面、リッチなコンテンツの制作ディレクションが豊富な人が少なくなっている状況もあります。
こうした環境を、広告会社サイドで横断的に変えていく設計が必要かもしれません。

――たしかに、今のご指摘は個社ではなく業界全体が抱える課題といえそうですね。
博報堂DYメディアパートナーズの藤川さんはいかがですか?

藤川
私も、事業会社からのニーズは減っていない、むしろ増えているように感じています。以前はタイアップ記事というとファッションやコスメ領域の出稿が中心でしたが、それ以外にも少しずつ領域が広がっています。
それから、重視される効果指標も変化しています。以前はPVが主な指標でしたが、加えて今は読了率や滞在時間のような、ミドルファネルの評価としての指標も重視されています。さらに、たとえば媒体社のメディア掲載後に二次利用として自社サイトに掲載した際の見映えなど、客観的(もしくは一般的な)指標にしづらい主観的な部分でも評価されるようになっています。定性的な評価に重きが置かれるようになっていると感じますね。

――以前の定量評価だけでなく、定性評価も重視されつつあるのですね。ではADKマーケティング・ソリューションズの並河さんはどうお考えでしょうか。

並河
今ご指摘された、二次利用の増加は変化のひとつだと思います。広告主が自ら消費者と接点を持てる場として、オウンドメディアの需要が増加し、タイアップ記事の出稿とオウンドへの二次利用をセットにした企画も増えています。
俯瞰すると、デジタル施策のシェアが高まっていることを受け、社内組織においてはデジタル部門の中に出版部門が移管したという変化もあります。

――現在までの変化として、いろいろなキーワードが挙がりました。今のお話に関連して、会場から「Q.タイアップ需要は鈍化していると感じるか?」という事前質問がありました。お三方とも、デジタルの台頭などの変化はありつつ、事業会社からの需要は減っていないという見解でしたね。

そうですね。2021年はコロナ禍の影響でコンテンツ予算の削減が相次ぎ、新商品発表会などもオンライン化してメディア対応が減りましたが、22年はコスメを中心に復調しています。
藤川
当社でも、総量として業界のバラエティや出稿社数などが膨らんでいます。

ミドルファネルへの投資の効果をどうレポートするか

――もうひとつ、会場からの事前質問です。
「Q.ミドルファネルに予算投下されにくいのはなぜか?」。

藤川
アッパーファネルとローワーファネルに比べて、ミドルファネルはたしかに予算投下がされにくいと思います。理由は、認知を獲得するアッパーと、直接的な購買を後押しするローワーに対し、ミドルファネルは効果の説明がしづらく、手間もかかるためどうしても予算もつきにくくなるのではないかと思います。
並河
アッパーもローワーも、効果を数値化しやすいですから。ミドルはその意味では、統一的に見るのが難しい。そのため、プランニングのベースがアッパーかローワーのどちらかに寄ることが多いと思います。

――では、共通の指標や効果試算ができれば、ミドルファネルにも予算投下されるでしょうか?

量と質の話になるかなと思いますね。量でいうと、アッパーファネルで同じ予算で広告を打てば数百万imp、数十万クリックになる一方、ミドルで同じ予算感だと2-3万PV、数百クリックといったところではないでしょうか。その分、PVやクリックの質が高いと理解いただいて出稿に至っても、施策サマリーの上申時に疑問が投げかけられることはあります。
ミドルファネルは、手前の認知とその後の購買をつないだことを証明しないと、どこに寄与しているのかを示せない。結局、KPI論になってしまいますが、その価値証明が必要かと思います。

電通デジタル 林 聡太氏

藤川
ミドルの効果を何で代替するか、ということですよね。業界全体の共通フォーマットになるかもしれませんが、何らか持つべきだとは思います。

――今、施策をレポートする際の話も上がりましたが、まさに会場からも「Q.キャンペーン単位の振り返りの際、タイアップはクライアントにどう報告しているか、タイアップの統一指標はあるか?」との質問がありました。

オールアバウト 箕作 聡氏

並河
全体ではPVや遷移数、ミドルファネルだと読了率や滞在時間が使われますが、その数字の良し悪しを判断するのが難しいですね。似たような業種でどうだったか、平均などを媒体社に出していただいて判断しているのが現状です。案件によっては、具体的にコンバージョンへの寄与を割り出すこともありますが、汎用的なものにはしづらいです。
藤川
同感です。タイアップに関しては、基本的にはキャンペーン単位の総PVを使うことが多いと思います。加えて、その企画からどれだけ先へつなげられたかをCTRで示しています。また、先ほども触れましたが、最近では読了数も確実に積み重ねられる指標かと思います。

――効果を確認しよう、先へ進めようという機運は高まっている感じですね。

キャンペーン全体の中でどうかというと、PVのレポートだけではクライアント企業もその先を描けないと思うので、次の一手につながるように定性情報を入れ込むことは意識しています。たとえば、どういうテーマまで読了されているか、全体PVに対してCTAが多い・少ないのはクリエイティブなのか場所の問題なのか、などを分析して提案しています。
現状、統一指標があるとはいえませんが、クライアント企業の課題も多様になる中で取り組みを続けるためには、次のローワーファネルへの貢献度を示さないといけません。各種の数値に加えて、特にこのキーワードが響いているとか、オウンドメディアへリンクしたなどアトリビューションまで分析できれば、定性情報を含めて報告するようにしています。

今後のコンテンツマーケティング市場拡大に必要なこと

――では、ここからは未来の話に入っていきたいと思います。「Q.メディアタイアップを中心としたコンテンツマーケティングの市場拡大について、何が必要か」。

並河
よりコンテンツを拡散していくことが、まず挙げられるかと思います。
パブリッシャーと相性の良いプラットフォームを使って、ユーザー接点を拡大していく。当社でデジタル部門が出版部門と一緒になったのも、そうした活動を推進していく意図があります。
もうひとつは、進行の煩雑さを軽減することがあります。先ほどから挙がっている効果指標や、権利関係などの課題も多く、やはり簡単には制作できないので、その分も加味して収益性の高いマーケットを目指せればと思っています。

ADKマーケティング・ソソリューションズ 並河 圭氏

藤川
効果効率の指標の確立も大事ですが、いかに提案機会をつくるか、それも提案の上流工程にどう組み込めるかを考えるのが重要だと考えています。そのためにも、媒体社が手掛けるコンテンツの役割や価値を、明確に伝えていく必要があります。
また、動画の施策はこの数年、特に直近1年は強いトレンドになっており、クライアントのオウンドメディアでの活用を考えても汎用性が高く、ニーズが強いですね。拡大の余地が大きいと思います。
広告の予算配分において、ディスプレイや動画もありながらタイアップだけに多く割こうといっても難しいので、オウンドメディアの活用やコマースとも連携して上流から検討することが必要だと思います。タイアップというより、コミュニケーション提案と捉えています。
そのためにも、やはり指標設計や算出ロジックの設計が重要です。また、提案から実現までにやはり工数がかかるので、その軽減も必要だと思います。

――ここでも複数のキーワードが挙がったと思います。上流に組み込む、連携するといった言葉がありましたが、“メディアタイアップ”という土俵にとどまっていると、いまひとつ市場拡大に結び付かない……という見解ですね。作業や工数の軽減といった、制作における業務効率にも触れられましたが、これはどう改善すればいいのでしょうか?

並河
限られたリソースをどう分配するか、優先順位を明確にするのが大事ですよね。
藤川
個人的には、これまで採算度外視で注力してきたと思います。ただ、業務効率の問題はどこかで壁にぶつかりますし、広告会社だけでは解決しないような気もしています。媒体社と分担し合うとか、場合によっては広告会社同士で仕組みをつくったり効率化したりすることも考えるべきかもしれません。

博報堂DYメディアパートナーズ 藤川修一郎

ひっ迫しているなという実感は、私も持っています。あまり工数が増えると、目の前の制作物を無事に仕上げるだけで精一杯になってしまい、先手を打った拡散や、こうした業界全体での情報交換などに割く時間がどんどんなくなっていきます。業務効率化は、喫緊の問題だと思います。

今後のコンテンツマーケティング市場拡大に必要なこと

――その解決のためには、広告会社間で協力する可能性もあるわけですね。
さて、改めて媒体社の方々からの質問を振り返り、集約したものを2つうかがえればと思います。
ひとつは「Q.市場拡大のための価値証明とは?」。この解には「A.個別メディアで、そのメディアでしかできないコミュニケーション施策に注力すること」と、もうひとつは我々PrimeAdが目指すところでもありますが「B.業界全体で向き合い、タイアップ施策そのものの価値向上や、理解促進の観点での価値証明に取り組むこと」があると考えています。
AとBだと、お三方はどちらがより有効だと思われますか?

市場拡大のためなら、Bだと思います。ただ、時間がかかるのもたしかです。一方、Aは各媒体の差別化において大事です。それぞれの媒体でどのような文脈が設定されているかは、我々もよく理解して、媒体社とクライアント企業との間で中長期的な関係を築く上でのカードにしていきたいと考えています。
藤川
私もBです。ただ、役割が広告会社と媒体社で異なり、媒体社は個別のAに注力し、広告会社は全体でのBの旗振り役になるとよいのではと思います。
並河
同じく、結論としては、Bだと思います。Aも当然、これまで媒体社の方々が注力されてきたことで、今後も自社の強みをどうつくるかという観点で続いていくはずです。ただ、市場拡大によりつながる重要な取り組みはBですね。

――ありがとうございました。では、最後にもうひとつの質問です。ここまでの話にも上がりましたが「Q.市場拡大に必要な統一指標は?」。

並河
現状、いちばん難しい問いですね。今回のようなディスカッションや、媒体社の方々との意見交換も踏まえて、指標の確立を模索できればと思います。
強いていえば、記事や動画などメディア側とともに作成したコンテンツに接触したあとにのサイト遷移が該当すると思います。ただ、基本的にこの領域はすべてアトリビューションで、クライアント企業の協力がないと数値が得られないこともありますが、業界全体で取り組むならチャレンジしてみたいです。
藤川
計測に関しては、タイアップ広告でこの程度のPVや読了率に達すると、ソーシャル上でバズが起きる、あるいはコンバージョンがこれくらい向上すると考えられる……といった「効果の見込み」の見解を作ることが必要ではないでしょうか。何パターンかあるでしょうが、皆が納得する見解をつくることが必要だと感じています。
sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 箕作 聡
    箕作 聡
    オールアバウト
    PrimeAd プロダクトマーケティングマネジャー

  • 林 聡太
    林 聡太
    電通デジタル
    メディア&コミュニケーション領域 プラットフォーム部門
    プラットフォーム戦略部 メディアビジネス推進グループ グループマネージャー

  • 並河 圭
    並河 圭
    ADKマーケティング・ソリューションズ
    プラットフォームビジネスセンター プラットフォーム戦略局 局長

  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    新聞雑誌局 デジタルアカウント推進部部長